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ビジネスのグローバル化が進む現在、英語は日本人にも必須のスキルとなっている。この記事では、英語スキルの活用例や、7つの効果的な学習方法を紹介。加えて、同時に強化したいビジネススキルや資金準備に役立つ制度についても詳しく解説する。

英語のリスキリングはなぜ必要? 

「日本人は英語力が低い」という指摘は、多くの日本人にとっては耳の痛いものだろう。まずはその実態や背景について探ってみたい。

調査結果で見る英語リスキリングの必要性

英語を学ぶ必要性を理解するため、まずはいくつかの調査結果を確認しておこう。

世界に語学学校を展開するEFエデュケーション・ファースト(スイス)が発表した「『英語能力指数』ランキング」においては、日本は87位で、さらに同ランキングでは毎年順位を落とす結果となっている。

2023年の日経転職版の調査では、現在学び直している分野として「英語」を挙げた人が34%と、最も多かった。

このほかさまざまな調査結果においても、「リスキリングといえば、まず英語」と考える人が多い。ITスキルやデータ分析に並ぶか、あるいはそれ以上の優先度に位置付けられ、不動の人気分野となっていることがうかがえる。

参考記事:転職希望者のリスキリング 最も学びたいのは「英語」

英語力と年収には相関関係がある

一定レベル以上の英語力は、年収と相関関係があることも、人材業界などではよく知られている。22年のパーソルの調査では、以下のような傾向が見られたという。

・すべての業種・職種において、TOEIC500点以上の人は、平均年収より高い収入を得ている
・900点以上の人は、金融・保険業界での平均年収が254万円高くなる
・業種別にも差があり、特に金融・保険、建築・土木・不動産・設備、機械・電気・電子エンジニアなどでも高スコアだと年収へのプラス効果が大きい

特に上位業種では外資系企業の比率が高いことなども影響していると考えられるが、高収入につなげるなら、英語力強化が最も確実なリスキリング戦略の1つといっていいだろう。

参考記事:身近なリスキリング「英語」の強み 年収増に効果的

ビジネスに英語スキルが求められる背景

現代はあらゆるシーンにグローバル化が浸透している。世界中から迅速にモノや情報が集まることで、「生活が便利になった」と実感している人も多いのではないだろうか。

そしてそれらのやりとりの基幹にあるのが英語だ。企業にとっては、事業規模の拡大が進めば進むほど、英語を用いたコミュニケーションが必須となる。さらに国内でも、外国人労働者数が10年前の約2.9倍に増加。今後も国の想定以上のスピードで増えていくと考えられている。

海外企業との競争は激化し、最先端技術の多くは英語で発表されている。英語スキルの向上は、組織にとっても働く個人にとっても急務だといえるだろう。

社会人の英語スキル活用例

それではここからは、社会人が英語スキルをビジネスにどう生かすのか、4つのパターンを紹介していこう。

①現在の業務に応用

まずは現在の業務で英語を活用し、仕事の幅を広げるパターンがある。

例えばオフィス勤務であれば、業務マニュアルや契約書、会議資料などを英語対応にしておくと、多様な人材の確保・育成に貢献できる。さらにWebサイトの多言語化や、外国人顧客向けプロモーションの企画提案なども可能だ。

サービス業では、円滑なコミュニケーションによって外国人利用客へも高い満足度を提供できる。教育現場にも日本語を母語としない生徒・学生が増えつつある。生徒や保護者の理解や指導にも役立つだろう。

②海外取引業務への転属や国際部門への異動

次は、所属する組織内で海外取引業務へ転属したり、国際部門へ異動したりするパターンだ。

営業職ならグローバル企業との商談、技術職なら海外の研究機関との協働プロジェクトなどに携われる可能性がある。

ネーティブスピーカーとの会議や折衝まで担える人材と認められれば、現場だけでなく、組織内でのキャリアアップへの大きな助けになるだろう。もちろん海外勤務や外資系企業などへの転職という選択肢も、その延長線上にある。

③海外勤務・留学

実際に海外に居住して、現地での仕事や学習に取り組むパターンもある。

商社やメーカーなどでは、国内で海外取引の実績を積んだ社員に、現地法人の重要なポストを任せる例も少なくない。また社費留学制度を設け、社員のMBA(経営学修士)取得を支援する企業もある。

