鳥取県予算案3604億円 防災や子育て支援に重点も抑制的な編成

大久保直樹
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 鳥取県は14日、2024年度当初予算案を発表した。一般会計総額は3604億8400万円で、知事選前で骨格予算となった23年度当初比7・6%増。選挙後に政策的予算を盛り込んだ23年6月補正後と比べると2・6%減で、光熱費の高騰や人件費増を踏まえて抑制的な編成となった。昨夏の台風7号被害の復旧や能登半島地震を踏まえた防災強化で、公共工事は14年ぶりの高水準となった。

 歳入では地方交付税や県の借金を国が肩代わりする臨時財政対策債など実質的な交付税が23年度当初比16億円減。増加が見込まれる地方税収や県債発行、財政調整型基金などで財源を確保した。

 歳出では新型コロナの5類移行に伴い、総合対策費用が同101億円減。一方、防災対策や人口減少対策、子どもの医療費完全無償化などの子育て支援、ポストコロナに向けた観光・産業振興などを柱に据え、主要な300事業に約637億円を計上。公共事業は同61・8%増の536億円となった。

 災害関連は170億円。昨夏の台風7号で被災した道路や河川、農地の復旧などに50億円を計上した。さらに能登半島地震を踏まえた緊急対策として、避難所のトイレ・シャワー用車両の導入、「道の駅ほうじょう」(北栄町)の広域防災拠点化、県庁内の災害オペレーション室整備、沿岸の津波監視カメラの整備などに19億円を盛り込んだ。

 また子育て支援として、4月からの子ども医療費完全無償化や不妊治療の拡大支援などに21億円を充てる。産業支援では、インバウンド観光の回復や大阪・関西万博の展示準備、境港公共マリーナ整備などに31億円、ゼロゼロ融資返済への支援や運送事業者の物価高騰対応支援などに27億円をそれぞれ盛り込んだ。

 県の借金残高は臨時財政対策債や国の手厚い措置がある防災・減災関連の起債を除くと、3092億円。07年度から続く平井県政では最少となる。財政調整型基金の残高は214億円で、県が財政誘導目標とする200億円以上を確保。政策経費を借金に頼らずにどれだけまかなえるかを示す基礎的財政収支プライマリーバランス)は、6億円の黒字となる見込み。

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 鳥取県は14日、4月からの組織改正案を発表した。現在、年間2千数百人規模の県内移住者を3千人に増やすため、「とっとり暮らし推進局」を新設する。来年3月開館予定の県立美術館の所管を県教育委員会から知事部局に移す。

 とっとり暮らし推進局は輝く鳥取創造本部に設け、局長が若者Uターン・定住戦略本部事務局長を兼務し、若者目線の政策編成を強化する。また、「中山間・地域振興課」を新設し、空き家対策や共助交通を促進する。

 美術館の知事部局への移管は文化振興と観光振興の一体化を図るのが狙い。部長級の美術館整備監を置き、総勢15人程度で開館準備や美術の普及振興に取り組む。

 県東部と中部、西部の3カ所に「犯罪被害者総合サポートセンター」を新設。計8人体制で緊急避難場所の提供や医療・生活支援、福祉相談などの支援にあたる。

 今年10月開催予定の全国健康福祉祭(ねんりんピックはばたけ鳥取2024)に向け、地域社会振興部に実施本部事務局を設置。来年4月開幕予定の大阪・関西万博を見据え、関西本部に万博推進室を設置。展示ブースの準備や万博関連の調整業務を担う。

 行政委員会や企業局を含めた全体の定数の増減はなく、3083人を維持する。

2024年度当初予算案の主な事業

●地震津波対策緊急強化事業(1億円) 避難所用のトイレカーやシャワーカー、孤立集落向けの通信資機材を整備。能登半島地震を踏まえた図上訓練、県営避難所の設営訓練などを行う

●防災情報システムの導入(1億3900万円) 被害や気象、避難情報など大量の情報を集約・整理し、電子地図などで共有できるシステムを整備。中国地方知事会の共同運用に参加し、来春の運用開始を目指す

●賃金引き上げを行う県内中小事業者の支援(3億円) 一定の賃金引き上げを要件に生産性向上を図るための設備投資や人材育成などの費用を補助する

不妊治療拡大支援事業(6800万円) 全額自費診療で行われる治療への補助を拡充するほか、新たに保険適用外治療での検査費用を補助する

●海洋練習船「若鳥丸」の代船建造(6億7千万円) 県立境港総合技術高校で活用している海洋練習船の老朽化が進んでいるため、新たな船(約400トン)を建造。海洋分野への就職や海洋関連大学への進学につなげる

●ねんりんピックはばたけ鳥取2024開催事業(18億4千万円) 県全体で参加者をおもてなしし、経済効果の県内波及や地域活性化を図る

鳥取砂丘月面化・宇宙産業創出事業(8千万円) 鳥取砂丘月面実証フィールド「ルナテラス」で大学生チームによる月面探査車の全国大会を開催し、月面探査車界の「甲子園」的な聖地にしていく。また国際宇宙産業展への出展や試験車両用車庫の整備、鳥取大学との共同研究などを進める

●とっとり産業未来フェスの開催(3千万円) コロナ禍で中断していたとっとり産業技術フェアを異分野複合イベントに発展させて開催。県内企業の優れた製品や技術を発信するほか、産業と音楽・芸術を融合させ、全国から集客可能なイベントにする

●県立まなびの森学園の運営管理(1600万円) 今春開講の県立夜間中学で、他県の夜間中学との交流や体験学習を実施。教職員の県外先進校視察などで指導力の充実化、SNS広報・夏休み体験会を通した理解促進も進める

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この記事を書いた人
大久保直樹
神戸総局|東播地区担当
専門・関心分野
地方自治・過疎問題・原発・史跡などの文化財