あの山田うどん食堂がタンメン専門店をオープン、その名も「埼玉タンメン 山田太郎」!

埼玉県民のソウルフード(?)のひとつ「山田うどん」。その山田うどんがオープンさせた埼玉愛にあふれた居酒屋「県民酒場ダウドン」も以前に玉置標本さんが執筆し記事にしていますが、今回はさらなる新業態「タンメン」の専門店を開業したということで、また中の人にたっぷりお話をうかがってきました。店名は「埼玉タンメン 山田太郎」。相変わらず埼玉愛を感じますが、うどんが本業なのに「埼玉タンメン」とは一体…?そして某国民的野球漫画の主人公と名前が一致していますが、はて…?その背景にあったのは、麺類への矜持とあふれる埼玉愛、そして海外展開の歴史でした。(所沢のグルメ・ラーメン・つけ麺)

あの山田うどん食堂がタンメン専門店をオープン、その名も「埼玉タンメン 山田太郎」!

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山田うどん食堂がタンメンの専門店を出したらしい

一部の埼玉県民からはソウルフードとも呼ばれている「山田うどん食堂」をご存じでしょうか。通称、山田うどん。

以前、その山田うどんがオープンさせた、埼玉愛に満ち溢れた居酒屋「県民酒場ダウドン」を取材しましたが、今度はなんとタンメン専門店を作ってしまったという情報を得て、所沢までやってきました。

その名も「埼玉タンメン 山田太郎」!

f:id:tamaokiyutaka:20211222110200j:plainバーン!

山田太郎とはずいぶんとまた思い切ったネーミング。うどんが本業なのにタンメンの専門店という新たな業務形態も気になるところ。

今年の疑問は今年のうちにということで、山田食品産業株式会社の営業企画部である江橋丈広さんから詳しく話を伺ってみましょう。

f:id:tamaokiyutaka:20211222110223j:plain年末の忙しいところ、ありがとうございます。

 

なぜタンメンの専門店を出したのか

――山田うどんがタンメンの専門店をオープンということですが、一体何があったんですか?

江橋 「この場所は斜め前に山田うどんがあって、ここは『らーめん食堂かかし』というラーメン屋さんをやっていました。ラーメンもあれば定食もある、いわゆる町中華の大衆的な中華食堂です」

――競合店との競争が厳しそうなジャンルですね。

江橋 「大衆食堂なのでそこまで個性のあるラーメンではなかったし、価格が飛びぬけて安い訳でもない。ある意味普通のラーメン屋さんだったから、売り上げがあまりよくなくて」

――値段競争だと斜め向かいの山田うどんがライバルになってしまうし。それでタンメン専門店に切り替えたんですか。

f:id:tamaokiyutaka:20211222110240j:plainうどんが280円で食べられる山田うどん食堂が斜め前にある。身内が一番のライバル!

江橋 「方向転換しようかとなったときに、山田うどん食堂と差別化をするためにごはんもの中心にしようという意見もありましたが、弊社には『山田の心』という経営理念があって、『日本人の心から生まれたうどん、そば、ラ-メンを、私たちの手で大切に育てよう』という一節があります。

やっぱり麺類で勝負すべきだと原点に立ち返り、せっかく山田うどんが全店生そば化されたのだから、そばに特化した店にするかという案も出ました」

――え、山田うどんって茹でそばから生そばになったんですか!

f:id:tamaokiyutaka:20211222170714j:plain後日、山田うどん食堂に出向いて確認すると、確かに生そばに切り替わっていました。

f:id:tamaokiyutaka:20211222170753j:plainツルシコのおいしい山田そば!

江橋 「でもそばの専門店をやるには、ちょっと店の規模が大きすぎる。やっぱりここならラーメンだろうと。しかし普通のラーメンでは勝負になりません。かといって二郎系みたいにコアな層に向けるのではなく、幅広いお客さんに来ていただかなければいけない。

いろいろ考えたところ、そういえば野菜を売りにしているラーメン店は少ないのではと気が付き、導き出されたキーワードが『タンメン』だったのです」

――野菜がたくさん食べられるラーメン屋ですか。確かにラーメンは野菜不足になるイメージがあります。

江橋 「それでちょうど1年くらい前に、普通のタンメンではなく最近ちょっと流行りつつある濃厚なタンメンを売りにしようとプロジェクトが立ち上がり、何度も試食を重ねて『埼玉タンメン 山田太郎』が7月15日にオープンしました」

f:id:tamaokiyutaka:20211222110209j:plainババーン!

f:id:tamaokiyutaka:20211222110259j:plain野菜は国産、小麦は北海道産、豚肉は埼玉県産というこだわりのタンメンが食べられる店、山田太郎。

 

気になりすぎる名前の由来

――タンメン専門店が生まれた経緯はよくわかりました。続いてみんなが気になる山田太郎という名前について聞かせてください。ドカっと大きな弁当箱が由来と言われている某野球漫画の主人公とは無関係なんですか?