高度なITスキルを持つ経営者やフリーランスなど、いわゆる「デジタルノマド」人材が生活拠点を海外に移すのも、このパターンの1つといえる。

④他ジャンルとのかけ合わせ(プログラミングなど)

英語スキルを他のジャンルのスキルとかけ合わせるパターンについても触れておこう。

例えば英語に堪能なプログラマーであれば、シンプルに国内外の優良IT企業へ転職するチャンスが増える。世界をリードする巨大IT企業群(グーグル、アップル、メタ、アマゾン、マイクロソフト)や、人工知能・機械学習などの最先端技術を持つ企業は、多くがシリコンバレーから生まれている。

データアナリストやデジタルマーケターも、業務において日常的に英語のソフトウエアやドキュメントに触れている。製品側の日本語対応や翻訳版を待っていると、世の中の流れに後れを取ってしまうからだ。

IT以外でも、注目度の高い科学技術論文や研究結果は、最初は英語で発信される。新たな知識にいち早く触れるには、英語力が不可欠だ。

リスキリングに効果的な英語学習方法7選

続いては英語リスキリングに効果的な学習方法について、7つを取り上げて説明する。どれか1つではなく、複数を組み合わせて効果的に学習を進めよう。

方法1.オンライン英会話レッスン

まずは「オンライン英会話レッスン」。英語での円滑なビジネスコミュニケーションを目指す人に、最も支持される学習方法の1つだ。

ネーティブ講師とマンツーマンで会話練習ができ、リスニングや発音の訓練に役立つ。自宅などから手軽に受講でき、気になる点はリアルタイムで質問できるのもメリットだ。

講師の選択肢が豊富で、興味のある地域の出身者や、共通分野の知識を持つ講師に出会える可能性が高い。さらに、各社が受講者に対して無理なく継続できるよう、さまざまな仕組みを用意している。

サービスの一例として、ネイティブキャンプ、レアジョブ、Bizmates、Berlitzなどがある。

方法2.動画教材・eラーニング

「動画教材・eラーニング」も、英語のリスキリングにうまく利用したい。いずれもオンライン英会話レッスンよりも、さらに自由な時間に受講できるのがメリットだ。

動画教材は講師によるレッスン型のものが多く、インプット学習に適している。YoTubeで無料公開されているものも多いので、通勤時間での聞き流しなどから気軽に始められるだろう。

それに対し、eラーニングは双方向性コンテンツが多いのが特徴だ。発音や会話のシミュレーションなど、アウトプットの行為を通じて知識を定着させる学習効果もある。クイズ形式で文法や語彙を身に付けるなど、ゲーム感覚で楽しく取り組めるものを活用したい。

方法3.英語学習アプリ

続いては「英語学習アプリ」だ。いくつかスマートフォンに入れておけば、隙間時間が学習時間に変わる。

その内容は多岐にわたるが、特に以下のような学習との相性がよいといえるだろう。

・音声機能を活用した、リスニング力強化や発音練習
・視覚的演出でゲーム性を取り入れた、単語・フレーズ暗記

また別の項目で紹介している、オンライン英会話や動画教材、試験学習などをそのままカバーするアプリもある。伸ばしたい能力やレベルに応じたものを、アプリストアで探してみよう。

方法4.映画やWebサイトなど英語コンテンツの利用

「英語コンテンツの利用」も、取り入れやすい学習方法の1つだ。映画やWeb記事、書籍などを娯楽として楽しみながら、自然な英語に触れられる。

好きな映画を英語かつ字幕オフの状態で視聴すれば、リスニング力の向上につながる。また一部の動画のサブスクリプション配信サービスでは、語学学習向けの使い方として、字幕や再生速度の設定をアレンジできる。

ビジネスパーソンには、著名な専門家による講演を無料視聴できる「TED(Technology Entertainment Design)」も人気がある。

Webでも英語ニュースサイトやブログを読めば、読解力と知識が同時に身につくだろう。Google検索やWikipediaの英語版を使ってみるのも、良いトレーニングだ。

