リシードとフルノシステムズは2024年12月6日、「GIGAを応援!超速Wi-Fiキャンペーン」の表彰式をオンラインセミナー「Wireless Navi 2024」内で開催。フルノシステムズの中山裕隆氏によるWi-Fi7のセミナーおよび、校内Wi-Fiの速度ランキング上位校による講演も行われた。
「GIGAを応援!超速Wi-Fiキャンペーン」は、全国の学校関係者に学校ネットワークに関する理解や自校のネットワーク環境の把握と課題意識を深めていただくことを目的として、2024年5月8日から7月31日まで実施。参加校はリシードが提供する「学校インターネット回線速度計測」を用いて校内のWi-Fi接続環境で平日9時から17時の間に回線速度を計測、必要事項を入力してキャンペーンにエントリーした。
学校インターネット回線速度計測実用化が近づくWi-Fi7の魅力と進化
中山裕隆氏
中山氏は「実用化が近づく「Wi-Fi7」の魅力と進化 —Wi-Fi6との違いやメリットとは?—」をテーマに講演した。Wi-Fi7は、従来と比較して「通信効率の改善」「通信遅延の改善」「異なる周波数帯を束ねて使うことで通信効率を図る」「電波干渉を避けた安定通信」が期待されている。もっとも関心の高い「速度」については、Wi-Fi7が46GbpsとWi-Fi6の9.6Gbps、Wi-Fi5の6.9Gbpsを大きく上回る。またこれまで別々に利用していた2.4GHz、5GHz、6GHzの周波数を束ねて利用するため、電波干渉を柔軟に避けられ安定した通信が可能になるという。
Wi-Fi7を導入するうえで注意すべきポイントとしては、まず法令で6GHz帯を利用する際の暗号化方式はWPA3のみに制限され、暗号化なしでは利用不可となることをあげた。また、機器に関しては無線機が1つ増えるので電力消費が上がることに注意が必要だ。設置場所も電源の経路や熱対策を考えるべきだと中山氏は語る。また無線が高速化しても有線LANが遅ければ意味がないため、ケーブルはカテゴリー6aが望ましいとする。
Wi-Fi7により快適な同時通信が可能になれば、学校や会議室、イベント会場での多人数による一斉接続が実現する。eスポーツやビデオ会議での高画質な動画も、デバイスのグラフィック処理能力にもよるが、安定した通信が実現する。また今後はさらにIoT機器の展開や医療分野のVR利用、学校の体育館など少し離れた場所での無線LAN通信にもWi-Fi7は有効だという。
Wi-Fi7はWi-Fi6、6E、Wi-Fi5含めて下位互換のため、既存の機器を無駄にすることはないという。ただし、Wi-Fi6以下で利用できる機器はそのまま同じように利用できるが、6の規格として動作するため、アンテナがWi-Fi7でもその速度は出ない。また2.4GHz、5GHzに6GHzが加わるため、無線機の価格は高くなる傾向がある。中山氏は十分な性能を発揮できるモデルの導入には、ある程度の予算の検討が必要だとした。フルノシステムズでは、2025年春に上位の4×4モデル「ACERA EW770」を、夏頃には2×2のエントリーモデル「ACERA EW750」をリリースする予定だ。
「あの学校のWi-Fiはなぜ速い?」受賞記念セミナー
続いて「GIGAを応援!超速Wi-Fiキャンペーン」における上位3校の講演が行われた。
Wi-Fiでつながる学び:仙台育英学園の実践
仙台育英学園高等学校
「GIGAを応援!超速Wi-Fiキャンペーン」第1位の仙台育英学園からは、仙台育英学園高等学校 ICT主任(多賀城校舎)、学級担任の五十嵐春祐教諭が講演した。
仙台育英学園高等学校は生徒約3,100名、教職員約500名の大規模校で、系列の秀光中学校から内部進学する秀光コースや特別進学コース、外国語コース、英進進学コース、情報科学コース、フレックスコース、技能開発コースの7コースがある。五十嵐教諭はICT主任として多くのICTの課題に対処してきた。さまざまな端末(Chromebook、Surface、MacBook、iPad)の活用により探究学習や国際教育、プログラミングなどの学びが実現。また自学自習や家庭との連絡にClassi、校内限定SNSにSlack、校務支援システムにはBLENDを採用してコミュニケーション基盤を整備した。速度トップを計測したネットワークは、フルノシステムズのWi-Fi6対応のアクセスポイント「ACERA 1320」で高速化を実現。五十嵐教諭は「多様なツールを活用するには安定したインターネット環境が不可欠です。さらなる改善を目指してWi-Fi7の規格への対応も視野に入れます」と展望を話した。
ネットワークをインフラとして捉え、しっかり整備を!
