スターリンク(Starlink)とは? 4万機以上の衛星計画や天体観測への影響を解説

スターリンク(Starlink)とは、アメリカの民間宇宙企業「スペースX(SpaceX:Space Exploration Technologies Corp.)」が提供する衛星インターネットサービスです。

世界中の遠隔地に低遅延かつ高速のブロードバンドインターネットを提供しています。2023年10月現在、60カ国以上の地域・国でサービスを展開しています。

日本では、2022年10月にサービスを開始しており、個人でも初期費用(導入に必要なハードウェアなど)と月額を支払うことでスターリンクを利用することが可能です。また、KDDIは一部地域でau通信網のバックホール回線としてスターリンクを使用する基地局の運用を2022年12月1日に開始するなど、衛星インターネットサービスがより身近になりました。

最大4万2000機以上の「スターリンク衛星」計画

スターリンク衛星(Starlink v1.0)(Credit: SpaceX)
【▲ 参考画像:Starlink v1.0(Credit: SpaceX)】

スターリンクは全世界にブロードバンドインターネット接続を提供する「衛星コンステレーション計画」として、2018年3月29日に連邦通信委員会(FCC)の認証を受けました。

2018年のプロトタイプの打ち上げを皮切りに、2023年10月現在で5000機以上のスターリンク衛星が軌道へ投入されています。スペースXは、高度や傾斜角が異なる「シェル1」〜「シェル8」に分類された軌道へ約1万2000機(将来的には最大4万2000機まで拡張予定)のスターリンク衛星投入を計画しています。

※シェル=軌道層

スターリンクミッション フェーズ1

グループシェル1シェル2シェル3シェル4シェル5
予定数15847203481584172

スターリンクミッション フェーズ2

グループシェル6シェル7シェル8
予定数249324782547

スターリンクミッション 詳細未公表

グループシェル9シェル10シェル11
予定数未公表未公表未公表
追加シェルについて

「シェル9〜シェル11」に関しては、2023年10月現在、具体的な計画や詳細は公表されていません。 スペースXはスターリンク衛星の総数を将来的に最大4万2000機まで拡張する意向を示しており、その中で新たなシェルが追加される可能性があります。

追加のシェルが導入される場合、それらはサービスエリアの拡大や通信品質の向上、さらなる低遅延化などを目的としていると考えられます。しかし、シェル9やシェル10の具体的な衛星数、軌道パラメータ、打ち上げスケジュールなどの情報はまだ公式に発表されていません。

スターリンク衛星の種類

  • 試作機:Tintin A、Tintin B
  • 試験機:Starlink v0.9
  • 運用機:Starlink v1.0、Starlink v1.5、Starlink v2.0 MINI ※2023年10月現在
  • 予定:Starlink v2.0 ※投入予定の新型機。v2.0 MINIより大型化すると見られています。
第2世代スターリンク「starlink V2 mini」
【▲ 第2世代スターリンク「starlink V2 mini」(Credit: SpaceX)】

 

スマホから直接アクセスできる「Direct to cell」機能

スターリンクの「Direct to Cell」とは、従来のスターリンク衛星(V2 MINI)に搭載された機能の1つで、既存の携帯電話を使用して衛星ネットワークに直接接続し、通信を可能にするものです。

Direct to Cell機能を利用するには特定の携帯電話キャリアとの契約が必要ではあるものの、特別なハードウェア、ソフトウェア、アプリは不要とされています。また、スペースXのDirect to Cell公式ページによれば、グローバルパートナーとして株式会社KDDIの名前も表示されています。

「Direct to Cell」機能を備えた第2世代スターリンク衛星「Starlink V2 Mini」
【▲「Direct to Cell」機能を備えた第2世代スターリンク衛星「Starlink V2 Mini」(Credit: SpaceX)】

 

スターリンクは天体観測に対して悪影響?

【▲ 参考画像:銀河団の前面に写り込んだスターリンク衛星群の光跡(Credit:ローウェル天文台)】

高度3万6000kmの静止軌道に投入される従来の通信衛星とは違い、地球低軌道を飛行する膨大な数の衛星で構成される「メガコンステレーション」は、景色としての夜空だけでなく、天文学の分野にも影響を及ぼすことが国内外で懸念されています。

人工衛星は機体や太陽電池などが太陽光を反射して輝きます。国際宇宙ステーション(ISS)のように単独で飛行している場合は1つの光点が飛んでいくだけですが、一度に50機以上が軌道に投入されるスターリンク衛星の場合、打ち上げ直後の衛星群が連なって飛行し、天体の手前を横切って多数の光跡を残すことがあります。

運用軌道に配置された後も、特に日の出前や日の入り後は衛星の反射光が観測の妨げになる可能性が指摘されています。スターリンクは比較的低い高度に構築されるので、衛星が地球の影に入る夜遅くの時間帯における影響は限定的かもしれませんが、衛星の飛行高度によっては日の出前や日の入り後の観測にも影響が及ぶ可能性が懸念されています。

 

スターリンクの悪影響を回避する方法は?

スペースXは一時期、スターリンク衛星に太陽光の反射を低減させるためのサンバイザー(日除け、サンシェード)を取り付けていましたが、衛星間で行われるレーザー通信の妨げになることが判明したため、Starlink v1.5ではサンバイザーを取り外しました。その代わりに、衛星表面に光の反射を抑えるダークコーティングを施すなどの対策を行っています。

国際天文学連合(IAU)は、天体観測をスターリンク衛星に邪魔されないように、位置情報を事前に予測するサイトを用意していますが、根本的な解決には至っていません。また、IAUや各国の天文学者たちは、衛星運用会社との協力や規制の強化を求めています。

Nature - ‘Unsustainable’: how satellite swarms pose a rising threat to astronomy(2022年5月)

 

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外部リンク

 

Source

  • Image Credit: SpaceX
  • SpaceX - Starlink
  • Starlink(Wikipedia

文/sorae編集部