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β-ラクタム系抗菌薬の概要と重要性 #1.
ミニマム抗菌薬シリーズ β-ラクタム系抗菌薬 - ペニシリン系 - #2.
executive summery / β-ラクタム系は感染症治療薬の基本形である // 各薬剤の抗菌スペクトラムの把握が重要である /// PK-PD理論に基づき適切な投与設計を行う //// 緑膿菌活性のある薬剤を漫然と投与しない #3.
もくじ / β-ラクタム系抗菌薬 総説 // 静注用ペニシリン系抗菌薬 6種類 /// 経口ペニシリン系抗菌薬 2種類 β-ラクタム系抗菌薬の投与設計とPK/PD理論 #4.
もくじ / β-ラクタム系抗菌薬 総説 // 静注用ペニシリン系抗菌薬 6種類 /// 経口ペニシリン系抗菌薬 2種類 #5.
β-ラクタム系抗菌薬 総論 / β-ラクタム系抗菌薬 = 細胞壁の合成阻害作⽤ - 細胞壁上のペニシリン結合蛋⽩(penicillin-binding protein; PBP)に結合 - 殺菌的(bactericidal)に作⽤する抗菌薬 細胞膜 [細胞壁合成阻害] 細胞壁 / β-ラクタム系抗菌薬 [タンパク合成阻害] - ペニシリン系 / テトラサイクリン系 - セフェム系 // マクロライド系 → セファロスポリン系 /// リンコマイシン系 → セファマイシン系 //// アミノグリコシド系 - カルバペネム系 - モノバクタム系 リボソーム // グリコペプチド系 [核酸合成阻害] / キノロン系 核酸 #6.
β-ラクタム系抗菌薬 総論 ぴーけー ぴーでぃー / 薬効と相関するPK/PD parameter - PK: Pharmacokinetics: 薬物動態 - PD: Pharmacodynamics: 薬⼒学 - PK/PD理論: PKとPDを関連づけ,抗菌薬の有効性や安全性の観点から 投与設計を最適化し適正な臨床使用を目指すための考え方 - 効果指標: time above MIC(TAM) = 時間依存的に効果を発揮 → 「組織における薬物濃度がMICを上回っている時間」が重要 #7.
β-ラクタム系抗菌薬 総論 / つまり︖ 1° アンピシリン・スルバクタム 3g 12時間毎投与 2° アンピシリン・スルバクタム 1.5g 6時間毎投与 (いずれも1時間で点滴静注するものとする) より理想的なのは? #8.
β-ラクタム系抗菌薬 総論 / つまり︖ 1° アンピシリン・スルバクタム 3g 12時間毎投与 2° アンピシリン・スルバクタム 1.5g 6時間毎投与 (いずれも1時間で点滴静注するものとする) より理想的なのは? #9.
β-ラクタム系抗菌薬 総論 / 投与設計をより深く考えてみる - 投与間隔: 薬剤の⾎中濃度半減期の4-6倍が⽬安 半減期 およそ1時間 半減期 およそ2時間 半減期 6時間以上 → 4-6時間毎投与(ペニシリンG,アンピシリンなど) → 8-12時間毎投与(セファゾリン,セフェピムなど) → 24時間毎投与(セフトリアキソン) #10.
β-ラクタム系抗菌薬 総論 / 投与設計をより深く考えてみる - TAMを延⻑させるのに投与時間を延⻑する → PK/PD理論上,治療効果を向上させる可能性がある → お⾦が掛からない(スタッフの理解を得る必要はある) → 緊急疾患を疑う場合(=急速に⾎中濃度を⾼めたい時) は除く - 敗⾎症性ショック,細菌性髄膜炎の初回投与時など 少なくとも「30分で点滴」はダメ β-ラクタム系抗菌薬の投与時間と効果 #12. β-ラクタム系抗菌薬 総論 / 投与設計をより深く考えてみる - 24時間持続点滴が可能な薬剤もある → セフェピム,ピペラシリン・タゾバクタム,ペニシリンG e.g.) セフェピム: 初回15mg/kgを30分で静注(loading dose) その後, CCr >60mL/min: 6gを生食250mLに溶解し24時間持続静注 CCr 30-60mL/min: 4gを生食250mLに溶解し24時間持続静注 CCr <30mL/min: 2gを生食250mLに溶解し24時間持続静注 日本語版サンフォード感染症診療ガイドアップデート版「セフェピム(CFPM, マキシピーム) “1 用法および用量”」を基に筆者作成: https://lsp-sanford.jp/sguide/aaindex2.php , 2023年6月13日閲覧. #13.
