論理学FAQのブログ

授業でもらったコメントに対して書いたリプライを、ブログ形式に編集しました。

『論理学(3STEPシリーズ)』昭和堂

このたび本を出させてもらうことになりました。オフィシャルには12月10日発売のようですが11月末くらいから出回るのではないかと思います。

www.showado-kyoto.jp

昭和堂の「3STEPシリーズ」の1冊です。見本がすでに手元にありますが表紙の蛍光色がものすごいです。気に入っています。

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大学の教養レベルで使われる教科書と想定して書いた本です。本の「まえがき」では、主にその想定読者である大学の学生さん向けに説明を書いたので、ここでは、そうではない、独学ないし趣味で読んでいただける方向けに宣伝をしたいと思います。

難易度

いちおう論理学の初歩から始まりますが、まったくの初学だと少し厳しいかもしれません。大学の講義や他の本でちょっとかじったという方ならスムーズに入れると思います。

扱われているトピックはそれほど難しいものではないですが、後半はさすがにレベルが上がりますし、スペースの都合で証明などすべて詳しく書くわけにはいきませんでした。そうしたギャップを自分で埋めるか、あるいは「そういうものなのね」とうまくスルーして先に進むか、どちらかのリテラシーが必要かもしれません。

内容

他の教科書・入門書と比較しての特色は、論理学の初歩をおさえつつ、そこから進んで、非古典論理を哲学的な側面も含めて大々的にフィーチャーしているというところです。扱っている論理の一覧は目次を見ていただくとして、その中でも特に、関連性論理をここまでスペースをとって解説しているのは本邦初だと思います。

残念ながら証明論はまったく扱っていません。いろいろな論理の可能世界意味論(クリプキ・モデル)を中心としたモデル論だけで議論しています。そのおかげで、異なる論理のあいだの共通点と差異がわかりやすくなったような気がしますので、悪いことばかりではないのでしょう。最終章の否定様相(様相演算子としての否定)までいくと、ぜんぶの演算子が様相化されてしまって、なかなか壮観だと思います。

少し外からの特徴づけとしては、思いがけず読書猿さんがいいツイートをしてくださったので引用しますと:

わりと当たってるかもしれません。もう1冊、プリースト先生の本を(不遜にも)並べさせていただくなら、こちらですね:

www.cambridge.org

非古典論理の教科書として押しも押されもせぬスタンダードかと思います。これをすでに読んだ方、あるいは読もうかと気になっていた方は、(不遜ながら)わたしの本とセットにしていただけると、めちゃくちゃうれしいです。

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この本は、京大文学部での演習のレジュメをベースにしています。昨年度からのコロナ禍でオンライン授業をするために動画を作っていたのですが、結果的にこの本の解説動画ができた形になりました。以下が再生リストです(後期分はまだできてませんが、授業の進度に合わせて1月ごろには完成します)。

youtube.com

youtube.com

本の内容との対応関係はすぐにわかると思います。(出版社にはあまり大きな声では言ってませんが) 概要欄からレジュメもDLできてしまいます。ただ、本にはレジュメに載っていない発展的な内容のコラムや練習問題ももりもり盛り込んでいるので、ぜひ本も手にとってください。

もし、大学の授業でこれらの動画・レジュメを使いたいという先生いらっしゃいましたら、連絡なしでけっこうですのでどんどん使ってください。そのときには、本を学生さんに勧めていただくとか、図書館に入れていただくとかしていただけるとありがたいです*1。

*1:参考までに、わたしの授業では、動画で予習して、授業時間には問題演習と解説を行う反転授業形式で授業しています。わりとうまくいってるんではないかと思います。