自由のない自由

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【今週の私だけのお題】読まなきゃよかった2024・「羊をめぐる冒険」村上春樹

 さあ今週もやってきました「私だけのお題」第一回ということで、わたくしの「読まなきゃよかった2024」を発表したいと思います。ズバリ

 村上春樹氏の「羊をめぐる冒険」です! おめでとうございます。

 なぜこれが駄目だったのかというより、なぜ2024年にもなって今さら「羊をめぐる冒険」なんだと思われるでしょうが、とにかく読んでしまったものは、読んでしまったのだよ。ああ読まなきゃよかった2024

 これまで村上春樹氏の小説は短編集しか読んでいなかった。

 この「パン屋再襲撃」と、あと1冊か2冊。思えばこの「パン屋再襲撃」は、はてなブログの記事でおすすめされていたものだった。村上春樹の「弱点」が控えめで、それでもむせ返るほどの自己愛で充満していたが、その上でなおかつすぐれた語りの技術を見せつけられたのだった。(私はブログ記事で難癖をつけてやろうとして失敗したのだった。そう確か「象の消滅」とかいうタイトルの短編で主人公が(どうせ僕だろう)あまりにも何もかも「知らない」「知らない」と言い張るので「知っている」はずだという証拠をつかんでやろうとしたが失敗した)

 ほかの短編集は大して面白くなくてよくおぼえてない。

 

 で、「羊をめぐる冒険」である。2024年になってなぜ春樹の長編に初挑戦したのかという理由はもうどうでもいい。思い出せないし、思い出したくない。

 とにかく読んでいてこんなに腹が立った小説はこれがいちばんだ。生涯ベスト級、いやワーストか。途中でやめて「でも最後まで読んでないんだろ」という誰に言われる訳でもない突っ込みに対抗するため、つまり、途中からは小説をけなすために最後まで通読したというわれながらバカな読書です。毒書というべきか。

 何が気に入らないかって、耳のモデルとか、羊博士とか、羊男とか、なんなんだこいつらとか、都合が良すぎるとか、まあ色々あったはずだが、もう今となってはどうでもいいし、思い出したくないし、だから思い出せないです。

 

 とにかく舐めてるのか、読んでるおれをバカにしてるのか、という思いが消えずに、想像の中で地団駄踏みながら最後まで読み切った。そういえば、地団駄踏みたいと思ったのも、生涯でこれが初めてだ。

 あえて個人的に駄目だった理由をあげれば、「羊=根源的な悪そのもの」という単純、稚拙な悪や社会・世の中というものの捉え方が受け入れがたかったのが、いちばんだと思う。寓意でもファンタジーでもいいけど、現実世界を一応は舞台にしておいて、その単純さは何なんだっていうね。いや分かりやすい悪役が出るファンタジーでも、ここまでの単純化・幼稚化はないんじゃないか。悪はもっと複雑で、むしろ表層にしかない悪がもっとも邪悪であったりもするはずだ。何が羊だよ。ふざけんじゃねえ。

 

 村上春樹氏は、後年、オウム真理教の信者・元信者にインタビューをおこなったそうだが、その結果、彼の悪というものの考え方はより固まったのだろうか、それとも考え方が変わったのだろうかとふと思った。ただし、そのことを確かめたいとはまったく思わない。

 

 

このブログの作者:浦葭広

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