ITプロジェクトの基礎知識×英語力
書籍「ITプロジェクトの英語」の中から、ITマネージャーやエンジニアが抑えておくべき英語での言い回しを10つ厳選してまとめます。
IT関係者が抑えておくべき英語の言い回し10選
ITプロジェクトの知識や英語力を養うための書籍は数多くでていますが、ITプロジェクトの体系に合わせて英語を学べる本は限られます。
最近では、実際にプロジェクトの現場に日本人以外の外国人がメンバーにいるという機会も多くなりました。そのため、コミュニケーションを円滑にするためにも、活きた英語をできるだけ使ったり、理解したりできるようになりたいものです。
ここでは、そんな英語での言い回しのうち、特に抑えておいた方がよい表現をプロジェクトのプロセス順に合わせて厳選して紹介したいと思います。
こんな方におすすめです。
- ITプロジェクトを率いるプロジェクトリーダー、プロジェクトマネージャーの方
- ITプロジェクトのプロジェクトリーダーやプロジェクトマネージャーを目指す方
ポイント
例えば工数の人日や人月を英語で何と表現するか知っていますか?
工数のことは一般的に、man-hourやperson-hourと表現され、人日や人月はそれぞれ、man-day、person-day、man-month、person-monthと表現できます。
本書では以下のような例文が紹介されています。
(影響分析が甘かったため、変更要求の工数が見積もりの3倍に膨れ上がってしまった。)
ただし、manとpersonにはゆらぎがあり、本書では、工数をman-hourと表現していますが、人月はperson-monthと表現しています。
工数の表現においては、man-hourの方が伝わる高いようですが、男女差別の撤廃の背景から、ニュートラルなpersonを使う方にシフトする動きがあるようです。
また、具体的な会話では数字を用いられることが多いため、person-hoursと複数形で表現する人もいるようです。
人日はman-dayの略の「MD」を単位として管理しているプロジェクトも見かけますので、プロジェクトの文化によって多少ブレる部分かもしれません。
1立ち上げ
プロジェクト立ち上げ時の主なイベントとその英訳を以下に挙げます。
企画書の作成 | Creating a business plan |
問題を解決するための企画を練る | Develop a plan to solve the business issues |
練った企画を企画書にまとめる | Put together a report on the plan |
ITプロジェクトチームを立ち上げる | Launch IT project team |
見積りと提案 | Estimate and proposal |
提案依頼書を作成する | Create a request for proposal |
提案書を作成する | Vendors create a proposal |
ベンダーを選定する | Choose vendors |
稟議と決済 | Request for managerial and final decision |
稟議書を作成する | Create a request for managerial decision |
ベンダーと契約する | Make a contract with a vendor |
その中で最終的な契約締結の表現をポイントとして挙げます。
「契約を締結する」を英語では「make a contract」と言います。
例文
(プロジェクトを来月から開始するためには、ベンダーとの契約は遅くとも今月末までに締結しておかなければならない。)
契約を英語でcontractということは抑えておくとよいでしょう。
2プロジェクト計画
プロジェクト計画時の主なイベントとその英訳を以下に挙げます。
プロジェクト計画の作成 | Creating a project plans |
プロジェクト憲章の作成 | Creating a project charter |
開発手法の決定 | Decide development method |
プロジェクトスコープの定義 | Defining project scope |
WBSの作成 | Creating WBS |
成果物の定義 | Defining output |
プロジェクトスケジュールの作成 | Making a project schedule |
組織計画の作成 | Creating an organizational plan |
要員計画の作成 | Creating a personnel plan |
コスト計画の作成 | Creating a cost plan |
テスト計画の作成 | Creating a test plan |
コミュニケーション計画の作成 | Creating a communication plan |
プロジェクト標準の作成 | Creating project standards |
開発環境計画の作成 | Creating development environment plan |
機器導入計画の作成 | Creating machine installation plan |
移行/展開計画の作成 | Creating migration / expansion plan |
プロジェクト管理計画の作成 | Creating a project management plan |
キックオフミーティングの実施 | Holding kick-off meeting |
その中で関係者の多くなりそうなプロジェクト標準の表現をポイントとして挙げます。
プロジェクト標準の作成の中には、設計、開発、テストの標準を定義する必要があります。
それぞれ以下のように表現します。
設計標準を定義する
Define design standards
開発標準を定義する
Define development standards
テスト標準を定義する
Define test standards
「〜を共通化する」を英語では「standardize 〜」と言います。
例文
(コーディングの仕方を共通化するルールを決めておくことで、仕様変更への影響範囲も明確になる。)
standardizeは、元の名詞であるstandardを動詞化した単語ですね。同じ用法に、normal→normalize、recognition→recognizeなどがあります。
3実行
