鈴木亜美 / CONNETTA

 鈴木亜美 / CONNETTA

このアルバムは、アイドルとしての鈴木亜美を一旦終わらせる為の前フリのような、アーティスト・ボーカリストとしての再生を期待する化学反応を狙った企画アルバムなのかと思って聴いていたんだけど、むしろアイドル・鈴木亜美がより浮かび上がってくるような、そして傀儡という意味での彼女の「何にもなさ」が図らずも見えてくるアルバムであるなあと思えたのでした。

私が「もう普通にシングルを出すのは、つまらないな」って思ったのがキッカケです。「流れ作業になっちゃってるな」って思って。『Alright!』 『Like a Love?』ってストーリーが繋がっていて、最後に結末があるって自分で言っていたのにも関わらず、「ちょっとストップ」って(笑)。その結末を今書いたところできっと自分の本心にはならないだろうし、かと言って特別何か伝えたいことがあるわけでもない。そんな状況に陥ってしまったんですよ。

鈴木亜美インタビュー:hotexpress

もともとこの一連の企画には今までの彼女自身の、そして歌手としての身の処し方を見つめ直すというところから端を発しているようで、その為にある種の荒療治としてコラボやLOVESでもなく、例えとしてはアレだが様々なミュージシャンのところに出向いて彼らのフィールドで歌ってみるという、間寛平の「曲頂戴」みたいなコンセプトで色々やらせてみたのがこの「join」という企画らしい。で、結果としてこのアルバムでなにか新たな鈴木亜美の方向性が見えたのかといえば、むしろ定まらないまま煮詰まっている彼女の迷いというか現状や葛藤が(これを鈴木は「原因不明のグルグル」とシングルに収録されているラジオドラマで語っていたりする)それがそのまま色濃く打ち出されているようで、加えて依頼したミュージシャンも様々かつ取り留めの無い人選のせいか、ひとりのアイドルのアルバムとしては楽曲的にもかなり雑多で纏まりが悪く、聴いていて非常に疲れる重たい一枚になっているなあと思わされた。しかし、だけれども、今回のこのアルバムの値打ちは、そこにあるのだと思う。


さて各々の曲についてですが、やはり特筆すべきは鈴木亜美 joins キリンジ名義での「それもきっとしあわせ」が白眉と言えるでしょう。ボソボソとぶっきらぼうに歌われるこの曲は、まさにアイドルとして賞味期限が切れた彼女が、原因不明のグルグルに苛まれている彼女が歌うからこそ、かつてない生々しさと説得力を伴った楽曲として響くものになったのだと思います。

歌いたい歌がある
私には伝えたい想いがある
そのためになら そのためになら
不幸になってもかまわない

今の鈴木亜美が歌うものとしてはあまりにもリアルで、こんな曲を歌わせるキリンジはちょっと残酷だなあとすら思わせる、それほどまでにこの曲の歌詞には「賞味期限が切れたアイドル」というアイドルのこれまでと、そしてこれからの覚悟を曲中で宣誓させるという描き方が、聴く度にもの凄く心に沁みてくる。だからこれはもう、結果的に怖いくらいの名曲になってしまった、今の彼女にしか歌えない楽曲になったのだと思います。


http://www.youtube.com/watch?v=HpoApA1tuDs
http://gyao.yahoo.co.jp/player/00071/v08266/v0826600000000531601/

ここ最近のアイドルポップスにおいて、これほどまでのバラードはないですよ。