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2024.11.11講演会資料 感染症診療の攻略法 L1.png

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2024.11.11講演会資料 感染症診療の攻略法

投稿者プロフィール
新米ID
Award 2022 受賞者

総合病院鹿児島生協病院

51,691

167

概要

講演会資料を供覧します。

若手医師・医学生・ASTスタッフを対象に感染症診療についてお話させていただきました。

感染症診療の基本の理解になれば幸いです。

本スライドの対象者

医学生/研修医

投稿された先生へ質問や勉強になったポイントをコメントしてみましょう!

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テキスト全文

感染症診療のビジョンと研修医の課題

#1.

#2.

Vision of the Department of Infectious Diseases ➢ 地域需要の多い感染性疾患に対して 世界標準の診療を行う 感染症診療 ➢ 予期せぬ新興感染症に対応できる応用 力を要した人材を育成する ➢ 耐性菌や新興感染症対策を地域の病院 や施設へ還元する ➢ 診療科に限らず独力で適切な内科診療 と重症管理を担える能力を獲得できるよ う研修医を指導する ➢ 教育 患者-家族の生活背景を理解し、退院後 の生活を見据えた診療ができる人材を 育成する ➢ 治療困難な患者であっても、患者-家族 が後悔のないよう最後まで寄り添うこと のできる人材を育成する ➢ 人工呼吸器や透析管理など院所に応じ た侵襲的デバイスを駆使し、自施設で 診療可能なレベルのあらゆる内科疾患の 重症管理を行う 重症管理 ➢ 専門家に依存することなく、重症患者 の内科管理と全身管理を独力で担える人 材を育成する ➢ 自施設で可能な診療の限界を適切に判 断し、高次医療機関との連携を強化する

#3.

研修医に聞いた 感染症を難しく感じる理由 抗菌薬がよく分からない 微生物がよく分からない 治療法が変わる

市中肺炎の疫学と発症

#4.

市中肺炎

#6.

市中肺炎があらわれた!

新米IDの抗菌薬と重症管理

#7.

新米ID HP:20 MP:8 レベル:1 ◆ 抗菌薬 ◆ 疫学 ◆ グラム染色 ◆ コンサルト 1. PCG: MP-1 2. ABPC: MP-3 3. CTRX: MP-5 4. MEPM: MP-10

#8.

新米ID HP:20 MP:8 レベル:1 ◆ 抗菌薬 ◆ 疫学 新米IDはMEPMをつかった! ◆ グラム染色 しかし、MPが足りない!! ◆ コンサルト

#9.

新米ID HP:20 MP:8 レベル:1 ◆ 抗菌薬 ◆ 疫学 ◆ グラム染色 ◆ コンサルト 新米IDは指導医にコンサルトした!

#10.

感染症診療のトライアングル 感染巣の評価 原因菌の追求 抗菌薬の選択

感染症診療の原則と市中肺炎の評価

#11.

感 染 症 診 療 の 原 則 どんな患者さん? 発症場所-市中, 院内, 施設 免疫不全の有無 (好中球機能, 液性, 細胞性) 体内デバイスの有無を確認 感染源はどこ? 臓器特異的な症状, 身体所見を駆使 原因菌はなに? 常在細菌叢, 頻度, 患者背景を考慮 ドレナージはできない? ドレナージ: 確実・大量に原因微生物を除去可 投与時間と投与量は? PK/PDを考慮 (時間依存性 or 濃度依存性) 治療期間は? 採血・尿など一次検査, 画像所見等で同定 感染巣毎の細菌学的検査で同定 ドレナージ困難の場合組織移行性も考慮 腎機能と感染巣に応じた最大量で 感染巣やドレナージの有無で決まっている

#12.

市中肺炎にあてはめると 感染巣の評価     原因菌の追求     疫学 グラム染色 培養検査 遺伝子検査 下気道症状と全身症状 胸部X線検査 胸部CT検査 肺エコー検査 抗菌薬の選択  スペクトル  PK/PD  最大量で

#13.

新米ID HP:20 MP:8 レベル:1 ◆ 抗菌薬 ◆ 疫学 ◆ グラム染色 ◆ コンサルト 新米IDは市中肺炎の原因菌を調べた!

市中肺炎の原因微生物と初期治療

#14.

