ピングドラム小ネタ 幾原監督の過去ブログより

以前ピングドラムが発表される前に幾原監督のブログを一気読みした事があって、その際いくつか気になる記事をメモしておいたんですが、先ほどそれらを読み返してみたらピングドラムを観る上で手がかりになりそうな部分がありそうなものがあったのでご紹介。文字強調は全部引用者によるものなのでその点ご注意下さいませ〜。
 

スラムドッグ 2009年04月27日(月)
 
あるSF小説を読んでいる。
実は中学生の頃に一度読んだ本なのだけど、確認したいことがあり、再読中。
一度読んだ本だし、一日で再読できるだろう…しかも中学生の頃に読んだ本だし…と高をくくっていたのだが。
読めない…。読んでも読んでもまったく頭に入らない。気がつくとなんのことやら分からなくなっていて、何度もページを戻って読み直す。
苦痛だ。
なぜ?
記憶だと中学生の頃は、数日で読めたはずなのに。
はたと気がつく。
作品のテーマが「ボーイ・ミーツ・ガール」なのだ。これか、これで読みづらいのだ。
 
中学生の頃、窮屈な自分の現実を一時忘れる為に、果てなく広い宇宙とボーイ・ミーツ・ガールは読書という行為の重大なモチベーションだった。
 
読書という行為は現在の自分を照らす。
もう自分の人生には、果てなく広い宇宙とか、ボーイ・ミーツ・ガールは要らないってことのようだ。
大人になるってことは“可能性未来”を失うということだ。もう、自分の人生の未来に“胸躍る宇宙への冒険”はあり得ないし、“ピュアな異性の姫との恋”もない。同じ意味で“サッカー選手になる”自分もないし、“世界で一番強い男”になる自分も無い。
自分の人生の未来に関係ない話っていうのは、自然と頭にシャッターが下りてしまう。
大人になればなるほど、どんどん勝手に頭が「これは自分には無いから却下」と決めてしまう。
“若い人とずれる”とは、そういうことだ。
 
映画『スラムドッグ$ミリオネア』を観た。
同じくボーイ・ミーツ・ガール。
なぜか観れた。
スラムの話。そうか、今の時代の気分を現してる。
自分にも「スラムの話」は必要だったらしい。

http://www2.jrt.co.jp/cgi-bin3/ikuniweb/tomozo.cgi?no=484

何かこの時期の監督の日記を読んでいると悶々と悩んでるのがジリジり伝わってきて面白い。
幾原監督は度々インタビューなどでピングドラムのテーマについて「世代間の断絶を繋ぐ話」であるというような事を言っていますが、そうしたテーマを設定するのに必要な分析やアイデア出しをしてた時期なんでしょうか。
  

読みたい 2009年05月29日(金)
 
村上春樹の新刊が出たという。
気になる。
とても読みたい。
が。
他で頭が一杯一杯で本を読める頭の隙間があるのか不安。
特に。
最近は何を読んでも染み込んでこないからなー。
 
 (以下略)
 

http://www2.jrt.co.jp/cgi-bin3/ikuniweb/tomozo.cgi?no=488

ひとつめの日記にもあるように、自分の感受性の変化について嘆きともボヤキとも取れる発言。
ちなみに幾原監督は自身のブログやツイッターで何度か村上春樹の名前を出していますが、「ピングドラム→丸の内線→地下鉄サリン事件→村上春樹の『アンダーグラウンド』」と無理やり連想ゲームで繋げる事ができなくもないです。さて、これは見当違いな連想なのか、はたまた案外的を射ているのか。手っ取り早い途中までの答え合わせがしたい人は小説版Amazon CAPTCHAを読みましょうそうしましょう!(←無理やり宣伝w
いやね、周囲に読んでる人がいなくて感想言い合えないのが辛いんですよw 僕はこないだ一気に読み終えましたが面白かったですよ!後日また感想書こうかな〜。
 

人生って 2009年06月08日(月)
 
あるときふと気がつく。
 
「あなたは違う」
「あなたではない」
 
その言葉を言われ続けることが、人生だと。
僕(私)は、ここにいていいのだろうか。
僕(私)は、変わらなくてはいけないのだろうか。
変わってしまった僕(私)は、僕(私)でいられるのだろうか。
そして…変われなかったら僕(私)はどうなってしまうのだろう…。
 
「そのままの あなたがいい」
 
そんな言葉に出会える奇跡。
そーゆーのが描ければ。。。むー。

http://www2.jrt.co.jp/cgi-bin3/ikuniweb/tomozo.cgi?no=490

ここでも先に挙げた日記と話題の根となっている部分は似ている気がしますね。
 

幸福とは幸福を探すことである 2009年06月16日(火)
 
