誰の中にも棲む巨人 劇場版『進撃の巨人』 後編 〜自由の翼〜
暑い!のでもう短めに。ここからしばらく、変則的なアニメ映画の感想が続きます。まずは邦画。実写版も公開される「進撃の巨人」後編。前編もかなり後になってからの観賞でしたが、今回ももう公開終わりそうという時期での感想です*1。「劇場版『進撃の巨人』 後編 〜自由の翼〜」観賞。
物語
巨人となったエレンの力を得て、トロスト区の奪還に成功した駐屯兵団。しかしエレンが目覚めると彼は調査兵団に捕らわれていた。巨人の力を恐れエレンを殺してしまう案も出たが、結局調査兵団預かりということで片がつく。
訓練兵を加え新たに編成された調査兵団が壁外調査に向かう。陣形を伴って進む調査兵団に巨人が襲い来る。それはこれまで見たこともない女型の巨人。その行動から女型の巨人もエレンのように誰かが巨人化した姿だと思われた。エレンを執拗に狙う女型の巨人。その正体は一体誰なのか?
前編はTVシリーズ1話から13話までの総集編、今回は残り13話からラストまでの総集編となり、前編同様かなり丁寧な総集編。前編同様すでにTVシリーズを見ている人にはちょっと物足りないかも。
前編の感想はこちら。
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この後編は新しく登場する「女型の巨人」は一体誰だ?と言うところが物語のメインであって、ちょっとした謎解きの部分もあるのだけれど、おそらく原作では直前まで読者はアニが女型の巨人であると分からなかったのに対して、アニメの方は視聴者のほとんどはアニが女型の巨人であると知っている、という前提のもと作られているような気がする。原作の方も結論を見てから読み直すときちんと何気ない描写が後に生きていたり、伏線が張ってある(このへんの伏線の貼り方はこの作者は抜群にうまい)のだけれど多分ほとんどの読者は直前まで「アニが女型の巨人である」とは思わなかったのではないだろうか。
それに比べるとアニメの方は最初からかなりアニが怪しい、というのを張り巡らせている構成になっている。この辺はアニメとマンガという媒体の違いかな。アニメ(というか映像作品だと)どうしてもこれ見よがしに映す形になることが多いので。とまれ、この劇場版だけ観てもアニが女型の巨人である、という結論には多くの人が早めに気づくと思う。
相変わらずアニメとしての動きはよく、前半ちょっとキャラクターのアップの時などに顔の輪郭線が不必要に太く違和感もあるところがあったけれど、作画も良好。特に前編はミカサやアニなど一部を覗いて訓練兵と駐屯兵団というそれほどプロフェッショナルな兵士ではない人たちの活躍が描かれたけれど、今回はみんな大好きリヴァイ兵長はじめ、巨人殺しのプロフェッショナル調査兵団の活躍が描かれていて、これまではどちらかと言えば巨人から逃げる描写が主だったけれど、今回は積極的に巨人を狩りに行く描写も多く、立体機動によるグルングルン動く躍動感も健在です。
僕はこのTV版の「進撃の巨人」にはほぼ満足していて、それはその丁寧な総集編であるこの劇場版も同様なのだけれど、ほぼ唯一不満なところがある。それは前作の感想でも書いたけれど、原作よりも女性陣、とくにミカサが女性らしく、というか色っぽく描写されているところで、口紅を塗ったかのような唇、全体的に原作より丸みを帯びた体つき、そういうところ。原作の絵柄は作者が気力に画力が追いついていない部分もあるので一概には言えないけれど、ミカサについてはもっとアスリートちっくな描写だと思う。一応軍隊なわけだし。
ミカサ以外にも原作より女性陣は女性らしさが強調されているように思えて、例えばハンジは原作では特に男性か女性かわからない描写だったのが(それで声優も少年役も多く務める朴璐美さんが起用されて更に分からなくなっていると思われた)、明らかに胸のある女性になっていたり。特に気になったのはアニがアルミンやエレンたちに女型の巨人であると判明するシーンでアニが顔を紅潮させながら笑うのだが、これは原作にない描写。アニもミカサも感情の起伏が乏しくいわゆるヒロインとしては動かしにくいのかもしれないが、個人的にそういう原作にない女性らしさをことさら強調する作りはあまり関心しないなあ。
TVシリーズは女型の巨人が捕まり、結晶体となったアニが出現。今後の対策をエルヴィンが上層部に告げるところで終わり、エンディングの主題歌が終わったところで壁が崩れ中に大型巨人が!というところで終わったが、劇場版はそこにちょっとプラスされて壁の中の巨人を巡ってハンジとウォール教のニック司祭の問答が加わる。よりこの世界の謎を臭わせる形で終わる。エルヴィンの演説も凄みがあって良かったけれどもはや巨人化が特別でなく誰もが巨人になりうるという終末感が醸しだされていて良かったです。
壁外調査へ向かうときにかかる歌も格好良いけど、個人的にはTVシリーズ後半のエンディングテーマcinema staffの「great escape」が好きだなあ。
さて、僕個人的には「進撃の巨人」というコンテンツに対してはこのアニメ版だけで十分なんだけど実写版も公開されます。すでに観た人の間では「原作とは違うけど面白い」という感じの意見が殆どで概ね好評という感じだろうか。ただ、邦画は本当自分の目で観ないと信用出来ないというか特にこの作品は色々関係者の柵が多そうでもあるので一概に信用出来ない感が凄いです。特に「原作と違う部分は原作者公認、というか原作者が変えてくれ、と言ったんですよ!」という予防線が逆にみっともないというか、別にオリジナルのキャラが出てきたり、ストーリーが別物だったりは全然いいんですよ。原作と別物になるであろうことは最初から分かってるので。ただ芯になる部分がちゃんと残ってるかどうか。ただこれ以上は観ずには言えないので多分観ると思います。せめて前後編でなく一本の作品だったらなあ。3時間ぐらいあってもいいから一本に収めて欲しかった…
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*1:それを言ったらすでにソフトの出た「アメリカン・スナイパー」と後編待ち遠しい「ハンガー・ゲームFINAL」の感想はどうなるんだという感じですが。なんとか書こうとは思います