おれの採用広報戦略は半分足りてなかった

こんにちは、 id:sezemi です。 先日いよいよ 40 代最後の年が始まったのですが、 2 週間前の RWC 2024 で懇親した際、なぜか 50 歳と逆サバの年齢を言ってしまい、ナチュラルに数え間違えました。 そういうことがあるのですよ。 まぁ、 hsbt からは「 50 になろうが 60 になろうが、 40 代以上という同じ括りなんで大丈夫ですよ」と話してもらえたので、勇気凛々です。

というわけで、この記事は ANDPAD Advent Calendar 2024技術広報 Advent Calendar 2024 の 16 日目の記事です。

そして、今日は「おれの採用広報戦略は半分足りてなかった ! 」というタイトルで、これまでの採用広報戦略に不足があったことを綴っています。 広報に携わる方の何らかのお役に立つことを、そして、アンドパッド社内のエンジニアにはお詫びと技術自慢をどんどん聞かせて欲しい、というメッセージになります。 スマンかった ...

これまでやってきたのはマーケットイン

DevRel 、技術広報など様々に呼称がありますが、アンドパッドでは "採用広報" という名前をつけております。 これはアンドパッドの開発本部(エンジニアが所属)の採用のための広報という位置づけだからです。 このため、広報戦略はあくまでエンジニア採用を目的としたものであり、自社の Job description を満たせそうなエンジニアに認知してもらい、興味を持ってもらう、ということを戦略のゴールにしています。 簡単に例えると、 Rubyist を採用したいので、 Rubyist がたくさん集まるカンファレンスで宣伝したり、 Rubyist が興味を持ってもらえそうなイベントを開催したり、記事を書く、といったことを考えます。

ゴールから考えるので、マーケティングではマーケットインに近い戦略です。

この戦略を満たすために、カンファレンスへのブース出展は非常に効果的な戦術のため、アンドパッドでは特にリソースとコストをかけています。 例えば、 RubyKaigi では 2019 から出展し、毎年認知を上げ、今ではカンファレンスから直接応募する Rubyist も増えています。

そして、 2024 のブース出展で切り札にしたのが "ノベルティ" です。 ノベルティを魅力的にすることで、ブースへの来場を促し、アンドパッドの興味・関心層に繋げています。 2024 をふりかえると、ややもするとブースで技術や文化をアピールすることよりも、ノベルティにどれだけ興味を持ってもらえるか、それにより興味・関心層を増やせられるか、ということを主眼に置いていました。

ノベルティたち

初出展した Vue Fes 2024 ではノベルティだけでは厳しかった ... orz

そんな "ノベルティ" 戦術が躓いたのが、 Vue Fes 2024 のブース出展でした。 ちなみに ANDPAD のフロントエンドでは React も使われていますが、 Vue を使ったプロダクトが多数を占めており、さらに言うと、 Vue エンジニアは国内では人口が少なく、それだけ貴重な機会です。 アンドパッドは Vue Fes にはこの 2024 が初出展でした。

カンファレンス当日、いつものように好評のノベルティをもとにブース来場を促すのですが、これがほとんど成功しません。 いつもはノベルティに興味をもってもらえるのですが、関心は示すもののブースを通り過ぎていきます。 この原因はあとから分かったことですが、 Vue Fes 2024 でのブースアンケートでアンドパッドの認知度を問うたところ、初出展だったこともあり RubyKaigi などの認知度に比べると、約 1/3 だったのでした。 「何をやっているかわからない会社」からノベルティを推されても、「え、誰?」という状態だったのです。

そんなとき、アンドパッドの CCO (Chief Culture Officer) である 金近 望 が、この出展に合わせて用意していた ANDPAD のフロントエンドの技術スタックをまとめたパネルをもとに、通りかかる Vue エンジニアにアピールし始めたのです。 これが寄与しました。

技術スタックをまとめたパネル

ブース来場に成功し始めると、いつもならノベルティが当たるおみくじに誘導するのですが、これも予め用意していた実際の ANDPAD のデモ画面を見せながら、ブースにいるアンドパッドの Vue エンジニアたちが思う存分に、複雑な工程表の画面やスプレッドシートを模した明細編集、デザインシステム Tsukuri の Playground をなど操作しアピールしました。 すると、来場したエンジニアたちが口々に