β-ラクタム系抗菌薬 総論のまとめ / β-ラクタムは殺菌的に作用する // β-ラクタムの投与間隔は半減期の4-6倍の時間 // β-ラクタムは低用量・高頻度・長時間投与 静注ペニシリンGの特性と抗菌スペクトラム #14.
もくじ / β-ラクタム系抗菌薬 総説 // 静注用ペニシリン系抗菌薬 6種類 /// 経口ペニシリン系抗菌薬 2種類 #15.
静注ペニシリン 1/6 ペニシリンG / ペニシリン系抗菌薬の基本形 // 中枢神経系への移⾏性: 有 /// 腎機能障害時の⽤量調節: 要(多くの場合アンピシリンで代替) //// 肝機能障害時の⽤量調節: 不要 ///// 妊婦への投与: 可 ////// 溶解液: ⽣理⾷塩⽔または5%ブドウ糖液 #16.
静注ペニシリン 1/6 ペニシリンG / 抗菌スペクトラムを把握する - 基本はグラム陽性菌 ・A, B, G群β溶⾎性レンサ球菌 ・Streptococcus pneumoniae(肺炎球菌) ・Enterococcus spp.を含むその他のレンサ球菌 ・グラム陽性偏性嫌気性菌 – ”横隔膜より上の嫌気性菌” - Peptostreptococcus spp., Peptococcus spp., Clostridium spp., etc. ・放線菌 – Actinomyces spp.など ・Treponema pallidum(梅毒トレポネーマ) - 筋注⽤の製剤が2022年1⽉に上市・販売中.ただし神経梅毒は原則静注 #17.
静注ペニシリン 1/6 ペニシリンG / ⾎中半減期: 0.5時間 – 頻回投与︕ - 24時間持続点滴静注がよい選択肢となる場合がある // 臨床使⽤する場合の注意点 - 100万単位あたり1.53mEqのカリウムを含有する - ペニシリンアレルギー(⽐較的稀だが迅速な対処を要する) /// 標準的な投与設計 - 1,200-2,400万単位/⽇を6回/⽇(4時間毎)に分割し静注 → 300万単位/回を6回/⽇(1,800万単位/⽇)くらいが妥当か #18.
静注ペニシリン 2/6 アンピシリン / アミノペニシリン // 中枢神経系への移⾏性: 有 /// 腎機能障害時の⽤量調節: 要 //// 肝機能障害時の⽤量調節: 不要 ///// 妊婦への投与: 可 ////// 溶解液: ⽣理⾷塩⽔ - ブドウ糖液は溶液中で失活する割合が上昇するので避ける #19.
静注ペニシリン 2/6 アンピシリン / 抗菌スペクトラムを把握する - グラム陽性菌 + 腸内細菌⽬細菌”PEK”のうち”PE” ・A, B, G群β溶⾎性レンサ球菌 ・Streptococcus pneumoniae(肺炎球菌) ・感受性のあるEnterococcus spp.を含むその他のレンサ球菌 ・”PE” = Pro︖teus mirabilis, Escherichia coli ・グラム陽性偏性嫌気性菌 – ”横隔膜より上の嫌気性菌” ・放線菌 – Actinomyces spp.など ・Listeria monocytogenes #20.
静注ペニシリン 2/6 アンピシリン / 抗菌スペクトラムを把握する - グラム陽性菌 + 腸内細菌⽬細菌”PEK”のうち”PE” ・A, B, G群β溶⾎性レンサ球菌 ・Streptococcus pneumoniae(肺炎球菌) ・感受性のあるEnterococcus spp.を含むその他のレンサ球菌 ・”PE” = Proteus mirabilis, Escherichia coli ・グラム陽性偏性嫌気性菌 – ”横隔膜より上の嫌気性菌” ・放線菌 – Actinomyces spp.など ・Listeria monocytogenes アンピシリン・スルバクタムの使用法と注意点 #21.
