「Loser's Parade」

for さえない日々

爆笑問題×坂本龍一

火曜日に放送されたNHK「爆笑問題のニッポンの教養」のゲストが坂本龍一で、「台本のない音楽会」と題しそれぞれのお気に入りの曲を持ち寄って聴かせるという内容だった。この番組がとても面白かったので記録として書き留めておきます。
⇒坂本龍一、DJスタイルで爆笑問題に音楽の本質を指南 - 音楽ナタリー
⇒http://www.nhk.or.jp/bakumon/previous/20090901.html
今回の見所は、教授がどんな曲をピックアップし、そして爆笑問題の二人がどのような反応を示すのかということでした。最初はクラシック、民族音楽をチョイスしていた教授も徐々に国内アーティストに手が伸び、ASA-CHANG&巡礼の『花』を聞かせたときには「お!ASA-CHANG!」と思いちょっと身を乗り出してしまった。これに対し爆笑問題の反応は…「これは…笑っていいんですか?」。なるほど、笑えるのか。自分はこの曲を最初に聴いたときはなんだか声が機械的になって冷たく感じ怖かったのを覚えている。今はそうは思わない理解ができたので新譜の「影の無いヒト」も楽しんで聞いているけど。続けざまに教授が聴かせたのは…無音。ということは、これはジョン・ケージの『4'33"』という“演奏しない音楽”。これにはさすがに太田も「これはやっちゃダメでしょう!若手芸人で舞台で一言も喋らずに終わったヤツがいたけど、そいつ、舞台監督に殴られてましたよ!」とツッコミ。確かに、これを聴いただけでは「?」で頭がいっぱいになる。彼の思想などを理解してからでないと全くもって意味がわからないでしょうし。しかし余談ですが、数年前にタモリ倶楽部でジョン・ケイジ特集が組まれたときはとても楽しかったのを覚えている。
さて、その後に太田が取り上げたのはサザンオールスターズの『彩 〜Aja〜』。対して教授は「桑田君とは面識はあるけど…正直聴いても理解ができない」と言い切る。サザンを聴くことは「恋」である、と力説する太田に「歌詞が頭に入ってこない。音として認識される。」という感覚のズレ。「坂本さんは音を知りすぎてしまった」と嘆く太田ですが、カッコつけるわけでもないですが、この感覚は理解ができる。自分も音楽に対して歌詞はあまり重要視しないし、聴いていてもあまり頭に入ってこない。メロディーであったり、楽器の音色、曲の構成や展開、リズムにばかり気が取られ、歌詞は歌詞カードを読まない限りほとんど気にならない。そんな自分でも、例えば銀杏BOYZのように、言葉にインパクトがある場合は歌詞も頭に入ってくる不思議。基本的に音楽は音やリズムのみで判断し、歌詞が重要であろうもの(HIP HOP等)については歌詞も聞き取るように脳で変換される感覚です。さて、話は番組に戻り、ここで教授は同じJ-POPという括りで「これ知ってる?」と言って、最近の教授のお気に入りである相対性理論を取り上げる。相対性理論は「♪コントレックス箱買い〜」に代表される、非常にインパクトある歌詞を歌っているため、自分も歌詞が頭に飛び込んでくる。しかも挙げた曲は『テレ東』。「♪チャンネルはテレ東に〜」という歌詞のテロップまで表示させ、注意書きとして「※チャンネルは変えないでください」と付けてしまうセンスは嫌いじゃなかったです。ちなみにこのときtwitter上では「教授が相対性理論を聴いてる!」とちょっとした騒ぎになっていましたが、聴いた話では昨年あたりにJ-WAVEでパーソナリティーを務めていた際にかかった曲を聴き「Perfumeはピンと来ないけど、相対性理論はいいね。」と言っていたそうで、そこから今年のワールドハピネス出演に繋がったのではないかと言われています。そんな相対性理論を聴いた太田は…「サザンのほうがいいに決まっているじゃないですか!」と激怒。…まぁ、一般的にはそういう感情になるかもしれないですよね、「テレ東」なんてタイトルだし。「バカにしてんのか!?」と言われてしまうのも仕方ない。自分はどうしても相対性理論のほうが気に入っているのですが、マジョリティとしてはそういうことなんだと思います。なんだか音楽の聴き方や各人の音楽に対する価値観というのを考えさせられました。
番組も徐々に「音楽とは?」という内容になっていきます。様々な話の中で一番印象深かったのは教授が体験した「911」のこと。ニューヨーク在住の教授は、911直後のニューヨークに対して「全く音がしないニューヨークを初めて体感した。自分も音を鳴らそうという気にはなれなかった。」と回顧する。「人間、本当に恐怖したときは音楽など奏でられない」と体感した教授でしたが、静かなニューヨークで再び音をよみがえらせたのは、誰かが公園で弾き語りをしていたビートルズの『Yesterday』。このタイミングでその曲というのもとっても意義があるものだったでしょう*1。この体験から徐々に作曲しようとする気力がよみがえっていたそうで、「音で体が溶かされるような経験だった」そうですが、「しかし、だからこそ音楽が力を持つことに対して危機感を持っている」と、音の力を知ったことで分かったことを話していた。ふいに銀杏BOYZの「僕たちは世界を変えることができない」というDVDのタイトルが頭に浮かんだ。教授は、音楽が持つ力については、ここでも語っている。なるほど、と深く息を吐いてしまった。
番組ラストには爆笑問題からのリクエストとして代表曲の「戦場のメリークリスマス」をピアノ演奏してエンディング。この曲ですけど、Wikipediaを見たら音楽的で非常に難解な解説が加えられておりびっくりしました。
なお、公式サイトには今回紹介された曲のリストが挙げられています。そして、今回の放送を見逃した方は、9/7の15:15〜NHK総合にて、9/9の2:30〜NHK BS2で再放送されるので、チェックしてみてください。twitter上で「坂本教授のiTunesにアジカンが入っていた!」「ACIDMANもあったぞ!?」「太田が持ってきたCDの中にRADIOHEADのベストがあったぞ!」などの細かい指摘があったため、自分ももう一度見直してみたいと思います。

*1:<追記>ご指摘いただきました。『Yesterday』が再び作曲できるようになったきっかけではなく、「作曲の締め切りがあったから無理やりやったら、もう大丈夫だった」という感じでした。この辺は…各自再放送で確認してください!