"Connivance" が海外に出る前に止めるんだ

やっちゃったなー、という気がします。

「警察の萎縮効果狙う」 赤松健さん、2次創作同人守るための「黙認」ライセンス提案というニュースから。

「クリエイティブ・コモンズを普及させるには、漫画ですよね」――赤松さんはそう切り出し、新マーク「CV」(connivance、黙認)を説明する。


2次創作を黙認することの是非というのはここでは触れません。

何がまずいかというと、"connivance" という単語の選択。

connivance というのは connive という動詞の名詞形ですが、この connive/connivance の持つ語感がひどい。

かなり悪いことを黙認するというニュアンスです。


あるニュース記事から引用します。

The defense strategy has relied largely on an unverified smear campaign alleging that Trimarco herself was a prostitute who sold her own daughter into sexual servitude with the connivance of Marita’s husband, David Catalan.

(弁護側の戦略は、Trimarco 自身が売春婦であり、娘 Marita の夫 David Catalan の黙認(connivance)のもとに自分の娘を売って性的隷属状態に置いたという根拠のない中傷キャンペーンに大きく頼っている。)


また、英語ネイティブの方のツイートです。

いずれにせよ、「同人活動の黙認」ということを表すのにふさわしい単語選択とは思えません。

そもそも、"connivance" という単語自体、死語に近いですし。


どうも人間というのは外国語をなめているところがあって、そのために日本ではデタラメ英語やフランス語・イタリア語があふれ、海外でもデタラメ日本語が氾濫していたりするのですが。

「ある言語の語感は、その言語のネイティブにしかわからない*1」ということは、もっと周知されるべきだと思います。

まあ、これはたぶん人間のどこか深いところに根ざしたもので、数百年たってもデタラメ外国語は量産され続けるのかもしれませんが…。


で、この場合の「黙認」をどう訳すのがいいかというと、それはやはりネイティブの人と相談して決めるのがいいのではないでしょうか。

マイナー言語でもなく、ネイティブを探そうと思ったらいくらでも見つかる「英語」なので。

というわけで、対案は出しません。


ところで、個人的には、あるカプリチョーザ(イタリア料理のチェーン店)で見かける

"Capricciosa" vuol dire in giapponese.

というのが気になっています。

これ、元はたぶんこの写真にあるような

"Capricciosa" vuol dire "Kimagure" in giapponese.

("Capricciosa" は日本語で "Kimagure" という意味です。)

というものから、どこかの段階で "Kimagure" が落ちたものだと思うのですが、それがなくなると"Capricciosa" は日本語でという意味です。のような意味のわからない文になってしまいます。

まあ、イタリア人がカプリチョーザにどれくらい来るかというと、無視できるような割合かもしれませんが、内装工事にかけるお金に対して、イタリア語の文言を用意するコストの比率を考えると、それもまた微々たるものなんじゃないかと思うんですけどねぇ。


最後にまた宣伝です。

カフカ「変身」を翻訳して、電子書籍として売っています。

ドイツ語の一語一語をおろそかにせず、また既訳も参考にして、納得のいく翻訳になっていると思います。

*1:ダメなものを調べることは、この記事でもやっているように非ネイティブにもできますが、最善のものを選ぶというのは難しい。