醤油手帖

お醤油について書いていきます。 料理漫画に関してはhttp://mumu.hatenablog.comへ。お仕事の依頼とかはkei.sugimuraあっとgmail.comまでお願いします

C105で『醤油手帖 原点たる木桶醤油編』を頒布いたします

木桶には蔵の文化が丸ごと詰まっている

サークル「醤油をこぼすと染みになる」は、12月30日のコミックマーケット105で『醤油手帖 原点たる木桶醤油編』を頒布いたします。

はい、醤油です!

一冊まるごと、木桶で醸した醤油を特集した本です!!

詳しい話をする前に、ちょっと目次を見ていきましょうか。今回の本のラインナップはこんな感じです!

結構いろいろな種類がありますよね。

表紙で想像していたよりもバラエティに富んでいる、と思っていただければ、「そうなんですよ!!!」と興奮して早口になるぐらい、こちらとしてはうれしいです。

木桶文化は発酵文化

そもそも、この本で言う「木桶醤油」とは何なのか。簡単に言うと、木桶で醸された醤油のことを指しています。

ふーん、普通なんだ……と思うかもしれません。でもこれが普通じゃないんです。

どうしても醤油造りというと、職人さん達が木桶を櫂棒でかきまぜて……というイメージがあるかもしれません。

もちろんこういう光景が醤油造りの始まりであり、原点と言ってもいいでしょう。ですが、今はほとんど見られない光景なのです。簡単に言いますと、近代化の波だったり何だったりで、現在は醤油の桶といったらホーローやステンレスやら、さまざまな素材が使われています。木桶は全体の1%ほどしかありません。そう、桶をかき混ぜるのは一緒なんですが、その相手は木桶じゃないんですね。

「でも、味にそんなに差がないからホーローやステンレスになったんでしょ?」という疑問をお持ちの方。ごもっともです。もちろん、そんなに味が変わらないと思われたからこそ、新しい素材に切り替わったりしてきたという経緯があります。

ただし、現在はさまざまな科学技術が発達しておりまして、発酵のメカニズムとかがわかってきています。そこで調べたところ、木桶は木材でできていますので、どうしても微細な隙間があり、そこにいわゆる蔵付きの微生物が棲んでいる、と。

これらは当然発酵時には影響を及ぼします。そして、その蔵独自の生態系を育んでいるため、他の蔵のものとは似て非なるものになっていることが多いのです。

つまり、「その蔵独自の味わい」がもっとも出やすいのが木桶による発酵物なんです。醤油だって当然発酵食品ですから、木桶の影響を受けるというわけですね。

というわけで、木桶で発酵された食品を食べるということは、その蔵の文化を丸ごと食べることに他なりません。

そしてもちろん、その醤油はおいしい!!!

今回紹介する20本は、すべて「木桶」で醸された醤油です。この木桶な醤油を存分に味わってもらおうというのが、『醤油手帖 原点たる木桶醤油編』のコンセプトなのです!

ちょっと中身を見てみましょう。

こんな感じに、本文は見開きで1本の醤油を紹介しております。

紹介する醤油は、なるべく多くの種類になるよう心掛けました。

いわゆる「濃口醤油」や「淡口醤油」など、醤油の基本とも言えるカテゴリーのものや、ポン酢、だし醤油、ごまだれなどの醤油加工品、さらにはちょっと変わった「木桶醤油 トリュフ入り エキストラバージンオリーブオイル」なんてものまであります。

どれもこれも、木桶の醤油を使っていることには変わりありません。

さらには、しばらく醤油のみの本を作っていなかったこともあるので、もう醤油の細かいことを忘れちゃったという方や、最近うちのサークルを知ってくださった方、最近醤油が気になってしょうがないので醤油の情報を求めていた、という方もいらっしゃるでしょう。

そういう方々にも楽しんでもらえるよう、1冊まるごとにさまざまな醤油知識を散りばめました。最初から読んでいると、もしかしたら「ん? この表現、どういうことなんだろう。醤油業界では常識なのかな……?」と思われることもあるかもしれません。それは、読み進めていくと理解できるようなギミックにしております。

もう(うちの本をたくさん読んでいるので)知っているよ! という方は、その部分は答え合わせ感覚で読んでいただけたら幸いです。

コラムもあります!

