The Spirit in the Bottle

旧「小覇王の徒然はてな別館」です。movie,comics & more…!!!

失速する逆転 映画「逆転裁判」


 ゲームの映画化というと僕なんかが思い出すのは「スーパーマリオ魔界帝国の女神」で、よく覚えているのは何故か当時初日の最初の上映で観たんだよね。今となっては綺麗サッパリ忘れられているけど、当時は「ロジャーラビット」に出たこともあって漫画映画といえばこの人のイメージのボブ・ホプキンスが出ていたり悪役クッパデニス・ホッパーをキャスティングしたりしてたせいかそこそこ話題作という扱いだったと思う。ただ、この当時ルイージを演じたジョン・レグイザモは(当時としては珍しい)ヒスパニック系のアイドル俳優というくくりでまさかその後性格俳優として大躍進するとは夢にも思っていなかった。作品の出来はここでは吟味しないが、とはいえゲーム原作の映画としては本格的に大作として作られた最初の物では無いかと思う。
 その後、「バイオハザード」や「トゥームレイダー」などが映画化されたがCGの発達や元々映画の影響を受けたゲームだけあってそこそこ成功している。今では映画のゲーム化もゲームの映画化も当たり前のようにある状況だ(というより今では同時進行で進み、映画で使われたCGモデルをそのままゲームに流用したりしているらしい)。
 
 一方日本映画のほうである。日本映画でゲームの映画化というともっぱらアニメやCG作品が思い当たる。後はアドベンチャーゲームの映画化で「ときめきメモリアル」とか「ひぐらしのなく頃に」とかか。しかしあんまりゲームの再現ということでは成功してないようにも思える。
 で、三池崇史監督の最新作で僕も大好きなゲームを映画化した「逆転裁判」を観てきた。 

物語

 近未来の日本。増え続ける凶悪犯罪、それに対抗するため取られた手段が序審裁判制度である。弁護人と検事との直接対決、最長3日の審理期間で有罪か無罪かのみを結審する。
 新米弁護士の成歩堂龍一は師匠である綾里千尋殺害の容疑で捕まえられた千尋の妹綾里真宵の弁護を担当。かつての親友である、若手検事御剣怜侍と対峙する。見事無罪を勝ち取ったものの、今度はひょうたん池で行われた殺人事件の容疑者として御剣が捕まってしまう。かつての恩に報いるため弁護を申し出る成歩堂。しかしこの事件の裏にはかつて行われた「DL6号事件」が関わっていた・・・

 僕はゲームの方は大ファンでNintendo DSはそもそも「逆転裁判」と「ゼルダの伝説」がやりたくて購入したようなもの。一応今まで出たシリーズはすべてプレイしている。またこれ以前に宝塚歌劇団によって舞台化もされている。元々法廷劇という要素も強いし、個性を強調したデフォルメの効いたルックスの登場人物たちは舞台劇にはとても向いているだろう。
 映画は物語、キャラクター描写(衣装やメイク含め)の両面で基本的にゲームに忠実。物語としてはゲーム一作目の中から「逆転姉妹」「逆転、そしてサヨナラ」が選ばれている(「初めての逆転」と「逆転のトノサマン」も少し登場)。オリジナルストーリーにせずにゲームの物語を流用したのは評価できる。
 
 ただ、面白かったかというと微妙なのだな。全体としてコントという趣が強い。ゲームにはなかった登場人物がズコーッ!と一緒に横に倒れるシーンとか完全にドラマではなくコントだったし、僕も含め観客が要所要所で笑ったりするシーンはあるのだがそういうところは独立していて映画全体が面白かったというと違うと思う。故に「さあ、ここ笑うところですよ」という製作者のドヤ顔が漂っているようであった。
 キャスト陣はよく頑張っていたと思う。主人公成歩堂龍一(なるほどくん)を演じた成宮寛貴もゲーム以上にあたふたしてはいたがなるほどくんの雰囲気をよく出していた。御剣怜侍斎藤工綾里真宵桐谷美玲も上手くやっていたと思う。ただ、1つだけ言いたい。
何故、糸鋸刑事に照英を起用しない!!
 イトノコ刑事はあんな細いキャラじゃないんだよ!他の人物の再現度が高いだけにそこは悔やまれる。
 原作と唯一違うの人物は綾里千尋事件で出てくる小中大(コナカ マサル)でゲームの指輪ジャラジャラつけてるような成金風のキャラだったがここではフリージャーナリストということで長髪、サングラスという扮装に。
 なるほどくんの前に立ちふさがる強敵、40年無敗の検事狩魔豪(カルマ ゴウ)を演じる石橋凌も再現度では良かったのだがいざ、本性を晒した時べらんめえ調になってしまうのが残念だった。普段慇懃な態度の人物が馬脚を現すのはいいのだが思い出すに狩魔豪はそういうキャラではなかった気がするし強敵と言うより単なる小物に見えてしまう。
 あと物語の弱点は当然ゲームと違って細かい部分は当然省略してあるんだけどそのせいで(勿論僕がゲームプレイ済みで結末をある程度知っているからというのもあるけれど)肝心の裁判・推理の部分がものすごくしょぼくお粗末になっている。あれでは御剣や狩魔がやり手には見えないしなるほどくんも必要以上にお馬鹿さんに見えてしまう。そのへんは脚本の弱さで事件自体は一緒でも犯罪過程は別に映画独自のものとしても良かったのではないかと思う。
 
 後は弱点といえるかどうかは分からないが僕には過剰に思えたものが美術セット。法廷でのCGによる証拠品のやり取りとかは映画ならではの描写で面白かったのだが天井から降りてくる機械とかはCGにしか見えなくてリアリティがゼロ。また弁護士事務所ややっぱり矢張の店などが妙にダークな古臭いものになっているのだ。明治大正ぐらいの洋館風だったりする。この辺はゲームではごく普通の事務所として表現されてた部分。ただでさえキャラクターが過剰な人たちなのでセットはフラットで普通のデザインにしていたほうが良かったと思う。大江戸戦士トノサマンのバルーンやタイホくんの着ぐるみなんかはよくできていたと思うけど(トノサマンバルーンは本当にあの大きさのもの作ったのかしら)。

 結論から言うと、事前にゲームをやっていてファンだ、という人以外は難しいかもしれない。

逆転裁判 (小学館文庫)

逆転裁判 (小学館文庫)

ゲーム「逆転検事」の記事

 いずれも「逆転裁判」の外伝ゲーム「逆転検事」の感想記事です。

小覇王の徒然なるままにぶれぶれ!: 逆転検事
孤児達の審判 逆転検事2 - 小覇王の徒然はてな別館

逆転裁判 蘇る逆転 NEW Best Price!2000

逆転裁判 蘇る逆転 NEW Best Price!2000

 次はゲームで言うなら「蘇る逆転」みたいな一つの長い話のほうが良いのではないだろうか。まあ、なんだかんだ言ってシリーズが続くなら次も見るんだろうな。