スーパーヒーローの肥溜め(褒めてる) デッドプール
YO It's me It's me It's D・D・P
オレだよ、オレDDPだ!
というわけで、我らがクソ無責任ヒーローDDPことダイアモンド・ダラス・ペイジ……じゃなかったデッドプールの登場だ!最初の映画登場から7年。そのキャラクター同様死んでも生きかえるゾンビのような、否、不死身のヒーロー映画がついに登場(と言いつつすでに公開はほぼ終わっているいつものパターンなのはご了承ください)。アメコミヒーローを肥溜めにぶち込んで熟成させたような(褒め言葉)アンチ・ヒーロー大活躍「デッドプール」を鑑賞。
物語
かつてウェイド・ウィルソンは特殊部隊にいた。そして改造され口を縫われ真っ二つにされた…が生きていた。でもとりあえずそのことは忘れてくれ。それとは特に関係なしに、ウィド・ウィルソンは赤いコスチュームに赤いマスクを被りデッドプールを名乗って過激な復讐稼業に精を出していた。特殊部隊で活躍したウィド・ウィルソンは2年前、最愛の女性ヴァネッサと出会い激しく愛しあった。婚約もした幸せ絶頂のウェイドに襲いかかったのが全身ガンに侵されているという宣告。落ち込むウィエドに目をつけたのがソフビ人形のような顔をした胡散臭い男で彼によるとある人体実験に参加すれば末期ガンも完治するという。ヴァネッサに黙ってその実験に参加することを決めたウェイド。しかしそこは粗悪な実験施設で実は人為的なミュータントを作り出すためのものだった。まるで拷問のような実験を経て不死身の肉体を手に入れるウェイド。しかし彼の顔は醜いハンバーガーヘッドとなってしまった。施設の責任者であるクソ野郎エイジャックスは彼をいたぶり続け、ウィエドはついに反旗を翻す。脱出したウェイドはマスクを被り自らをデッドプールと名乗りエイジャックスへの復讐ときちんとした顔を取り返すためちまちまとエイジャックス周りの人間を血祭りにあげるのだった。時々ヴァネッサのストーカーもしながら…
一応、20世紀FOXの「X-MENユニバース」に所属する一本。本作にもコロッサスと新人のX-MENが登場します。ただ劇中でデッドプール本人も言っている通り(プロフェッサーXはパトリック・スチュアート?ジェームズ・マカヴォイ?)、どの時間軸で?と言うのは明言されておらず、その辺はあんまり気にしない方が楽しめます(元々矛盾上等のシリーズだ)。コロッサスのキャラもこれまでの映画とは結構違うしな。
またデッドプール自体もこれが映画初登場ではなく、スピンオフの「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」のラスボスとして登場済み。あの作品は時系列的には2000年の第1作「X-メン」の直前につながる前日譚。ただ「X-MEN フューチャー&パスト」で70年代を基点に時系列が分岐したため、今回の新作はあえて言うならその分岐した時間軸の先にある現代が舞台といったところか。待機作の「X-MEN:アポカリプス」から本作につながるのかは不明。劇中で「X-MEN ZERO」で出てきたハゲ、口縫い、手からアダマンチウムの爪のデッドプールのフィギュアをウィエド・ウィルソンが持っていたりする(つまり自分のフィギュアを自分で持っている)ので単にパラレルワールドと思ってもらってもいいかも。
まあそんなことはあんまり関係なく、とりあえず何の説明もなくコロッサスなどミュータントが出てくる世界だと思っていればよいのです。
主演のライアン・レイノルズはこの映画がもう5本目ぐらいのアメコミ映画で主人公としては3本目、にしてようやく当たり役になった、というところだろうか。ご存知のように「ZERO」でもデッドプールを演じ、その後「グリーンランタン」でタイトルロールを。「ZERO」のデッドプールは全然喋らず、せっかくライアン・レイノルズを起用した意味が無い!と思ったりしたのだが、本作はやっとそのライアン・レイノルズの持ち味も活かした作品に。ライアン・レイノルズ本人が製作に関わり作り上げた。映画でも冒頭にあるハイウェイの上から車に飛び移って中の人間を軽口叩きながら殺すアクションシーンはCGで作られたのが、先に動画サイトなどで公開され、それが評判が良かったので正式に製作された模様。このシーンもきちんと実写として作りなおされている。
さて、そもそもデッドプールとはなんぞや?日本でもこの映画やアニメ「ディスク・ウォーズ・アベンジャーズ」などでおなじみとなったが、デビューは割合最近で変態仮面より約一年早い1991年(それでももう25年以上)。デザイン(DCのデスストロークのアレンジ)から性格(喋りながら戦う傭兵)まで一発屋前提の予定だったためかかなり適当な存在だったがその適当さが逆に受けて今や大人気のアンチ・ヒーローである。ウルヴァリン同様カナダの超人兵士製造計画で不死身の肉体を与えられるもそのガン細胞も元気に増殖して彼の顔を醜くしている。不死身度も刺されたり折られたりしても直ぐ治るし、腕ぐらいならちぎれてもまた生えてくる。