これは、昨年見学に行かせていただいた、藤井製桶所の紹介コラムですね。

実は、この令和6年時点で、でっかい木桶を製造できる会社は現在一社しかありません。それがこの藤井製桶所さんなんです。

木桶の寿命は100年とか150年ほどです。そのため、ひっきりなしに注文があるわけではありません。今は全体の1%ほどありますが、これが100年後になったときはどうでしょうか。もしかしたら、木桶を製造する会社がなくなってしまい、技術が途絶えている可能性すらあるのです。

そこで、香川県の小豆島にあるヤマロク醤油さんが、藤井製桶所さんに弟子入りをして、木桶文化を途絶えさせてはならないと、プロジェクトを立ち上げました。それが木桶職人復活プロジェクトです(本書でも紹介しております)。

木桶職人復活プロジェクト

このプロジェクトのおかげで、近年は「木桶の醤油」も盛り上がってきていて、いろいろなアイデアが登場しているのです。という盛り上がりも、本書を読むとなんとなく感じていただけたらめちゃめちゃうれしいです。

というわけで『醤油手帖 原点たる木桶醤油編』はA5版54P一部カラー、本文モノクロで1000円を予定しております。

12月30日(月) 東地区 A-50b 醤油をこぼすと染みになる

でお待ちしております!

C105は月曜日東A-50b「醤油をこぼすと染みになる」で参加します

サークル「醤油をこぼすと染みになる」は、2024年12月30日に開催されるコミックマーケット105にて、東地区 Aブロック-50bで参加いたします。

というわけで、告知がだいぶ遅れましたが、お席をいただきました!

今回はまた壁に……!

新刊はサークルカットの通り、醤油の本をやります。

タイトルは「醤油手帖 醤油の原点 木桶醤油編」です。微調整するかもしれませんがほぼこれで決まりです。

えっ、今のタイミングでも微調整する余地が……? と思った方。正しいです。はい、まだ絶賛作業中です。果たして本当に終わるのかドキドキが止まりません。このタイミングで愛用のMacBook Airのカーソルキーの上が壊れたっぽいし、ほんの少しだけ作業効率が落ちているという。

それはさておき。

醤油の原点、とは結構大きく出ていますよね。そもそもの日本の醤油の原点というと、鎌倉時代に誕生したたまり醤油だったりします。ではその話をするのかというと(登場はもちろんしますが)そうではありません。

現在の醤油文化が大きく発展したのは江戸時代です。濃口醤油や淡口醤油が誕生し、なおかつ一般の人でも手に入るようになり、全国に広まっていきました。そのときに醤油造りに用いられていたのが木桶なのです。

今でも「醤油造り」という言葉から連想するのが、木桶に入ったもろみを職人が櫂で歌いながらかき混ぜるというイメージの人もいるでしょう。ですが、現在木桶は本当に少なくなっているのです。だいたいホーローやステンレスなどのタンクを使っているのですね。これは衛生面、つまりは掃除のしやすさだったりとか、管理のしやすさだったりとか、そういった「近代化」を求めて入れ替わっていったのです。木桶で仕込まれた醤油は全体の1%を切るまでになったのですね。

もちろんホーローやステンレスでも素晴らしい醤油はできあがります。むしろ、こういった素材で衛生面も厳密に管理することによって生み出される味というものもあります。

ただ、木桶で醸された醤油の味わいというのは、蔵の個性が出やすいし、むしろ桶によっても個性が出るということもあり、なかなか換えが利かないものでもあるのですね。

というわけで、今では再び木桶の醤油に注目をして、途絶えつつあった文化を継承するべく活動している醤油屋さんがあるのです。そしてそのおかげで、だんだんと木桶醤油の良さが伝わっていき、少しずつまた盛り上がりを見せているのです。

やはり、最初に醤油が誕生したときと同じ、昔ながらの(それでいて細かい部分は現代の科学知識でブラッシュアップされている)製法での醤油を味わいたいじゃないですか。そう、これが「原点」の味というわけですね。

そんな、木桶で造られた醤油を一冊丸ごと特集するのが、今回の新刊「醤油手帖 醤油の原点 木桶醤油編」です!!