静注ペニシリン 2/6 アンピシリン / ⾎中半減期: 1.2時間 - やはり頻回投与 // 臨床使⽤する場合の注意点 - ペニシリンアレルギー(⽐較的稀) → アモキシシリン・セファレキシン・セファクロルとの交叉アレルギー留意 - 腸球菌に対しては静菌的に働く → 侵襲性感染症(感染性⼼内膜炎など)はアミノグリコシド・セフトリアキソン併⽤ /// 標準的な投与設計 - 2g/回を6時間毎に点滴静注 #22.
静注ペニシリン 3/6 アンピシリン・スルバクタム / アミノペニシリン + β-ラクタマーゼ阻害薬 // 中枢神経系への移⾏性: 有 / 無 /// 腎機能障害時の⽤量調節: 要 //// 肝機能障害時の⽤量調節: 不要 ///// 妊婦への投与: 可 ////// 溶解液: ⽣理⾷塩⽔ - ブドウ糖液は溶液中で失活する割合が上昇するので避ける #23.
静注ペニシリン 3/6 アンピシリン・スルバクタム / 抗菌スペクトラムを把握する・・・超広域︕ アンピシリンの抗菌スペクトラム + ・“PEK” – Proteus mirabilis, Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae/oxytoca ・Acinetobacter baumannii – 第⼀選択薬.スルバクタムが抗菌作⽤を⽰す ・偏性嫌気性菌 – Bacteroides spp., Prevotella spp., Fusobacterium spp. etc. ・Capnocytophaga spp. ・Pasteurella multocida #24.
静注ペニシリン 3/6 アンピシリン・スルバクタム / 抗菌スペクトラムを把握する・・・超広域︕ アンピシリンの抗菌スペクトラム + ・“PEK” – Proteus mirabilis, Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae/oxytoca ・Acinetobacter baumannii – 第⼀選択薬.スルバクタムが抗菌作⽤を⽰す ・偏性嫌気性菌 – Bacteroides spp., Prevotella spp., Fusobacterium spp. etc. ・Capnocytophaga spp. ・Pasteurella multocida 動物咬傷後の皮膚軟部組織感染症 #25.
静注ペニシリン 3/6 アンピシリン・スルバクタム / ⾎中半減期: 1.2/1.7時間 - やはり頻回投与 // 臨床使⽤する場合の注意点 - ペニシリンアレルギー(⽐較的稀) → アモキシシリン・セファレキシン・セファクロルとの交叉アレルギー留意 /// 標準的な投与設計 - 3g/回を6時間毎に点滴静注 ピペラシリン・タゾバクタムの特性と投与設計 #26.
静注ペニシリン 4/6 ピペラシリン・タゾバクタム / ウレイドペニシリン + β-ラクタマーゼ阻害薬 - 抗緑膿菌ペニシリン = 抗緑膿菌作⽤あり // 中枢神経系への移⾏性: 有 / 無 /// 腎機能障害時の⽤量調節: 要 //// 肝機能障害時の⽤量調節: 不要 ///// 妊婦への投与: 可 ////// 溶解液: ⽣理⾷塩⽔ - ブドウ糖液は溶液中で失活する割合が上昇するので避ける #27.
静注ペニシリン 4/6 ピペラシリン・タゾバクタム / 抗菌スペクトラムを把握する・・・超超超広域︕ アンピシリン・スルバクタムの抗菌スペクトラム + ・Pseudomonas aeruginosa – 最重要︕ただし必ずしも第⼀選択薬ではない ・Acinetobacter baumannii – 第⼀選択薬ではない ・ESBLs-producing “PEK” – 治療成績がカルバペネムより劣る = 第⼀選択薬ではない ・”PMSECK” – AmpC型β-ラクタマーゼ過剰産⽣を誘導しやすい = 第⼀選択薬ではない - Providencia spp., Morganella morgan︖i, Serratia marcescens, Enterobacter cloacae, Citrobacter freundii, Klebsiella aerogenes 多くのケースで第一選択薬にならない = 多くはde-escalationが必要 empiric therapyに留め漫然と使用するのは避けること #28.