彼の一番の特徴は第4の壁を超えること。いわゆる劇中の登場人物に対してだけでなく観客にも語り語りかけてくることだ。ただ、これ自体はそんなに珍しいことではなく、映画の冒頭で主人公(またはそれに準じる人物)がナレーションとして観客に語りかけるとかはよくあること(映画「スパイダーマン」がそうだ)。彼の場合はそれをはるかに超えて、きちんと自分がコミックスの登場人物であることを認識し、なんなら漫画の制作者(マーベルの編集者など)に直談判してみせたりする。日本の漫画でもギャグ漫画なら珍しくはないが、これが他のシリアスなマーベルユニバースも含んだ上で行われる。デッドプールが読者に何か言っているのを他のキャラクターが気付いて、でもデッドプールがひとりごと言ってる、と思ったりする。
この映画でも先の映画「X-MEN」シリーズの時系列についてだとか、X-MENがコロッサスと新人のネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッド(クソかっけえ名前。以後ネガソニ子)しか出てこないのは予算のせいか、とか言ってみたりする。ただ、その方面ではちょっとまだ真面目すぎるというか、映画の常識の範囲内。続編ではもっとはっちゃけてくれるとうれしいな。
常識の範囲内といえば、構成をいじくってなんとか飽きさせないように工夫してはあるものの、やはりいわゆるオリジン部分がちょっとたるい。モリーナ・バッカリン演じるヴァネッサはスーパーヒロインでないアメコミ映画のキャラクターとしては多分これまででも最も魅力的なキャラの一人だし、素顔のライアン・レイノルズも格好いいのだが、どうにもたるいな、という印象になってしまう。逆にそこを乗り越えてマスクをかぶった、あるいは醜くなったデッドプールになると一気にテンポが良くなるのでちょっとの我慢だ。
他の登場キャラクターはX-MENからコロッサス。この映画では唯一のCGキャラクターでモーション・キャプチャーとかでもないみたい。よって変身前の姿は登場せず、常に(シリアル食べるときでも)あの鋼の体。今までの映画シリーズではまだ生徒としての扱いが多かったのでそんなに頼れる兄キ感は感じなかったが、本作では徹頭徹尾マッチョで、でも生真面目で頑固な兄貴ぶりを発揮しています。CGだけど。
本作はメインヒロインのヴァネッサはじめ魅力的なヒロインが勢揃い。ネガソニ子はブリアナ・ヒルデブランドという丸坊主にゴスメイクの人が演じていて、そのパンキッシュな悪ガキ態度が素敵。キャラクターはこの映画で初めて聞いたのだけど最近のデビューなのかしら?敵にもエンジェル・ダスト*1というパワー自慢の女ミュータントが登場。演じるジーナ・カラーノは「エージェント・マロリー」の主人公ですね。他にもデッドプールの同居人である盲目の黒人老婆ブラインド・アルとかも印象強烈。全体的に女性が強い映画、というか敵ボス、フランシス(エイジャックス)は確かにパワーこそ強力だけど目立たないし、デッドプールの仲間であるウィーゼル(イタチ)ものらりくらりするとした性格、そしてデッドプール自体が(デッドプールになってからは)案外女々しい性格なので、この映画総じて男性キャラが女々しく、女性キャラが雄々しい映画だったりします。繰り返すが男らしさの塊のようなコロッサス兄貴はCG。
R指定になっただけあって、この手の映画ではまったく容赦しない人体破壊描写もあるし、セリフもかなりお下劣。だけど不快な感じはまったくしないです。続編では是非この方向性のまま、更に(先程述べた第4の壁を超える描写などで)ハチャメチャなものにして欲しい。
アメコミ映画お約束のエンドロール後のお楽しみではデッドプール自ら続編について語ってくれるよ!次はケーブル(サイクロップスとジーン・グレイのクローンの間に出来た子供で未来で育ったため親よりもおっさんな人)が出るらしいがあんまり過剰な期待すんなよ!
That's not bad thing,That's a good thing!
悪いことじゃない、それはいいことさ!
セルフ・ハイ・ハイブ!
特に関係ないんだけど、デッドプールとDDP(ダイアモンド・ダラス・ペイジ)ってなんとなく似てるなあ、と思ったのでつい……
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