醤油にだけ焦点をしぼった本を最近は作っていなかったこともあり、今回初めてうちのサークルの醤油本を読むという方もいるかもしれません。そこで、できるだけ一冊通して読むと醤油についての基礎知識もある程度身につくように構成を工夫いたしました。楽しんでいただけるのではないかと思います。

今回は新書ではなく、最初に作った醤油手帖シリーズとあわせて、A5版にしてみました。カラー口絵&モノクロ本文という仕様です。ただ、もろもろの値段が上がっているので、おそらく昔のような価格ではなく、おそらく1000円になるんじゃないかと思います。

というわけで、本が完成したらまた告知させていただきます!

とりあえず皆様、C105 月曜日東A-50b 「醤油をこぼすと染みになる」に醤油の本があると覚えておいてください!

カイさんのポッドキャスト番組「かいだん」に出演しました

今月のことなんですが、お友達のカイさんのポッドキャスト番組に出演しておりました!

listen.style

3回分あります。

1回あたり30分ほどなんですが、ArtificialなIntelligenceの力によって書き起こされた文字起こしも各ページには記載されているので、今は音声を出せない……という人は、読むだけでも!(ただし、誤変換とかAIの認識ミスとかはいろいろあります)

きっかけは、カイさんが京都に遊びにきて一緒に飲んでいるときでした。

「今度、うちのポッドキャストに出てくださいよ〜」

「いいよ〜」

という二つ返事で出演が決定。

収録をしたというわけです。

一部、音声が遠くなっている場所があると思うんですが、これは単に、こう、話しているときに背中がかゆくなってなんとか椅子の背でごまかそうと体をよじっていたらマイクから遠ざかったというだけのことだったりします。すみません。

番組中でコミケの本の話をしているんですが、正式にこのブログで告知していなかったですね。次のエントリはたぶんそれです!

10月26日に「関西めしけっと」に参加します(新刊あり)

10月26日に、大阪の「マイドーム大阪」で開かれる飲食系同人誌イベント「関西めしけっと」に参加いたします。

meshiket.dojin.com

そして、そのための新刊を作りました! それがこちらです!

『白熱日本酒教室増補改訂版 発売記念 むむ先生の補習講義』です!

A5版24Pモノクロで300円の予定です!

さっき入稿したので、たぶん、たぶんギリギリ受け取って会場に向かえるはずです!!

白熱日本酒教室増補改訂版の発売記念冊子

というわけで、ちょっと内容を説明していきましょう。

タイトルの通り、9月26日に発売された『白熱日本酒教室増補改訂版』の発売を記念して、急遽作成いたしました!

shouyutechou.hatenablog.com

気になる内容ですが、わたくしこと「むむ先生」と、イラスト・漫画を担当してくださったアザミユウコさんに、インタビューをしたという本です。インタビュアーは、漫画版白熱日本酒教室や、うちのサークルの同人誌のデザインをしてくれている地獄のデストロイ子ことデス子さんです。

なんかもう、裏話とかいろいろと盛り込みましたよ!

  • 「白熱日本酒教室」のシリーズやら歴史やら
  • 十年間で日本酒業界はどう変わったと見ているのか
  • 増補改訂版で意識したこととは
  • 漫画版の経験はいきているのか
  • 二人がいま一番飲んでいる日本酒とは何か
  • 没にしたところはあるのか

などなどたくさんお話しました!

あと、おまけとして、増補改訂版のために作成した(編集さんに見せようと作成した)企画書もつけちゃいました。まあ、企画書とか、見て面白いものではないとは思うんですが、この企画書からこの本が出て、あの部分が削られたり、あの部分が増えたりしたのかーなんて楽しんでいただけたらと思います。

一応、通販も少部数予定しております。こちらは決まりましたら告知いたしますね!

コミケに持って行けるかは不明です。持って行けたら持っていくんじゃないかなとは思いますが……そもそもどれだけ1営業日で印刷するときってどのぐらい印刷すればいいのかわからない! という感じです。

関西めしけっとおしながき(暫定)

というわけで、10月26日の関西めしけっとのおしながきですが……

  • むむ先生の補習講義 300円
  • 天然信仰      1500円
  • 毒を喰らわば    1500円
  • わるいはうまい   1500円

の予定です。それぞれの本の詳しい内容は、このエントリ末にリンクを張っておきますね。

あと、新書版の、先日発売された『白熱日本酒教室増補改訂版』のサイン本も持っていきますよ! みなさまよろしくお願いいたします!

