じゃあ、おうちで学べる

本能を呼び覚ますこのコードに、君は抗えるか

『読書とは、能力、知識ではなく 問いを獲得するための行為』みたいな内容で登壇しました。

問題を解決する能力は確かに重要ですが、それ以上に、何が本当に重要な問題なのかを見極め、それを明確に設定する能力が不可欠です。問いを適切に定義できなければ、どんなに高度な解決技術を持っていても、その力は十分に発揮されません。また、誰にとって適切な問いなのかも考える必要があります。問題解決の過程において、問題そのものの本質を正確に把握し、適切な問いを立てることは重要です。

概要

SREたちの廊下〜あなたの現場での悩み、あの本にヒントがあるかも〜にて「書を捨てよ、現場へ出よう - このSRE本がすごい!2024年 LT版」 というテーマで登壇しました。のイベントは2024年1月末に注目を集めた『このSRE本がすごい!2024年版』をテーマにしたもので、多くの参加者とパネルディスカッションのスピーカーであるTopotal のnari_exさん、kenta_hiさんと共に、その内容を深掘りして議論することができ、イベントも無事成功し、大変充実した時間を過ごすことができました。ありがとうございます。Findy さん!

findy.connpass.com

イベントを引き起こしたきっかけとなったツイートは以下のものです。この経験から、積極的に意見を発信することの大切さを実感しました。時には思いがけない展開をもたらすこともあるなぁって思いました(小並)。モチベーションになるのでブログの読者登録おねがいします。

資料

この資料は思いの外、感情的な要素が強くエンジニアなのに技術の話を全くしないポエムっぽさが反映されてしまいました。当初は技術的な内容と本の紹介を避ける方針でしたが、認知科学のような専門分野に深く踏み込む知識は持ち合わせていないため、このような方向性になってしまいました。それにもかかわらず、受け取り手からはそこそこに好評を得られたことが非常に嬉しく思います。

speakerdeck.com

Xでのポストはこちらです。

内省の話

運用技術者組織の設計と運用 / Design and operation of operational engineer organizationを読んで勝手に憧れていたnari_exさんとのイベントでそのnari_exさんから内省の大切さの話が出てきていた。明日の朝から読んでみようと思う。

読書とは、能力、知識ではなく 問いを獲得するための行為

資料を作る前のアウトラインと文章をブログでも公開しておきます。このような内容が気になった方は参考文献を読んでいただければと思います。

能力のイメージ

能力の抽象性と具体化の必要性

日常生活において、私たちは「コミュニケーション能力」、「問題解決能力」、「技術力」などの様々な「能力」について語ります。これらは教育や仕事、プライベートにわたって使われますが、深く考えると、これらの「能力」が具体的に指すものは何か、どう解釈すべきか疑問が生じます。能力に関する理解を深めるには、背後にある原因や要素、その行動や成果への影響を分析することが不可欠です。能力という概念は抽象的であるがゆえに、その実態を把握するには具体的な文脈における観察と分析が欠かせません。

能力解釈におけるメタファーの限界と可能性

能力の解釈は、しばしばメタファーを通じて行われます。「力」という言葉自体が、物理的な力や潜在的な特性を想起させます。しかし、これらのメタファーは、能力が一貫して同じ効果をもたらすという誤解を生むことがあります。例えば、「コミュニケーション能力」を「言葉の力」と表現することで、言葉さえ巧みに使えば常に良好なコミュニケーションが取れるという誤った印象を与えかねません。能力についての理解を深めるには、メタファーが示すイメージを超えて、実際の文脈での能力の現れ方を丁寧に探ることが重要です。メタファーは理解の出発点としては有用ですが、それに留まらず、具体的な事例や経験から能力の本質を捉えていく必要があります。

能力は文脈依存で時と場合次第

能力の文脈依存性

人間の能力は、状況に応じて異なる形で表れます。ある特定の文脈において顕著な能力が発揮される一方で、他の状況ではまったく異なる影響を持つかもしれません。例えば、プレゼンテーションの場で優れたコミュニケーション能力を発揮する人物が、親密な人間関係の中では十分にその能力を活かせないということもあり得ます。この文脈依存性は、能力が単純な属性ではなく、状況や環境、それに伴う要求に対する応答の結果として理解すべきであることを示唆しています。つまり、能力とは、特定の文脈において、その状況に適した行動を取ることができる力なのです。

文脈に応じた問いの形成

問いは、私たちが直面する特定の文脈における能力の発揮や理解を深めるのに重要な役割を果たします。そのため、問いは文脈に応じて形成される必要があります。適切な問いを立てることで、その状況における最適な行動や能力の発展につながります。例えば、プレゼンテーションの場面では、「どのようにすれば聴衆の関心を引き付けられるか」、「効果的な情報伝達のために何が必要か」といった問いが重要になります。一方、親密な人間関係の中では、「相手の感情を適切に理解するにはどうすればよいか」、「信頼関係を築くために何ができるか」といった問いが求められます。能力を最大限に活かすためには、その能力をどのように、いつ、どのような状況で使うべきかを考える問いが不可欠なのです。

