ショート・ストーリーを募集します。
8コママンガの前半4コマです。後半4コマを小説などで示してください。
http://www.nurs.or.jp/~lionfan/hatena_blog/ramen.jpg
このマンガは続きやオチが1通りしかないはずです。
ルールは、はてなキーワード【人力検索かきつばた杯】参照。
http://urx.nu/1bOm
今回限定のルールは以下です。
[1] 文章は短め(たとえば1000文字以下)が望ましいです。
[2] 回答は3回までOKですが、1回は王道で答えてください。
[3] 謎解き要素があるので、回答は6月2日(土)の22:00-22:59に。23:00以降にオープンします。
今回はいわば、自由創作ではなく写生です。
創造力ではなく、推理力と描写力を問う問題なのです。
そのほうが、かえって各人の個性が際立ちますし、比較や講評もしやすいので。
本当は完全な4コマ漫画を示し、小説化するだけにしようとも思ったのですが、謎解き要素も入れてみました。
今度のクイズは、かきつばたか。いや、かきつばたがクイズなのか。
そんなことは、どっちだっていい。
問題なのは、最近、かきつばたに投稿できなくなっている自分だ。せっかくのクイズだし、是非とも参加したい。
クイズの答えは分かっている。画像のラーメン屋、珉亭も見つけてあるし、コミPo! に対抗するために、拙い絵も描いてみた。
後は文章を書くだけなんだ。文章を書くだけなのに、やけに背景色が目立つエディタのウィンドウを前にして、ぼくの指は凍ってしまっている。
仕方ない、あれの封印を解こう。
その名は 『 Mr. Ghost Writer 』。
アラカルトがお題のときにネタを探してて、某アングラサイトで見つけた文章自動作成マシンだ。思わず、購入してしまったものの、かきつばたで使うのは、自分を裏切ってしまうような気がして、引き出しの奥に突っ込んでしまったものだ。
USB で PC に本体をつなぐ。もし漫画だったら、ぼくの頭の横には白いのと黒いのが居て、交互に話しかけているに違いない。電源が入り、起動中のスプラッシュがしばらく表示された後、雑な英語で書かれたウィザードの画面が表示される。
言語を JAPANESE に指定し、年齢、性別などの基本情報をウィザードに従って入力してゆく。
元になる資料の入力では、質問の URL と、ラーメン屋の URL を入力する。質問画像の画像の設定もしておこう。挿絵の指定もできるのか。せっかくなので、書いておいた絵をスキャンして取り込む。
最後の手順はヘッドバンドの装着だ。脳波を読みとって文章を作成する、というのが、この装置の売りということだったが、いかにも胡散臭い。付属してきた、ちゃちなヘッドバンドのケーブルを装置につなぎ、バンドを頭に装着する。
軽く息を吐き、かきつばたのことだけを考える。頭の中で最後の場面をイメージし、画面のボタンをタッチする。味気ないプログレスバーが表示され、進行状況が表示される。
ほどなく、Complete の文字が表示され、画面が切り替わる。どうやら、文章の作成が完了したらしい。
画面上に、ゆっくりと文字が流れ出す。
タイトル 「お約束しりとり」
U奈に続いて、私も暖簾をくぐって店内に入る。
江戸っ子ラーメンで、中国麺屋というのが怪しい感じだったけど、そこそこ繁盛しているようだし、...
悪くないじゃないか。
スクロールモードの表示を中止し、出来上がった文章を PC 本体に転送する。後は、土曜日の回答時刻を待つだけだ。
‡ ‡ ‡
タイトル 「お約束しりとり」
U奈に続いて、私も暖簾をくぐって店内に入る。
江戸っ子ラーメンで、中国麺屋というのが怪しい感じだったけど、そこそこ繁盛しているようだし、ちょっと暗いけど店内も結構きれい。店内に充満している美味しそうな鶏のスープの匂い。ラーメンの味も、ちょっと期待できそう。
「おじさーん、大食いにチャレンジしまーす」
大きな声で、挑戦を宣言するU奈。周りからの視線が集まる。U奈は、すでにファイターモードだ。
「お嬢ちゃんで大丈夫かい。うちの大盛りは、そんじょそこらの大盛りとは一味違うよ」
どうやら、ここの店主はU奈の顔を知らないらしい。まだ売り出し中だからなあ。下北沢界隈で、知られてないのも仕方ないわね。
「はいっ、江戸っ子ラーメンの大盛りお待たせっ!」
七杯という数に胡坐をかいているのだろう。そこそこ盛りは多めだけど、U奈にとっては、少々、役不足かな。
「うっ……」
「なあ、今だったら、普通の料金にしても良いんだよ、お嬢ちゃん」
「うまそーっ!」予想外の答えに、何を言ってるのか理解できてない様子のおやじさん。
そりゃ、そうよね。
どこかの読者モデルをしてると言っても、何の疑問も無く信じられるくらいスリムな体形のU奈が、実はフードファイターだなんて、想像できない方が普通。U奈は、おもむろに麺を持ちあげ、勢いよくすする。
「うまーいっ。おじさん、二杯目がすぐ食べられるようにしておいてよっ」