 

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「醤油の日の集い」に参加してきました #PR

醤油業界最大のイベント「醤油の日の集い」

令和6年度「醤油の日の集い」に参加してきました!

と、いきなり「醤油の日」と言われてもわからないという人が多いかもしれません。毎年10月1日は「醤油の日」でして。その日の近辺の集まりやすい日に、「醤油の日の集い」というイベントが行われるのです。

全国から醤油醸造家の皆様が集まり、「全国醤油品評会の各賞授賞式」が行われたり、記念講演が行われたり、懇親会で情報交換をするのです。まさに、醤油業界最大のイベントと言っていいでしょう。

そこに参加してきたのです。

いや、まあ、何度も参加しているのですが、今回は「しょうゆ応援隊」という枠で参加してきました! なのでこのエントリには「#PR」とついております。

そう、醤油好きの一般の人も参加できるチャンスがあるんですね。こんな感じで応募することができるのです。

何人の方から「えっ、その枠なんです……?」と言われたりもしたのですが、まあ、そこはそれ!

どんな感じなのかをちょっと書いていきましょう。

と、その前に。

なぜ10月1日が醤油の日なのかを簡単に説明しておきましょう。

「醤油」という漢字を見ると、「酉」という文字が含まれていますよね。これは液体を保存する甕を意味する象形文字だったんです。醤油も液体ですから、保管するには甕がいる。なので、酉の字が含まれているんですね。

そして、「酉」は十二支の「とり」を表す漢字でもあります。

「とり」は十二支で言うと10番目。なので、10番目の月、すなわち10月1日を醤油の日としたのです。ちなみに同じ「酉」が含まれている「酒」の、つまり日本酒の日も10月1日だったりします。

全国醤油品評会の出品醤油大集合

見てください。この写真。圧巻ですよね。

全国醤油品評会で優秀な成績を収めたというか、賞を受賞した醤油を含め、出品した醤油の大集合です! 中には皆さんが見かけたり普段使っている醤油があるかもしれません。

この全国醤油品評会は毎年行われています。

えっ、なんで毎年行うの? と思われるかもしれません。でもとても重要なことなんです。

醤油は、大豆と小麦を発酵させて造ります。そして大豆や小麦は農作物です。農作物である以上、どうしても気象などの影響を受けて、できばえが変わってしまうのですね。ワインなどでは「今年の○○はできが良い」と言ったりしますが、実は醤油でも同じようなことがあるんです。

ただ、毎年同じ商品を買っていても、そんなに違いは感じられないですよね。それはもう、造り手の職人さん達の超絶技巧だったり不断の努力の賜物で、変わらぬ品質に保たれているだけだったりするのです。

そういう事情があるので、違いの分かる達人達がききくらべをして、毎年醤油のできばえをチェックし、特に優れたものを表彰するというのは醤油の品質向上にとって非常に重要なのですね。そこで、毎年全国醤油品評会が行われ、評価されているというわけです。

今年の農林水産大臣賞(一番上の賞)を受賞したのは5点です。

4点が濃口醤油で、1点が白醤油ですね。

これらはきき比べコーナーで味見することもできました!(上の写真は懇親会で使われたものです)

受賞式では各蔵の紹介インタビュー動画が流れ、どういう蔵なのか、どういう思いで醤油を造られているのかも知ることができます。

あ、言い忘れましたが、今回の(今回も)司会は安住紳一郎しょうゆ大使と宇賀神メグアナウンサーです。テレビやラジオでもおなじみの、軽妙洒脱な回しっぷりも堪能できますよ!

第二部には記念講演が

第二部は記念講演です。

「醤油の時代 —江戸から続く日本料理の本質—」

として、近茶流宗家の柳原尚之様による講演が行われました。

写真等は載せちゃ駄目だったと思うので載せられないのですが、これまた非常に興味深い内容で、めちゃめちゃノートをとっていました。

第三部は懇親パーティー

そして第三部は懇親パーティーです!

ロイヤルパークホテルの料理を堪能するだけでなく、農林水産大臣賞を受賞した醤油を使った料理を楽しめます。

これが、なんといいますか、挨拶とかしていたら出遅れまして全部手に入らなかったという……あんなにすぐに売り切れるとは……

これは何とか確保できた、味の司を用いた数の子豆です。

まあ、他の料理もビュッフェ形式でたくさん食べられますので、そちらを堪能させていただきました!

