盗塁王リッキー・ヘンダーソンは大谷翔平の“スタイル”をどう見たのか? 両者の意外な共通点に迫る
9月19日のマーリンズ戦、一回に三盗を決めて今季50盗塁の大台に乗せた大谷翔平(ドジャース) 【Photo by Megan Briggs/Getty Images】
9月29日(現地時間、以下同)、Tモバイル・パークで行われたアスレチックス対マリナーズ戦で始球式を行ったのが、公の場に姿を見せた最後とされる。そのときの映像を見ると、現役時代とほぼ変わらない体型であり、今にも走り出しそう。
あれから、わずか2カ月半後のこと。球界全体が言葉を失っている。
9月29日のアスレチックス対マリナーズ戦、始球式を行ったリッキー・ヘンダーソン 【Photo by Christopher Mast/Getty Images】
一度聞いてみたかったが、彼がそのインタビューで残した言葉と、クレイトン・マッカロー元ドジャース一塁コーチ(現マーリンズ監督)による大谷の盗塁技術の解説を比較しつつ、二人の共通点、相違点などをたどってみたい。
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「誰もけん制でリッキーを刺すことはできない」
「ヘッドスライディングを始めたのは、3Aのとき。足から滑ると、膝と足を痛めてしまうリスクがある。もちろん、頭からいくと、肩と手をケガする可能性がある。どちらがより、キャリアに影響が少ないかを考えた。リッキーとって膝と足が一番大事だから、頭を選んだ」
リッキー・ヘンダーソンのヘッドスライディング 【Photo by Focus on Sport/Getty Images】
「飛行機の着陸のとき、激しく揺れるときとスムーズなときがある。あるとき、全く揺れなかったから、機長に聞いたんだ。『どうやったら、あんなにスムーズに降りられるんだ』って? そうしたら、『着陸直前、できるだけ長く低い位置をキープすることだ』と教えられた。リッキーは以来、体への衝撃を和らげるため、できるだけ低い位置から、スライディングをするようにしたんだ」
大谷翔平のスライディング 【Photo by Katelyn Mulcahy/Getty Images】
「翔平は、相手投手の映像を非常に注意深く見ている。けん制の動作、けん制がきそうなタイミングやカウント、投球モーション。ホームに投げるときとけん制を投げるとき、体の動きはどう違うのか。けん制を投げる前に上体が少し後ろに傾くが、ホームに投げるときは立っているとか。けん制のときとホームに投げるときとでは、投手によって微妙にグラブの位置に違いもある。試合中もそうだ。彼は『肘の後ろが動く』とか気づいた点を指摘してくる。試合前の予習もすごいけど、試合中も常に観察している」
対してヘンダーソンは、こう話している。
「打席で相手投手の動きから、球種を見抜く打者がいる。自分にはまったくわからない。でも、一塁へ行くと、ホームへ投げるのか、けん制が来るのか、すべてわかる。クイックが上手い投手からはやはり、盗塁しにくい。でも、けん制が上手い投手からは、盗塁がしやすい。誰もけん制でリッキーを刺すことはできない」
“けん制が上手い投手からは盗塁がしやすい”ーーというのは、矛盾しているようだが、どういうことか。その答えは、キャリア序盤にあるよう。
「130盗塁をしたとき(1982年)、42回も失敗がある。でも、そのうち36回がけん制死だった。だから、相手のけん制の動きを徹底的に研究するようになったんだ」
以来、けん制に対しては絶対の自信を持つようになった。結果として、盗塁の成功率も上がっていった。