turntableの著作権的リスクについて考えてみた。
turntableが面白い。
もう、抜け出せず寝不足しかねない面白さ。
ポイントはもちろん音楽共有なのだろうが、なにより”場を共有していること”の快感がある。知らなくてもノリにあった曲を流せばしっかりと反応が返ってくる。Awesome/Lameのシステムもいい。Awesomeを貰えばDJ pointが上がるものの、Lameを貰ってもpointは下がらない。その代わり、曲がskipされる。これがまた、場の空気を醸成していく。
この手の「クラブハウスをネットに持ち込むソーシャルネットサービス」自体は私でも容易に思いつくものの、2つの意味でネックがあったと思う。
1つは、本当に面白いのか?という疑問。これはturntableがその魅力を証明してくれた。もう1つは、そう、権利問題。著作権処理をどうクリアしていくか。音楽が好きで、音楽をソーシャルで盛り上げて行きたい、そう思っても権利問題をどうしたもんか・・・。特にレコード会社が持つ原版権の処理。
この問題は、もちろんturntableでも付きまとう。
昨夜、少し触れてみて、turntableの著作権的問題について考えてみる。
まず、turntable自信は知的財産に対するポリシーをどのように考えているか。
turntableのコピーライトポリシーはこれ。
http://turntable.fm/copyright/
基本的にはDMCA(デジタルミレニアム著作権法)に基づくいわゆる”Notice and Take Down”をするとなっているようだ。
ノーティスアンドテイクダウンとは、著作権に関する手続きの概念のうち、プロバイダ(インターネットサービスプロバイダ)が著作権者から通告を受けた際に、当該コンテンツを速やかに削除し、また、コンテンツの発信者に通知を行う、という手続きを含んだ一連の流れである。
Notice and Take Downの意味 - 英和辞典 Weblio辞書 http://bit.ly/mU4WKe
じゃあ、違法コンテンツ流し放題か!というと全然そういうわけではなく、medianetののストリーミングカタログをライセンスしているらしい。medianetのストリーミングカタログには
- Universal Music Group
- Sony Music Entertainment
- Warner Music Group
- EMI Music
など多くの権利者がContent Partnersとなっている。つまり、少なくない洋楽が合法的に提供されているようだ。
とはいえ、日本でJASRAC等の許諾は得ていないだろう。この点はどう考えるか。
ストーリーミングは公衆送信権であろう。公衆送信権とネットサービスに関しては難しい問題がある。著作権法は属地主義を採用している。
法律の適用範囲や効力範囲を、一定の領域内についてのみ認めようとすることをいう。たとえば、我国の特許法や商標法、著作権法が適用される領域は日本国内のみである。
知的財産用語辞典 - http://bit.ly/lsr6yN
公衆送信権の場合、公衆送信行為が権利にかかり、受信は問題でないため、字義通り捉えれば「発信国法主義」で米国法が適用されるはずだ。ただこれには利用の実態?をして「受信国法主義」も唱えられている。その場合は日本の著作権法が適用される可能性があり、turntableもJASRAC等から許諾を受けなければ違法になる可能性がある。個人的には受信国法主義は無理筋だろうと思っている。特に罪刑法定主義のもと、刑罰法規としての側面を持つ著作権法が利用の実態?をして適用を半ば拡大するのは、危険ではないかなと思うのだ。
この点、恐らく表立って問題になることはないと思う(願う)ところだが、pandoraのように邦楽曲を流さず、アメリカの企業がアメリカのサーバで、ストリーミングを行っていたサービスであっても、著作権に配慮して、日本国でのサービス提供を途中からシャットアウトしており、どのようになるか、色々な考えができるところでもあるのだろう。
一方で、利用者としては公衆送信行為をしていないのであまり問題にならないだろう。それ以上に、もっと重要な問題点はあるのだが、これは後述。
利用者が公衆送信権侵害の共犯にならないか。発信国主義に従えば、典型的な「正犯なき共犯」という類型であろう。通説的には、正犯なき共犯は認められない。受信国法主義に従えば、共犯もありうる。しかし、それは受信国法主義を採るという大きな壁を乗り越えた先のことで、利用者のリスクとして、さほど大きく捉える必要があるかは、甚だ疑わしい。
それよりも、turntableの最大の問題点は
自分で音楽をアップロードして流すことができること
これは完全にアウト。
複製権と公衆送信権侵害になること間違いなし。しかも、侵害主体は利用者だから、利用者は絶対にこの機能を使ってはいけない。
昨夜、著作権フリー(無許諾利用可能)の音源をいくつか使って試してみたところ、アップロードした曲がそのまま使えるのは、2/3程度の確率。残りの1/3は別の曲と認識されて違う曲が流れた。理由は分からないが、曲データを解析している可能性も否めない。
なんにせよ、無許諾で音源をアップロードするのは極めてリスキーで犯罪行為。
この点に気をつけて、フロアを楽しみましょうね。