江橋 「やっぱり気になりますよね。もともと山田うどんの歴史の中に、ニューヨークのマンハッタンで『TARO』というラーメン屋さんを1975~1990年にやっていたことがあり、それがすごい大繁盛をしていて。

その勢いを今に伝えるという意味で、山田とTAROで『山田太郎』という名前になりました。なので野球漫画はまったく無関係です!」

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山田うどん食堂HPの会社案内より。確かにTAROだ。

――たまたま山田太郎になったんですね!余計なお世話で恐縮ですが、商標的なものは大丈夫ですか。

江橋 「山田太郎自体はよくある人の名前なので大丈夫です。ただ僕も上司からこの名前を聞いたとき、びっくりはしました。『いいのそれ!』って」

――ですよねー。

江橋 「山田うどんが何年か前に『ファミリー食堂 山田うどん食堂』と屋号を変えた以来の驚きでした。でもインパクトがあって覚えやすいんですよ。これはこれでアリかなと思うようになりました」

――個人的には好きなネーミングです。

f:id:tamaokiyutaka:20211222110231j:plainドカベンではなくタンメンのお店です。山田うどんとは別コンセプトということで、お馴染みのかかしのマークなどは入れていない。

――枕詞の『埼玉タンメン』はどういう意味ですか?

江橋 「単に『濃厚タンメン 山田太郎』でもよかったんですけど、ありがたいことに山田うどんは『埼玉のソウルフード』と言っていただくことが多い。その山田がタンメン屋さんをやるのだからと、埼玉を頭につけさせてもらいました」

――長崎ちゃんぽん的な。

江橋 「埼玉タンメンを名乗る以上は食材にこだわりたい。そこで豚肉は埼玉県のブランド豚『彩の国黒豚』、ライスは埼玉産『彩のきずな』を使っています。

野菜は季節の問題もあるのですべてを埼玉県産とはいきませんが、なるべく関東近郊のものを使いつつ国産のみ。タンメン用の麺は北海道産の小麦100%です」

――「埼玉タンメン 山田太郎」というネーミング、納得しました!

 

濃厚タンメンを食べてみる

――そろそろ注文しましょうか。タンメンにも種類がいろいろありますけど、どれから食べるのがいいですかね。

江橋 「まずは濃厚タンメンですね。山田太郎の看板メニューなので、この開発に一番時間が掛かりました。スープは豚骨に鶏ガラを合わせた濃厚なダブルスープで、それに合う麺をいろいろ試した結果、ちょっと太めのストレートタイプが選ばれました。

シャキっと炒めた野菜を注文ごとにスープと煮て、一杯ずつ丁寧に仕上げています。山田うどんの系列ということは一旦忘れて食べてみてください。具の野菜は100gの増量が無料サービスなので、野菜を増して麺をハーフにするという方も多いですよ」

――野菜増量無料はうれしいですが、ほかにも食べたいので野菜標準の濃厚タンメンを頼んでみます。

f:id:tamaokiyutaka:20211222110316j:plain看板メニューは濃厚タンメン。

f:id:tamaokiyutaka:20211222110341j:plain注文は店員さんを呼んでもいいが、自分のスマホからも簡単にできる。ブラウザベースなので専用アプリをインストールする必要はない。店員と話すのが苦手という人には最適。

f:id:tamaokiyutaka:20211222110345j:plain注文アプリの画面。ドリンクがビンというのが素晴らしい。

f:id:tamaokiyutaka:20211222110353j:plainこちらが濃厚タンメンの野菜標準盛り。

さっそくスープから飲んでみると、濃厚タンメンの名前通りにしっかり濃厚でクリーミー。油っぽい濃厚さではなく、素材のうま味が溶け出した滋味のある濃厚さ。体がじんわり温まる、飲み干したくなる優しい味です。

このスープが自動販売機にあったら人気が出るかも。

f:id:tamaokiyutaka:20211222110358j:plainこの麺がスープと合うんですよ。

北海道産の中力粉で打たれたモチっとした麺は、主張しすぎない適度な弾力で、濃厚ながら物腰の柔らかいスープとの相性が抜群。

ガチガチにグルテンを鍛えまくった強力粉の麺ではないからこそ、スープ、麺、野菜に一体感が生まれるのでしょう。これはとても完成度の高いタンメンですね。

そしてたまに口に入ってくる小さな肉の旨味が濃い。さすがはブランド豚と納得できる存在感!

