グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ

600ページというボリュームでさらりと読めるという本ではないもののこれまで読んだ
グーグル関連本では間違いなくベストである。この本と比較すると以前読んだ本は
何だったのだろうかと思えるほど濃い内容である。


読み始める前は中国進出に関することやその前後のことが書かれていると思っていたんだけど、
著者がグーグルに許可をもらってインタビューや内部に入っているだけあって、創業当時からの話や
ペイジとブリンを始めとした多くの社員から直接聞いた内容で構成されている。

問題は、グーグルのサーバー上にウェブのコンテンツを保存するインデックスで生じていた。2000年前半の2,3ヶ月の間、インデックス内の情報は全く更新されていなかった。つまり、その期間に新しく作成された数千万もの文書はまったく収集されていなかったわけだ。グーグルの検索エンジンにとって、それらは存在しないことになる。

初期の頃は増え続けるPCの冗長化の仕組みを作るのも大変だったようだ。

サンドバーグは、品質スコア方式が画期的だったのは、「高い関連性の確保を広告主側の仕事にしてしまったこと」にあると言う。「関連性の高い広告をつくれば料金が下がるのだから、キーワード、テキスト、ランディングページ、それに広告キャンペーンそのものの品質を改善しようと努力するはず」。この方式に欠点があるとすれば、あまりに複雑な仕組みであるため、広告主を混乱させる可能性があることだった。

Google Adwordsをやったときに説明を受けたことはこういうことだったのか。それ相応の
有用なページを作らないといけないのは広告主側からするとそれなりに手間がかかる。

「2人はいつも、『僕らはモンテッソーリ教育を受けた』と態度で示しているように思える」とメイヤーは言った。「権威を疑うように訓練され、プログラミングされてきたのだと」だから、こうした態度がグーグルの企業文化の基盤となったのはある意味で当然だったかもしれない。「なぜ職場に犬がいないんだ?」とメイヤーは上司たちのオタクじみた物言いをまねて言う。彼らは何にでも理由を知りたがった。「なぜ職場におもちゃがないんだ?なぜ軽食やおやつは無料じゃないんだ?なぜ?なぜ?なぜ?」

モンテッソーリ教育*1の結果があのような独創的な福利厚生につながったのだろうか。

グーグルは社員食堂を無料にするためにどれだけのコストをかけているのだろうか。「誤差の範囲より少ないくらいだ」とブリンは語っているが、人事部門トップのステイシー・サリバンからはもう少し具体的な話が聞き出せた。噂によれば社員1人当たり1日17ドルかかっているそうだが、これは正確な数字かと聞くと彼女はこう答えた。「私も正確な数字は知らない。15ドルかもしれないし、17ドルかもしれない。途方もないコストではないけれど、決して小さくない額であることは確かです」

もっとかかっているのかと思っていただけに案外現実的な数字であった。

ハウジングを提供するエクソダス社にとって、グーグルは何とも厄介な顧客だった。何しろ、これほど狭いスペースにこれほど多くのサーバーを詰め込んだ企業は初めてだった。1ラックあたりのサーバー搭載台数は、通常5台から10台というところだったが、グーグルは1ラックに80台も押し込んでいた。ラック自体も間に人が入り込むのが難しいほど密に配置されていた。

1ラックに80台とはあまり想像できないけれど、いわゆる普通のサーバタイプじゃないものを
無理やり詰め込んだら確かに入らないこともなさそうである。今はもうちょっと違う構成
なのだろうけど。

「だが、私たちは完全に上限を超えていた。郊外の小さな住宅街に匹敵する電力を消費していたんだ」とリースは言う。エクソダスは急いで回線を増強する必要があった。また、空調能力も限界に近づいていたため、エクソダス側は急遽、移動式の空調設備を積んだトラックを購入した。18輪トレーラーをデータセンターに横づけすると、壁に三つ穴を開け、塩ビパイプを通してグーグルのケージに冷気を注入した。

電力と空調は確かにあまり考えたくないほど増強しないといけなそうだ。

「ネットワーク構築には多額のコストがかかった」とヘルツルは言う。「それだけでなく、1秒に1ギガバイトのデータを20時間かけて送信する必要があったので、1カ月に25万ドルかかる計算になる」。グーグルは、コスト節約のためにデータ転送の課金制度に抜け穴を見つけた。従量制のブロードバンドプロバイダーには「95%ルール」というものがあった。これはトラフィックを5分ごとに自動的に測定し、1ヵ月のデータの上から5%を取り除いた最大値に対して課金するというシステムだった。これにより、顧客側には突発的に大量のトラフィックが発生しても高額な料金を払わなくてすむというメリットがあった。

こういう裏技的なアイデアはグーグルらしいというか。プロバイダーからすると嫌な客である。

陳はツールバーがユーザーに無視されているのは、それが何の価値も提供していないためだということに気づいた。そこで彼は、わずらわしいポップアップのブロック機能をツールバーに追加する案を思いついた。

今でこそあまり気にしないけれど、IE6とかであればGoogle Toolbarはポップアップ抑止機能が
付いていて確かに便利であった。基本的にツールバーなんて入れたくないのが普通だから
良いアイデア。


中国進出の話やSNSの出遅れといった最後の方は追う立場になっている様子がよくわかる。
本当に読み応えのある一冊であった。


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http://ja.wikipedia.org/wiki/モンテッソーリ教育

*1:常に子供を観察し、そこから学ぶ姿勢を貫いたモンテッソーリは、感覚教育と同様に重要と説いたのは、子供の中の自発性を重んじることである。どの子供にもある知的好奇心は、何よりその自発性が尊重されるべきで、周囲の大人はこの知的好奇心が自発的に現われるよう、子供に「自由な環境」を提供することを重要視した。