静注ペニシリン 4/6 ピペラシリン・タゾバクタム / 抗菌スペクトラムを把握する・・・超超超広域︕ アンピシリン・スルバクタムの抗菌スペクトラム + ・Pseudomonas aeruginosa – 最重要︕ただし必ずしも第⼀選択薬ではない ・Acinetobacter baumannii – 第⼀選択薬ではない ・ESBLs-producing “PEK” – 治療成績がカルバペネムより劣る = 第⼀選択薬ではない ・”PMSECK” – AmpC型β-ラクタマーゼ過剰産⽣を誘導しやすい = 第⼀選択薬ではない - Providencia spp., Morganella morganii, Serratia marcescens, Enterobacter cloacae, Citrobacter freundii, Klebsiella aerogenes 多くのケースで第一選択薬にならない = 多くはde-escalationが必要 empiric therapyに留め漫然と使用するのは避けること #29.
静注ペニシリン 4/6 ピペラシリン・タゾバクタム / ⾎中半減期: 1/1時間 - やはり頻回投与 // 臨床使⽤する場合の注意点 - ペニシリンアレルギー(⽐較的稀) 低カリウム⾎症 バンコマイシンとの併⽤で起こる腎障害リスク(諸説あり) 抗緑膿菌作⽤がある = 薬剤耐性の問題 /// 標準的な投与設計 - 4.5g/回を6時間毎に点滴静注 #30.
静注ペニシリン 5/6 ピペラシリン / ウレイドペニシリン - 抗緑膿菌ペニシリン = 抗緑膿菌作⽤あり // 中枢神経系への移⾏性: 有 /// 腎機能障害時の⽤量調節: 要 //// 肝機能障害時の⽤量調節: 不要 ///// 妊婦への投与: 可 ////// 溶解液: ⽣理⾷塩⽔ - ブドウ糖液は溶液中で失活する割合が上昇するので避ける アンピシリン・クロキサシリンの使用法と注意点 #31.
静注ペニシリン 5/6 ピペラシリン / 抗菌スペクトラムを把握する ・Pseudomonas aeruginosa -「感受性のある緑膿菌に対する標的治療薬」と⼼得る #32.
静注ペニシリン 5/6 ピペラシリン / ⾎中半減期: 1時間 - やはり頻回投与 // 臨床使⽤する場合の注意点 - ペニシリンアレルギー(⽐較的稀) - 抗緑膿菌作⽤がある = 薬剤耐性の問題 /// 標準的な投与設計 - 4g/回を6時間毎に点滴静注 #33.
静注ペニシリン / アンピシリン + 6/6 アンピシリン・クロキサシリン 抗⻩⾊ブドウ球菌ペニシリン - 本邦唯⼀の抗⻩⾊ブドウ球菌ペニシリン - クロキサシリン単剤の販売はなし // 中枢神経系への移⾏性: 有 /// 腎機能障害時の⽤量調節: 要 //// 肝機能障害時の⽤量調節: 不要 ///// 妊婦への投与: 可 ////// 溶解液: ⽣理⾷塩⽔ - ブドウ糖液は溶液中で失活する割合が上昇するので避ける #34.
静注ペニシリン 6/6 アンピシリン・クロキサシリン / 抗菌スペクトラムを把握する アンピシリンの抗菌スペクトラム + ・Staphylococcus aureus #35.
静注ペニシリン 6/6 アンピシリン・クロキサシリン / ⾎中半減期: 1.2/0.5時間 - やはり頻回投与 // 臨床使⽤する場合の注意点 - ペニシリンアレルギー(⽐較的稀) /// 標準的な投与設計 - 2g/回を4-6時間毎に点滴静注 確認問題とβ-ラクタム系抗菌薬の理解 #36.
確認問題 / 梅毒(神経梅毒を除く)に対する第一選択を選べ(2023年現在). ① ペニシリンG 筋注 ② ペニシリンG 静注 ③ アンピシリン・スルバクタム 静注 ④ このいずれでもない #37.
確認問題 / 梅毒(神経梅毒を除く)に対する第一選択を選べ(2023年現在). ① ペニシリンG 筋注 ② ペニシリンG 静注 ③ アンピシリン・スルバクタム 静注 ④ このいずれでもない #38.
