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17年ゼミ・13年ゼミは「素数ゼミ」じゃないの?

セミの羽化

⬆️この写真は17年ゼミ・13年ゼミではありません。
 

先日(2024年9月29日)放送された、NHK「ダーウィンが来た!」 「221年ぶりに数兆匹! 17年✖13年ゼミ 同時発生」 を観ました。
しかし、17年ゼミ・13年ゼミが生き残ってきた謎について、この番組で示されたのは、これまで言われてきた「素数説」⬇️(勝手に名付けました)とは、異なる仮説でした。

★『素数説』・・・「素数年ごとに大量発生するのであれば、発生周期の異なる他のセミと同じ年に発生することはめったにない。その結果、異種のセミとの交雑や競合を避けることができ、また天敵である寄生虫の発生周期とも重なりにくいため、この素数ゼミが生き残ってきたと考えられる」

★「素数説」で過去記事を書きました。⬇️


⚠️⚠️ 以下番組内容に触れます。録画や配信でこれから観る方は注意!
 

番組Webサイトには「17年ゼミ・13年ゼミ」、「周期ゼミ」としか書かれておらず、どこにも「素数ゼミ」という言葉が無かったので、見る前からちょっと疑問に思っているところがありました 🤔

実際に番組を観てみると、これまでは「素数ゼミ」とも言われてきたけれど、それとは異なる、最有力で最新の仮説が2022年に出てきたとNHKは言っています。発表したのは京都大学の名誉教授の方でした。

その「仮説」とは、
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周期ゼミは4年ごとに羽化するかどうかを決める仕組みを持っているらしい。
周期ゼミの幼虫は、4年ごとに自分の成長具合を見極めるチェックポイントを持っていて、これが羽化の時期を決めるらしい。
そして、このチェックポイントで羽化の準備が整った幼虫は、目の色を白から成虫と同じ赤色に変え、地上での生活に備えて目が見えるようになる。

この羽化の準備が整ったかどうかは4年ごとに見極められているので、
4年x3 = 12年
4年x4 = 16年
この「見極め」が羽化の前の年ということ。そして羽化の準備が整って、目が赤くなった幼虫はその翌年に必ず地上に出てくる。
つまり、
4年x3 + 1年 = 13年
4年x4 + 1年 = 17年

という仕組みで、13年ゼミ・17年ゼミとなったという仮説です。
進化的には、まず13年ゼミが現れ、寒冷な北部に進出して4年成長が遅れることで17年ゼミに分化したという考察です。

(番組としてはここまで。その他、鳴き方のパターンの話題も出てきます。)
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数式として表せば、
4n + 1
となるわけですが、n = 1, 2, 3, 4, 5 と代入していくと、
5年、9年、21年ゼミがいてもよさそうなものです。

しかし、元々氷河期の寒冷化のため、成長が非常に遅くなっていた時期に進化してきた13年ゼミは、5年や9年では羽化するまでに成熟はできないということでしょう。
また、21年も地中にいると、モグラなどの天敵に襲われたり餓死したりする可能性も高まるわけで、結局13年ゼミが進化してきたということでしょう。
(この5年、9年、21年ゼミについては、番組では何も触れていません)

★★★

このように、NHKは17年ゼミ・13年ゼミが進化してきたのは、「素数説」ではなく、"4n + 1" という仮説で番組を作ったわけです。4年の周期のズレに注目しているアメリカの研究者は以前からいたようですが(下記書籍に記載されている)、この最新の仮説はどうなんでしょうね?

番組で示された "4n + 1" という仮説は、一見「なるほど!」とも思うのですが、「4年ごとに自分の成長具合を見極めるチェックポイントを持っている」と言っても、それがいったいどういう仕組みなのか、番組では全く触れていません。
恐らく、その仕組みを実現する遺伝子なり酵素なりは見つかっていないのでしょう。現状ではあくまでも「仮説」でしかないということですね。
(周期的に羽化したり、素数年ごとに羽化する遺伝子等も見つかっているわけではありません)

★★★

以前著書を紹介した、吉村仁氏は「素数ゼミ」の名付け親です。今回、氏の著書「17年と13年だけ大発生? 素数ゼミの秘密に迫る」を改めて読んでみたのですが、遺伝的な考察がしっかりと行われていて納得できる記述が多くありました。
"4n + 1" 仮説で「4年ごとに羽化するかどうかを決める仕組みを持っている」と言われても、その仕組みを示すことができないと、あくまでも単なる「仮説」でしかありません 🤔

個人的には、より数学的な奥深さと驚きのある「素数説」にロマンを感じますね 😄

興味を持たれた方は、吉村仁氏の著作⬇️ を読んでみてはいかがでしょう。
2024年10月3日現在、Kindle Unlimited でも読むことができます。(紙の新書版は中古しかなく、3,000円以上と高騰しているようです)

 

★過去記事でこの本⬆️の内容を簡単に紹介しました⬇️

savatrunk.com

 

★放送は終わっていますが、2024年9月29日「ダーウィンが来た!」紹介の記事⬇️

savatrunk.com

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