  • 「この画面どうやって実現しているのですか?」
  • 「パフォーマンスはどんな感じです?」
  • 「React / Vue どちらでも使えるデザインシステムって珍しいですね」
  • 「デザインシステムをプロダクト投入しているのスゴイ !」

とコメントされ、アンドパッドの Vue エンジニアたちとのテックトークが繰り広げられました。 中にはデザインシステムの評判を聞きつけ、ブース来場された方もいらっしゃり、アンドパッドの技術自慢が奏功したのでした。

一方でノベルティはというと、ひとしきりのテックトークが済んだあとに、おまけのようにしておみくじを引かれるのでした。 いつもとは真反対です。

結果、 RubyKaigi の 2 倍の確率で、興味・関心層に繋げられ、採用選考にも繋げられました。 Vue Fes ではノベルティより技術自慢の方が刺さったのです。

各技術の詳細はテックブログをご覧ください ! - スプシ風 UI のパフォーマンス改善のお話: https://tech.andpad.co.jp/entry/2020/04/28/172129 - デザインシステム Tsukuri のお話: https://tech.andpad.co.jp/entry/2023/12/06/100000

技術自慢をもとにプロダクトアウトの採用広報戦略

Vue Fes 2024 での出来事から、ノベルティ中心の戦術もさることながら、今までのマーケットインな広報戦略だけでは不足していたことに気づきました。

ふりかえってみると、これまでの戦略ではカンファレンスでアピールできるよう、登壇を促したり、記事を書いてもらったりという協力をお願いしていたのですが、発表するために技術を磨いている訳ではありません。 「 Vue Fes のために、あえて Nuxt の新機能を使ってください !!」「 RubyKaigi でアピールできるよう、 YJIT 適用企業が増えてきているから、弊社でも YJIT をやってください !!」というのは本末転倒です。

そして、あえていうと複雑な工程表や、スプレッドシートを模した明細編集などは Vue Fes でプロポーザルにしたとしても採用されにくいテーマですが、 Vue エンジニアには興味を持ってもらえる技術自慢なのです。

つまり、これまで広報として、アンドパッドのエンジニアたちの技術自慢を訴求できていなかった、もっと具体的に言うと、その技術自慢を披露でき、それが反響を呼ぶ場を用意できていなかったのです。 これは猛烈に反省すべき事です。 これまでとは逆の戦略、技術自慢駆動とも言うべき、プロダクトアウトな採用広報戦略が必要だったのでした。

その技術自慢という観点でアンドパッドの社内を見渡すと、例えば、 PDF や csv, Excel といった SaaS とは切っても切れないファイルの処理、毎日想像を超える枚数がアップされる写真の処理、多機能であってもスッキリ見せる UI 、インフラコストの削減にアプリケーションまで踏み込んで対応しているエンジニアなどなど、様々にアピールできることがあるのです。 プロダクトアウトな採用広報戦略とは、そういった技術自慢を披露できる場を見つけに行く、もし、披露する場が既存になかったのなら、例えば、 csv Night を立ち上げるなど、その場を新しく作ることなのです。

そして、この Vue Fes 2024 を機に、少しずつカンファレンスでの訴求内容もプロダクトアウトな自慢に変化させたところ、詳しい数字は見せられませんが、 Kaigi on Rails 2024 、 CloudNativeDays Winter 2024 で目標を上回る採用応募に繋げられています。 プロダクトアウトな採用広報戦略は通用するという実感があります。

まとめ

この記事では、これまで行ってきたマーケットインな採用広報戦略では半分不足していて、もう半分はプロダクトアウトな採用広報戦略が必要という話をまとめました。 また、プロダクトアウトな技術自慢の要素を取り入れると、いい感じに興味・認知層の獲得に繋がっています。

引き続き、 2025 のアンドパッドの技術自慢をお見逃しなく !!

そして、アンドパッドのみんな、技術自慢を聞きに行くよ !!


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