f:id:tamaokiyutaka:20211222110402j:plain『彩の国黒豚』の味が濃い。肉マシのトッピングが欲しい。

f:id:tamaokiyutaka:20211222110405j:plain江橋さんのおすすめは、半分食べたところでニンニクとショウガを少々と酢を一回し入れての味変。

f:id:tamaokiyutaka:20211222110426j:plain確かに味変をすると大きく変わる!ベースとなる味が濃厚とはいえ味まで濃すぎないので、好みで調節する余白があります。

江橋 「どうですか。個人店ほどの個性はないかもしれないけれど、チェーン店のラーメンにしてはよくできているでしょう」

――このタンメン、すごく好きな味です。

江橋 「まずこの味を知っていただければ、カレー味がプラスされた『クリーミーCURRYタンメン』、ちゃんぽん風に魚介が加わった『海鮮タンメン』、ピリ辛になった『濃厚麻辣タンメン』など、他のタンメンの味もイメージしやすいと思います。また淡麗タンメンや味噌タンメンは、濃厚とは違うオリジナルのスープを使っています」

――タンメン専門店といっても味にバリエーションがあるから、どれを頼むか迷いそう。カレーも海鮮も麻辣も淡麗も味噌も気になります。山田太郎、近所に引っ越ししてこないかな。

f:id:tamaokiyutaka:20211222110305j:plainこのほかに単品やお子様向け、季節限定商品などがある。肉がうまいので焼肉定食も気になるところ。

江橋 「タンメンはちょっと苦手だという人のために、『煮干し系醤油ラーメン』や『魚介系濃厚つけ麺』も用意しました。

もちろん看板はタンメンですが、これらのラーメンも隠れた人気商品で、つけ麺だけを食べる常連さんもいるんですよ。それぞれのスープに合わせた麺を開発できるのは、自社工場がある山田の強みですね」

f:id:tamaokiyutaka:20211222110448j:plainカナダ産小麦のパツパツした細麺が特徴的な『煮干し系醤油ラーメン』。煮干し系といってもベースは鶏がらで、煮干しの嫌なえぐみを抑えたすっきりしたスープなので食べやすい。

f:id:tamaokiyutaka:20211222110452j:plain店で仕込む「太郎さんちの半熟味玉」。

f:id:tamaokiyutaka:20211222110455j:plain専門店で食べるような『魚介系濃厚つけ麺』は、期間限定だったがレギュラー化しつつある人気メニュー。

f:id:tamaokiyutaka:20211222110457j:plain国産小麦粉をベースに北海道産石臼引き全粒粉を5%ほどブレンドしたつけ麺専用の太麺。

f:id:tamaokiyutaka:20211222110502j:plain豚骨と魚介系の超濃厚ダブルスープをオリジナルの麺がすくい上げる。

f:id:tamaokiyutaka:20211222110416j:plainセットで頼むとお得な餃子も「彩の国黒豚」を使用。アクセントに香りが強いスペイン産のニンニクが使われている。

 

山田うどんとは違うお客さんが来るようになった

――オープンして半年近くが経ちましたが、評判や客足はどうですか。

江橋 「おかげさまで好調なスタートを切りました。野菜をしっかり食べられるからか、山田うどんにはなかな来てもらえなかったファミリー層がたくさん来てくれています。ほら、山田うどんのメニューは茶色いじゃないですか。いや茶色はおいしいんですけど、山田太郎にはこれまで不足していた彩りがあります。

コロナ禍での出店ということもあり、座席間隔をかなり広くしたのもよかったです。これだけゆったりとラーメンを食べられる店はなかなかないですから、女性の1人客もかなり多いです。

今はまだ所沢に1店舗だけですが、2号店の計画も順調に進んでいます!」

――今日はありがとうございました。我が家の近くできる日を、楽しみに待っています!

f:id:tamaokiyutaka:20211222110247j:plain座席はゆったり、通路は広々の店内。

f:id:tamaokiyutaka:20211222110517j:plain山田うどんの最先端店舗なのでセルフ会計が導入されている。個別会計をする場合は有人レジを使えば大丈夫。

ということで、その名前の理由を知りたくて取材させてもらった「埼玉タンメン 山田太郎」は、もし近所にあったらとてもうれしい、好みの味と手ごろな値段と居心地のいい店でした。

 

紹介したお店

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください

著者プロフィール

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著者 玉置標本
趣味は食材の採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は古い家庭用製麺機を使った麺作りが趣味。

ツイッター:@hyouhon
ホームページ:私的標本
製麺活動:趣味の製麺

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