見る見るうちに量を減らしていく、U奈のラーメン。おやじさんも、U奈が普通の子じゃないのを察したらしく、次の一杯の麺をゆがき始めている。
私も頼んでおいた普通盛りの江戸っ子ラーメンにとりかかる。
まずはスープを一口。あら、本当に美味しいじゃない。鳥ガラスープをベースにした、醤油味のよくある、いわゆる中華そばのタイプだけど、鶏のスープをきちんと取っているので、すっきりした味わいが癖になりそう。麺は、細めのストレートタイプ。ちょっと堅めだけれど、熱々なので、これくらいがちょうど良いかもしれない。癖のない感じがすっきりとした味のスープと相性が良い。
つい、食べることに夢中になってしまっていた。私もお腹が空いてたみたい。U奈の方を見ると、空いた丼が三つ重なっている。時計を見てみると、10分を超えたところ。周りのお客さんも結果が気になるらしく、ちらちらとこちらの方をうかがう視線を感じる。
「いやー、いい食いっぷりだったよ。はい、賞金の三万」
「ありがとう、おじさん。本当に美味しかったよ。また来るね」
軽いざわめきを背に、私たちは暖簾をくぐって外に出る。
今年は暑い夏になりそうな予感を感じさせる日差しに、春の装いをまとった涼しげな風が、ラーメンで火照った頬に気持ち良い。
「あー、ラーメン美味しかった。あの量で三万円じゃ、お店潰れちゃうわね。じゃあ、A沙。次は、カレーを食べに行こっか」
「あきれた。まだ食べるの?」
「デブにとって、カレーは飲み物、って言うじゃない」
いや、違う。そうじゃない。
回答の確認画面には、ぼくの想定していない結末が書かれている。
慌てて、「戻る」のボタンを押す。大丈夫、まだ回答を手直しする時間は、十分に残ってる。
軽いざわめきを背に、私たちは暖簾をくぐって外に出る。
今年は暑い夏になりそうな予感を感じさせる日差しに、春の装いをまとった涼しげな風が、ラーメンで火照った頬に気持ち良い。
「あー、ラーメン美味しかった。さあ、次はケーキよ。早速、食べに行こうよ」
「でも、U奈。あそこのケーキ、結構大きいらしいわよ」
「大丈夫に、決まってるじゃない。デザートは別腹よ ♥」と、駆けだすU奈。
まあ、そうよね。私も、甘いものとコーヒーが欲しいと感じていたところだし。
私の前を駆け出したU奈が、急に振り向いて言う。「次は、『ら』よ」
「ら?」
「そう、別腹の『ら』。しりとりやってたでしょ、お約束言葉のし・り・と・り」
U奈に言われて思い出す。そうだ、しりとりをやってたんだったっけ。
何とか、回答の締め切りには間に合った。思えば、クイズの答を入力して無かった。そもそも、ゴーストライターにクイズの正解を求めることに無理がある。やっぱり、逃げちゃ駄目なんだ。
そういえば、この手の機械が思ってたように動かないというのも、お約束だったか。
(終)
今度のクイズは、かきつばたか。いや、かきつばたがクイズなのか。
そんなことは、どっちだっていい。
問題なのは、最近、かきつばたに投稿できなくなっている自分だ。せっかくのクイズだし、是非とも参加したい。
クイズの答えは分かっている。画像のラーメン屋、珉亭も見つけてあるし、コミPo! に対抗するために、拙い絵も描いてみた。
後は文章を書くだけなんだ。文章を書くだけなのに、やけに背景色が目立つエディタのウィンドウを前にして、ぼくの指は凍ってしまっている。
仕方ない、あれの封印を解こう。
その名は 『 Mr. Ghost Writer 』。
アラカルトがお題のときにネタを探してて、某アングラサイトで見つけた文章自動作成マシンだ。思わず、購入してしまったものの、かきつばたで使うのは、自分を裏切ってしまうような気がして、引き出しの奥に突っ込んでしまったものだ。
USB で PC に本体をつなぐ。もし漫画だったら、ぼくの頭の横には白いのと黒いのが居て、交互に話しかけているに違いない。電源が入り、起動中のスプラッシュがしばらく表示された後、雑な英語で書かれたウィザードの画面が表示される。
言語を JAPANESE に指定し、年齢、性別などの基本情報をウィザードに従って入力してゆく。
元になる資料の入力では、質問の URL と、ラーメン屋の URL を入力する。質問画像の画像の設定もしておこう。挿絵の指定もできるのか。せっかくなので、書いておいた絵をスキャンして取り込む。
最後の手順はヘッドバンドの装着だ。脳波を読みとって文章を作成する、というのが、この装置の売りということだったが、いかにも胡散臭い。付属してきた、ちゃちなヘッドバンドのケーブルを装置につなぎ、バンドを頭に装着する。
軽く息を吐き、かきつばたのことだけを考える。頭の中で最後の場面をイメージし、画面のボタンをタッチする。味気ないプログレスバーが表示され、進行状況が表示される。
ほどなく、Complete の文字が表示され、画面が切り替わる。どうやら、文章の作成が完了したらしい。
画面上に、ゆっくりと文字が流れ出す。
タイトル 「お約束しりとり」
U奈に続いて、私も暖簾をくぐって店内に入る。
江戸っ子ラーメンで、中国麺屋というのが怪しい感じだったけど、そこそこ繁盛しているようだし、...