患者背景 市 中 肺 炎 の 原 因 微 生 物 市中発症 市中発症 乾性咳嗽 肺外症状が目立つ 市中発症 肺外症状が目立つ 相対的徐脈 低Na、低P血症 インフルエンザ後 原因微生物 初期治療 肺炎球菌 インフルエンザ菌 モラキセラ 【内服】 AMPC、AMPC/CVA 【点滴】 ABPC/SBT、CTRX マイコプラズマ クラミドフィラ 【内服】 AZM、DOXY 【点滴】 AZM、MINO レジオネラ 【内服】 LVFX、AZM 【点滴】 LVFX、AZM 黄色ブドウ球菌 肺炎球菌 β溶血性連鎖球菌 【内服】 AMPC/CVA 【点滴】 ABPC/SBT MRSA:VCM、LZD(内服も可)

#15.

感染症診療に役立つ常在細菌叢を形成する代表菌~市中肺炎~ グラム陽性 球菌 上気道 黄色ブドウ球菌 α溶血性連鎖球菌 β溶血性連鎖球菌 肺炎球菌 ペプトコッカス ペプトストレプトコッカス グラム陰性 桿菌 コリネバクテリウム アクチノマイセス 上部消化管 α溶血性連鎖球菌 腸球菌 下部消化管 α溶血性連鎖球菌 腸球菌 クロストリジウム C. difficile 皮膚 黄色ブドウ球菌 CNS β溶血性連鎖球菌 コリネバクテリウム バチルス プロピオニバクテリウム 球菌 モラキセラ ナイセリア 桿菌 インフルエンザ菌 フソバクテリウム プレボテラ 腸内細菌科細菌 ベイオネラ 腸内細菌科細菌 バクテロイデス

#16.

感染症診療に役立つ常在細菌叢を形成する代表菌~インフル後~ グラム陽性 球菌 上気道 黄色ブドウ球菌 α溶血性連鎖球菌 β溶血性連鎖球菌 肺炎球菌 ペプトコッカス ペプトストレプトコッカス グラム陰性 桿菌 コリネバクテリウム アクチノマイセス 上部消化管 α溶血性連鎖球菌 腸球菌 下部消化管 α溶血性連鎖球菌 腸球菌 クロストリジウム C. difficile 皮膚 黄色ブドウ球菌 CNS β溶血性連鎖球菌 コリネバクテリウム バチルス プロピオニバクテリウム 球菌 モラキセラ ナイセリア 桿菌 インフルエンザ菌 フソバクテリウム プレボテラ 腸内細菌科細菌 ベイオネラ 腸内細菌科細菌 バクテロイデス

喀痰グラム染色の有用性と結果

#17.

新米ID HP:20 MP:8 レベル:1 ◆ 抗菌薬 ◆ 疫学 新米IDは市中肺炎の原因菌を調べた! ◆ グラム染色 ???レベルが足りずよくわからなかった! ◆ コンサルト

#18.

新米ID HP:20 MP:8 レベル:1 ◆ 抗菌薬 ◆ 疫学 ◆ グラム染色 ◆ コンサルト 新米IDは喀痰のグラム染色をおこなった!

#19.

肺 炎 診 療 に お け る 喀 痰 グ ラ ム 染 色 の 有 用 性 原因菌診断において喀痰グラム染色は特異度が高い グラム染色-培養 感度 特異度 グラム染色-培養 感度 特異度 GPDC (肺炎球菌) 62.5% 91.5% GNCB (インフルエンザ菌) 60.9% 95.1% GNDC (モラキセラ) 68.2% 96.1% GNR-太 (クレブシエラ) 39.5% 98.2% GNR-細 (緑膿菌) 22.2% 99.8% GPC-cluster (黄ブ菌) 9.1% 100% 原因菌にフォーカスした初期抗菌薬投与が可能 良質な痰を採取できた271人中174人 (64.2%)で 原因菌にフォーカスした抗菌薬で初期から治療可能だった 例. 肺炎球菌-ABPC、モラキセラ-ABPC/SBT、黄ブ菌-VCM empiric therapyと比べて治療失敗率や院内死亡率に差はなく、入院日数は短い アウトカム グラム染色 経験治療 アウトカム グラム染色 初期治療失敗 7.6% 12.2% 抗菌薬の副作用 ICU入室 7.0% 13.9% 抗菌薬の経静脈投与日数 入院日数 9日 11日 院内死亡率 経験治療 2.9% 7.0% 8日 9日 8.1% 9.0% 太字のアウトカム: 統計学的有意差あり https://doi.org/10.1186/1471-2334-14-534

#20.

