芝居

音楽とホットスパーが加わって~改訂版『悪い仲間』

改訂版『悪い仲間』をシアター風姿花伝で見てきた。初演とそこまで印象が変わったというわけではないのだが、音楽(後藤浩明)が加わったのと、またホットスパー(梶原航)がわりあい大きい役で出てきて活躍し、ハル(今井聡)との対決場面もあるので、そこ…

恋愛笑劇~『昭和から騒ぎ』

三谷幸喜の翻案・演出による『昭和から騒ぎ』を見てきた。シェイクスピアの『から騒ぎ』にけっこうちゃんと沿っているのだが、第二次世界大戦後の鎌倉が舞台で、旅役者の一団が鎌倉の鳴門教授(高橋克実)の家にやってくるという設定になっている。ドン・ペ…

妙に不愉快な人たちが出てくる演出~『夏の夜の夢』

劇団やりたかった『夏の夜の夢』を「劇」小劇場で見てきた。非常に台本に忠実…なのだが、雰囲気はふつうの『夏の夜の夢』とは全然違って、全体的に登場人物がえらく不愉快なキャラクターになっている。シーシアスは領主というよりは突然、株かなんかで儲けた…

万歳マクベス、声がデカい方~『マクベス』

彩の国シェイクスピア・シリーズで『マクベス』を見てきた。 www.youtube.com 時代などがあまりはっきりしないシンプルなセットや衣装を使っており、そんなに奇を衒ったところはないわかりやすい演出だと思う。魔女が全員男優で、かなりわちゃわちゃした不気…

これ、大河ドラマにすればいいのに…『フェイドアウト』

中野で『フェイドアウト』を見てきた。日本で初めて映画(活動写真)を上映した大阪の輸入雑貨商である荒木和一(橋口俊宏)と、そのライバルで京都の実業家である稲畑勝太郎(西野内仁志)を描いた1年間の物語である。 メインの登場人物は4人で、主人公の2…

和風時代劇版夏夢~『あちゃらかオペラ 夏の夜の夢 ~嗚呼!大正浪漫編~』

Space早稲田で山元清多がシェイクスピアを翻案した『あちゃらかオペラ 夏の夜の夢 ~嗚呼!大正浪漫編~』を見てきた。流山児祥演出による楽塾の公演である。 大正時代の軽井沢が舞台である。大久保公爵(桐原三枝、妖精の王ヤマトと二役)と女優の弥生(い…

これも追加は要るのだろうか…と思った~『テンペスト』(ネタバレあり)

下北沢の「劇」小劇場で鳥獣戯画『テンペスト』を見てきた。知念正文による翻案・演出である。けっこう内容が変更されており、島の妖精以外に女神が出てきて筋にかかわったりする。プロスペロー(石丸有里子)は原作よりもはるかに復讐心に燃えていて、自分…

この追加部分要るのかな…『そよ風と魔女たちとマクベスと』

すみだパークシアター倉で串田和美『そよ風と魔女たちとマクベスと』を見てきた。話はまあ基本的には『マクベス』なのだが、けっこうカットされており、そよ風をモチーフとする追加部分がある。若いマクベス(串田十二夜)とマクベス夫人(大空ゆうひ)が中…

職人劇団が即興を…『没入図書館へようこそ~夏の夜の夢編~』

シアターブラッツで演劇集団LGBTI東京『没入図書館へようこそ~夏の夜の夢編~』を見てきた。話は『夏の夜の夢』なのだが、近未来が舞台で、機械を使って本に没入できる設備を備えた図書館ではつみ(後藤千裕)とらら(高橋茉由)が『夏の夜の夢』のイマーシ…

セリフ回しに難しさが…『陽気な幽霊』

シアター・クリエでノエル・カワード作、熊林弘高演出『陽気な幽霊』を見てきた。 チャールズ(田中圭)はルース(門脇麦)と結婚して田舎の大きな家に住んでいたが、霊媒師のマダム・アーカティ(高畑淳子)を呼んで降霊会を催した後、前妻エルヴィラ(若村…

よくあるシェイクスピアパッチワーク~『シェイクスピアの悪役会議』(配信)

三栄町LIVE×fukui劇 vol.18 『シェイクスピアの悪役会議』を配信で見た。死にそうなシェイクスピアがなかなか次作の主人公を思いつけないでいるうちに、これまで作品に出したいろいろな悪役が主人公の座をめぐってしのぎを削る…みたいな話である。こういうシ…

不幸な終わりから始まるミュージカル~『ボニー&クライド』

『ボニー&クライド』を見てきた。言わずと知れた有名な強盗カップルを描いたミュージカルである。実はこの演目はサバティカル中、ダブリンにUK&アイルランドツアーで巡業が来るはずだったのだが、チケットが売れなかったそうでアイルランドツアーが中止にな…

体力勝負のミュージカル~『フランケンシュタイン』

Brilliaホールでミュージカル『フランケンシュタイン』を見てきた。ビクター・フランケンシュタインが中川晃教、「怪物」が加藤和樹の回だった。 www.youtube.com 原作とは序盤がかなり違っており、ヴィクターが戦争で出会って親友となった共同研究者アンリ…

劇場を閉めるにあたって~『嵐 THE TEMPEST』

さよなら俳優座公演ということで小笠原響演出『嵐 THE TEMPEST』を見てきた。全体的にこれで俳優座が閉まってしまうということを意識した演出で、最初から「俳優座」と書かれた板が隠しもせずそのまま使われている。そもそも『テンペスト』じたいが終わりと…

ルー大柴だった~『アメリカン・サイコ』

新国立劇場で『アメリカン・サイコ』を見てきた。ブレット・イーストン・エリスのの同名小説が原作だが、わりと 映画版準拠な作りである。 とにかく手の込んだセットで、三段くらいになった可動式の丸い構造物が舞台の真ん中にあり、これはいろいろ動かした…

