携帯の機能がキャリア主導で搭載されていく日本の特殊性

昨日の引用元記事を書いたthir氏が寄せてくださったコメントにて

新しい機能というのはすべて同じで、事業者がメーカーに何かを指示しているのが丸見えではないか?ということ

との指摘をいただいた。まったくその通りであると思う。

少なくとも日本国内キャリアの持つ携帯電話の機能はどれも殆ど同じであり、強いて言えば「新機能が追加される順番が端末メーカーやグレードによって違う」ぐらいの差異しか認められない。
日本国内の携帯電話は端末メーカー間で機能を選ぶのではなく、キャリア間で機能を選ぶような仕組みになっていて、「GPSを使いたいからauにする」だとか「DCMX iDを使いたいからDoCoMoがいい」とかいう選択肢を消費者に与えているのではないか。

日本の消費者に対して選択肢をわずか3つ4つしか出さない、というのはかなり失礼なことであると私も思う。ただ、市場には「選択肢が多岐にわたると思考停止してしまう」層が多数いるということも忘れてはいけない。それらの層に売り込むためには、選択肢を絞り込んであげる必要がある。

日本の携帯電話市場の拡大は、キャリア間の競争に持っていくことができたからこそできたのではないだろうか。端末メーカーは複数のキャリアに自社製品を納入しているわけだから、端末メーカー間での競争をしたところでキャリアの発展にはつながらないのだろう。キャリア主導の競争になったことで、日本の携帯は「通信サービスをより多くつかってもらう」ための携帯電話になった。それは携帯の進化の方向性をキャリアに決めつけられたという意味では悪いことかもしれないが、パーソナルなWebゲートウェイとしての機能をあまねく普及させることができた、という意味では世界的にも誇れることではないだろうか。

もうひとつ、thir氏から寄せられたコメントより

たとえばPCとの連携ですらほとんどのメーカーが参入しようとしない現状がおかしいと言っているだけです。

au Music PortやMySyncなど、日本の携帯もPC連携機能は数多く備えられている。Outlookの予定表データをPCから赤外線で携帯にインポートさせたり、電話帳やメールアドレスの同期ソフトは数多く発売されている。メールやGPSナビゲーションの経路情報もPCとWebで共有できる。
だがそれはキャリアの儲けにつながらないからだろうか宣伝されることはほとんどなく、結果としては殆どの人が知らない機能になってしまっている。
あとは国内のニーズがあまりなく、機能的にも完成度が低いことも理由かもしれない。
例えばOutlookのアドレス帳は姓と名をそれぞれ入力する方式になっているが、携帯電話ではひとつになっている。欧米人の名前であればスペースで分離できるだろうが、日本人は"小泉純一郎"などとスペースをとらずに登録していることも多く、姓名の分離は困難だ。このような状態でPCのアドレス帳と同期をとったらどうなるだろうか。不整合や二重登録の多発が容易に想像できる。
ここまで来るとOutlookのソフトウェアデザインが日本の事情に合ってないという話になってしまい、もはや携帯電話だけなんとかすることはできないだろう。
このように、日本の携帯はPCとの連携に於いて非常に厳しい事情に立たされており、結果として「携帯に機能を完結させよう」という目論みになるのではないだろうか。

昨日のエントリーでは、日本の規格意図について、車社会であるアメリカや欧州を中心に話を進めていった。ブックマークコメントにて「それならロンドンや香港はどうなのか」というツッコミを戴いたのだが、おそらくはアメリカや欧州との親和性を優先した結果ではないかと思っている。ただロンドンや香港での携帯の利用状況や基地局あたりの端末負荷などについて私も不勉強であるために推測の域を出ない。
これについては機会があれば調べてみようと思う。