石川・富山応援コーナーも

会で繰り返し言われていたのが、能登半島地震および豪雨での被害です。もちろん、能登半島にもすばらしい醤油がたくさんあります。

一日も早い復興をお祈りいたしております。

 

というわけで、もりだくさんな「醤油の日の集い」。

最後には、農林水産大臣賞受賞醤油の小瓶をお土産でいただけたりもします。興味を持った方は、ぜひ、来年は応募してみてください!

「白熱日本酒教室 増補改訂版」本日発売!

「白熱日本酒教室 増補改訂版」9月26日発売!

本日、発売です!

正確には、取次に入るのが9月25日で、ほとんどの書店に並ぶのが9月26日(木)からという感じなので、9月25日に手に入れた方もおられるかもしれません。ただ、電子書籍とか、大手通販サイトなどでは9月26日からのようなので、9月26日を発売日として告知させていただいております。

改めて、どんな本なの?

10年前の2014年に発売した、「白熱日本酒教室」の増補改訂版です。10年ぐらい前に、初心者のための日本酒本を作ろうという気持ちで白熱日本酒教室は誕生しました。

日本酒の初心者が疑問に思う点はいくつかあると考えています(実際に、いろいろな人から意見を伺ったうえで出した考えです)。

  • 結局、どの日本酒がおいしいの?
  • 度数が高くてたくさん飲めないから、どうせならおいしいのを飲みたい
  • 日本酒ってなんかたくさん名前がついているけれども、どういう意味なの?
  • どういう飲み方をすれば悪酔いしないの?
  • お店で頼むときのマナーとかあるの?
  • というか、どういうふるまいなら上級者に怒られないの?

などなど。

他にもあるでしょうけれども、代表的なのはこのような感じでしょうか。

どうせ飲むのなら(お金を払うのなら)おいしいのを飲みたい。あとは、諸先輩方にふるまいとかで怒られたくない。というのが、一番思うことではないでしょうか。細かい部分とかは二番目なんじゃないかなとも。

どんな趣味でもそうなんですが、「いきすぎたマニアが門戸を狭めてしまい、初心者お断り状態になる」のが、そのジャンルの衰退の第一歩だと考えています。

10年以上前には、実際に自分が経験したこととして、あったんですね。僕が大好きなお酒が、非常にフルーティーで果実味が強いタイプの日本酒だったんです。それを、とある日本酒会で「これが好きなんですよ〜」と話したら、

「ああ、あれ、日本酒じゃないよね。ジュースだよね。ふーん、あれが好きなんだ」

みたいに言われたんです。めちゃめちゃ日本酒を飲んでいて、家にもものすごくたくさん日本酒を保管しているという方から。

はっきり言って、まあ、暴言です。そして、もし自分が初心者だったら、中上級者の方からこんなことを言われたら「自分の飲んでいるお酒は日本酒じゃないんだ……」なんて萎縮してしまい、「好きを好き」と言いにくくなったのではないでしょうか。

それから、10年以上前は、今よりももっと、とある作品達の影響が大きかったといいますか……

「○○の造り方をしているのは本来の意味の日本酒じゃない。大手が金儲けのためにやっていることだ。明日また来てください。本当の日本酒を飲ませてあげますよ」

みたいな感じの台詞を言っていたり言っていなかったりする作品とか、あれやこれやの影響を受けた方が、特定の製法を本当に悪し様に言っていたりしたんです。

でもこれも、自分が好きだと思ったお酒がどんなお酒か調べていたら「本来の意味の日本酒じゃない」と言われていたらショックですよね。

というわけで、趣味の世界なのでこういう要素を否定する、という書き方はやめよう。味わいの好みが個人によって違うのは当たり前なので、どちらかというと、知識を得て選択肢を広げてもらい、自分の好きなお酒を探す手伝いをしよう、ということを重視した本にしました。したつもりです。

この考えで書いたので、10年は読んでも大丈夫な本になったんじゃないかと思っております。もうちょっとミーハー寄りだったら、ネタが風化していたなとも……

挿入する写真を新しく撮りに行きたかったんですが、風邪を引いてしまって新しく撮れていないので過去のと同じのを入れさせていただきます……

じゃあ改訂版は?

