タパヌリ熱

"What do you know, pray, of Tapanuli fever?" said Sherlock Holmes. 音楽や本など、嘘や発見を書くブログ。旧ブログ http://ameblo.jp/baritsu/

Junkie Girl / Walter Becker(歌詞和訳)

Junkie Girl / Walter Becker ジャンキー・ガール/ウォルター・ベッカー


In the good old bad part of this college town
Men in business suits they run you down
You take their money just like you take mine
You send it bubbling down the thin blue line
It doesn't matter how it got this way
'cause we could make it through this thing together
I know you're laughing but I got to say
Now I still want you maybe more than ever
このカレッジ・タウンの古き良き悪い場所で
背広の連中がお前を追い回す
奴らの金をくすねたお前 ――俺のもだが――
お前はその金ぜんぶ、あの薄青い一線に注ぎ込んだ
何でこんな風になったのかなんて、気にしちゃいない
俺とお前はそんな風にやってきたんだから
笑うだろうが、言わせてくれ
いつになく今、お前が恋しいんだ
*thin blue line 薄いブルーなライン
 "Long Grey Line"(長き灰色の線、1954年の戦争映画)みたいな、

 生と死を分かつ一線。であるとともに、ある種の白い粉により机に引かれた線。

 

No fooling it's a fucked up world
So be cool my little junkie girl
マジな話、これはクソみてえな世界
だから、クールでいろよ、俺のジャンキー・ガール

 

The cops are out to shut the district down
I comb the ruins of your stomping grounds
Stanyan street looking like that third world war
You come up blazing like an open sore
Now I believe you but I got to know
How come the right side of your brain is hurting
So take me with you baby when you go
Through to the white side of your china curtain
警官たちがこの地区を封鎖するため出張ってきた
俺はお前の縄張りだった残骸を探し回った
スタンヤン・ストリートは、まるで第三次世界大戦
お前はそこに現れた 傷口がまた口を開いたみたいに
お前のことは信じてる、だが教えてくれ
脳のマシな部分までダメになったのか?
俺も一緒に連れていってくれ
お前の秘密のカーテンの純白な側へ顔を出すときは

 

No fooling it's a fucked up world
So be cool my little junkie girl
冗談じゃない、これはクソみたいな世界
だから、クールでいろよ、俺のジャンキー・ガール

 

In the good old bad part of this college town
Men in grey limousines will drive you down
You take their money just like you take mine
What does it get you down that thin blue line
Now I can hardly hear you anymore
Your eyes are empty and your voice is hollow
I see you waving from a distant shore
And where you're going I don't dare to follow
このカレッジタウンの古き良き悪い場所で
グレーのリムジンの男たちがお前を追い詰める
奴らの金を盗んだお前――俺のもだが――
一体どうしてあの薄青い一線を越えちまったんだ
お前の噂もとんと聞かなくなった
うつろな眼、空っぽの声
向こう岸から手を振るお前が見えるよ
だがお前のゴールまで付いていく勇気は俺にはなかった

 

No fooling that's another world
Good luck my little junkie girl
冗談じゃねえ、その先はあの世だぜ
だから…グッドラック、
俺のジャンキー・ガール

 

11 Tracks of Whack

11 Tracks of Whack

  • アーティスト:Becker, Walter
  • Warner Brothers
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"Gaucho"の制作期間中、ベッカーは恋人をドラッグのオーバードーズで亡くす。
さらに恋人の家族からは彼女をドラッグの道に引きずり込んだと誤解され、告訴されてしまう。
それでいろいろあって復活したのが"11 Tracks of Whack"。
タイトルに反して12曲入り(日本盤は13曲入りで、ボートラ"Medical Science"がかっこいい)。

 

この歌詞はかつての恋人への想いと無関係とは思えないが、
それをピカレスク・ストーリー仕立てにして、最後には「グッド・ラック俺のジャンキーガール」とか言い放ってしまう。
とてもヒドいのだが、そういう心なさを演じなければ、とても歌にできなかった、ということもあるわけで…
アルバムの最後に息子に捧げた『リトル・カワイ』なんて曲を収録する男が冷血漢である訳もなく。

 

基本的にこの曲は親しみやすいカントリーロック風なのだが、
中間部でとつぜん"Aja"みたいな不思議な時空間に行ってしまう。
そこに歌のパート以上に、ベッカーのセンチメントの核心が聞こえるような。
Steely Danにおけるベッカーの役割が伺えるような曲。

 

そんでこの曲の恋人たちの転生した姿が、ベッカーの2nd/最終作"Circus Money"の"Downtown Canon"の主人公たちである気がする。