サバのサバイバル

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読書「サピエンス前史」土屋健 著

サピエンス前史


土屋健 著「サピエンス前史」
(講談社 ブルーバックス)を読みました。

少し前に読み終わっていたんですが、ちょっとブログ控えめにしていた時期もあり、感想を書くのが遅くなりました。発売は2024年3月です。


「系統樹」と言ったら、イメージが浮かぶでしょうか?
1本の幹から始まって、上に行くほど細かく枝分かれをし、それぞれの枝の先に現存する生物種や、絶滅してしまった生物種がいる巨大な樹を思い浮かべてみてください。
その中の、上の方のひとつの枝先に我々ホモ・サピエンスがいるわけですが、そのすぐ脇には絶滅してしまったネアンデルタール人の枝があり、少し前に分岐した枝の先にはチンパンジーがいます。
一番下の幹からたどっていくと、原始的な生物から次々と進化しつつ枝分かれをして、その中のたったひとつの道筋が我々ホモ・サピエンスにつながっています。

 

チンパンジーはあとどれくらい進化したらヒトになるのかという人がいますが、決してそうはなりません。進化は基本的に不可逆的なものであり、少し前に共通の祖先から枝分かれをしたチンパンジーと我々ホモ・サピエンスはもう同じ道はたどらないわけです。

 

この本では、約5億年前の脊椎動物の出現から始まって、ホモ・サピエンスに至るたった1本の道に絞って進化の道筋をたどっていきます。
(40億年近く前の生命誕生から書かれているわけではなく、また無脊椎動物や植物のことも書かれていないので、そちらに興味のある方は注意してください)

ホモ・サピエンスに至るまでの5億年間には、多くの獲得したもの(形質)と失ったものがあります。それらにつていて、【70の道標】(みちしるべ)として本文中で確認がされていくのも面白い点かなと思います。
また、先ほどのチンパンジーの例のように、「別れた動物」についても、どこまでさかのぼれば「共通の祖先」となるのかという点も丁寧に書かれています。この「進化の分岐点」についての記述も興味深いものがありました。

 

また、2020年代のごく最近の論文の内容なども引用されているので、学生の頃に少し勉強したきりという方も最新の情報にアップデートできると思います。

 

筆者の土屋健氏は古生物学の修士をもつサイエンスライターなので、正確でありながらも読みやすい文章です。
縦書きのブルーバックスで、イラストや図も多く非常に分かりやすい内容だと思います。ただし生物名や生物用語については厳密に書かれているので、文章が読みやすい割には単語がちょっと難しく感じられるかもしれません。
しかしこの厳密さがなければ、あいまいな「お話」になってしまうので、多少頑張って読んでもらえれば良いかなと思います。


最後に書いておきたいことがひとつだけあります。
それは、この書名だけはいただけない! ということですね。🙄

大ベストセラーになった、ユヴァル・ノア・ハラリの「サピエンス全史」と一文字違いで、発音まで同じというのは、いかがなものかと思います・・・
せっかく良い内容の本なのに、題名のせいであらぬ誤解を受けてしまいそうな気がします。

将来、もし改訂版を出されるときには、最新の知見を入れるとともに、ぜひ改題して欲しいものです。

 

スバンテ・ペーボ博士が、ネアンデルタール人の全ゲノムの塩基配列を決定し、ホモ・サピエンスと混血していることを示して(それだけではないが)、2022年のノーベル生理学・医学賞を受賞したニュースなどで、人類の進化に興味を持った方もいるかもしれません。

そんな方々に、書名以外は・・・
お勧めします! 😃

 

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