悪くないじゃないか。
スクロールモードの表示を中止し、出来上がった文章を PC 本体に転送する。後は、土曜日の回答時刻を待つだけだ。
‡ ‡ ‡
タイトル 「お約束しりとり」
U奈に続いて、私も暖簾をくぐって店内に入る。
江戸っ子ラーメンで、中国麺屋というのが怪しい感じだったけど、そこそこ繁盛しているようだし、ちょっと暗いけど店内も結構きれい。店内に充満している美味しそうな鶏のスープの匂い。ラーメンの味も、ちょっと期待できそう。
「おじさーん、大食いにチャレンジしまーす」
大きな声で、挑戦を宣言するU奈。周りからの視線が集まる。U奈は、すでにファイターモードだ。
「お嬢ちゃんで大丈夫かい。うちの大盛りは、そんじょそこらの大盛りとは一味違うよ」
どうやら、ここの店主はU奈の顔を知らないらしい。まだ売り出し中だからなあ。下北沢界隈で、知られてないのも仕方ないわね。
「はいっ、江戸っ子ラーメンの大盛りお待たせっ!」
七杯という数に胡坐をかいているのだろう。そこそこ盛りは多めだけど、U奈にとっては、少々、役不足かな。
「うっ……」
「なあ、今だったら、普通の料金にしても良いんだよ、お嬢ちゃん」
「うまそーっ!」予想外の答えに、何を言ってるのか理解できてない様子のおやじさん。
そりゃ、そうよね。
どこかの読者モデルをしてると言っても、何の疑問も無く信じられるくらいスリムな体形のU奈が、実はフードファイターだなんて、想像できない方が普通。U奈は、おもむろに麺を持ちあげ、勢いよくすする。
「うまーいっ。おじさん、二杯目がすぐ食べられるようにしておいてよっ」
見る見るうちに量を減らしていく、U奈のラーメン。おやじさんも、U奈が普通の子じゃないのを察したらしく、次の一杯の麺をゆがき始めている。
私も頼んでおいた普通盛りの江戸っ子ラーメンにとりかかる。
まずはスープを一口。あら、本当に美味しいじゃない。鳥ガラスープをベースにした、醤油味のよくある、いわゆる中華そばのタイプだけど、鶏のスープをきちんと取っているので、すっきりした味わいが癖になりそう。麺は、細めのストレートタイプ。ちょっと堅めだけれど、熱々なので、これくらいがちょうど良いかもしれない。癖のない感じがすっきりとした味のスープと相性が良い。
つい、食べることに夢中になってしまっていた。私もお腹が空いてたみたい。U奈の方を見ると、空いた丼が三つ重なっている。時計を見てみると、10分を超えたところ。周りのお客さんも結果が気になるらしく、ちらちらとこちらの方をうかがう視線を感じる。
「いやー、いい食いっぷりだったよ。はい、賞金の三万」
「ありがとう、おじさん。本当に美味しかったよ。また来るね」
軽いざわめきを背に、私たちは暖簾をくぐって外に出る。
今年は暑い夏になりそうな予感を感じさせる日差しに、春の装いをまとった涼しげな風が、ラーメンで火照った頬に気持ち良い。
「あー、ラーメン美味しかった。あの量で三万円じゃ、お店潰れちゃうわね。じゃあ、A沙。次は、カレーを食べに行こっか」
「あきれた。まだ食べるの?」
「デブにとって、カレーは飲み物、って言うじゃない」
いや、違う。そうじゃない。
回答の確認画面には、ぼくの想定していない結末が書かれている。
慌てて、「戻る」のボタンを押す。大丈夫、まだ回答を手直しする時間は、十分に残ってる。
軽いざわめきを背に、私たちは暖簾をくぐって外に出る。
今年は暑い夏になりそうな予感を感じさせる日差しに、春の装いをまとった涼しげな風が、ラーメンで火照った頬に気持ち良い。
「あー、ラーメン美味しかった。さあ、次はケーキよ。早速、食べに行こうよ」
「でも、U奈。あそこのケーキ、結構大きいらしいわよ」
「大丈夫に、決まってるじゃない。デザートは別腹よ ♥」と、駆けだすU奈。
まあ、そうよね。私も、甘いものとコーヒーが欲しいと感じていたところだし。
私の前を駆け出したU奈が、急に振り向いて言う。「次は、『ら』よ」
「ら?」
「そう、別腹の『ら』。しりとりやってたでしょ、お約束言葉のし・り・と・り」
U奈に言われて思い出す。そうだ、しりとりをやってたんだったっけ。
何とか、回答の締め切りには間に合った。思えば、クイズの答を入力して無かった。そもそも、ゴーストライターにクイズの正解を求めることに無理がある。やっぱり、逃げちゃ駄目なんだ。
そういえば、この手の機械が思ってたように動かないというのも、お約束だったか。
(終)
a-kuma3様、回答ありがとうございます&お疲れさまでした。
もちろん、a-kuma3様の回答どおり、正解は「デザートは別腹」です。
パソコン画像やU奈の画像、「珉亭」までばっちり拾っていただき、うれしかったです。
(下北沢の名店で、甲本ヒロトがバイトしていたことでも有名)
それだけでも十分でしたが、さらに「Mr. Ghost Writer」の設定まで付けくわえ、
重層構造にするとは、凝ってますね!!
