「出世して取締役」の勘違い おかしな日本の企業統治
カルビー元会長 松本晃氏
カルビーのトップになるとき、松本晃氏が考えたのは企業統治の体制整備だった
プロ経営者の松本晃氏がカルビーに招かれてトップに就くと決めたとき、最も重視したのは経営の執行役と監視役の分離でした。
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招いてくれた人への最初の言葉 「辞めてください」
2018年に亡くなったカルビー元社長の松尾雅彦氏は創業者の三男で、カルビー中興の祖といわれた人物でした。社長を辞めた後も会長や相談役として大変貢献した。僕はその雅彦氏に引っ張られてカルビーに入ったんです。
カルビーの創業家出身で社長や会長を務めた松尾雅彦氏。2018年に亡くなった
経営を受け継ぐとき、僕が雅彦氏に言った最初の言葉が「(取締役を)辞めてください」でした。長男、二男のお二方にも、経営から身を引くようお願いしました。3人とも会社に多大な貢献をされた方たちでした。しかし、そういう人がいる限り、社員は命令を待つばかりで何も考えないし、何もしない。それでは会社は変わらない。会社を変えるには、松尾家の全員に退いてもらうのが一番と考え、そう説明しました。
すると雅彦氏は「よしわかった」と……。経営から退く、退かないで創業家と会社がもめるのは、よくあることです。あっさりと身を引く決断をした松尾家の人たちは本当に偉かった。
もちろん、「僕に任せてくれたらいいことありますから」というようなことも言いました。その後、東証1部上場も果たしたし、会社ももうかった。配当も増えた。松尾家にとっても、よかったのではないかと思っています。