新米ID HP:20 MP:8 レベル:1 ◆ 抗菌薬 ◆ 疫学 新米IDは喀痰のグラム染色をおこなった! ◆ グラム染色 市中肺炎は真の姿をあらわした!! ◆ コンサルト

抗菌薬の選択と治療の目的

#21.

新米ID HP:20 MP:8 レベル:1 ◆ 抗菌薬 ◆ 疫学 1. インフルエンザ菌 3+ ◆ グラム染色 2. 肺炎球菌 少数 ◆ コンサルト

#22.

新米ID HP:20 MP:8 レベル:1 ◆ 抗菌薬 ◆ 疫学 ◆ グラム染色 ◆ コンサルト 1. インフルエンザ菌 3+ 2. 肺炎球菌 少数 1. PCG: MP-1 2. ABPC: MP-3 3. CTRX: MP-5 4. MEPM: MP-10

#23.

新米ID HP:20 MP:10 レベル:1 ◆ 抗菌薬 1. インフルエンザ菌 3+ 2. 肺炎球菌 少数 ◆ 疫学 新米IDはCTRXをつかった! ◆ グラム染色 市中肺炎に10のダメージ!! ◆ コンサルト

#24.

感 染 症 治 療 の 目 的 は ?

市中肺炎の初期治療とガイドライン

#25.

炎症源となっている微生物を 排除すること 抗菌薬 ドレナージ

#26.

比較 しながら 理解 する

#27.

PK/PDパラメータ Cmax/MIC PK/PD パラメータ 特徴 ペニシリン系 セフェム系 カルバペネム系 時間依存性 1日の投与回数を 増やす Cmax/MIC アミノグリコシド系 ポリエン系 濃度依存性 1日の投与回数を 減らし1回投与量 を増やす AUC/MIC キノロン系 バンコマイシン リネゾリド ダプトマイシン アゾール系 キャンディン系 時間依存性 1日の投与量を 増やす AUC/MIC TAM MIC TAM Cmax:最高血中濃度 AUC:血中濃度-時間曲線下面積 TAM:time above MIC 血中濃度がMICを上回る時間 MIC:最小発育阻止濃度 代表薬剤 理論をスパイス

#28.

患者背景 市 中 肺 炎 の 初 期 治 療 市中発症 市中発症 乾性咳嗽 肺外症状が目立つ 市中発症 肺外症状が目立つ 相対的徐脈 低Na、低P血症 インフルエンザ後 原因微生物 初期治療 緑: Access抗菌薬 肺炎球菌 インフルエンザ菌 モラキセラ 【内服】 AMPC、AMPC/CVA 【点滴】 ABPC/SBT、CTRX マイコプラズマ クラミドフィラ 【内服】 AZM、DOXY 【点滴】 AZM、MINO レジオネラ 【内服】 LVFX、AZM 【点滴】 LVFX、AZM 黄色ブドウ球菌 肺炎球菌 β溶血性連鎖球菌 【内服】 AMPC/CVA 【点滴】 ABPC/SBT、CTRX MRSA:VCM、LZD(内服も可)

抗菌薬のAWaRe分類と使用法

#29.

市 中 肺 炎 ガ イ ド ラ イ ン 外来患者 ICU入院患者 一般病棟入院患者 内服薬 注射薬 注射薬 細菌性肺炎疑い  AMPC/CVA or SBTPC  CDTR-PI  キノロン系 細菌性肺炎疑い  ABPC/SBT  CTRX or CTX  LSFX 緑膿菌を考慮しない場合(A法)  ABPC/SBT  CTRX or CTX 非定型肺炎疑い  MINO  CAM or AZM  キノロン系 非定型肺炎疑い  MINO  AZM  LSFX 緑膿菌を考慮する場合(B法)  PIPC/TAZ  カルバペネム 鑑別困難、レジオネラ疑い  キノロン系 鑑別困難、レジオネラ疑い  LSFX or LVFX A法 or B法+AZM(C法) 注射薬 A法 or B法+LSFX(D法) 細菌性肺炎疑い  CTRX or LSFX A~D法+抗MRSA薬(E法) 非定型肺炎疑い  LSFX  AZM

#31.