また、コメント欄の「3視点での分類表」からもわかるとおり、
ラーメンをはっきり「おいしそうに」描いた、という点でもユニークでした。
U奈に「駆け出しの美人フードファイター」という役割を与えたことも、
A沙に、はっきり解説者としての役割を与えたことも、たいへん好印象です。
何より、物語のあらすじを与えられたときに、それを単に描こうとするのではなく、
各人の背景や役割分担をきっちり決定し、いわば「キャラを立たせ」、
「自分の世界観をはっきり」伝えようとしているのが素晴らしいです。
現在、マンガ誌週刊スピリッツに「花もて語れ」というマンガが連載されています。
http://www.amazon.co.jp/%E8%8A%B1%E3%82%82%E3%81%A6%E8%AA%9E%E3%82%8C-BIG-SPIRITS-COMICS-SPECIAL/dp/4091833985
その中に、うろ覚えですみませんが、
「ちょっとでも朗読を知っている人なら、朗読できない言葉」というのが出てきます。
シチュエーションをきっちり確定しないと、
どんな声で、どんな大きさで、どんな感情を込めて話さなければいけないかがわからないから、
「朗読を知っている人ほど朗読できない」のです。
今回は、「あらすじを、どう自分なりの世界観で味付けできたか」の勝負でした。
そして、それに見事に応えてくれた方だと思いました。
ベストアンサーは、単に文章力というだけでなく、
a-kuma3様の文章を書くという姿勢全般に敬意を示してお送りさせていただきます。
過分なお褒めの言葉をありがとうございます。
私事ですが、かきつばたでは、ちょっと悩み中でして、文章を評価していただいたのが、ものすごく励みになります。
「謎解き」に正解していれば、どんな文章でも外れじゃない、というのが、気持ちを楽にしてくれたのかもしれません。
その店の店主は、身長2メートルを超えようかという偉丈夫だった。厨房に立たせるよりも、功夫スーツを着せて格闘技の試合に出す方が似あっているだろう。U奈のオーダーを聞くなり、彼は大爆笑した。
「お嬢ちゃん、止めときな。ウチのラーメン大食いは、男でもリタイアするって代物でな、まだクリアした奴はいないんだ」
U奈は首を横に振った。
「私、がんばります」
「リタイアしたら、そこまでのお代はいただくぜ。一杯千円だ」
A沙は目を丸くした。
「えーっ。そんなこと、チラシには書いてなかったしー」
「常識で考えろ。慈善事業じゃないんだぜ」
最初のラーメンは、ごく普通の醤油ラーメンだった。しかし、「大盛り」とは名ばかり。普通の店なら「メガ盛り」と言えるサイズだ。
「いただきまーす」
U奈は、洗面器のような丼のメガ盛りラーメンを8分フラットで完食した。
次に出てきたのは、脂が大量に浮いた豚骨ラーメン。これまた10分もかからずにU奈の胃袋の中に収まった。
店主の顔から余裕の笑みが消えた。
3杯目はチャーシュー麺。分厚いチャーシューが10枚トッピングされていた。
「ずるーい。トッピングも大盛りにしてお腹を膨らませる作戦ね」
むくれるA沙とは対照的に、U奈は嬉しそうだった。
「同じようなラーメンだと飽きちゃうわ。目先が変わって食欲がわくってものよ」
この後、店主の意地をかけたメガ盛りラーメンたちと、それを片付けるU奈とのバトルが続くわけだが、残念ながら今回は紙数が足りないので、詳しい描写は割愛せざるを得ない。(紙数だけではなく作者の描写力も足りないという噂もあるが信じないように)
どういうラーメンが出てきたかだけを述べて、後は読者諸賢のご想像にお任せしよう。
4杯目は、わらじのようなサイズの中華風トンカツが乗った排骨麺。
5杯目は、花椒と辣椒をふんだんに使った、超激辛の坦々麺。
6杯目は、東坡肉が山盛りのトンポウ麺。
そして7杯目は、塩味の海鮮ラーメンに伊勢海老を一尾まるごとトッピング、だった。U奈は涼しい顔でこれも完食したのである。
放心状態の店主から三万円を受け取り、店を出たU奈は、A沙に向かってにこやかに言った。
「軍資金もできたから、さっきの喫茶店に戻るわよ」
「まさか、これからケーキも食べるつもりじゃ……」
U奈はニッコリと微笑んだ。
「『お約束言葉しりとり』の続きね。『デザートは別腹』よ!」
(了)
以上997字です。(この行を含まず)
油でテカテカしたカウンターと数週間前の週刊誌。おおよそ流行ってるとはいいがたい中華料理屋のそのカウンターに「それ」はいた。なんちゃって。
ずぞぞぞぞーーーっ!