では増補改訂版はと言いますと。

さすがに10年経つと、前述のような先鋭的なことを言うマニアの方は減った気がします。過去のあれやこれやの作品も、影響力が大きく落ちたといいますか。休載が長引いたといいますか。さすがに「知識が古い」ということが知れ渡ってきた感があるのです。

そして、醸造技術が本当に進歩していて、まあ、どんな日本酒を飲んでもおいしいことおいしいこと! なので、「これこれは日本酒じゃない」みたいなことを言う人は、本当に減った気がします。

まあ、いないわけではないです。年配の方で、過去の知識にとらわれている方が。そういった人の謝った知識に関しては、このブログでも今年の2月ぐらいに何回か書いていたりするので気になる方は見てみてください(文末に過去記事へのリンクを張ります)。

ただ、そういういいことばかりではありません。

コロナ禍などもあったおかげで、若い人がお酒を飲む機会がめちゃめちゃ減ったのではないでしょうか。

何人かの大学生に聞いてみたところ、集まって家飲みとかはほとんどやらなくなった、と。

そしてお酒に対する態度もだいぶ変わり、「お酒は飲みたい人が飲みたいだけ買ってくる」ものであるという感じになっています。とりあえずビールの缶の6本セットを買ってきて、乾杯はビールでやって……みたいなじゃくって、基本的には自分の飲みたい分だけ自分で買う、みたいなのが家飲みでも多いのではないかと(サンプル数はそんなに多くはないのですが、聞いた範囲ではこうでした)。

どちらかというと、ファミリーレストランやカラオケボックスのフリードリンクというか、ドリンクバーのような概念が染みついているので、飲みたいものを飲みたいだけ自分で用意する、となっているんですね。

つまり、新しいお酒に出会う機会が結構減っていっているのではないでしょうか。もちろん、中には好奇心旺盛でどんどん挑戦する人もいますが、全体的には減っていっているのではないかと考えております。

そしてまた、お酒に対する恐怖心……ではないですね。えーっと、酔った醜態を見せる事を恐れる、みたいなのが、一昔前よりも強い気がします。自己責任論が強いといいますか。泥酔したら泥酔した人のせい、みたいなのが強いとも思いました。なので、度数の強いお酒を好まない、と。

そういう時代にどういう日本酒の初心者向きの本を書いていけばいいのか、悩みに悩んで増補改訂版を書いたという次第です。

じゃあ、結構書き直しているの?

書き直しています!

たとえば、「一時間目」。旧版は

一時間目:いま、日本酒が面白い!

に対して、増補改訂版では

一時間目:いま、日本酒が面白い! 日本酒でお酒を覚えよう!

としています。

スタート地点は同じですが、ゴール地点をひとつ増やしてみました。日本酒に関する基礎知識を学べば、他のお酒のこともある程度わかるようになります。それは、日本酒はラベルの情報量が多いためなんですね。なので、若干コストパフォーマンス(?)が良いですよ、というお話にもなっているんです。

その一方で、まったく同じ目次のものもあります。

二時間目:特定名称酒ってなあに?

は、旧版も増補改訂版も同じ目次です。でも、よりわかりやすくするために、法律面の説明を強化したり、たとえ話を加えたりと、だいぶ加筆しています。

その一方で「事実」はまったく動かせないものでもありますので、ほぼ似たような章もあります。そこでも、法律の改正によって変わった部分とかはしっかりと加筆をいたしました。

ただ、加筆をしたといっても、ゴール地点が同じものが含まれているのは間違いありません。前述の一時間目も、ゴールを二つにしたといっても、一つは旧版と同じ結論になっているわけです。そのため、うける印象としては、同じ事を言っている、となるかもしれません。ただ、そこにたどり着くまでに得られる知識は間違いなく増えていますよ、というわけです。

一番多く加筆したのは、間違いなく「日本酒で悪酔いしないためにはどうしたらいいの」という部分です。

旧版が12ページに対して、増補改訂版では20ページを費やしました。

やはり、すべての人にとって一番重要な知識であり、需要が高い部分だと思いますので、より詳細に書かせていただいたというわけです。

あ、そうそう。もっと重要な情報として、よりわかりやすくするために、漫画版の白熱日本酒教室よりコマを引用したりしています!

アザミさんの素敵なイラストを、ふんだんに活かした本になっています。旧版でもアザミさんの漫画がありましたが、今回は漫画部分は全部新たに描き下ろしていただいております!