患者背景 市 中 肺 炎 の • • 原 • • 因 • 微 • 生 物 市中発症 原因微生物 初期治療 【内服】 AMPC、AMPC/CVA 【点滴】 ABPC/SBT、CTRX 肺炎球菌 インフルエンザ菌 モラキセラ 市中発症 結核に作用 多彩な 副作用 マイコプラズマ 乾性咳嗽 クラミドフィラ 肺外症状が目立つ アキレス腱の疼痛、腫脹 結核に作用することで 関節の疼痛、腫脹 • 結核診断の遅延 市中発症 感覚障害、運動障害 肺外症状が目立つ • 耐性結核の助長 レジオネラ 痙攣、抑うつ 相対的徐脈 視野・聴覚・味覚障害 低Na、低P血症 長期間持続する恐れあり 黄色ブドウ球菌 肺炎球菌 β溶血性連鎖球菌 • • • 【内服】 貴重な薬剤 AZM、DOXY 【点滴】 AZM、MINO 緑膿菌活性のある唯一の内服 膿瘍など良好な組織移行 【内服】 ESBLsやAmpC産生菌への活性 LVFX、AZM 【点滴】 LVFX、AZM 【内服】 AMPC/CVA 【点滴】 ABPC/SBT MRSA:VCM、LZD(内服も可) キノロン系抗菌薬を温存する理由 インフルエンザ後 緑: Access抗菌薬

#32.

件 30 マイコプラズマの件数2024年1月~9月@鹿児島県 142 件 20 10 0 1 4 7 10 13 16 19 22 25 28 31 34 週

マイコプラズマ肺炎の症状と治療

#33.

Mycoplasma pneumoniae 臓器 呼吸器 https://doi.org/10.14740%2Fjocmr3421w 症状・合併症 喘息/COPD増悪、気管支炎、肺胞出血 肺炎: 浸潤影、気管支・血管周囲の間質陰影 【症状・検査】  発熱、咳嗽、筋肉痛、嘔吐下痢が主  相対的徐脈は稀  白血球は正常または減少  CPKやLDHが上昇  PCR、IgM抗体の上昇で診断 消化器 嘔気嘔吐、腹痛、下痢、肝酵素の上昇 心血管 心筋炎・心外膜炎、不整脈、血栓症 【治療】  1st: アジスロマイシン  2nd: テトラサイクリン、キノロン  キノロンはMICが高い傾向  マクロライド耐性株も増加(60-70%)  重症例や神経系・SJS合併例ではステ ロイドやγグロブリンを考慮 腎 神経 筋骨格/皮膚 その他 髄膜炎、脳炎、視神経炎、ギラン・バレー 尿細管炎、糸球体炎、間質性腎炎 紅斑、筋炎、関節炎、粘膜炎 スティーブン・ジョンソン症候群(SJS) 血管炎、汎血球減少、寒冷凝集素症 特発性血小板減少性紫斑病、川崎病

#34.

Mycoplasma pneumoniae https://doi.org/10.14740%2Fjocmr3421w 【症状・検査】  発熱、咳嗽、筋肉痛、嘔吐下痢が主  相対的徐脈は稀  白血球は正常または減少  CPKやLDHが上昇  PCR、IgM抗体の上昇で診断 【治療】  1st: アジスロマイシン  2nd: テトラサイクリン、キノロン  キノロンはMICが高い傾向  マクロライド耐性株も増加(60-70%)  重症例や神経系・SJS合併例ではステ ロイドやγグロブリンを考慮 臓器 症状・合併症 耐性株が増加していてもAZMが第一選択の理由 喘息/COPD増悪、気管支炎、肺胞出血 呼吸器 肺炎: 浸潤影、気管支・血管周囲の間質陰影  成人では小児と比べマクロライド耐性を誘導する 変異 (23SrRNAのA2063G変異)が有意に少ない 嘔気嘔吐、腹痛、下痢、肝酵素の上昇 消化器 https://doi.org/10.1128/AAC.01421-12 心筋炎・心外膜炎、不整脈、血栓症 心血管  マイコプラズマはself-limitedであることが多いこと や、マクロライドによる抗炎症作用によって、耐性 髄膜炎、脳炎、視神経炎、ギラン・バレー 神経 株をマクロライドで治療しても臨床効果に差がない 腎 https://doi.org/10.3389/fmicb.2016.00974 尿細管炎、糸球体炎、間質性腎炎  マクロライド耐性株にマクロライドで治療を始め 紅斑、筋炎、関節炎、粘膜炎 ても合併症の発生率は変わらないため、48-72時間 筋骨格/皮膚 スティーブン・ジョンソン症候群(SJS) の治療効果判定後に第二選択薬へ変更可能 https://doi.org/10.3389/fmicb.2016.00974 その他 血管炎、汎血球減少、寒冷凝集素症 特発性血小板減少性紫斑病、川崎病