恐ろしい勢いで麺が、メンマが、そしてもやしが吸い込まれていく。店長も他のお客さんも、ただ唖然として言葉もない。まぁ、何回か見たことのある私でさえ、一向に慣れないのだから無理もないよね。
「ぷはーー♪いやー、食べた食べたー♪」
彼女は最後のスープを飲み干すと満足そうに言葉を発した。いったい、あの小柄な体のどこに7杯分の大盛りラーメンは収まっているのかしら。きっとお役所の手違いかなんかで年度末の道路工事に食道から四次元ポケットまでのバイパスを開通させちゃったに違いない。
かくして、本人他約1名を除く大方の予想に反して大盛りラーメン7杯と3万円をせしめた彼女と一緒に、くずおれる店主を後にしてお店を出たわけだけど。
「さ、行こうか♪」
彼女は先ほど来た道を引き返していく。えーと、どこへ???
「はーい、到着~。」
あれ?ここはさっきのケーキ屋さん?もしかして今からここに入るの?
「うん、どしたの?あ、アタシがおごるよー。お金ならほら、さっきもらったのがあるし♪」
いや、そういう問題じゃなくて…
「ほらもう、早く行くよ~、だいじょぶ、『デザートは別腹』っていうじゃない♪」
って、そんなお約束な答えはーーー!…って、あ。
hokuraku様、回答ありがとうございます&お疲れさまでした。
いつも、もっと難しいクイズにも楽々、正解されている方ですが、
今回も「デザートは別腹」に正解されたのは、いつもながら素晴らしいです。
友達のA沙の、楽天的で能天気な性格が伝わってくるのも良いです。
擬音語や擬態語の使い方も上手いと思います。
「何回か見たことのある私でさえ、一向に慣れないのだから無理もない」
という一文を入れたのも、「友達は読者目線の代理」ということを
わかって書いていたみたいで、たいへん良いと思いました。
また概して「かきつばた杯」の文章は、長くなるきらいがあるのですが、
短く的確にまとめていただいたことにも感謝です。
U奈のセリフ「デザートは別腹」が、
しりとりの続きだと明示していなかったのは、すこしだけ残念でした。
後で回答する方のネタバレにならないよう、配慮されたのだとは思いますが、
今回の問題は謎解き要素もあるので、はっきり正解を示すことは、
ぼんやりと読む読者にとっては重要だと思いました。
あと、♪や?の後に次の文章が続くなら、ひとマス空けたほうが読みやすいかもです。
今回はありがとうございます。次回もございましたら、ぜひ回答をお願いしたいと思います。
出題&講評お疲れ様でしたー。楽しかったです。
今回の回答では、8コマ漫画の後半ということで意識的にセリフ部分を少なくして「絵で見て分かる」描写に置き換えてみました。(あまりできてませんが)
「かわいそう」のセリフに対しては、(1)「繁盛してないお店を盛り上げるため、店主が思い切って立てた企画である『7杯食べたら無料』」という雰囲気の描写(油でテカテカ…)、(2)A沙にはすでにこうなることがが分かっていた、という描写(何回か見たことある…)の2点で書いてみました。
しりとりについては、はっきりと書くとセリフ的に不自然かなー、と思って「お約束」の文字だけ入れておきました。最近、こういう「分かる人限定」な書き方をしてしまうことが多いので反省です。
PHASE 5
ラーメン屋に入ったU奈は、早速「ラーメン7杯チャレンジ」を店主に申し込んだ。
もちろん店主は驚く。
「なんだって?ラーメン大食い挑戦するって!?」
しかしU奈は「はいっ!やらせてください!!」と引き下がらない。
これにラーメン屋はあっさり折れた。「そこまで言うんなら……」
PHASE 6
驚異のハイペースでラーメンを平らげるU奈、スープまで飲み干す。2杯目、3杯目……。いつの間にやらギャラリーが店内に所狭しと集まっていた。
そして間もなくしてその時が来た……
「うお―完食だー!!」
歓喜するギャラリーだったが、その空気を切り裂くような言葉がU奈から飛び出した。
PHASE 7
U奈
「でも、涙が出ちゃう……女の子だもん❤」
???