さらにスマホやパソコンなど情報機器そのものの表示言語を英語にして、日頃から接触回数を増やす工夫をしてみてもよい。

方法5.TOEICなどの試験勉強

5つ目は「TOEICなどの試験勉強」。TOEICスコアは、英語スキルを分かりやすく証明するカードになるだろう。英語力を示す指標は他にもあるが、実際に多くの組織ではビジネス英語力の判定にTOEICスコアを用いている。

また学習計画の立てやすさも特長だ。TOEICのスコアアップを目的とした参考書やスクール、アプリ等が豊富にあるため、その中から自分のスタイルに合うものを選べる。試験日というゴールがあるので、学習時間をスケジュール化しやすい。

他の学習方法がメインでも、数値目標としては試験でのスコアアップを組み込んでおくとよいだろう。なお別の英語力指標やスコアの目安については後述する。

方法6.留学やネーティブコミュニティへのコミット

「留学などで、英語をしゃべる機会に直接さらされること」は、最も効果的な学習方法といえる。

語学留学には、数週間や数カ月単位のプランもある。もちろん短期間滞在するだけで身につくほど容易ではない。しかしリスキリングの面で意義はある。語学以外の多くの気づきを得る「越境学習」にもつながるからだ。

「もっと気軽にネーティブと交流したい」という人は、SNS(交流サイト)に英語で投稿してみるのも一案だ。アウトプットの練習になるだけでなく、実践的なコミュニケーションが生まれることもある。

参考記事:海外で活躍するのに必要なお金 テックも上手に活用

方法7.英語リスキリングプログラムの活用

最後は「英語リスキリングプログラムの活用」。これには複数のアプローチがある。

まずは企業や教育機関による、リスキリング向けのビジネス英語講座を利用する方法だ。勤務先が社員に対し自主的な研修やeラーニングの受講を支援しているなら、まずはそこで英語関連の講座を探してみよう。

次に、英語コーチングのサービスにも注目しておきたい。講師に英語でコーチングを受けるもので、「英語学習」と「ビジネス上の目標達成(昇格や転職など)」という2つの目的に同時に取り組めるメリットがある。限られた時間でスピーディーに成果を上げられる可能性が高い。

さらに「英語以外のスキルに関するリスキリングプログラムを、英語で受ける」のも1つの手だ。例えば「LinkedIn(リンクトイン)ラーニング」では、言語設定を英語に変えるだけで、世界中のさまざまなレッスンが英語で受けられる。

「Udemy(ユーデミー)」や「Coursera(コーセラ)」など多言語対応のリスキリング講座も同様だ。まずは実力試しに、すでに知識のある分野のレッスンを英語で視聴してみてはどうだろうか。

リスキリングで英語と併せて強化すべき3つのスキル

英語を学ぶとき同時に強化しておきたいスキルを、以下に3つ紹介する。

①コミュニケーション能力

まずは「コミュニケーション能力」。すべてのビジネスの基盤として求められるスキルだ。

特に日本語を母語とする人がビジネス英語を習得する際、単に「意味がわかる・読める・話せる」だけでは不十分な場合が多い。英語コミュニティーは日本語文化圏と、言語の成り立ちも文化も違うことを前提に、以下のポイントを意識しよう。

率直な表現力:謙遜や受け身の表現を極力なくし、直接的な意見を主張する
質問力:疑問点は積極的に口に出し、互いに誤解や理解不足がないか、確認しながら会話する
ボディーランゲージ:言葉の補完や感情表現に、ジェスチャーやアイコンタクトを活用する

多様な意見や背景を持つ人々と関わる環境では、互いの価値観を開示していく努力が必要だ。母語との違いを理解し克服することが、英語スキル習得への鍵となる。

参考記事:リスキリングの盲点 英語コミュ力の磨き方

②課題解決能力

次は「課題解決能力」。課題解決能力とは「業務・組織の課題を発見、原因分析し、その解決策を立案して実行する」という一連の行動スキルを指す。この能力も世界中で需要が高い。

もともと英語は日本語よりも論理的な表現が多く、課題解決スキルの学習と相性がよいといえるだろう。例えば構文上、日本語は結論が決まっていなくてもしゃべり始めることができる。しかし英語では、主語と述語が優先される。口を開いた瞬間には結論を決め、次にそれを裏付ける情報を述べていかなければならない。

