The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

”死の天使”映画の傑作! ザ・コンサルタント

 例えば僕の好きな映画にトム・クルーズの「アウトロー」があって、また感想書けなかったけど、キアヌ・リーヴスの「ジョン・ウィック」、デンゼル・ワシントンの「イコライザー」なども大好きなアクション映画だ。これらはチョットとした共通点があって、それは

  1. 一見普通の人が、
  2. 実は超凄腕で、
  3. 過去はあんまり明らかにならないが
  4. 独自の価値観で悪党をぶちのめす!

という作品群。更に重要なのはその「一見普通の人」を名だたる大スターが演じているということ。無名の新人や名優だけど渋い系ではなく、もうスーパースター級の売れっ子が主演なのに、劇中ではそういうオーラを極力出さない作品。最近の作品で上記3作に準じるのだとウォン・ビンの「アジョシ」やライアン・ゴズリングの「ドライヴ」なども当てはまるかもしれない。
 そういった作品を僕は勝手に「死の天使」が出てくる作品と呼んでいるのだが、今回もそんな「死の天使」が活躍する作品。ベン・アフレック主演のアクション映画「ザ・コンサルタント」を観賞。TVでCMやってた時点では全く興味はなくて、映画の日にとりあえず何か観ようと思って消化試合のように観た作品ですが、現時点で今年1位です。

物語

 財務省の犯罪対策本部が追っているのはマフィアのマネーロンダリングを手がける会計コンサルタント。彼は後ろ姿だけは残しても決して正体を見せなかった。
 田舎町で公認会計事務所を構えるクリスチャン・ウルフ。彼は今日も愛想笑い一つせずに農場を営む老夫婦の税金対策を見事にやってのけた。その農場で遠距離から見事な射撃の腕を披露するウルフ。実は彼こそが財務省が追う「裏社会の会計コンサルタント」だったのだ。
 ウルフはハイテク義手や義足を扱う「リビング・ロボ社」からの依頼で使途不明金の調査を依頼される。ウルフはたった一晩で15年分の帳簿をチェックし、見事に洗い出す。しかしウルフは社長から解雇されてしまう。最初に使途不明金の存在を指摘したデイナが狙われ、ウルフも農場で狙われるが追手を返り討ちにする。
 ウルフは高機能自閉症スペクトラムであり、将来を心配する父親からありとあらゆる戦闘術を叩きこまれていたのだった。デイナを守るためロボ社の創立者ブラックバーンの屋敷に乗り込むウルフ。しかしそこにはブラックバーンが雇った凄腕ブラクストンが待ち構えていた…

 先ほど上げた「死の天使」作品のうち、最も神話性が高いのはキアヌの「ジョン・ウィック」だと思うのだけど、あの作品はもう半ば俳優としての存在がファンタジー化しているキアヌ・リーヴスに拠るところも大きいと思う。過去は断片的に語られるのみ。愛すべき女性は物語開始時点ではすでに亡く、形見の愛犬を殺されたという(悪役側から見れば)些細な理由で全滅させられる。敵対する組織の首領などは最初に相手がジョン・ウィックだと知った時点で怯え始め、途中では捕まえて殺す寸前まで言っても焦り続ける。最後もうダメだと分かった時点で開き直るが、どんなにジョン・ウィックが傷めつけられても最初のアドバンテージが動かない。またホテルのオーナーや死体を片付ける男(デヴィッド・パトリック・ケリー!)など存在自体がリアルと言うよりは半ば幽界に属しているようなキャラクターも多くリアルなアクション映画とファンタジーの境目のような作品だったと思う。
 この「ザ・コンサルタント」はそこまでファンタジーというわけではない。主人公ウルフの過去も丁寧に回想される。ウルフと同じような子供たちを集めた施設から始まって、母親が出て行くシーン。その後アジアの何処かの国でウルフとその弟に格闘技を習わせる父親。そしていじめっこに復讐させるシーン。こういうシーンが続くがただ回想というだけでなく、上手く伏線になっている。
 原題「THE ACCOUNTANT」はズバリ「会計士」なのだが、そのままでは訳してもカタカナ邦題もわかりづらいためか邦題は「ザ・コンサルタント」に「会計コンサルタント」から来ているのだろう。コンサルタントには会計以外のものもあるが、まあこれは悪くない邦題かな、と思う。
 主人公ウルフを演じるのはベン・アフレック。ご存知新バットマンに旧デアデビル。表情が豊かと言うよりは何考えてるかわからない茫洋とした演技をする印象だが、この人も紛うことなきスターであることは変わりない。もしもこれがベン・アフレックでなく他のたとえもっと演技がうまくても知名度の低い俳優が演じていたら映画自体の印象が大分変わるだろう。あのベン・アフレックが演じているからちょっとしたシーンも深み(というかおかしみ)が出ると言ってもいい。毎日同じルーティーンで同じ作業をするおかしさ、財務経理を検証する作業の前に同じマジックを何本も並べるシーンのおかしさ。秩序を乱されることに過剰に反応するも、いざ集中すると平気でホワイトボードからはみ出してガラス壁にどんどん書き出していくシーンの面白さ。ちょっとしたシーンが全て映画としての楽しさにつながっていく。もちろん脚本や演出も素晴らしいけれど、これらのシーンとか何よりベン・アフレックが演じているから面白さが倍加していると思う。