確かにU奈は『女の子』ではあるが、涙は出ていない。代わりに出ているのは額からの脂汗……。
怪訝な顔をするギャラリー……。
PHASE 8
A沙
「それ、お約束言葉しりとりの続きのつもりだろうけど『ん』で終わったから負けだよ?」
U奈
「あっっっ???!!!」
yam3104様、回答ありがとうございます&お疲れさまでした。
複数回答ですが、公表はまとめてこちらで。
回答ですこし混乱してしまったみたいですが、
「デザートは別腹」には、ちゃんと正解されてます。
おめでとうございます。
こちらも、いろんな企画を主催とた事があるのでわかるのですが、
間違えずに書き込むのって、緊張する現場だとけっこう、難しいものなんですよね・・・。
さて、yam3104様ですが、小説を各コマごとに書いてきた、唯一の方でした。
自分の回答も各コマに分けたので、たいへん好印象です。
yam3104様は 店主=愛すべき、視点は第三者、という回答でした。
ラーメン屋のギャラリーを描写するところも、第三者視点としてブレがなく、素晴らしいです。
今回はありがとうございます。次回もございましたら、ぜひ回答をお願いしたいと思います。
PHASE 5
ラーメン屋に入ったU奈は、早速「ラーメン7杯チャレンジ」を店主に申し込んだ。
もちろん店主は驚く。
「なんだって?ラーメン大食い挑戦するって!?」
しかしU奈は「はいっ!やらせてください!!」と引き下がらない。
これにラーメン屋はあっさり折れた。「そこまで言うんなら……」
PHASE 6
驚異のハイペースでラーメンを平らげるU奈、スープまで飲み干す。2杯目、3杯目……。いつの間にやらギャラリーが店内に所狭しと集まっていた。
そして間もなくしてその時が来た……
「うお―完食だー!!」
歓喜するギャラリーだったが、その空気を切り裂くような言葉がU奈から飛び出した。
PHASE 7
U奈
「で……デザートは別腹よ❤」
???
PHASE 8
A沙
「え、まさか3万ゲットしたからってケーキ屋に行くんじゃないでしょうね!?」
U奈
「何言ってるの?『お約束言葉しりとりの』続きよ!ほら、『ら』よ!」
A沙
「あっ、そっか!」
U奈
「でもケーキ屋には本当に行くけどね」
A沙&ギャラリー
「!?」
PHASE 9?
A沙
「あんた、あの時さ、別の事考えてたでしょ?」
U奈
「なんの話?」
A沙
「yam3104の一回目の回答見なさい!」
U奈
「私のせいじゃないよ、アイツが悪いんじゃん。恥かいた!!!」
A沙とU奈が並んで楽しそうに歩いている。
「み、み……。お約束言葉でしりとりって難しいよね。あ、思いついた! 『耳の穴から手ぇ突っ込んで奥歯ガタガタ言わせたるで』よ!」
A沙が言い終わるか、言い終わらないか、言っている途中かで、U奈の腹の虫が鳴る。
『グ~~』と。かなり大きく、世界中に聞こえる音量だ。さぞかしブラジルの人もびっくりしたろう。
A沙はそれが聞こえたのか聞こえてないのか、聞いている途中なのか、無視して、
「さあ、U奈の番よ♪」
「この店のケーキ食べたいよぉ……」
お腹に手をあて、物欲しそうにケーキ屋のショーウィンドウを眺めるU奈。
「金欠なんでしょ? ガマン、ガマン」
と、脈絡なくU奈の目に隣の店の張り紙が飛び込んで来た。
「見てA沙! ラーメン大盛り7杯食べたら無料+賞金3万円だって!」
「やめときなさいよ! かわいそうじゃない」
と、制止するA沙の言葉を聞いてか、聞かずか、聞きながらか、
「挑戦するぅー!」とラーメン屋に飛び込むU奈。
――まったくU奈は……
A沙は、呆れながらも、U奈の後を追った。
「へい、らっしゃい!」
ごつい店主が、ふたりを出迎えた。
「ラーメン大盛り7丁! 挑戦するわ。3万円チャレンジ!!」
「ほう、姉ちゃんがかい? 自慢じゃないがうちの大盛りラーメン、食いきれたのは過去に、たった3人だけだ。それでもやるかい?」
「やらいでか!」
U奈の威勢のよい返答に気を良くした店主が、厨房で仕度を始める。
――まったくU奈は……
A沙は呆れながらも、それを見守った。
みるみるうちにラーメンを平らげていくU奈。
「まだまだ~! どんとこ~い!!」
――まったくU奈は……
A沙は呆れながらも、それを見守った。
店主は、次第に青ざめ、しかしその食いっぷりに心をほだされたのか、最後にはすがすがしい笑みを浮かべていた。
「ごちそうさま。これで7杯完食よ!」
「すごいねぇ、姉ちゃん。約束の賞金だ」
「やったわね、U奈。じゃあさっそく、あのケーキ屋さんでケーキ食べましょ! あそこはモンブランが美味しいのよ」
「モ、モンブラン?