英語を使うときには、論理的な思考力とアウトプット力も鍛えられる。英語とともに課題解決のフレームワークなどのテクニックも学んでおくと、より説得力のある交渉や提案が可能になるだろう。

③デジタルスキル

「デジタルスキル」ももちろん重要となる。優れた英語力を持っていても、機器操作やリモート会議にうまく対応できないのであれば、宝の持ち腐れになってしまう。

専門家によれば、外資系企業への転職においても「一般社員のレベルであれば、英語力よりも業務スキルを重視する」傾向も見られるという。昨今は外国語対応に翻訳ソフトや生成AIなどを活用するシーンも増えており、そうした技術も含め、業務にバランスよく取り入れる視点も大事だ。

いずれにしても、英語力「だけ」を高めてもキャリア形成で有利になることは少ない。英語はあくまでもツールの1つと心得よう。

参考記事:英語に自信なくても問題なし 英系人材コンサルが語る外資系転職10の真実

ビジネス英語スキルの指標とレベルの目安

それでは、ビジネス英語のスキルとして、具体的にはどの程度の水準を目指すべきなのだろうか。

TOEIC

TOEICを運営する国際ビジネスコミュニケーション協会や転職サービスなどでは、スコアの目安を以下のように位置づけている。

580点:受験者全体の過去の平均スコア。
600点以上:志望者の多い業界・企業が新入社員に期待する水準。国家公務員試験では加点対象となる。
730点以上:企業が国際部門や海外赴任の人材に期待する水準。
860点以上:高度で複雑なビジネスにも、十分なコミュニケーションで対応できる水準。

とはいえスコアはあくまでもテスト上の成果であり、転職などでは「英語を使って取り組んだ仕事の実績」のほうが優先される。あくまでも参考の1つにしてほしい。

ILETS(アイエルツ)

「ILETS(アイエルツ)」も国際的な英語力の指標の1つだ。

TOEICがビジネスシーンでの英語を重視するのに対し、ILETSは留学や移住など、より幅広い場面での運用能力を評価する。

留学を目的としたものと、永住・就労を目的としたものの2種類がある。海外MBAの入学時に求められるのは前者で、条件となるスコア帯は「6.5〜7.5」のケースが多い。

英国やオーストラリア、カナダなどへの永住権申請に必要なのは後者で、スコアは国や職業分類などにより異なる。当然ながらどの国でも、専門職ほどそのレベルが高い。興味のある国があれば調べておくとよいだろう。

英語リスキリングを始める前に 押さえておきたい給付金・受講料還付制度

最後に、英語のリスキリングで個人が利用できる給付金・受講料還付制度について2つ紹介しておきたい。

教育訓練給付金制度

「教育訓練給付金制度」は、キャリアチェンジやスキルアップを目指して資格講座を受講したり、大学・大学院などに通ったりした場合、その費用の一部を国が支給する制度だ。対象講座は厚生労働省が指定している。

この制度が使える資格学校やオンライン英会話サービスも多数ある。

リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業

「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」は、個人に対しリスキリングから転職までをワンストップでサポートする、経済産業省の事業だ。

英語教育関連のサービスでは、例えば「ミライズ英会話」や「KEC外語学院」などがこれに採択されている。

いずれの制度もこちらの記事で対象者や条件などを詳しくまとめているので、チェックしてみてほしい。

参考記事:個人のリスキリングを支援する補助金・助成金まとめ

まとめ:不確実性の高い時代こそ英語が確実な武器になる

社会人の英語スキルの生かし方や、役立つ学習方法、英語と併せて獲得したい能力などについて解説した。

昨今は技術の進展や社会情勢、気候変動や災害などを含め「何が起きるかわからない、予測不可能な時代」とされる。この「不確実性」に立ち向かえる人材のニーズが、世界中で高まっている。

そうした人材が共通して備えているスキルの1つが英語だ。世界で最も話者が多い英語を駆使できれば、得られるチャンスと知見が広がることは間違いない。

今後も、モノ・人・金・情報が国境を越えてどんどん往来する。多様な価値観に触れ、論理的な思考力・表現力で結論を導く経験は、不確実性の高い未来を切り開いていく強力な武器になるだろう。

(ライター 今岡由季恵)

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