貧困JKの炎上から何が分かるか

本日、ネット上で大きな炎上を見せたニュースがある。

 

www3.nhk.or.jp

www.youtube.com

 

まとめサイト等では

貧困なのにものが多すぎな部屋

部屋にあった画材が希望小売価格2万円

9000円のEXILEのライブには参加

映画複数回観賞

 という要素から「貧困ではないのでは」と言われ、炎上している。

 

私も金銭的に苦労した経験があり、現在もその状況に苦難を感じているという立場からこの問題から何が分かるか考察したいと思う。

t-ritama.hatenablog.com

 私の苦労話は上記記事に書いてあるので読んでない人は読むと私がどこでつまづいたか分かると思う。

 

 

 

 

 

1、彼女は貧困と言えるのか?

 まず定義を参照する。

“等価可処分所得(世帯の可処分所得を世帯人員の平方根で割って調整した所得)の中央値の半分に満たない世帯員”

 よく分からない。分かりやすくすると一人暮らしでは収入が実質112万円以下の場合該当、二人暮らしだと174万円以下くらい。思ってたより基準が厳しい。一人暮らしフリーターは貧困層に該当しない人も多そう。この定義において彼女が貧困層の家庭にいるかどうかはおうちの収入が分からないと分からない。まあ、ここは重要ではないので以上とする。

 

 

 

 

2、なぜ彼女がPCを買わずキーボードだけで練習したのか

 ネット上の意見を見てみると

 

貧困なのにものが多すぎな部屋

部屋にあった画材が希望小売価格2万円

9000円のEXILEのライブには参加

映画複数回観賞

それなのにPCが買えず1000円のキーボードで練習だけする(貧困アピール)

 

 ということが彼女が糾弾される理由のようである。上記趣味の出費については記事の後ろの方で取り上げるため、ここでは言及しない。簡単に言うと「こんなに贅沢しているのに貧困とはどういうことか」ということであろう。実際に「1000円のキーボードだけ買ってPC買うお金がありません」というのはよく分からない。やりくりを上手にすれば普通に買えてしまうのではないかとも思う。私の使っているノートPCは3万円であるし、このブログもその3万円のPCを使って書いている。多少スペックに不安はあるが、特に不便も感じていない。しかし、実際に家電量販店に行くと3万円ではPCは買えないだろうし、「PCは高くて買えない」という先入観があり、安いキーボードだけ購入したのかもしれない。もうこの辺りは推測でしか語れなくてあまり意味がないので省略する。

 私個人の感想としては「学校の授業についていけなくなるほどであればPCは少し我慢してでも買った方が良い」と思った。特に強い意見は持っていないが、なんとか上手に工面して学業に必要なものは買いそろえてほしい。貧困層であってもそのくらいは出来るであろう。

 

 

 

3、貧困のせいで進学を諦めることについて

 一番注目すべき点はここであろう。彼女が本当に貧困であるか、そうでないか、また豪遊しているかという問題は一度考えずに、「金銭的理由により進学を断念する」という状況であるという点は非常に問題である。私個人としては学問を志す人間には是非進学してもらいたいし、専門学校であってもその専門性に特化した勉強を続けてほしいと思う。

 授業料というのは1万2万とはケタが違う。入学金や授業料を合わせると年間で100万を超えることもしばしばである。これはライブのチケット110枚相当であり、あのペンも90セットほど買える値段である。

 実際に文科省は貧困家庭に進学の推進を行う政策を企画検討しており、その政策もいくつかある。詳しくは公式HPを参照されたい。

子供の貧困対策の推進:文部科学省

 

 ここで私が記事の中で大きく注目した点があり、それは以下の文章である。

進路を選ぶ3年生の夏を迎えたうららさん。絵が好きで、アニメのキャラクターデザインの仕事に就きたいと、専門学校への進学を希望していましたが、入学金の50万円を工面することが難しく、進学は諦めました。(NHK NEWS WEB より)

この挫折理由は「授業料」ではなく、「入学金」である。私も入学金、授業料に非常に苦労しているのでこの違いに思うところがある。彼女が進学したい専門学校がどのような形態をとっているか分からないので、私が通っている国立大学法人東北大学の授業料、入学金とその免除のシステムについて考える。

 

 東北大学では「入学金の免除」を金銭的事情を理由に受けることは困難である。具体的には、家計を担う人の死亡や、東日本大震災の被災者の認定など本当に特殊な場合しか認められない。この入学金28万円はどんなに貧困な家庭でもほぼ必ず払わないといけない。

 

 対して、「授業料免除」は両親などの金銭的状況や、家庭環境などを考慮して判断される。よって貧困者はこの免除の制度を受けることが出来る可能性が高い。

 

 私はさらにこの制度の抜け穴にハマっており、授業料免除を受けることができなくアルバイトのみで生活をしているが、今回これは主題ではないので省略する。詳しくは以下の過去記事を参考にされたい。

t-ritama.hatenablog.com

 ただ、貧困者に対しての政策は本当に不十分である。表面上はそれっぽく制度を整えててもそれでは目的を達成できていないものが多い。彼女も仮に進学できたとしてもそのような落とし穴にはまっていたかもしれない。

 

 

4、「貧困なのに趣味にお金を使うな」という意見について

 私が個人的にネットの意見を見ていて恐怖を感じたのがこの意見である。「貧困だから趣味に興じるな」という意見が本当に多かった。感情的になっているのもあり、ネットの性質もあってか暴言や人格の否定までするコメントも数多くあった。

 

 貧困と趣味をこのように短絡的に結び付けて考えるのは非常に良くない。私の貧困と趣味の結び付け方は以下の通りである。

 

  1. 貧困とは、一定より家庭が貧しい状況であり、実際にあの記事の彼女は母子家庭であり、一般家庭より貧しいのは事実である。
  2. そういう環境にいると、色々不便を感じることや、実際他の家庭と比べて金銭的に厳しいので、その余裕のなさは精神にくる。
  3. 精神的な余裕がないことというのは生きていくうえで非常に問題であるので、それをなるべく解決しなくてはならない。
  4. その方法として一番よく使われるのが趣味である。 

 

 つまりまとめると、「貧困層こそが趣味に興じる必要がある」ということである。ネット上にはこのようなことが原因でメンタルに問題をきたしたことが少ない恵まれた家庭の人間が多いのか、この趣味の重要性を軽視されることが多く、このような炎上があるたびにそれが表面化する。もちろん、貧困の状態であれば趣味にあまり多くの金額を費やすことはできないが、趣味とはお金がかかるものである。多少の出費は致し方ないものであると考えるべきである。

 

 ただ、この記事について「彼女のCDやペン、ライブなどが趣味として適切なものか」ということは判断しかねる。私は彼女の家庭環境を知らないし、彼女のメンタルの状態も知らない。彼女にとってCDがどのような存在であり、ライブがどのようにメンタルに影響するのかということが分からないからである。

 

 「貧困だから趣味にお金を使いすぎるのは良くない」は真であるだろうが、「貧困だから趣味にお金を使うな」というのは間違っている。贅沢するなということに関しても同様のことが言えるだろう。