グループA

  • 第一節

◇ポルトガル 2−0 トルコ
 [得点] 61分:ペペ、90+3分:メイレレス 
 

ポルトガル 4-3-3
GK:リカルド
DF:ボシングワ、ペペ、カルヴァリョ、フェレイラ
MF:ペティート、デコ(90分:メイラ)、モウティーニョ
FW:ロナウド、ヌーノ・ゴメス(69分:ナニ)、シモン(83分:メイレレス)

トルコ 4-4-2
GK:ヴォルカン
DF:ハミト・アルティントップ、セルヴェト、ギョクハン(エムレ・アシュク)、ハカン・バルタ
MF:カズム、エムレ・ベゾロギュ、メフメト・アウレリオ、トゥンジャイ
FW:ニハト、メヴリュト(46分:サブリ)、


クローズな開幕戦とは違い、オープンな試合展開になった。こういう試合展開にはめっぽう強いポルトガル。チェコの積極的な守備に苦しむ場面はあり、決定機の割りの得点を決めきれない悪癖を覗かせたものの、前線の流動性、後方からの攻撃参加、リード後の相手を呼び込んでからのカウンターと、現代サッカーのトレンドを体現しての快勝。


ポルトガルのようにポゼッションで相手を押し込むチームは、どうしても前が詰まってしまう。そのときに効果的なDFからの攻撃参加。カルバーリョ、ペペの両CBはスペースを見つけると効果的なオーバーラップで攻め込む能力を有し、その能力を活かしたペペの先制点は見事だった。共にビルドアップ能力が高く、守備面でのバランスも抜群。アタッカー陣の華やかさに隠れがちだが、守備陣のトータル的能力の高さもポルトガルの大きな魅力。


ポルトガルの予選との大きな違いは3センターの構成。守備面やバランス取りに長けたヴェローゾやぺティートとダブルボランチ気味の構成で、トップ下のデコの攻撃面での負担が大きかったのが、アンカーのヴェローゾをベンチにし、本来はデコの控えと見られていたモウチーニョが先発し、ぺティートの前方にデコと並ぶ3センターの布陣。攻撃センスに長けたモウチーニョのフォローは、攻撃面において確かな効果を発揮していた。鮮やかなターンからの2点目のアシストはみごと。これでマニシェの穴は埋まった格好か。デコの実力は文句ないだけに、新鋭モウチーニョの奮起に期待がかかる。


エースのロナウドはマークも厳しくまだまだ本領発揮とは行かず。ただ周りを活かすプレーでチームを助けていた。CFを務めるヌーノ・ゴメス*1の得点力に大きな期待が持てないだけに、得点源としてロナウドにかかる期待は大きい。ここから徐々にギアを上げていきたい。



トルコはテリム*2のチームらしく、ポルトガル相手に真っ向勝負。このトルコの姿勢が、オープンな好ゲームを生んだ。勝負論を考えれば格上相手にこのゲームプランは微妙だが、自分達のサッカーを貫いたのには好感が持てる。CBに怪我人が出るなどの不運もあって、守備面での不安は大きいが、攻撃面ではポルトガルを脅かす場面も見られた。このオープンなサッカーが、開幕戦でクローズな試合運びを見せたチェコとスイスにどう出るか。

初日から対照的なサッカーを見せるAグループの2試合、大会の趨勢を占う意味でも興味深かった。


  • 第二節


◇チェコ 1−3 ポルトガル
 [得点] 8分:デコ、17分:シオンコ(チ)、63分:ロナウド、90+1分:クアレスマ

◇チェコ 4-1-4-1
 ツェフ
 グリゲラ、ウイファルシ、ロゼフナル、ヤンクロフスキ
 シオンコ、マテヨフスキー(68分:ヴルチェク)、ガラセク(73分:コラー)、ポラク、プラシル(20分:ヤロリム)
 バロシュ

◇ポルトガル 4-3-3
 リカルド
 ボシングワ、ペペ、カルヴァリョ、フェレイラ
 ペティート、デコ、モウティーニョ(75分・メイラ)
 シモン(90分:クアレスマ)、ロナウド、ヌーノ・ゴメス(79分:アウメイダ)


開催国スイス相手に、超リアリズムなサッカーで勝ち点3を得たチェコ。策士ブルックナーが、優勝候補ポルトガル相手にどう対するか注目したが、初戦の超リアリスティックなサッカーは封印。その姿勢が好ゲームを呼び込んだ。


チェコの初戦、コラーへのロングボール中心の試合運びは、コラーの不調もあって攻撃面ではあまり機能しなかったが、スイスのゲームプランを狂わすなど一定の効果を発揮していた。ポルトガル戦でも序盤はリスクを廃したその作戦でくるかと思ったが、ブルックナーはコラーに変えてバロシュを1トップで先発起用。パサーのマテヨフスキーとの併用で攻撃的なポルトガルの裏をカウンターで狙う作戦。


チェコは初戦同様に中盤でハードワークを仕掛けて、ポルトガルを苦しめる。バロシュにもそこそこボールは収まり、得意のドリブルで局面の打開を図る。ただ中盤に変化を付けられる選手がいないため、攻撃はショートカウンターや単発の個人技でどうにも苦しい。セットプレーからの1得点が精一杯か。終盤にコラーを投入し局面打開を図るが、フェリペがそれに呼応しメイラの投入でパワープレー対策でシャットアウト。