確認問題 / 緑膿菌に活性を持つ薬剤を全て選べ. ① アンピシリン・スルバクタム ② ピペラシリン・タゾバクタム ③ ピペラシリン ④ アンピシリン・クロキサシリン #39.
確認問題 / 緑膿菌に活性を持つ薬剤を全て選べ. ① アンピシリン・スルバクタム ② ピペラシリン・タゾバクタム ③ ピペラシリン ④ アンピシリン・クロキサシリン #40.
確認問題 / “PMSECK”グループに含まれないものはどれか. ① Morganella morganii ② Serratia marcescens ③ Escherichia coli ④ Klebsiella aerogenes #41.
確認問題 / “PMSECK”グループに含まれないものはどれか. ① Morganella morganii ② Serratia marcescens ③ Escherichia coli ④ Klebsiella aerogenes #42.
確認問題 / Bacteroides属に効果が期待できる薬剤を全て選べ. ① アンピシリン ② アンピシリン・スルバクタム ③ ピペラシリン ④ ピペラシリン・タゾバクタム #43.
確認問題 / Bacteroides属に効果が期待できる薬剤を全て選べ. ① アンピシリン ② アンピシリン・スルバクタム ③ ピペラシリン ④ ピペラシリン・タゾバクタム #44.
もくじ / β-ラクタム系抗菌薬 総説 // 静注用ペニシリン系抗菌薬 6種類 /// 経口ペニシリン系抗菌薬 2種類 経口ペニシリンのアモキシシリンの特性 #45. 経口ペニシリン 1/2 アモキシシリン 主たる標的臓器: 顔周り(⼝腔,咽頭,中⽿,副⿐腔) アンピシリン / ペニシリン系抗菌薬 = β-ラクタム系抗菌薬(β-lactam; BL): 細胞壁の合成阻害 - アミノペニシリン - 構造上はアンピシリンにヒドロキシ基がついているだけ → 腸管からの吸収率が著しく上昇1) ・バイオアベイラビリティ(%F): 90%2) (vs アンピシリン 50%2)) ・”well absorbed after oral administration”3) アモキシシリン // 安全域は広いが注意すべき有害事象 - 伝染性単核球症への投与で起こる⾮掻痒性⽪疹 → 詳細なメカニズム不明.古典的アレルギーに分類されないようである → 頻度は70-90%と考えられてきたが4),これより低率とする報告あり5), 6), 7) 1) 2) 3) 4) 5) 6) 7) 日本語版サンフォード感染症治療ガイド ‒ アップデート版 アモキシシリン.https://lsp-sanford.jp/sguide/aaindex2.php (Accessed 2022/7/8) CB Cunha, BA Cunha. Antibiotic Essentials(London: JAYPEE BROTHERSMEDICAL PUBLISHERS, 2020), 552-554. ML Grayson, et al. Kucers̀ The Use Of Antibiotics,(Florida: CRC Press, 2018), 112-113. Horwitz CA, et al. Heterophil-negative infectious mononucleosis and mononucleosis-like illnesses. Laboratory confirmation of 43 cases. Am J Med. 1977;63(6):947. Lendak D, et al.. Rash in primary Epstein-Barr virus infection [in Serbian], Med Pregl, 2012, vol. 65 (pg. 138-41) Chovel-Sella A, et al. Incid #46.
経口ペニシリン 1/6 アモキシシリン / 抗菌スペクトラムを把握する – アンピシリンとほぼ同⼀ - グラム陽性菌 + 腸内細菌⽬細菌”PEK”のうち”PE” ・A, B, G群β溶⾎性レンサ球菌 ・Streptococcus pneumoniae(肺炎球菌) ・感受性のあるEnterococcus spp.を含むその他のレンサ球菌 ・Proteus mirabilis, Escherichia coli ・グラム陽性偏性嫌気性菌 – ”横隔膜より上の嫌気性菌” ・放線菌 – Actinomyces spp.など ・Listeria monocytogenes ・Treponema pallidum #47.
