リチャード・アヴェドン:闇と光
凄いフォトグラファーだとは認めつつ、どうしても好きになれなかったリチャード・アヴェドン。
僕にとって彼は、アーヴィング・ペンのあの繊細さやヘルムート・ニュートンが創りだすエロスの中間に位置するような存在だった。
好きになれない一番の理由は完璧すぎるから。
どこをとっても無駄がなく、綺麗にまとまりすぎているという印象をいつも持っていた。
しかし、最近になって彼の写真をもう一度本気で見直すと、以前は理解できなかった彼の写真の素晴らしさが今さらながらわかる気がする。
彼もその殆どの作品を大判カメラで創り上げるフォトグラファーだ。
本物の象とエレガントなモデルの組み合わせ。
コンクリートの床の上で裸のナスターシャ・キンスキーは2時間も寝ていなければならなかった。
大蛇が彼女の頬にキスをするほんの一瞬をアヴェドンが切りとったとき、そばにいたアートディレクターは感動で涙を流したと語っている。
数あるマリリン・モンローの写真の中で、こんなに素の彼女を切りとった写真はないだろう。
ファッションフォトグラファーとして名を馳せた彼は世界中のセレブたちを見事に切りとったが、僕が彼の実力を本当に思い知らされたのは「In the American West」というアメリカ西部の普通の人々をカメラで捉えた写真集だった。
それらの写真はこれぞポートレイト、といいたくなるような人間写真の真髄が詰まっている。
どうすればこんな写真が撮れるのだろう、、、。
そんなことを思っていたときYouTubeで彼のドキュメンタリーを見つけた。
「リチャード・アヴェドン:闇と光」というタイトルのフィルムだ。
このフィルムの中では彼の生い立ち、彼独特の写真のスタイル、彼と一緒に仕事をした人たちが感じるアヴェドンの凄さ、彼のモデルになった人たちのインタヴュー、代表作を選び出すしたコンタクトシート、プリントの焼き込み覆い焼きの指定図、撮影現場などがぎっしりと詰まっている。
英語だったので全てを理解したわけではないが、このドキュメンタリーフィルムはどんなポートレイトのテキストよりも優れていると僕は感じた。
日本語字幕でもDVDなどが売られているらしい。
できれば日本語で観たいところだ。
リチャード・アヴェドン:闇と光 (9/9)
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by somashiona | 2011-03-06 09:49 | 写真家