サバのサバイバル

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読書「ザリガニの鳴くところ」ディーリア・オーエンズ

ザリガニの鳴くところ表紙

 

ディーリア・オーエンズ 著「ザリガニの鳴くところ」 (ハヤカワ文庫NV)

 

2021年本屋大賞翻訳小説部門第1位、全世界で2200万部突破、2019年・2020年アメリカでいちばん売れた本ということで、数年前に結構話題になりました。
ちょっと変わった題名でもあり、本屋で平積みされているのを見かけたり、題名が記憶に残っている方も多いかもしれません。

そのベストセラーが昨年(2023年)12月に文庫化。しばらく迷っていたのですが、結局購入して先日読み終わりました。

というわけで、既に読まれた方も多いでしょうし、こういう少し前にベストセラーになった本の事を書くのは、「いまさら感」もありちょっとためらう部分もあるのですが、あえて書いておこうと思わせてくれる小説でした。

前置きが長くなってしまいましたが、シンプルな感想としては非常に良かったです。読んでない人にはぜひ読んで欲しい!


(注意!) 以下、少しだけ内容に触れます。
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1969年のアメリカ、ノースカロライナ州の小さな村。かつて高校のクォーターバックのスター選手として村でも一目置かれる存在である青年の遺体が見つかる。疑われたのは「湿地の少女」と呼ばれる、6歳で母親に見捨てられて以来、湿地の奥で自然と共に生きてきた主人公カイアだった。
 

ジャンル分けは難しい小説だと思います。
冒頭で遺体が発見されるので、当然ミステリーとも言えるのでしょうが、それがメインではないという印象です。
主人公の少女カイアの、6歳からの成長物語であり、また確かな生物学の知識に裏打ちされた、ノースカロライナの湿地の豊かな自然を描いた小説であるともいえます。

物語の展開は、青年の遺体が見つかった1969年を固定点として、主人公カイアが6歳だった1952年から成長に従って1969年に近づいていく章が、細かく入れ替わりながら進んでいきます。

前半では、あまりに過酷な状況に置かれた主人公の成長が気が気ではなく、先を急いで読み進む感じになりました。遺体が発見されたミステリー要素は、ほとんど忘れて主人公が心配でなりません。
後半になって、ミステリー色が強くなってきますが、やはりこの小説はミステリーではなく、少女も含めた自然が中心の小説だろうと思いました。

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著者のディーリア・オーエンズは、動物行動学の博士号を持ち、多数の研究論文も出している野生動物学者ということで、そういう点でもこの小説が自然を描いているのは納得です。
それにしても、この「ザリガニの鳴くところ」は彼女の処女小説(ノンフィクションはそれまでにも数冊出しているが)で、その時69歳だったということに驚かされます。😮

★★★
徹夜してでも一気に読む、なんてことはもうできないので、何日もかけて読みました。
再開した時に、すぐに内容が思い出せずに、少し前から読み返すという小説も多いのですが、この作品は毎回 "スッ" と物語に入っていくことができました。
それだけ内容がこちらの頭に入っており、また私が物語に入り込んでいたということでしょう。非常に心地よく読むことができました。

美しくも残酷な自然。そして人間もその自然の一部であることからは逃れられない。

ちょっと長くて(624ページ)、文庫としてはやや高い(1,430円、Kindle1,287円、Audible版は0円)小説ですが・・・、未読の方はぜひ!

強くお勧めします!😄

 

 

★こちらの早川書房の "note" で冒頭部分をかなり長めに試し読みできます⬇️

www.hayakawabooks.com

 

★★★

2022年には映画化もされています(各配信サイトで100円程度でレンタルできるようです)。予告編を観ましたが、自然を描いた映像が美しくストーリーも原作にかなり忠実なようです。
作品に描かれている湿地や沼、そこに棲む生物など、こちらの想像力がついていかない部分が多々ありますが、そういう点は映像があればイメージを補完してくれるので、そのうち観てみようかなと思っています。

★ ソニー・ピクチャーズ公式ページ(予告編、冒頭10分映像、特別映像等が見られます)⬇️

www.sonypictures.jp

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