タイタン(ティタン、英語:Titan)は土星の80個以上ある衛星の中で最も大きく、太陽系内で2番目に大きい衛星です。直径は約5150kmで、これは水星(約4880km)よりも大きな天体です。タイタンの公転周期は15.9日で、土星の中心からの距離は約122万kmとなっています。
タイタンを発見した天文学者
タイタンは、1655年3月25日にオランダの天文学者クリスティアーン・ホイヘンスによって発見されました。ホイヘンスは、1610年にガリレオ・ガリレイが木星の衛星を発見したことから強い影響を受けたといい、特に土星の環や衛星に強い関心を持ったようです。
彼は兄であるコンスタンティン・ホイヘンスと協力して望遠鏡を作り、土星の観測を続けました。当時の望遠鏡では高解像度での観測は難しかったものの、改良を重ねた結果、ついに土星の衛星タイタンを発見したのです。
タイタンは、当時知られていた太陽系の中で最も大きな衛星の一つであり、後の天文学においても重要な天体として注目されることになります。
土星探査機「カッシーニ」と「ホイヘンス」
1997年10月、アメリカ航空宇宙局(NASA)と欧州宇宙機関(ESA)によって開発された土星探査機カッシーニが打ち上げられました。カッシーニには衛星タイタンを調査するために小型惑星探査機ホイヘンスが搭載されていました。
探査機カッシーニは天文学者ジョヴァンニ・カッシーニから、小型惑星探査機ホイヘンスは前述のクリスティアーン・ホイヘンスから名付けられています。
2005年1月、探査機ホイヘンスはタイタンに着陸し、まるで地球の川のような地形を発見しました。それは、メタンの雨によって氷の大地が侵食された跡です。
湖のような地形も発見されています。クレータはほとんど見られませんでした。
ホイヘンスの着陸地点には10センチメートル程度の丸い氷の塊が散乱している様子も見られました。
なお、NASAはホイヘンスがタイタンへタッチダウンする様子をまとめた動画をYoutubeで公開しています。
タイタンには大気がある
タイタンには厚い大気があることが確認されています。
大気の組成の97%は窒素で、メタンが2%含まれています。地表での大気圧は地球の1.6倍で1600ヘクトパスカルです。
タイタンの表面温度は約90K(-180℃)でかなり低温。この温度では大気中のメタンは液体になります。タイタンにはメタンやエタンなどの炭化水素の雨が降り、それによって湖や海ができています。地球では水の循環系がありますが、タイタンでは炭化水素の循環系があるようです。
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木星の衛星イオや海王星の衛星トリトンも大気を持っていますが、これらの衛星の大気はとても希薄です。
どうしてタイタンにこれだけ厚い大気があるのか未だに解明されていません。
なぜ、窒素が主成分になっているのかについては大きく2つの説があります。
1つは窒素分子を含んだ氷がタイタンに集積したとする説です。もう1つはタイタンに蓄積したアンモニアが何らかの化学変化によって窒素ガスになったというアンモニア起源説です。
タイタンの大気上層では、光化学反応により窒素とメタンから有機分子が生成されています。
この有機分子がオレンジ色のスモッグとして上空を覆っているため、外からは可視光で地表を見ることはできません。
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タイタンの火山活動
タイタンの火山は溶岩ではなく水がマグマとして噴出してきます。溶岩の代わりに水が流れ、それが凍って氷の大地となります。
タイタンでは水が地球での岩石の役割をしているようです。
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生命の可能性
タイタンは地球以外の天体で、明確に安定した液体の存在が確認されている唯一の天体です。
液体が地表面に存在することから”生命が存在するのではないか”と期待されています。
液体の主成分であるメタンやエタンなどの炭化水素はまさに生命の材料となる物質です。
しかしながら、極寒の環境なので生命活動には厳しい条件かも知れません。今後のさらなる観測・研究が待たれます。
Source
- 参考:Wikipedia
文/sorae編集部