#35.

抗菌薬の正解は 1つ とは限らない

#36.

「正解は 1つ とは限らない」ことが 面白 い

#37.

抗菌薬の新規開発は見込めない 年間死者数 1000万人 耐性菌の脅威 GDP 3.8%減少 https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000250185

薬剤耐性の現状と対策

#38.

英国 薬剤耐性レビュー委員会 薬剤耐性菌対策を行わなければ2050年には 年間死者数 1000万人 耐性菌によって毎年1000万人が死亡すると試算 死亡の要因  耐性菌感染症による直接死  癌治療や移植、集中治療といった高度医療の提供不全 https://iiif.wellcomecollection.org/file/b28644797_160525_Final%20paper_with%20cover.pdf

#39.

世界銀行 薬剤耐性菌対策を行わなければ2050年には GDP 3.8%減少 耐性菌によって世界の年間GDPは3.8%減少と試算 2008年に発生したリーマンショック級の金融危機 https://documents1.worldbank.org/curated/en/323311493396993758/pdf/final-report.pdf

#40.

日本の力を結集する ―AMR(薬剤耐性)によって 亡くなる命を減らすために―

#41.

抗 菌 薬 の 不適正使用 を A ntimicrobial S tewardship 第46回抗菌薬適正使用生涯教育セミナースライドを一部改変 不必要な使用  かぜに抗菌薬  無症候性細菌尿に抗菌薬 不要な抗菌薬使用の制限、抗菌薬の選択・量・投与ルート・期間を最適化することで  原因菌の感受性判明後の広域抗菌薬  不必要に広域な抗菌薬 不適切な使用  耐性菌に無効な抗菌薬 臨床的な治癒を最大限にし、耐性菌の抑制や 副作用の回避を狙う  肝腎機能で調整しない抗菌薬 適正使用 へ

抗菌薬の不適正使用と適正使用支援

#42.

患者背景 市 中 肺 炎 の 初 期 治 療 市中発症 市中発症 乾性咳嗽 肺外症状が目立つ 市中発症 肺外症状が目立つ 相対的徐脈 低Na、低P血症 インフルエンザ後 原因微生物 初期治療 緑: Access抗菌薬 肺炎球菌 インフルエンザ菌 モラキセラ 【内服】 AMPC、AMPC/CVA 【点滴】 ABPC/SBT、CTRX マイコプラズマ クラミドフィラ 【内服】 AZM、DOXY 【点滴】 AZM、MINO レジオネラ 【内服】 LVFX、AZM 【点滴】 LVFX、AZM 黄色ブドウ球菌 肺炎球菌 β溶血性連鎖球菌 【内服】 AMPC/CVA 【点滴】 ABPC/SBT、CTRX MRSA:VCM、LZD(内服も可)

#43.