経口ペニシリン 1/2 アモキシシリン 主たる標的臓器: 顔周り(⼝腔,咽頭,中⽿,副⿐腔) / 基本の投与量 - 1回500mg(⼒価) 1⽇3回経⼝投与(朝昼⼣⾷後) 添付⽂書上の⽤法・⽤量(本邦・成⼈): 通常1回250mg(⼒価)を1⽇3-4回経⼝投与(年齢・症状により適宜増減) 国際的な標準投与設計: 1回500-1,000mg(⼒価)を1⽇3回経⼝投与1), 2) 溶連菌咽頭炎: 1回500mgを1⽇2回(朝⼣⾷後)経⼝投与・10⽇間 #48. 経口ペニシリン 2/2 アモキシシリン・クラブラン酸 主たる標的臓器: 顔周り(副⿐腔),肺,腹腔内臓器,膿瘍,動物咬傷など / アモキシシリン(BL) + β-ラクタマーゼ阻害薬(β-lactamase inhibitor; BLI) - 本邦の経⼝BLBLIラインナップの中で最も実⽤的(2023年3⽉現在) - Bacteroides属など偏性嫌気性グラム陰性桿菌を含む広域抗菌スペクトル → 経⼝抗菌薬のカテゴリでは最終兵器的存在 クラブラン酸 // クラブラン酸は世界で初めて臨床使⽤されたBLI - Streptomyces clavuligerus(カビ)から分離 - BLに類似の構造で弱い抗菌作⽤あるが,弱すぎて抗菌薬としての臨床使⽤は無理8) → ⼀⽅でBLとの同時投与でβ-ラクタマーゼに不可逆的に結合しBLの不活化を阻害 - 基質拡張型β-ラクタマーゼ(Extended-Spectrum β-lactamases; ESBLs)も阻害可能 → ただし臨床での利⽤価値はまだ限定的.ガイドラインレベルの推奨は膀胱炎のみ9) 8) ML Grayson, et al. Kucers̀ The Use Of Antibiotics,(Florida: CRC Press, 2018), 226-227. 9) Pranita DT, et al. Infectious Diseases Society of America 2022 Guidance on the Treatment of Extended- Spectrum β-lactamase Producing Enterobacterales (ESBL-E), Carbapenem-Resistant Enterobacterales (CRE), and Pseudomonas aeruginosa with Difficult-to-Treat Resistance (DTR- P. aeruginosa). https://www.idsociety.org/globalassets/idsa/practice-guidelines/amr-guidance/1.0/idsa-amr-guidance-v1.1.pdf . (accessed 2022/7/10) #49.
経口ペニシリン 2/2 アモキシシリン・クラブラン酸 / 抗菌スペクトラムを把握する – アンピシリン・スルバクタムと類似 アンピシリンの抗菌スペクトラム + ・“PEK” – Proteus mirabilis, Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae/oxytoca ・偏性嫌気性菌 – Bacteroides spp., Prevotella spp., Fusobacterium spp. etc. ・Capnocytophaga spp. ・Pasteurella multocida 動物咬傷後の皮膚軟部組織感染症 Acinetobacter baumannii の治療には使えない #50.
経口ペニシリン 2/2 アモキシシリン・クラブラン酸 主たる標的臓器: 顔周り(副⿐腔),肺,腹腔内臓器,膿瘍,動物咬傷など / 互換性のある静注薬: アンピシリン・スルバクタム - 稀にde-escalationに注意を要するケース: ︖ // 外来診療においては極めて広域と捉えるべき薬剤 - なるべく温存の態度が重要 - 広域抗菌薬あるある(?): 副作⽤の懸念 添付⽂書上の⽤法・⽤量(本邦・成⼈): 通常1回250mgを1⽇3-4回経⼝投与(年齢・症状により適宜増減) + クラブラン酸125mg 国際的な標準投与設計: 1回500mgを1⽇2-3回 / 1回875mgを1⽇2回経⼝投与 + クラブラン酸125mg + クラブラン酸125mg (いずれもアモキシシリン換算) #51.