で、出来れば、麺を連想させるものはしばらく食べたくない……げっぷぅ」
おしまい。
正解のための修正
・・・
「ごちそうさま。これで7杯完食よ!」
「すごいねぇ、姉ちゃん。約束の賞金だ」
「やったわよ、A沙。じゃあさっそく、あのケーキ屋さんでケーキ食べましょ!」
「U奈……ラーメンあれだけ食べたのに大丈夫? まだ食べる気?」
「デザートは別腹っていうじゃない」
おしまい。
なんで思いつかなかったんだろう……
grankoyama様、回答ありがとうございます&お疲れさまでした。
今回ですが、実は大学の授業で、
トータルで50名ほどの学生に、先を予測させてみたのですが、誰も正解者がいませんでした。
ですので、「デザートは別腹」という正解を思いつくのは、
自分が思うより、かなり難しかったのだと思います。
また、リアルで試したある方から、「デザートは別腹」は知識依存で、
それを知らなければ解けない、的なことを言われ、ちょっとヘコみました。
こちらは
「いや論理的に考えれば、すくなくとも7コマ目・・・つまり、
『大食いチャレンジに成功したU奈が、次にケーキ屋に向かう』までは導き出せるはずだ」
と主張したのですが、あんまり納得されていない様子でした。
ですので、grankoyama様の回答は、期せずして、
論理的な人なら必ず7コマ目までは辿り着くはずだ、という自分の主張の、
強い裏付けになっておりました。たいへんうれしかったです。
また1~4コマ目までを描写していただき、ありがとうございます。
自分でも最初の4コマは文章にしていなかったのですが、
文章にするとこうなる、という実例を示していただき、興味深かったです。
他の人の正解を読んでもズルをせず、正直に申し出ていただいた心根も素晴らしいです。
金の斧と銀の斧を差し上げます。
※日本の裏側はアルゼンチン沖です。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q106885005
街角でなにやら、楽しげに騒いでいる二人の少女がいた。
「見て! ラーメン大盛り7杯食べたら無料+賞金3万円だって!」
「やめときなさいよ!」
ふたりの少女のやりとりを眺めていた一人の少年もいた。
――そうか……3万円か……
3万円あれば、新しいスニーカーが買える……
いや、それよりもお母さんを病院に行かせてあげられる……
お薬を買ってあげられる……
時は少し前に遡る。
「ごほっ、ごほっ。ごめんね、たかし。お母さんが体を壊しちゃって。今月はがんばって働いて、お前に新しい靴を買ってあげようと思ってたのに……。パートも休んじゃって……ごほっ、……」
「いいよ、母さん、それより、病院に行こうよ、ひどくなったら大変だよ」
「病院は……ごほっ、お金がかかる……げふぅっ……から……ぐぼぁぁ」
吐血しそうな勢いの母を見るに見かねてたかし少年は、家を飛び出した。
――お母さん、待ってて、僕が、がんばってラーメン食べるから……
たかし少年は意を決して、ラーメン屋の暖簾をくぐる。
「へい、らっしゃ~。兄ちゃん一人かい? なんにする?」
店長の威勢のよい掛け声に少々怖気ずきながらも、たかし少年は意を決して言う。
「あの~、張り紙にあった、大盛りラーメンの……」
「うっひょ~、兄ちゃんも挑戦すんのかい? そりゃあこっちも商売だ。とめはしないが。それにしても、そっちの姉ちゃんといい、兄ちゃんといい、今日はすごいねぇ。元気があってなによりだ。よし、大盛りチャレンジ一人前だな」
店長は、厨房の奥に引っ込んだ。
「まだまだいけるわよ」
「そう? だいぶと苦しそうよ」
「あと、3杯でしょ。食べれる、食べれる」
たかし少年の横では、少女が大盛りラーメンをすすっていた。すでに3杯の器が空になって重ねられている。
それをみてたかし少年は驚愕した。ラーメンの丼が常識を超えて大きいのだ。
だがしかし、運ばれてくるものは食べなければ。そもそも、ラーメン代を支払うお金を持ってきていない。
食べるしかないのだ。
1杯目は少し余裕を残しながら、2杯目はなんとか、3杯目で涙が溢れてきた。
「く、苦しい、もう入らないかも……でも……お母さんのお薬代を……」
なんとか頑張って3杯目を平らげた、たかし少年。
その隣では、同じく大食いチャレンジ中の少女が大詰めを迎えていた。
「あと一杯よ。どう? 無理じゃなかったでしょ」
「ほんと、呆れたわ」
「姉ちゃん、ちょっと待っててくれ。先にそっちの兄ちゃんのおかわりを用意するからな」
「ええ、それは別にいいけど……。ちょうどいい休憩にもなるし……」
すごいな、あのお姉さん。もう6杯も食べたんだ……。たかし少年は思った。