プロジェクト実行時の主なイベントとその英訳を以下に挙げます。
現行分析 | Current system analysis |
要件定義 | Requirements definition |
機能設計 | Functional design |
非機能設計 | Non-functional design |
開発(コーディング / 単体テスト) | Development (Coding / Unit test) |
統合テスト | Integration test |
システムテスト | System test |
ユーザーテスト | User test |
システム導入 | Introduction of a system |
移行リハーサル | Migration rehearsal |
本番移行 | Production migration |
本番リリース / 展開 | Launching production release / deployment |
保守 | Maintenance |
プロジェクトの実行プロセスは、ボリュームもあるため、特に使用頻度が高そうなものや重要な言い回しなど、いくつかまとめてポイントを挙げます。
「具体的にする」を英語では「make it concrete」と言います。
例文
(曖昧な要件はできるだけ具体的にして、完成したシステムがユーザーの望むものになるようにすべきだ。)
「問題点を洗い出す」を英語では「find out all of the problems」と言います。また、
「〜の担当者」を英語では「person in charge of 〜」と言います。
例文
(実際に業務を担当している担当者にテストしてもらうことで、問題点を洗い出すことができるだろう。)
「引き継ぐ」を英語では「hand over」と言います。特に、
「運用の引継ぎ」と名詞化されたものは「transition」と言います。
例文
(運用部門に運用を引き継ぐ前に、運用手順書をもとにした実地訓練をする必要がある。)
「復旧するのに〜かかる」を英語では「it takes a whole 〜 to recover」と言います。
〜の部分には期間が入ります。
例文
(誤った移行データを移行してしまったことが判明し、リカバリーに丸2日かかりそうだ。)
4管理
プロジェクト管理に含まれる主な管理とその英訳を以下に挙げます。
プロジェクト管理 | Project management |
進捗管理 | Progress management |
コスト管理 | Cost management |
品質管理 | Quality management |
変更管理 | Change management |
問題管理 | Problem management |
リスク管理 | Risk management |
要員管理 | Personnel management |
構成管理 | Configuration management |
セキュリティ/個人情報管理 | Security management / Personal information management |
ステークホルダー管理 | Stakeholder management |
コミュニケーション管理 | Communication management |
チームビルディング | Team building |
「〜日の遅延だ」を英語では「be 〜 days behind」と言います。
例文
(現時点のスケジュールベースラインからの遅延は3日であるが、次週にはキャッチアップ可能だ。)
「暫定対応する」を英語では「deal with it temporarily」と言います。
例文
(今発生している問題を収束させるため、とりあえず暫定対応を行った。)
※dealt は dealの過去形
「〜を伝達する」を英語では「convey 〜」と言います。また手段として、
「口頭の」を英語では「oral」、「書面の」を英語では「written」と言います。
例文
(口頭より書面で伝達することで、コミュニケーションミスを少なくしよう。)
5終結
プロジェクト終結時の主なイベントとその英訳を以下に挙げます。
プロジェクト完了手続き | Project completion procedure |
プロジェクトの評価 | Project evaluation |
プロジェクトの成功と失敗の記録 | Recording project success and failure |
プロジェクト完了手続きの中での納品〜顧客の検収の表現をポイントとして挙げます。
「検収」を英語では「acceptance inspection」と言います。
例文
(納品した成果物の、お客様による検収作業が滞っている。)
まとめ
本書では、ITプロジェクトでよく使用する用語の英訳はもちろん、具体的なシーンに合わせた例文がプロジェクトのプロセスごとに多数紹介されているため、より活用しやすい具体的な言い回しを学ぶことができます。ポイントで挙げているような言い回しの他にも、例文から「これって英語だとこんな風に言えるのか」という発見もあるため、無駄なくお得に英語を学べる一冊です。
他にもたくさんピックアップしたい言い回しはあるのですが、それは本書を手にとって見ていただければと思います。
目次
- 立ち上げ(企画書の作成、見積りと提案 ほか)
- プロジェクト計画(プロジェクト計画の作成、プロジェクト憲章の作成 ほか)
- 実行(現行分析、要件定義 ほか)
- 管理(プロジェクト管理、進捗管理 ほか)
- 終結(プロジェクト完了手続き、プロジェクトの評価 ほか)
【内容情報】
ITプロジェクトの基礎知識×英語力。企画、設計、開発から、保守、管理、評価まで、ITプロジェクト全体をカバー。【著者情報】
塚本 俊(ツカモト スグル)
1987年、日本アイ・ビー・エム株式会社入社。金融系の大規模SIプロジェクトを中心に数々のシステム開発プロジェクトに参画。プロジェクトマネージャーとしていくつもの大規模データ移行のプロジェクトに携わり、プロジェクトマネジメントを実践してきた。PMP、SPM会員小坂 貴志(コサカ タカシ)
ビジネスエキスパートEnglish ITプロジェクトの英語 内容紹介より
神田外語大学外国語学部教授。青山学院大学文学部卒業後、日本アイ・ビー・エム株式会社入社。デンバー大学人間コミュニケーション研究科修士号取得、博士課程単位取得修了満期退学。モントレー国際大学、立教大学を経て現在に至る