経口ペニシリン 2/2 アモキシシリン・クラブラン酸 主たる標的臓器: 顔周り(副⿐腔),肺,腹腔内臓器,膿瘍,動物咬傷など / 互換性のある静注薬: アンピシリン・スルバクタム - 稀にde-escalationに注意を要するケース: Acinetobacter baumannii // 外来診療においては極めて広域と捉えるべき薬剤 - なるべく温存の態度が重要 - 広域抗菌薬あるある(?): 副作⽤の懸念 添付⽂書上の⽤法・⽤量(本邦・成⼈): 通常1回250mgを1⽇3-4回経⼝投与(年齢・症状により適宜増減) + クラブラン酸125mg 国際的な標準投与設計: 1回500mgを1⽇2-3回 / 1回875mgを1⽇2回経⼝投与 + クラブラン酸125mg + クラブラン酸125mg (いずれもアモキシシリン換算) アモキシシリン・クラブラン酸の使用法と副作用 #52.
経口ペニシリン 2/2 アモキシシリン・クラブラン酸 / クラブラン酸配合によるデメリットその①: 肝障害 - アモキシシリン単剤では0.3-0.4/10000に対し1.7/100001).ただし致死的な肝障害は稀 - ⻩疸・⽪膚掻痒感で発症.病理学的には胆管内胆汁うっ滞2) = 胆汁うっ滞型肝障害 - 55歳以上・男性>⼥性でリスク増加3) → 薬剤アレルギーの⼀部らしく,投与期間の⻑短や投与量は関係ない3), 4)ようだ // クラブラン酸配合によるデメリットその②: 下痢 - 恐らく最も有名.添付⽂書上も「悪⼼,嘔吐,下痢,⾷欲不振」は0.1-5%未満で記載有5) → このうちおよそ20%はCDI(Clostridioides difficile infection)だとする報告あり6), 7), 8) - 腸内正常細菌叢の撹乱(collateral damage)と⼩腸の蠕動運動亢進作⽤が原因かも︖9), 10), 11) - ⾼容量投与および頻回投与12), 13)・⻑期間投与14)等がリスクになる 1) Vial T, et al. Antibiotic-associated hepatitis: update from 1990. Ann Pharmacother. 1997; 31: 204-220 2) Richardet J-P, et al. Prolonged cholestasis with ductopenia after administration of amoxicillin/clavulanic acid. Dig Dis Sci. 1999; 44: 1997-2000 3) Thomson JA, et al. Risk factors for the development of amoxycillin-clavulanic acid associated jaundice. Med J Aust. 1995; 162: 638-640 4) Foureau DM, et al. Comparative analysis of portal hepatic infiltrating leucocytes in acute drug-induced liver injury, idiopathic autoim #53.
経口ペニシリン 2/2 アモキシシリン・クラブラン酸 / クラブラン酸配合によるデメリットその①: 肝障害 - アモキシシリン単剤では0.3-0.4/10000に対し1.7/100001).ただし致死的な肝障害は稀 - ⻩疸・⽪膚掻痒感で発症.病理学的には胆管内胆汁うっ滞2) = 胆汁うっ滞型肝障害 - 55歳以上・男性>⼥性でリスク増加3) → 薬剤アレルギーの⼀部らしく,投与期間の⻑短や投与量は関係ない3), 4)ようだ 副作用を 減らせないか? // クラブラン酸配合によるデメリットその②: 下痢 - 恐らく最も有名.添付⽂書上も「悪⼼,嘔吐,下痢,⾷欲不振」は0.1-5%未満で記載有5) → このうちおよそ20%はCDI(Clostridioides difficile infection)だとする報告あり6), 7), 8) - 腸内正常細菌叢の撹乱(collateral damage)と⼩腸の蠕動運動亢進作⽤が原因かも︖9), 10), 11) - ⾼容量投与および頻回投与12), 13)・⻑期間投与14)等がリスクになる 1) Vial T, et al. Antibiotic-associated hepatitis: update from 1990. Ann Pharmacother. 1997; 31: 204-220 2) Richardet J-P, et al. Prolonged cholestasis with ductopenia after administration of amoxicillin/clavulanic acid. Dig Dis Sci. 1999; 44: 1997-2000 3) Thomson JA, et al. Risk factors for the development of amoxycillin-clavulanic acid associated jaundice. Med J Aust. 1995; 162: 638-640 4) Foureau DM, et al. Comparative analysis of portal hepatic infiltrating leucocytes in acute drug-induced liver injury, idi #54.