ぜひ、楽しんでいただけたら幸いです。

というわけで、本屋さんで見かけましたらぜひともよろしくお願いいたします!! 見かけなかったら、注文してみてください!!!

通販情報(検索して出てきたのを随時追記していきます)

●Amazon様

●講談社BOOK倶楽部様

bookclub.kodansha.co.jp

●Rakutenブックス様

books.rakuten.co.jp

●ヨドバシカメラ様

https://www.yodobashi.com/product/100000009003888434/

●e-hon様

www.e-hon.ne.jp

●タワーレコード様

tower.jp

●TSUTAYA様

store-tsutaya.tsite.jp

●Honya Club様

www.honyaclub.com

 

冒頭でちょっと言っていた過去記事コーナー

 

shouyutechou.hatenablog.com

 

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ビア・ブラボー 2024Autumnで『琥珀の夢で酔いましょう』コラボビール第二弾を出します

前回の、春に行われたビア・ブラボー2024Springでもやりましたが、今回もやります!

『琥珀の夢で酔いましょう』コラボビール第二弾!

その名も「白熊の冒険」です!!

beer-bravo.com

今回のコンセプトは「氷を入れてもおいしいコーヒービール」です。

なんといいますか。

前回は作中に出てきて話題になったビールを、我々なりの解釈で新たに造り直していただくという試みをしました。

では今回はどうするか。

前と同じことをやってもいいけど、せっかくだから秋らしいビールにしたいと考えたのです。いい意味で、ビールらしくないというところの軸はぶらさずに、「秋」という要素を考えるとどんなことができるのかということを話し合いました。

ぶっちゃけ、今は9月下旬ですが、めちゃめちゃ暑いじゃないですか。8月に制作していたのですが、そのときから多分9月もきっと暑いだろう、と。なので、秋の味覚は取り入れたいけれども、重厚な味わいのビールよりは、もうちょっと爽やかに寄せたいと考えたのです。暑い中でもぐいぐい飲めるのがいいですよね、と。

 

「果物を入れて爽やかにするのはどうでしょう?」

「アイスコーヒーが好きなんですが、ビールと合わせられませんか?」

「あまりに暑いんだから、氷を入れて飲みたいと思うときがあります」

 

ええい、全部やりましょう!

というわけで、リンゴベースのフルーツビールに、神戸のコーヒー豆店「COZY COFFEE」様にご協力いただいたコーヒー豆を組み合わせ、さらには氷を入れても味が壊れないし、むしろ氷が溶けていくと味が変わるさまを楽しめる、というビールに仕上げていただいたのです!

こちらがCOZY COFFEE様。

cozycoffee.stores.jp

造っていただいたのは、前回のコラボビールと同じく、大阪のAPE BREWING様です。

www.instagram.com

我々としても前回の「白熊の夢」よりも、ちょっと新しい試みが多いかも。というわけで、「白熊の冒険」と名づけました。

そして!

おそらく、たぶんですが、前回大好評だった「白熊の夢」も、今回のビアブラボー2024Autumnのためにもう1タンクだけ、ちょっとレシピを改良して醸造してもらったのが出るはずです!

前回のビールのお話はこちら

shouyutechou.hatenablog.com

前回飲まれた方々も、是非今回のバージョンを飲んでいただけたらと思います。

我々もまだ飲んでいないので楽しみです!

そして。

何やら台風が急カーブを切ってこっちに来るかもという話や、週末のお天気はあまり良くなさそうという話も出ております。みなさま、くれぐれもさまざまなことにお気をつけて、大阪の京橋はビア・ブラボーまで足を運んでいただけたらと思います。9月21〜23日ですよ!

東京ではどうなの?

前回、東京で飲めるかもという話が進行中と言いました。実は、9月の頭にようやく実現し、吉祥寺のP2Bさんで1樽だけつながったのです。

ただ、あっという間に売り切れてしまったようで、ブログに書く隙がなかったという……申し訳ありません。

今回のビールがどうなるのか、当日にAPE BREWINGさんのところで聞いてきます。

単行本の新刊は10月11日発売!

そうそう。大事な告知を忘れていました。

『琥珀の夢で酔いましょう』の最新8巻は、10月11日発売予定です! まだ書影は出ていないっぽいですね。こちらもよろしくお願いします!

 

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