Access AWaRe分類 ペニシリン系 セフェム系 Watch 注射 内服 ベンジルペニシリン ベンザチン-ベンジルペニシリン アンピシリン アンピシリン/スルバクタム アモキシシリン アモキシシリン/クラブラン酸 スルタミシリン ピペラシリン ピペラシリン/タゾバクタム セファレキシン セフメタゾール フルモキセフ セフォタキシム セフトリアキソン ラタモキセフ セフタジジム セフェピム セフォゾプラン セファゾリン Access 注射 Reserve 内服 注射 内服 https://www.who.int/publications/i/item/WHO-MHP-HPS-EML-2023.04 セファクロル セフジニル セフジトレンピボキシル Watch セフトロザン/タゾバクタム セフィデロコル Reserve ドリペネム イミペネム/シラスタチン メロペネム パニペネム ペネム系 カルバペネム系 一般感染症の 耐性化が懸念されるため 抗菌薬耐性のために モノバクタム系 第一選択薬 or 第二選択薬 限られた疾患や適応にのみ 他の抗菌薬が使用できない アズトレオナム アルベカシン 使用すべき抗菌薬 カナマイシン ゲンタマイシン アミカシン すべての国で広く利用できる アミノグリコシド系 トブラマイシン ストレプトマイシン 抗菌薬 シプロフロキサシン レボフロキサシン パズフロキサシン キノロン系 イミペネム/シラスタチン/ レレバクタム ファロペネム 場合にのみ使用される カナマイシン 最後の手段として シプロフロキサシン レボフロキサシン トスフロキサシン モキシフロキサシン ガレノキサシン シタフロキサシン 取り扱うべき抗菌薬 WHOが定めた現在及び未来にわたって国の基本的な医療需要を満たすため テトラサイクリン系 グリシルサイクリン系 その他 ドキシサイクリン クリンダマイシン メトロニダゾール ST合剤 ミノサイクリン ミノサイクリン チゲサイクリン エリスロマイシン クラリスロマイシン アジスロマイシン リファブチン リファンピシン バンコマイシン コリスチン ダプトマイシン ホスホマイシン リネゾリド テジゾリド 最低限必要な薬剤を分類

#44.

Access AWaRe分類 ペニシリン系 セフェム系 Watch 注射 内服 ベンジルペニシリン ベンザチン-ベンジルペニシリン アンピシリン アンピシリン/スルバクタム アモキシシリン アモキシシリン/クラブラン酸 スルタミシリン ピペラシリン ピペラシリン/タゾバクタム セファレキシン セフメタゾール フルモキセフ セフォタキシム セフトリアキソン ラタモキセフ セフタジジム セフェピム セフォゾプラン セファゾリン 注射 Reserve 内服 セファクロル セフジニル セフジトレンピボキシル ファロペネム アズトレオナム ゲンタマイシン アミカシン キノロン系 テトラサイクリン系 グリシルサイクリン系 その他 セフトロザン/タゾバクタム セフィデロコル イミペネム/シラスタチン/ レレバクタム モノバクタム系 アミノグリコシド系 内服 https://www.who.int/publications/i/item/WHO-MHP-HPS-EML-2023.04 ドリペネム イミペネム/シラスタチン メロペネム パニペネム ペネム系 カルバペネム系 注射 アルベカシン カナマイシン トブラマイシン ストレプトマイシン カナマイシン シプロフロキサシン レボフロキサシン パズフロキサシン シプロフロキサシン レボフロキサシン トスフロキサシン モキシフロキサシン ガレノキサシン シタフロキサシン ドキシサイクリン クリンダマイシン メトロニダゾール ST合剤 クリンダマイシン メトロニダゾール ST合剤 エリスロマイシン アジスロマイシン バンコマイシン テイコプラニン ミノサイクリン ミノサイクリン チゲサイクリン エリスロマイシン クラリスロマイシン アジスロマイシン リファブチン リファンピシン バンコマイシン コリスチン ダプトマイシン ホスホマイシン リネゾリド テジゾリド リネゾリド テジゾリド

#45.

新米ID HP:20 MP:5 レベル:1 ◆ 抗菌薬 ◆ 疫学 ◆ グラム染色 ◆ コンサルト 1. インフルエンザ菌 3+ 2. 肺炎球菌 少数 細菌検査室から連絡があった! インフルエンザ菌はBLNASだった!!

抗菌薬適正使用支援チームの役割

#46.

新米ID HP:20 MP:5 レベル:1 ◆ 抗菌薬 ◆ 疫学 ◆ グラム染色 ◆ コンサルト 1. インフルエンザ菌(BLNAS) 2. 肺炎球菌 1. PCG: MP-1 2. ABPC: MP-3 3. CTRX: MP-5 4. MEPM: MP-10

#47.

De-escalation

#48.

