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#84 復刻版写研フォントに関する総評
2024.12.10(火)
10月15日、モリサワが同社のフォントサービス「Morisawa Fonts」契約者向けに、ファン待望の復刻版写研フォント(43フォント)をリリースした。
長年に渡りPC上で使うことができなかった写研フォントがオリジナルに忠実な形で再現され、モリサワいわく「2025年以降も、これらに続くラインナップを順次提供予定」「数年内に合計100フォントに及ぶリリースを予定」とのこと(※1)。
個々の写研フォントに関してもいずれ「フォントの独り言」で取り上げたいが、今回はまず復刻された写研フォント全般に関する僕なりの総評を行いたい。

復刻されて最も嬉しかったのは、未だ既存のデジタルフォントには類を見ないユニークな見出し向けフォントやデザインフォント(総称:写研クラシックス)だ。
とりわけ僕が待ち望んでいたのは「スーボ」や「イナクズレ」。↓
SuuboInakuzure.jpg
これらに関しては過去の「フォントの独り言」でも少しだけ取り上げたことがあるが(文末にURL掲載)、何となく似せたようなデジタルフォントはあるものの、イメージが全然違うしとても代用できない。
言い過ぎと思われるかもしれないが、この2つのフォントが復刻されただけでも今回の写研フォント復刻プロジェクト(?)には大いに意味があっただろうと言いたくなるくらい、個人的には嬉しかった。

また写研フォントの中でも特に歴史のある「石井ゴシック」「石井明朝」に関しては、復刻の際に「改刻」が行われた。
モリサワによると、改刻フォントは「写植時代のデザインを参考にしつつ、現代の環境や用途に適した書体として一から新規にデザインし直すことで、より成熟度を高め」たそうだ(※2)。
つまりオリジナルと異なるデザインになったわけだが、この改刻フォントとは別に、オリジナルのデザインを忠実に再現した「石井中ゴシック」や「石井中明朝」も「写研クラシックス」として(別フォントとして)リリースされた。
僕はまさに「石井中ゴシック」をきっかけに写研を知ったので、リデザインされた「改刻フォント」だけでなく、オリジナルに近いデザインのフォントを別途リリースしてくれたのはありがたかったね。
ただ、オリジナルの石井書体のデザインや使い心地をよく知っている人は改刻後のデザインに不満を持っているかもしれないし、賛否両論あるかもしれないが…。

さらに人気の丸ゴシック「ナール」や、角ゴシック「ゴナ」もリリースされたが、ナールは極細のウェイトELと、太めのウェイトE(2ウェイト)しかリリースされず、同じく人気の角ゴシック「ゴナ」は太めのウェイトE(1ウェイト)のみのリリースだった。
ナールに関しては、モリサワが「今年は、このELに加えてEのウエイトも提供します」と言及しているのを見ると(※3)、今年はEL・Eのみのリリースだったけど、来年以降に残りのウェイトが追加でリリースされる、という意味合いにも取れそうだけどどうなのだろう…。
冒頭に書いたように、少なくとも数年内にリリース予定なのは「合計100フォント」とのことなので、数的に復刻されないフォントも出てくるはずだから不安だが、ナールやゴナは全ウェイト揃えてほしいね。

復刻版のリリース直後、喜びの声がSNSに多く投稿される中、「過去に写研フォントが使われていたが、後にデジタルフォントに移行した媒体で、再び写研フォントが見られるようになるかも?」という声も見られた。
復刻を待ち望んでいたのはみんな同じだし気持ちはわかるけど、これに関しては「さすがに期待し過ぎでは?」と思った。
もし20年くらい前までに写研フォントが復刻されていたらそれも実現したかもしれないが、近年のデジタルフォントのデザインの多くは、もはや写研フォントの後追いをしたようなものではない。
スマホ・PC、あるいはWeb、映像など画面上で読みやすいフォントや映えるフォント、あるいはフォントを作るアプリの高い性能と、それを使うクリエイターの豊かなアイデアが活きたフォントなど、新しい時代のニーズを反映したフォントが次々に誕生し、使用例も増えている。
もう二度と新しい使用例が見られないと思っていた写研フォントが復刻されたのはフォントオタクとしては嬉しいものの、それが遅すぎたのも事実で、若い人の中には写研フォントの存在すら知らなかったという人もいるだろう。
写研がデジタルフォント化をためらっている間に、「デジタルフォントだけで文字を使ったデザインはほぼ完結できる」までに時代が進んでしまったのだ。
もうデジタルフォントがいろんな場面に馴染んでおり、それらを今さら写研フォントに置き換えるメリットがあるとは思えないし、作業上の手間も生じるはず。
文字を組んだ時のバランスやデザインのバリエーションなど、写研フォントの完成度が全体的に高く、使いやすいのは確かだと思うが、写研フォントだけが特別なわけではない。
今後新しく登場するデザインの中で、写研フォントがデジタルフォントの新書体がリリースされた時と同じように「新たな(ひとつの)選択肢」として浸透していくのが自然な流れだし、僕はそうなるだろうと考えている。

写研に限らず、今まで発表されたデジタルフォントの中にも、フォントを収録したパッケージ製品やダウンロード製品が終売したり、会社がフォント事業から撤退したり、会社がさまざまな理由で衰退したりしたことで、使いたくても使えなくなったフォントが数多く存在する。
こういった大人の事情はフォントへの評価とはまったく関係が無く、使えなくなるのはもったいないと思うし、できるだけ多くのフォントが世の中に、今も変わらず使える形で残ってほしい、といつも願っている。
だから今回の写研フォント復刻は、遅すぎるなどの不満もあったものの、総合的には「よくやってくれた!」という気持ちの方が強かったし、写植時代とは違う新しい時代の新しい媒体で、どんな活躍を見せてくれるのか楽しみだね。

それでは、また次回の「フォントの独り言」でお会いしましょう。ィヨロシク!!

【参考にしたサイト】(いずれも2024.11.13閲覧)
●モリサワ 書体見本
リリースされた写研フォントで試し打ちが可能。
(「メーカー」→「写研」を選択して絞り込み)
https://www.morisawa.co.jp/fonts/specimen/
●モリサワ 写研書体のOpenTypeフォント開発で今後100フォントをリリースすることを発表
※1に関する記述あり。
https://www.morisawa.co.jp/about/news/10088
●新書体なのに懐かしい!2024年リリース予定 写研フォントのご紹介
※2・※3に関する記述あり。
https://note.morisawa.co.jp/n/nd8256ef655d5?gs=a95f6c17cc6d
●写研書体の開発プロジェクト “至誠通天”受け継がれる石井書体
石井書体の改刻に関するエピソードが掲載。
https://note.morisawa.co.jp/n/ndbff5c4d3cce

【関連する過去の「フォントの独り言」の記事】
#41 スーボの代役フォント? 「トンネル」
「スーボ」に関して言及した記事。
https://slimedaisuki.com/blog-entry-10529.html
#34 テロップには最適? コミックミステリ
「イナクズレ」に関して言及した記事。
https://slimedaisuki.com/blog-entry-10279.html
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