経口ペニシリン 2/2 アモキシシリン・クラブラン酸 副作⽤を減らすにあたり 第三者が保証する治療効果を得るための投与設計を 添付⽂書から⼤きく逸脱せずに達成したい このアイディアから生まれたのが「オグサワ処方」 #55.
経口ペニシリン 2/2 アモキシシリン・クラブラン酸 投与設計に注⽬ 添付⽂書上の⽤法・⽤量(本邦・成⼈): 通常1回250mgを1⽇3-4回経⼝投与(年齢・症状により適宜増減) + クラブラン酸125mg 国際的な標準投与設計: 1回500mgを1⽇2-3回 / 1回875mgを1⽇2回経⼝投与 + クラブラン酸125mg + クラブラン酸125mg (いずれもアモキシシリン換算) #56.
経口ペニシリン 2/2 アモキシシリン・クラブラン酸 副作⽤を減らすにあたり / 第三者が保証する治療効果を得るための投与設計を 添付⽂書から⼤きく逸脱せずに達成したい = アモキシシリン1,500mg/⽇は投与したい クラブラン酸の投与頻度・投与量を減らしたい #57.
経口ペニシリン 2/2 アモキシシリン・クラブラン酸 処⽅案①: 正攻法”オグサワ処⽅” オーグメンチン®配合錠250RS 1錠 + サワシリン®250mg 1カプセル/錠 → アモキシシリン500mg/クラブラン酸125mg(4:1) 1⽇3回内服 ◎ 海外での成人の標準投与量に完全に準拠 ◎ 添付文書を逸脱しない(「適宜増減」の範疇に収まる) ◎ 処方医にとって理解しやすく,PK/PD理論の上でも理に適っている 時間依存性抗菌薬 = 分割投与が原則 #58.
経口ペニシリン 2/2 アモキシシリン・クラブラン酸 処⽅案②: “オグサワ変法” オーグメンチン®配合錠250RS 1錠 + サワシリン®250mg 2カプセル/錠 → アモキシシリン750mg/クラブラン酸125mg(6:1) 1⽇2回内服 海外での成人の標準投与量に近似 添付文書を大きくは逸脱しない 添付文書の縛りの中で7:1に近似 (「適宜増減」の範疇に収まる) 昼の内服が不要 = アドヒアランスが遵守されやすい(日中仕事や学校に出る若者などで特に) 正統派”オグサワ処方”よりクラブラン酸投与量・回数が少ない(375mg vs 250mg, 3回 vs 2回) → 下痢のリスクは低減できるかもしれない #59.
経口ペニシリン 2/2 アモキシシリン・クラブラン酸 「オグサワ処⽅」が抱える問題点 / オーグメンチン®錠の吸湿性のため⼀包化出来ない // 保険診療上査定されてしまうケースが根強くある - 「オーグメンチン®」と「サワシリン®」が「2種類の抗菌薬」と扱われるため - 保険審査担当者の裁量となるため,査定される・されないは地域差あり - どうしても査定されてはまずい状況下では添付⽂書の範疇で使⽤する他ない → オーグメンチン®配合錠RS250 1回2錠1⽇3回(朝昼⼣⾷後)内服(500mg/250mg x3) #60.
総評 / ペニシリンG: ★★★☆☆ - 標的治療薬として重要.K負荷注意. // アンピシリン: ★★★★☆ - 標的治療薬として重要. ペニシリンGが何らかの事情で使えない時のバックアップにも. /// アンピシリン・スルバクタム: ★★★★★ - 最も身近な広域抗菌薬.汎用性は随一.濫用に注意. //// ピペラシリン・タゾバクタム: ★★★★☆ - empiric therapyの雄.第一選択にほぼならない.濫用注意. #61.
総評 / ピペラシリン: ★★★☆☆ - 緑膿菌の標的治療薬として重要.積極的にde-escalationを. // アンピシリン・クロキサシリン: ★★☆☆☆ - クロキサシリン単剤だったら・・・. /// アモキシシリン: ★★★★★ - 顔まわりの感染症に.梅毒治療でもギリギリポジションあり. //// アモキシシリン・クラブラン酸: ★★★★★ - 経口抗菌薬界の最終兵器の一角.下痢と肝障害に注意. #62.
終 ミニマム抗菌薬シリーズ β-ラクタム系抗菌薬 - ペニシリン系 -