敗血症の入院患者治療で βラクタム薬をde-escalation すると耐性GNRの発生を 防ぐことができるか? https://doi.org/10.1093/cid/ciae253 症例数 De-escalation No change 1578 4802 59.9歳 60.6歳 17.0 16.3 12日 8日 5日 5日 ABPC/SBT 0.222 0.229 PIPC/TAZ 0.227 0.500 CFPM 0.308 0.636 MEPM 0.280 0.571 1.42 2.03 年齢 APACHE score 抗菌薬曝露日数 【方法】 広域βラクタムを3日以上使用した 敗血症の入院患者を比較した後方視 βラクタム薬 研究 グラム陽性菌治療薬 1. de-escalation群 2. no change群 3. escalation群にわけて比較 Outcome 60日以内の耐性GNR発生件数 【結論】 De-escalationすると GNRの耐性化リスクを 低減することができる 主な曝露βラクタム薬のpercent days GNR耐性菌発生件数(/1000 person-d) ハザード比 0.59 (0.48-0.73)

#49.

新米ID HP:20 MP:2 レベル:1 ◆ 抗菌薬 ◆ 疫学 ◆ グラム染色 ◆ コンサルト 1. インフルエンザ菌(BLNAS) 2. 肺炎球菌 新米IDはASTにコンサルトした! ABPCへのde-escalationを推奨された!

#50.

新米ID HP:20 MP:2 レベル:1 ◆ 抗菌薬 ◆ 疫学 ◆ グラム染色 ◆ コンサルト 1. インフルエンザ菌(BLNAS) 2. 肺炎球菌 新米IDはABPCにde-escalationした!

#51.

感染巣 市 中 肺 炎 肺炎球菌 インフルエンザ菌 モラキセラ 肺炎 の 治 療 期 間 原因菌 膿胸 5日 または解熱後3日 黄色ブドウ球菌 7~10日 緑膿菌 7~10日 腸内細菌 5~7日 マイコプラズマ 5~7日 クラミドフィラ 5~7日 レジオネラ 肺膿瘍 治療期間 10~14日 陰影消失まで 4~8週 4~6週

#52.

新米ID HP:20 MP:2 レベル:1 ◆ 抗菌薬 ◆ 疫学 ◆ グラム染色 ◆ コンサルト 1. インフルエンザ菌(BLNAS) 2. 肺炎球菌 新米IDはABPCに変更し計5日投与した! 市中肺炎をやっつけた!!

#53.

静注抗菌薬から内服抗菌薬へ変更する条件 S T O P Signs of clinical improvement ? 臨床的に改善しているか  バイタルサインが安定し48-72時間経過  炎症反応が改善傾向 Tolerating oral medicines ?  腸管吸収に問題がないか 経口や経管投与が可能 か 内服薬に認容性があるか?   併用薬との相互作用は問題ないか Oral option available ? 静注薬に変わる内服抗菌薬はあるか? Prolonged therapy required ? 静注薬で長期治療が必要ではないか? 抗菌薬を継続する必要があるか?  原因菌に感受性がある内服薬があるか  バイオアベイラビリティーは良好か  感染巣に十分量移行するか  髄膜炎, 壊死性筋膜炎, デバイス関連感染  黄色ブドウ球菌菌血症  骨髄炎, 関節炎, 感染性心内膜炎, 深部膿瘍など 静注薬で一定期間治療が必要な疾患ではないか  抗菌薬を内服に代えず終了できないか

#54.

抗 菌 薬 の 不適正使用 を A ntimicrobial S tewardship 第46回抗菌薬適正使用生涯教育セミナースライドを一部改変 不必要な使用  かぜに抗菌薬 感染症診療の原則に基づき、抗菌薬の選択・量・投与ルート・期間 を最適化することで  無症候性細菌尿に抗菌薬  原因菌の感受性判明後の広域抗菌薬  不必要に広域な抗菌薬 不適切な使用  耐性菌に無効な抗菌薬 臨床的な治癒を最大限にし、耐性菌の抑制や 副作用の回避を狙う  肝腎機能で調整しない抗菌薬 適正使用 へ

#55.

抗菌薬適正使用支援チーム Antimicrobial Stewardship Team  多職種協働のチーム  Antimicrobial stewardship推進の活動を行う 活動内容例 ① 職員への教育・啓発活動 ② 院内マニュアル作成 ③ アンチバイオグラム作成 ④ 治療薬物モニタリング (TDM)や用法用量調整

#56.

医師 診断、処方、ドレナージ 看護師 患者のケア・観察、抗菌薬の投与 薬剤師 抗菌薬の提案、相互作用の確認 検査技師 細菌の情報提示と助言

#57.

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