アクション映画のような演出~『マクベス』

グローブ座でルーシー・カスバートソン演出『マクベス』を見た。90分にカットした非常にスピーディなプロダクションである。『マクベス』はシェイクスピアの悲劇の中でも非常に短いのだが、先日ダブリンで見た『マクベス』も90分にカットされており、サクっ…

キャンドルの下で複雑な話を~『シンベリン』

サム・ワナメイカー劇場でジェニファー・タン演出『シンベリン』を見てきた。 www.youtube.com サム・ワナメイカー劇場はキャンドルの光で上演をするのだが、そこでこういう入り組んだ複雑な話をやるというのは、雰囲気はけっこう合っていると思った。タイト…

KTタンストールの音楽が楽しいミュージカル~『クルーレス』

ウェストエンドで開幕したばかりのミュージカル版『クルーレス』を見てきた。 www.youtube.com 言わずと知れた有名映画(オースティン『エマ』の翻案)の舞台版である。話はだいぶ映画に忠実で、台本には映画の脚本家であるエイミー・ヘッカリングがちゃんと…

ロキとペギー・カーターの恋~『から騒ぎ』

シアター・ロイヤル・ドルリー・レインでジェイミー・ロイド演出『から騒ぎ』を見てきた。トム・ヒドルストンがベネディック役、ヘイリー・アトウェルがビアトリス役である。 www.youtube.com 非常に奥行きのあるセットなのだが、ピンクの花びらみたいなもの…

まさかの頭突き~『リチャード二世』(ネタバレあり)

ブリッジシアターでニコラス・ハイトナー演出『リチャード二世』を見てきた。 www.youtube.com 現代の服装による上演で、リチャード(ジョナサン・ベイリー)は序盤はスーツに冠をかぶっており、終盤ではグレーの囚人服みたいなしょぼくれた格好になる。たぶ…

ロックオペラのような能のようなギリシア悲劇~『エレクトラ』

デューク・オブ・ヨーク劇場で『エレクトラ』を見てきた。言わずと知れたソフォクレスの有名作で、英語台本はアン・カーソン、演出家はダニエル・フィッシュである。主演がブリー・ラーソンで、ゆっくりめに回転する舞台に椅子などがあるだけの舞台で、上に…

オペラのパロディのようなオマージュのようなミュージカル~『スティレット』(Stiletto)

チャリングクロス劇場で新作ミュージカル『スティレット』(Stiletto)を見てきた。1730年代初頭のヴェネツィアが舞台で、カストラートのマルコと奴隷の娘である黒人のソプラノ歌手ジョイアのロマンスを軸に不倫あり殺人あり汚職ありの波乱の物語が繰り広げら…

ギルドフォード爆破事件を題材にしたひとり芝居~Paddy – The Life & Times of Paddy Armstrong

ファイヴ・ランプス・アーツ・フェスティヴァルの一環としてショーン・オケイシー劇場で上演されたPaddy – The Life & Times of Paddy Armstrongを見てきた。『父の祈りを』と同じく、1974年のギルドフォードのパブ爆破事件による誤認逮捕と冤罪を扱っている…

ベルファスト(1)グランドオペラハウス

ベルファストのグランドオペラハウスで舞台裏ツアーがあるというので行ってきた。 ベルファストのグランドオペラの外観。 中に入るとちょっとした展示が。 楽屋の鏡を模した展示。 チャップリンが若い頃にここに出たそうな。 この劇場では政治的なイベントの…

ゴドーのようなロマコメ~Just Another Day

サミュエル・ベケット劇場でJust Another Dayを見てきた。ダン・ローリア作・主演でパティ・マコーマック(1950年代の『悪い種子』からキャリアのある超ベテラン女優)が出演しており、エア・サプライのグレアム・ラッセルが音楽を提供しているという豪華な…

コメディというよりはコントのような…Three Short Comedies by Seán O’Casey

パヴィリオン劇場でThree Short Comedies by Seán O’Caseyを見てきた。ドルイドによる上演で、ギャリー・ハインズが演出である。ショーン・オケイシーの短編喜劇(というか笑劇)を3本まとめてやるというものである。わりとセットがリアリスティックで、それ…

2025年聖パトリックの日

3月15-17日は聖パトリックの日にあわせた週末で、ダブリン中でいろいろな催しが行われた。 夜は市内のランドマークがほぼ全て緑にライトアップされる。 政府庁舎からショッピングセンターまで、いろいろ。 ケイリ(ダンスや音楽をやる催し)の開催場所を示す…

90分でわかりやすく~『マクベス』

スモックアリー劇場でヴォルタ劇団による『マクベス』を見てきた。リアム・フーリカン演出で、たった90分で十代の子どもや初心者にもわかるようサクっと『マクベス』をやるというものである。 セットは上から枝がぶらさがっており、後ろには布のカーテンが出…

王道の演出~『リア王』

ゲイト劇場でロクサナ・シルバート演出『リア王』を見てきた。リア王役は『ゲーム・オブ・スローンズ』でヴァリス役だったコンリース・ヒルである。 セットは草のような布のようなかたまりがいくつかぶらさがっているという抽象的なもので、場面によって照明…

とにかくヒドい(褒めてる)台本をツボを押さえて~Ulster American

dlrミル劇場でデイヴィッド・アイルランドのUlster Americanを見てきた。デクラン・ラドン演出である。 舞台は現代ロンドン、ウェストエンドの演出家であるリー(ケヴィン・ファヒ)の家である(この部屋のセットは結構ちゃんと作り込んであった)。リーはア…