美味しんぼを検証してみるその3 納豆の愛

 前回は皆様から納豆愛溢れる沢山のコメントを頂き、御陰様で腐れ糸引き豆納豆の新たな可能性をイヤってほど実感しました。お前らそんなにネバネバ好きか。
 好きと言ったら美味しんぼですが(上手く話をつないだつもり)、美味しんぼで納豆(の臭い)を正面から取り上げた話が8巻収録の『愛の納豆』です。

8巻 第3話 愛の納豆 あらすじ

 大学時代の親友、美枝から婚約者を招待したいと呼び出された栗田さん。一人でアテられちゃたまらんと山岡を引き連れて行く事にしました。イケニエですね。
 ここで、初期美味しんぼで良くある読んでるコッチがなんだか微妙な甘酸っぱい気分になるラブコメ要素が盛り込まれますが割愛。
 ビアホールで落ち合った一行。美枝さんと婚約者の桐田は、カンパイもそこそこにエンジン全開でいちゃつきはじめます。
美枝「結婚式は秋にするわ、靖夫さんの希望で衣装は文金高島田。でもお色直しはドレスよ」
桐田「美枝は和装も洋装もよう似合うからなあ。」
栗田「ゴホン…。で、結婚したら美枝、お勤めどうするの?
桐田「当分共働きですわ、急にやめられたら職場さびしなって、僕、会社行く気しなくなるわ。」
美枝「うふーん、私だって靖夫さんと離れて家でお留守番なんて、さびしくてやあよ。」
……はい、皆さんの思いはこの二人に代弁して頂きましょう。

何気に栗田さんレア顔です。
美枝「仕事の面倒なんかよくみてくれて、ずいぶん親切な人だなとおもってたら下心あった訳よ。」
桐田「何言うとんのや、美枝こそ(略)食いもん差し入れ(略)気のきくコやなあ思うとったら、下心あったちゅう訳や。」
美枝「あら!結婚してくれって言ったのそっちでしょう!」
桐田「言わすように美枝がしむけたんやないか(略)僕はワナにはめら(略)」
美枝「ひどいわねワナだなんて!!」
桐田「ワナやないか!!」
栗田「ちょ、ちょっと待って二人とも……」
桐田「そやけどあんなワナしかけてくれて、僕はほんまありがたい思うとるで。」
美枝「だってそうでもしないと、靖夫さん勇気だしてくれないんですもの。うふん」
桐田「デヘヘヘ」
OK。お前らは敵だ。
止めどなく続く嫌がらせ益体もない朝食談義をフィクションの表現規制に思いを馳せつつ斜め読みしていると、お待たせしました今日のその時です。
美枝「あ、大事なもの忘れてた。」
桐田「おうおう大事なもの忘れたらあかんがな、何やそれ?」
美枝「納豆よ。」
美枝さん、納豆の名産地茨城の出身だったんですね。
対して
桐田「あんなくそうて、汚うて、ばばっちいもん、人間の食うもんやないやい!」
どうやら桐田君「納豆なんてあないな腐れ豆、食えるかい」系関西人の模様。初版87年とはいえ「関西の人はみんな納豆嫌いだからねえ。」(by山岡)な関西人観はちょっとステロタイプに過ぎるような。もっとも
美枝「茨城では毎日納豆を食べるのよ。納豆も自分の家で作る(略)、私自身、一日だって納豆を欠かせないわ!!」
これはこれでホントかよ、って感じですが。
 納豆を巡って口汚く罵りあう二人。めでたく実にめでたく大変めでたくケンカ別れとなります。
栗田「山岡さん、桐田さんをひきとめて!」
山岡「放っとけ放っとけ、こんなくらいのことでダメになる仲ならダメにしちまった方がいい」
士郎、おまえ食い物が絡まないと良い事言うじゃないか。
さて後日、桐田が二人の元に泣きついてきます。どうやら激怒した美枝に絶縁を迫られ、「納豆を食べられるようになれ」とドSな復縁の条件を出され困り果てている様子。ま、「豚もよう食わん納豆を食うイノブタ女」とか言われちゃったら、そら怒りますな。
桐田「なんとか納豆を食べられるようになる手段はないもんでっしゃろか?」
山岡「それほど嫌いなものを食べるってのは無理だねえ。他の女の人探したら?」
士郎、GJ!
まあ、士郎も何だかんだ言って至高のツンデレの血を引く男。泣き崩れる桐田にほだされて一肌脱ぐ事に。向かった先は用意の良い事では定評がある岡星。
最初に出された納豆を食べられなかった桐田は、しかし、次いで出された納豆は食べられました。
桐田「はてな?あまりくさいことないで。はあ…カラシの匂いがするで……」
実は後の方の納豆は、藁苞(わらづと)納豆にカラシを混ぜ倒したモノでした。ここで士郎のウンチクが挟まりますが、どうせ半端に間違ってるので割愛。
納豆の作り方をお見せしましょう、とおもむろに藁を煮始める岡星主人。どうやら先の藁苞納豆は岡星謹製だったようです。お前んトコはそんなに頻繁に納豆料理が出るのか岡星?
 納豆の作り方はもやしもん3巻でも読んで頂くとして。藁苞納豆&カラシの御陰で納豆を食べられるようになった桐田君。手製の納豆をお土産に、二人に復縁報告にやってきました。………チッ。
桐田「生涯、美枝には旨い納豆食べさせたるで。」
美枝「嬉しいわん靖夫さん!」
良かったですね。爆発すればいいのに。