神奈川学園中学・高等学校
「GIGAを応援!超速Wi-Fiキャンペーン」第2位の神奈川学園中学・高等学校からは、情報科主任の竹尾翔教諭が講演した。
竹尾教諭はIT関係の経歴をもち、現在、横浜にある同校で情報科の授業とコンピュータ・ネットワーク管理を担当している。生徒にはChromebook、教職員やPC教室にはWindows、Mac、iPadが整備されているという。学習や学校生活に生徒はGoogle Workspaceを活用。さまざまなICT課題に対応する情報部は、教員4名、ICT支援員2名、事務長1名で構成されている。2名体制のICT支援員のうち1名は常駐して、端末や電子黒板のメンテナンス、トラブル対応、アカウントやネットワーク管理を行っている。ネットワークは、NUROアクセス2Gスタンダードを導入。構築のポイントには、導入時期を揃えることや機器の事前テスト、補助金を利用した導入スケジュールをあげた。最後に竹尾教諭は「ネットワークをインフラと捉える」「専門知識をもつスタッフの必要性」「予算確保の重要性」の重要ポイントを示して講演を締めくくった。
DXハイスクール事業を活用した公立高校の取組み
千葉県立市川工業高等学校
昨年第1位に輝き、今回殿堂入りとなった千葉県立市川工業高等学校からは、電気科 学科長、情報教育委員長の片岡伸一教諭が講演した。
今回も最速を記録した同校は、外部回線にフレッツ光クロスとBフレッツの2回線を導入。生徒用iPadのトラフィック対策として設置したコンテンツキャッシュサーバーには、500台程度接続することができるという。iPadと高速ネットワークでアナログからデジタルへの置き換えから、ネットワークを活用した授業や生成AIの活用も進む。紙の使用が減少し、生徒は行事やイベント、資格試験の特訓などもiPadを持参してさまざまなアプリを日常的に活用、自主的な活動も増えた。さらなる進化を求めてDXハイスクール事業に応募し採択。クラウドやデジタルに特化した「メディアラボ実習室」を作って、「教えない授業」などに取り組んでいる。片岡教諭は、「公立だからこそできる教育があります。この先はやるほうも受けるほうも楽しいiSTEAM実習室(仮称)の設置を目指しています」と意欲的な進化を話した。
「GIGAを応援!超速Wi-Fiキャンペーン」表彰式
Wi-Fiのダウンロードの速さランキング上位校の表彰式におけるコメントと総評は下記のとおり。※ 速度の表記は(ダウンロード、アップロード)。
1位 仙台育英学園高等学校(508Mbps、518Mbps)
「本校の生徒は野球や陸上、書道などさまざまなところで活躍しておりますが、生徒を支える教員側も生徒の学びを止めないように、またWi-Fiも止めないように今後とも精進してまいります」(五十嵐春祐教諭)
2位 神奈川学園中学・高等学校(339Mbps、273Mbps)
「気軽に応募したので、受賞したと聞いたときはびっくりしました。まだまだ学園のネットワークは満足いくところではありません。今回の受賞を期に、より良い環境を作って教育の質を上げたいと思います」(竹尾翔教諭)
3位 学校法人 聖徳学園(283Mbps、310Mbps)
※受賞式は欠席
また、第1回に続いて超速を叩き出した千葉県立市川工業高等学校が今回、殿堂入りし特別賞が授与された。
特別賞(殿堂入り) 千葉県立市川工業高等学校(644Mbps、466Mbps)
「保護者の皆様からのご支援や、生徒がネットワークやICTを正しく使うことで、私たちはいつも頑張れます。来年は2Gbpsを目指したいと思いますので、今後ともご支援よろしくお願いします」(片岡伸一教諭)
リシードの田村編集長は「表彰校はもちろんですが、実は8位までのダウンロード速度が200Mbpsを超え、全体的に高速になっている印象を受けました。また、学校インターネット回線速度計測のご利用方法も少し変わってきたことを感じています。以前はとりあえず計測してみるという使い方から、最近は1日に時間を変えて複数回計測したり、複数教室で計測したりするなど、目的をもってご利用いただくケースも増えています。今後は、さらに多くの先生方にお役立ていただけるよう、学校インターネット回線速度計サービスをさらに改善してまいりますので、ご活用いただけますと幸いです」と総評のコメントを寄せて表彰式は幕を閉じた。
上位校の先生方の講演からは、学内のWi-Fi高速化を実現するために、基幹回線やアクセスポイントの検討、さまざまな機器をつなぐ技術の工夫があり、今後のWi-Fi7への対応も視野にあることが感じられた。快適なネットワーク環境は、子供たちのより良い学びに直結する。今後もリシードの学校インターネット回線速度計サービスの利用が、そのきっかけになることを期待したい。