戦後、経済成長を経て日本は近代化した----。
そんな論調をメディアで見たり読んだりするたびに奇妙な違和感があった。
“何か”が抜け落ちているような気がしていた。
 
100年に一度の不況だと言う。
お金が無くなって、日本人もようやく分かっただろう。
近代化とは“幸せの価値”が人それぞれになることだって。
なんだ、そんなことか。
いやいや、結構、それって難しいんだ。
 
古いメディアは、相変わらず「格差」だと「婚活」とか言ってるけど、みんなそんなことはどうでもいいって分かっている。
いい学歴を得たって、高い収入を得たって、大きな家を買ったって、そんなことで幸せになれないってことは、みんなとっくに知ってる。
幸せの価値がひとそれぞれってことだとすると、そこで最も大切なのは“想像力”だ。
メディアに“幸せ”を教えてもらわないと不安な人には難しい。
 
他の誰にも、それが分からなくっても、私には分かる。
“私だけの幸せ”を想像する力。
それだけでいい。
 
 (以下略)
 

http://www2.jrt.co.jp/cgi-bin3/ikuniweb/tomozo.cgi?no=491

上記の“想像力”に関連しそうな話題が出てくる日記↓

あけましておめでとうございます
 
新年早々、こんな場所を誰が読んでいるのか分かりませんが、応援してくれているとしたらありがとう。
さっき近所の神社に初詣に行ってきました。僕以外、詣での人はいませんでしたが。
 
新年早々、まったくの独り言です。
近年、益々、人の世界は「イメージ力(りょく)」になったなあ、と思うのです。
例えばね。
「明日、映画を観にいこう」と思ったとします。
まずやることは。
「ネット(携帯)で、どこの映画館で、何時からやってるか調べよう」
そして気がつく。
「なんと、観たい映画は単館上映だ。しかもレイトショーのみ」
そこでちょっと考える。
「じゃあ駅最寄の吉牛で夕飯を食ってから観ることにしよう」
 
「明日、映画を観る」という行為は、大抵この程度のイメージ力で成し遂げられます。
「成せること」はイメージ力です。
これから夕飯をつくることも、
明日、友達と会うことも、
これ、みんなイメージ力によって可能になっているのです。
 
だから「芸能人になりたい」と思って、本当になってしまう人は「凄くイメージ力の強い人」なのだと思います。
なぜなら大抵の人は「自分が芸能人になるために行なう行為」をイメージすることが出来ないからです。
いや、仮にイメージしたとして。
そのイメージにリアリティを感じることが出来なければ、その困難に挑むエネルギーなんて沸かないでしょう。
つまり「イメージ力を持った人」とは、「実現可能なシュミレーションを立てることが出来る人」のことなのですね。
 
なんでこんなことを書くかと言うと。
昨年末、東京工芸大学で講義をさせてもらったのですが。
(S子先生、その節はお世話になりました)
そのことを言い忘れたような気がしたので今頃、言う。
クリエイティブできる人って、「才能がある」って言葉で言い表すより、「イメージ力を持った人」という言い方をしたほうが的確だと思う。
 
今年もよろしく。

http://www2.jrt.co.jp/cgi-bin3/ikuniweb/tomozo.cgi?no=469

現代人にはどういったものが必要となるのだろうか?といった事が幾原監督らしい言葉で綴られています。こうした意識も作品に反映されるのでしょうか。
ちなみにこれらの日記の前後を見てみると、ちょうどこの年の11月頃からピングドラムのブレーンストーミングやってるみたいなんですよね。という事はこの頃の問題意識というのはわりとダイレクトに作品に繋がっててもおかしくない気はします。
 
「ピングドラムの手がかりになりそうな部分」とはややズレますが、ひとつめの日記にある監督の読んでいるSF小説というのはリンク先の画像から頑張って調べてみたところ、エドモンド・ハミルトンという作家の『スターキング』という小説らしい事がわかりました。画像が潰れてしまっていて良く見えないですが、頑張って読み取れた「ハミルトン」、「スペースオペラ」、「アーン」という単語でググってみたら見事ヒットしました。なんかうれしい・・・w 実は次の日の日記(http://www2.jrt.co.jp/cgi-bin3/ikuniweb/tomozo.cgi?no=485)にも別のSF小説の写真が載ってますが、流石にこちらは字が潰れすぎてて調べるのを断念。
あ〜、でも作品作りの真っ最中に監督が触れた作品だと考えるとあながち無関係な事でもないのかな?
 (追記:オースン・スコット・カードの『ソングマスター』という小説だったようです!コメ欄で情報頂きました、ありがとうございます。しかしこれを見つけ出せるってすげぇ! →http://kicchan.s19.xrea.com/img/501-600.htm#0550)
 
というわけで今回はこんな所で。
 
あ、2話本編の小ネタとしては

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↑ココが色々網羅してて面白かったです。