検証:藁苞納豆と科学の勝利。

今回の検証ポイントは二つ。カラシと藁苞、です。つっても、納豆にカラシなんざ誰でもやってる超普遍的な取り合わせですし、その気になれば明日の朝食ででも検証できます*1。
と、言う訳で今回は藁苞納豆に論点を絞って、「藁苞納豆は本当に匂いが無いのか」を検証してみようと思います。
ところで。匂わない納豆と言ったら、アレは外せませんよね? 美味しんぼ当時には存在すらしていなかったアレです。
用意したのは、この3種類。

右からにおわなっとう、義家納豆、ただの納豆です。義家納豆は一つ298円とかほざいていましたが、半額だったので買ってきました。賞味期限内ですが参考まで。
先ずは、藁苞納豆を器に取り出します。

結構大粒ですね。藁苞の形に固まって、かき混ぜるのが大変そうです。この時点で藁の良い匂いがします。
次いでにおわなっとう。

白っ。
菌糸が全面を覆っているのでしょうか。これが常態かどうか普段食べないのでわかりません。
で、名もないスーパーの特売品納豆。

雑草と言う名の草はないんですよ?
取り敢えず、かんまわして見ましょう。

藁苞、かき混ぜにくいです。豆が大きい上に糸引きが今一つ。残りは良い感じに糸を引いてます。
におわなっとうは、ゼリー状のタレが添付されてるマジックカット・レスな特殊パッケージです。流石大手、これで中小メーカー殺し指にピチャッてかからずに済みますタレ使わないけど。
では、検証開始。それぞれ香りの違いを聞いてみます。最初は藁苞納豆。

クンカクンカ。
何か……麦茶の様な香ばしい匂いが。納豆自体の匂いはかなり控えめです。その上で藁の良い香りが付いて、抵抗なく嗅いでいられます。クンカクンカ。
次いで、におわなっとう。

クンカクンカ。
……?
スンスン。フンフン。
…………?
あの……これ何の匂いもしないんですけど?
納豆臭はおろか、豆の匂いも全く完全にしません。
口に含んでテイスティングの要領で反芻させる位しないと、これは匂わないですよ。凄まじい科学の勝利っぷり!
最後は、冷蔵庫に入ってたいつもの3パック58円納豆。――普通に、靴下納豆臭いです。
と言う訳で、結論。ミツカン、すげぇ。

おまけ:レシピ 納豆尽くし

 と、言う訳で都合3パックの納豆が残ってしまったので、スタッフが美味しく頂こうと思います。が。某所*2で某氏*3より、「大騒ぎしたわりには、イカ納豆&マグロ納豆かい!」と、鋭い指摘心ない罵倒を受けてしまって大変にクヤチかったので、ワタクシちょっと本気を出してみました。

イカ納豆にイクラをのせてみました。今全国から、お前の発想はその程度かい!と突っ込みが入った気がしましたが、納豆をかき混ぜる要領で体を回転させっ、突っ込みを受け流すっ!スルー。
で、レシピですが…あ、要らない? あそう。因みにゲソを入れてみたらコッチのが美味しかったです。イクラがプチプチして、納豆との食感の違いが面白いです。ワサビでね。
では仕切り直して。

ホルモン納豆、です。作り方はカンタン。市販のもつ焼きを焼いて納豆と和えただけ。
 これ、スゲェ旨いです。モツのタレにニンニクが効いていて、コッテリと纏わり付く納豆が何とも言えない。納豆とニンニクの相性の良さに、初めて気が付きました。

アボガドとトマトのサラダに、マヨネーズ和えの納豆をのっけてかき混ぜてみました。レモンとワサビを利かせて。
ぶっちゃけ、この取り合わせを思い付いた自分を殴ってやりたいです。

これは我が家の定番料理。あぶらげに葱とかき混ぜた納豆をインして焼きます。辛子醤油でどうぞ。


今日の教訓:納豆レシピは、素材の数だけ増える。

おまけ2 ナッチ−トースト&納豆スパ。

  前回エントリーのコメント欄にて教わったこのお料理。突然降ってきたインスピレーションに従ってアレンジしてみました。
 用意するのは、これ。

 みじん切りにしたアンチョビと納豆をよく混ぜて、ケチャップ塗ったトーストに塗りたくります。

 見た目はコンビーフそっくり。
 とろけるチーズを乗せて、オーブントースターで焼いたら出来上がり。

 マヨラーな妹の助言でマヨを塗ってみました。
 これは、中々にビールのおつまみに最高です。アンチョビがしょっぱいので、納豆には何も入れない方が良いですよ。玉ねぎやピーマンをトッピングしても美味しそうです。特に玉ねぎはいいかも。
 で、存在を無視していた納豆スパ。

……ゴメン、超手抜き。例によってスーパーで半額なスパに納豆乗せただけです。
 和風きのこスパとの相性自体はバッチリ。この手のスパは汁気が多いので、キチキチになる心配はありません。
 機会があったら、なっつぉろとひっぱりうどんにも挑戦したい所ですね。

美味しんぼ (8) (ビッグコミックス)

美味しんぼ (8) (ビッグコミックス)

 

*1:個人的には、カラシを入れないとちょっと納豆が渋くなる気がします。

*2:某自称不良猫さんの大変為になるアンコ喰う麺

*3:某碧ねこさんに校舎裏へ呼び出されたっきり消息不明な、東海林だかちょんまげだか言う人。