庶民が受診できる「都立病院なくすな」

看護師たちは「儲ける医療は殺人医療」「儲けがなくても救命させろ」とシュプレヒコールをあげた。言葉は事態が切羽詰まっていることを物語っていた。=21日、都内 撮影:田中龍作=

 小池知事は医療崩壊を加速させるつもりなのだろうか。コロナに感染したにもかかわらず、病院にかかれず、自宅で、ホテルで、苦しみながら死んでいった庶民にどんな説明をするだろうか。

 東京都は2022年度(来年度)内をめどに、8つの都立病院と6つの公社病院を独立行政法人化する。(東京都病院経営本部「新たな病院運営改革ビジョン」)

 公立病院が独法化され、収益優先となれば、命と健康は二の次、三の次となる。ただでさえ苛酷な医師、看護師の労働環境はさらに苛酷になる。

 公立病院だからこそ採算を度外視した治療ができた。富裕層でなくても受診できたのだ。

 独法となればそうはいかなくなる。かつては差額ベッドがなかった大部屋で、高額な差額ベッドが半数を占めるようになる。庶民はおいそれと入院できなくなるのだ。

写真左奥が墨東病院。東京の旗艦病院にして庶民が受診できた。=21日、都内 撮影:田中龍作=

 一足先に独法化した東大病院の元看護婦によれば、病棟ごとの収支報告があり、採算の上がらない病棟は肩身の狭い思いをする。これはまだ序の口だ。

 売り上げ目標を達成するために、様子を見ればよいのに手術を早めたり、薬を大量に投与したりするという。患者は病院が儲けるための道具にされるのだ。

 「都立病院なくすな」。医師、看護師、病院職員、保健所職員たちが、きょう21日、都内で集会を開き、街頭をデモ行進して訴えた。

 隊列が墨東病院前を通過する時、デモはクライマックスとなった。墨東病院は独法化の対象となっている。都内で4ヵ所しかない高度救命救急センターのひとつであるにもかかわらずだ。

 「墨東病院を守れ」。参加者たちは声を張り上げた。鳴り物の音が下町に響いた。

 墨東病院では昨年4月、政治の怠慢で院内感染が発生した。

 独法化されれば別の悲劇が起きるだろう。

   ~終わり~

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