知識の非伝達性と構成主義

知識の非伝達性

多くの人々は、知識や技能が他者から伝達できるものだと考えがちです。しかし、実際には、知識は伝達されるのではなく、各個人が自身の経験や環境から創発するものなのです。教育や読書を通じて提供されるのは情報のみであり、それを個人が内面化し、自らの知識として再構築するプロセスが必要不可欠です。つまり、知識は受け取るものではなく、自ら作り上げていくものなのです。この視点は、知識獲得を受動的な受け入れではなく、能動的な創造過程として捉えるべきであることを示唆しています。

知識の構成主義

知識は個人の認知的リソースと環境から提供される情報を結合させて創発されます。このプロセスでは、経験や環境からの情報を基に、個人が能動的に知識を構築します。構成主義の視点から、知識は静的なものではなく、個々の経験や文脈に応じて動的に形成されると捉えられます。これは、知識を単に受け入れるだけでなく、自分自身の行動や内省を通じて深める過程です。知識の構成主義は、学習者の能動性と主体性を重視し、知識の個人的な意味づけを重要視する立場だと言えます。

知識の応用と実践

道を知っていることと実際に歩くことは違う

理論から実践への移行は知識の本質的な価値を明らかにします。教室や書籍で得た知識が、実際の体験や応用を経て深化し、真に生きた知識へと変わります。このプロセスは、抽象的な概念を具体的な行動や体験に結び付け、それによって得られる新しい理解や洞察がさらなる学びのモチベーションを高めます。

知識から行動への変換

知識を実際の行動に転換することは、それを社会や日常生活に応用し、問題解決や創造的な活動に活かすプロセスです。この実践を通じて、知識は単なる情報の蓄積を超え、個人の体験と統合され、生きたものへと変化します。実践から得られる新たな体験は、知識の内面化を促し、持続可能な知的成長の重要な要因となります。知識と行動の相互作用は、知的な営みの本質であり、知識の実践的な価値を示すものだと言えるでしょう。プログラミング言語の文法や設計パターンを学んだだけでは、実際のソフトウェア開発で成功することは難しいでしょう。理論を実践に活かし、試行錯誤を重ねることで、本当に生きたプログラミングスキルが身につくのです。知っているだけでは不十分で、実際にコードを書き、動かしてみて、時間が経って発生する問題を観測することが重要なのです。

読書は、見えなかったものを見えるようにすること

問いの形成と知識の活用

適切な問いを立てることは、文脈に依存する能力の理解と、個々に構成される知識の活用を促進します。問いは、特定の状況で何が必要であり、どのように行動すべきかを明らかにし、その過程で深い知識の構築と適用が可能になります。読書は、私たちの内面に新たな問いを生み出し、その問いを深めるための知識を提供してくれます。読書と問いの形成は、知識の活用と探究を促す相補的な営みなのです。

問いに基づく学習の進展

問いは、学習過程において重要な役割を果たします。それにより、私たちは受動的な知識の受け手から、能動的な学習者へと変化し、知識をより深く、文脈に応じて理解し、活用する能力を高めます。これは、個人の成長と発展にとって不可欠なプロセスです。読書は、問いを生み出し、その問いに答えるための知識を与えてくれる営みです。読書と問いに基づく学習は、知的な探究心を育み、生涯にわたる学びの基盤となるのです。

問いを深める読書と知的好奇心の拡大

読書は、単なる知識の蓄積以上に、私たちの内面的な問いを掘り下げ、それらを広げる活動です。異なる分野や視点からの本を読むことで、従来の枠組みを超えた新しい問いが生まれ、これが知的好奇心を刺激し、さらなる探究へと促します。こうしたプロセスは、私たちの知的な地平を拡げ、より複雑な問題に対する洞察力を高めます。

読書の継続と習慣化

読書を継続的に行うことは、知識の深化と問いの発展に不可欠です。習慣としての読書は、長期的に見て自己成長を促し、知識をより深く理解し活用する能力を養います。習慣化による読書は、日々の小さな努力を積み重ねることで、大きな学びへと繋がる基礎を築きます。読書習慣は、知的な探究心を持続させ、生涯学習の基盤を形成する上で欠かせない要素だと言えるでしょう。

さいごに

能力と知識と実践の相互関係

能力と知識は、読書を通じて理解し、実践に活かすことができます。読書は、能力の文脈依存性と知識の非伝達性に光を当て、私たちを新たな理解へと導きます。実践を通じて得られる経験は、学んだことを確かなものにし、問いを通じてさらに深い洞察を得ることができます。能力と知識、そして実践は、相互に影響を与え合い、螺旋状に発展していくのです。これらの要素の有機的な結びつきが、私たちの知的成長を支える基盤となります。

知識を深めるための継続の意義

継続は、知識を蓄積し、それを活用するうえでの基礎を築きます。読書の習慣は、日々の積み重ねによって、知識を内面化し、問いを深め、思考を拡張する重要なプロセスです。知識を深め、問いを追求し続けることで、私たちは自己の成長と進化を遂げることができます。継続的な読書と学びは、私たちを知的な探究者へと導く、生涯にわたる営みなのです。それは、私たちの内なる知的世界を豊かにし、より深い理解と洞察へと導いてくれるでしょう。

参考資料