 ウルフのライバルにあたるブラクストンを演じるのはジョン・バーンサル。「ウォーキング・デッド」のショーンであり、(僕はまだ見ていないが)ドラマの方の「デアデビル」のパニッシャーである。ちなみにベン・アフレックは映画のデアデビルでもあるので歴代デアデビルと共演。このブラクストンが面白くて結果として言えば彼はウルフの弟である。回想シーンでは自閉症を患うウルフの唯一の友達と紹介され、ウルフ同様父親から戦闘訓練を受けていたものの、劇中には本編では全然登場しない。だから映画を観ながら色々予想を立てたりした。実はウルフはこの弟で、兄が死んでしまってその自責の念から兄に成り代わっているのではないか?とか。でも実際はライバルであったブラクストンこそ弟であった。ではこの兄弟はなにか仲違いをしたのか?と思ったらそういうこともないではないのだが、結局は「なんだよ、兄貴じゃん!」であっさり仲直り。これまで巻き添え食って死んだブラクストンの部下や、ブラクストンの雇い主であるブラックバーンならずとも「は?」となる展開だがそれがいい!この自分たちの中での確固たるルールが存在し、世間一般のルール(普通に法律だとか、雇い主のことを守るとか)は完全にその下に位置する価値観も愉快。現実にこんな兄弟が存在したら恐怖以外の何物でもないとは思うが、フィクションの中ではとても良い。

 ヒロインはアナ・ケンドリックで最初に登場した時は子供か!と思うぐらい小さく感じたのだが、一応恋愛っぽくならないでもないが、どちらかと言えば恋愛対象というよりも庇護すべき対象だったから守ったという意味合いが強い。このへんも「死の天使」作品に共通。
 他にJ・K・シモンズが財務省犯罪捜査部の局長を、シンシア・アダイ=ロビンソンがその部下としてウルフを探る役を演じている。どちらかと言うとこの二人を通してウルフの正体が観客に知らされている形なのだが、シモンズからロビンソンへ世代交代する過程も上手いと思う。
 後はジェフリー・タンバーがウルフの「裏の会計」としての師匠を演じている。この人は「ヘル・ボーイ」シリーズ2作でFBIのマニング局長を演じていて、印象としては「腹に一物抱えているけど、なんか憎めない人」。今回もそのイメージに違わずいわばウルフに「悪を指南」したわけだが、やはり憎めない。で、このジェフリー・タンバーが出てきた時、とっさに名前が思い出せなくて代わりに浮かんできたのがジョン・リスゴーだったのだが、直後にそのジョン・リスゴーも出てきてびっくりした。今回は一見良い人そうで実は……ッて感じなのだが、最終的には兄弟に振り回されたかわいそうな(でも別に同情はしない)人ってい印象に落ち着いたなあ。
 トム・クルーズの「アウトロー」は主人公に対すす設定説明が不足していたり、推理としての真実の解明より物語の進行を優先していて、「あれ?」と思うことが多く、それによって生まれる不親切な部分がある種の魅力であったりする(僕はその部分が好きだったが、やはりだから苦手だという人もいるだろう)。それに比べるとこの「ザ・コンサルタント」は結構かっちりパズルのピースが一処に当てはまっていく作品で最期のピースをはめて全体像を見た時に「ああ、これだったのか」と分かる理想的な造りをしているとも思う。

 アクション映画として見た場合、特に派手さは最後までないのだけれど、逆にその淡々としたアクションもウルフのキャラクターを上手く表現しているようで映画にあっている。
 そして最後まで見た時に分かるオチも見事。とにかく現時点で今年1位。オススメ!

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「死の天使」映画群。次は「ジョン・ウィック2」だ!