ポルトガルはデコを中心にプレスを交わしポゼッション。ロナウドも片サイドには留まらない現代的なサイドアタッカーらしい流動性でチェコの守備組織をかき回した。序盤はチェコのハードワークに苦しんだものの、中盤以降に疲れが見えてからはポゼッションでリズムを掴む。チャンスメイカー不在のチェコとは違い、デコとロナウドの格の違いを見せるチャンスメイクと決定力で得点を奪い快勝。


一級品の攻撃性を持ちながら、守備でのハードワークも厭わない現代的なOMFの象徴的な存在でもあるデコの存在感が際立った試合だった。チェコの選手にはハードワークがあっても、攻撃面での物足りなさは否めない。ハードワーク一辺倒では90分間持つはずもなく、緩急巧みなポルトガルにいなされる格好となった。


これでポルトガルのA組首位通過決定。スイス戦で主力を休められるのは大きい。ロナウドも徐々に調子を上げてきているし、トーナメントに向けて視界良好といったところか。




スイス 1−2 トルコ
 [得点] 32分:ヤキン(ス)、57分:セミフ、90+2分:アルダ

◇スイス
 ベナリオ
 リヒトシュタイナー、ミュラー、センデロス、マニャン
 ベーラミ、ヤキン(85分:ギガックス)、インレル、バルネッタ(66分:フォンランテン)
 ギガックス、デルディヨク

◇トルコ
 ヴォルカン
 ハミト・アルティントップ、セルヴェト、エムレ・アシュク、ハカン・バルタ
 ギョクデニス(46分:セミフ)、アウレリオ、テュメル(46分:トパル)、トゥンジャイ
 ニハト(85分:カズム)

スイスはエースFWのフレイ、トルコは中盤の要の司令塔エムレが初戦で負傷。両チームのキーマンを欠いた豪雨の中の因縁の一戦は、劇的な試合展開を呼び込んだ。


序盤はトルコがパスワークやドリブルでリズムを掴んで攻勢に出るも、試合途中からの豪雨が試合展開を変えた。


豪雨にいち早く対応したのはスイス。濡れたピッチを見越して、グラウンダーのショートパスやドリブルを封印し、トップや裏のスペースへのロングボール中心の攻撃を仕掛けてチャンスを生む。その流れでヤキンが先制点を奪い、試合の流れを掴んだかに見えた。ただ先制点直後にもあった似たような決定機をヤキンが決めきれず、後に響くことになった。


トルコは豪雨中も愚直にショートパスやドリブルを繰り出してボールを逸するなどし、スイスのカウンターに何度もゴールを脅かされた。ただ雨が弱まった後半は何度か良いシーンを作り、ニハトのクロスからセミフが豪快なヘッドで同点に持ち込む。スイスはベーラミのドリブルと目立つものの、キーマンのフレイがスタミナ切れで苦しくなってきた。


その後は両チームと持ち合いになったが、打ち合いはトルコの得意とする展開。スイスがカウンターからの超決定機を決め切れなかった直後にカウンター発動、この日先発に抜擢された新鋭アルダ*3が、ロスタイムにハーフライン付近から独力でボールを持ち込んでドリブルシュート。DFに当たりコースが変わったボールはゴールに吸い込まれ、トルコが劇的な逆転勝利。開催国スイスはまさかの2連敗でグループリーグ敗退決定。


スイスは2戦とも特別内容が悪かったわけではない。決定機は何度も作ったが、それを決め切れず。初戦でエースFWフレイを負傷で欠いた影響は大きかった。結果論だが、ホームにしては慎重すぎる試合運びで初戦に入ったのが良くなかったかもしれない。フレイの代わりに入ったヤキンが良かっただけに、WCでのように2人を併用していればどうだったか。


スイスはWCで若手主体で無失点・ベスト16の成績から、開催国で迎えるEUROではダークホースとして期待されたが、まさかの2連敗で初戦敗退。アンカーのフォーゲル代表引退でシステム変更を余儀なくされたことや、当時U-21でフル代表昇格が期待されていた二人の超逸材*4が、母国の代表を選択してしまったのも痛かったなあ。ただ移民が多い多言語国家なので、今後もスタイルの異なる良い若手を輩出するだろうし、まだ現代表の主力も若いので、今後に期待だね。そのために最後のポルトガル戦は、ただの消化試合ではなく次に繋げるためにも全力で挑んでほしいね。


これで勝ち点3のトルコとチェコが、第3戦目でトーナメント進出を争う直接対決を迎える。リアリズムのチェコか、イノセントなトルコか。楽しみな一戦だ。

*1:ポストプレーのワンツーなんかに独特のセンスがあって、2列目の得点力を活かす意味では良いプレーを持っているけど、決定機に決めきれないのは相変わらず。

*2:ヴィクトル・フェルナンデス、ゼーマンと並ぶ、欧州サッカー界随一の攻撃サッカー信望者。守備全盛の90年代のセリエAで2-3-3-2の超攻撃的婦人とか無茶な事をやってた。

*3:こういう日本では無名の存在のブレイクがEUROの楽しみでもあったり。得意のドリブルも突破とためを使い分けられるし、エリア内に飛び込んでポスト直撃のチャンスも生んだ。この87年生まれの逸材は、近いうちに欧州主要リーグで見られそうだ。

*4:WC後に台頭してきた若手CHのインレル、フェルナンデスも悪くないけど、ラキティッチ、クズマノビッチに比べるとスケールが違う