ウェブ時代をゆく

お互いを(もちろんオンラインで)認識しあって数日ほどの某氏(こういう場合はid書いていいのかしら)から「感想を聞かせて」とメッセージを頂いたこと、また、この本が単なる情報発信ではなくて極めて多くの知が交わって出版コストを余裕で上回る成果を期待されて世に出たのだという理解のもとに、感想のようなものを書いてみることにする。わーい、初ブログ。どきどき。

読んだ本

梅田望夫:ウェブ時代をゆく−−いかに働き、いかに学ぶか

この本の主な内容は、猛烈な変化を続ける世界(特に先進国)において、個人として生き抜ていくために知っておくべき事実とその分析である。これからの時代を生きていくのは極めて困難だが、7つの「ウェブ・リテラシー」を磨き、十分に活用して、個人の「実力」を高めていくのが最も良い、というのが結論だ。「実力」の中身はよく分からなかった。まあ、ウェブ・リテラシーそのもの、ということは無く、言葉では表しにくいものなのだと思う。それから、無事に生き抜くために良く理解しておくと良いトピックは、少なく見積もっても100くらいはあるはずだ。ウェブ・リテラシーだけで安心してはいけないし、全員がウェブ・リテラシーを磨くようなことが起きてしまうと、社会は成立し得ない。
梅田氏より20年ほど若い私にとって、「もうひとつの地球」「ネット世界」という言葉の指すところは、理屈としては分かっているけれど、直観的ではない。私の場合は、real worldの至る所に出入り口がある「鏡面世界」(@ドラえもん)のようなものだと認識している。携帯電話のWebブラウザが「お座敷つりぼり」なわけ。まあ、いまは、real worldの座標が無視されてることが多いけど。

「(従来型の大企業であっても)有事の際にはGoogleのような情報共有組織となる」話は、大いに共感した。以前、とある組織での有事の際に中心となって動いた時の体験は、まさにこのことであった。ちなみに現在は平時ということで、この組織はあまりうまくいっていないのだが、情報共有を押し進めればうまくいくということはなく、敵や危機の代わりになるような、ブレないビジョンが求められているように感じている。

「スモールビジネスとベンチャー」の区別について、少なくとも私が出会う学生の多くは字面レベルでの理解さえできていない。わざわざセクションを設けて詳しく説明されているのは素晴らしいと思うのだが、一日も早く、IT=ベンチャーというような誤解が解けるよう、さらなる努力が必要だろう。

日本語で書かれた「高速道路」が英語のそれに比べて劣っていて、今後さらに差が広がることについて、そのことを認識しているのであれば、英語のリテラシーを持つ人にとっては何の問題もない。日本語文化の衰退、優秀な人材の英語圏への流出、英語を身につけることができなかった人の将来は、考えるべきではあるが、日本語と英語で競争をする必要があるのだろうか。価値ある高速道路は、もちろん翻訳自由であり、ボランティアの手ですぐに翻訳されるのだから。

情報を共有し、高度に活用する手法の登場、個が抱えられる能力の向上に伴い、国家を含めた組織の在り方は変わりつつある。政治によってのみ解決されると考えられていたミッションでさえ、オープンソース的な形態によって進められるようになるのではないだろうか。今後は、その実現のための実験や研究、あるいは、そのための社会投資が盛んになるのではないだろうか。そんな予想のもと、(たぶん)前人未踏の領域を目指す覚悟を決めたビル・ゲイツの話で、またもや、感動のあまり、涙を流しそうになってしまったりしたのだ。

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