でも……僕には食べられそうも無い。あと一杯だけなら、なんとなかるかも知れない。でも……。そう思うと、頬を伝っていた涙が、ポトリポトリと落ち、ラーメンのスープに溶け込んだ。
「お母さん……ごめん……」
おもわず、泣き言が口をついた。
「兄ちゃん、3杯目は終わりだな。よし4杯目、5杯目、6杯目、7杯目、一気に行くぞ」
えっ! とたかし少年が顔を上げると、店長がその目の前に4杯のラーメンを一気に並べた。
小さな小さな、餃子のたれを入れるような小皿にそれぞれ麺が一本と、申し訳程度のスープが入っている。
「おじさん、これ……」
「ああ、すまない、麺が品切れでな。まあこちらの手違いだ。ルールに変更はないよ。7杯食べれたら、3万円。まあがんばってくれ」
感謝の言葉が声にならない。たかし少年はラーメン屋店主の、心意気に感謝しながら、一本一本大切に味わいながら麺をすすった。
お礼は帰るときでもいい。いまは、このラーメンをしっかり食べきること。たった4本の、でも、いままでで一番心のこもったラーメンだ。
「チャンスね、チャンス」
「そうみたいね」
「麺が無いってことなら……」
「あとでケーキをおごってよ」
たかし少年とラーメン屋の心温まる交流を横目で見ながらも少女達は皮算用を始める。うまく行けば、自分達にも小盛りのラーメンが出てくるかも知れず。
まあ、そうでなくても、あと1杯くらいは食べきる自信が少女にはあった。
「お待たせ、姉ちゃんラストの一杯だ!」
そう言って、店主がさげてきたのは、麺を茹でる寸胴鍋。中には10玉分は軽く超えるであろう麺と、何リットルになるのかもはや考えたくもないスープが満載だ。
「いやあ、正直、ここに辿り着くとは思わなかった。なんせ6杯目までは何人かの挑戦者が食べきったが、これを食いきった奴はいねえ。ま、せいぜいがんばってくれ」
「ず、ずっる~~!」
おしまい。
grankoyama様、回答ありがとうございます。
軽快で、テンポ良くいっきに読めますね。
たかし少年とラーメン屋の心温まる話と思いきや、
二人の少女には意地悪で、でも結局のところはラーメン屋のおやじもいい奴だ、
ということが伝わってきて、エンタテイメント小説として、よく出来ていると思います。
たかし少年には「まあがんばってくれ」なのに、
少女には「ま、せいぜいがんばってくれ」という対比も笑えます。
また「麺がなくなった」のも、「超巨大ラーメン」をっくっていたからだ、
というオチもいいです。
いつも文章を書きなれていることが、この読みやすさを支えているのだと思います。
うらやましいです。いつかぜひリアルでお会いしたいです。
「ほう、わたしの非奥義、レインボーラーメンに挑むと言うのか?」
ラーメン屋店主のおやじは、不適な笑みを浮かべた。
「ああ、どんなラーメンでも出された限りは食い尽くす。それが俺の流儀だ!」
達也のラーメン辞書に『お残し』という言葉はない。
かくして、おやじと達也の異種格闘ラーメン対決が始まった。
「第一の迷宮! 橙色のラビリンス!」
おやじが始めに出したのは何の変哲もないラーメンだった。
醤油ベースのスープに具は、メンマと煮卵。それにチャーシュー。
若干拍子抜けしながらも麺をすすった達也であったが……
「こ、これは……。この甘酸っぱい柑橘系の香り。さては麺に蜜柑が練りこんであるな!」
「よくぞ、見抜いた。そうだ、蜜柑だよ。給食でオレンジライスという異色のメニューを味わった、特定地域の特定世代にのみ存在するトラウマに向けた、アンチテーゼだ。本来であればスープのこってりさを打ち消すためだとか、風味にアクセントを加えるためだとか、創意工夫のもと、使用する蜜柑だが……」
「た、たしかに、この蜜柑の風味。なんの役にも立ってない、しかも若干、それさえなければかなり旨そうなオーソドックスな醤油ラーメンを台無しにしている!」
達也の意識は天を駆ける。龍にまたがり、オレンジ色の空間を疾走する。
そう、あれだ。グルメ系アニメとかでよくある描写だ。
ほうぼうに散らばる蜜柑に頭を打ちつけながら、龍の上でラーメンを食う達也。
そんなアクロバティックなシーンではあるが、詳細については触れない。
なお、字数の都合で以下のラーメンでは同様のシーンは割愛。
でもって、そのラーメンを完食する達也。
「さあ、続けていくぞ、第二の混沌! レッドペパー!!」
「赤か、たしかにこれだけ唐辛子が入っていると……さすがにきつぜ。だがしかし! 俺は食う!」
そのラーメンをなんとか完食する達也。
「ふっふっふ。やるな小僧め」
「次だ! 第三の衝撃! グリーンペッパー!」
「なにぃ! こんどは、緑の唐辛子だとぉ! いい加減にしやがれ。辛さで全てを誤魔化そうったってそうはいかない!」
そのラーメンを勢いで完食する達也。
「安心しろ。辛さで攻め立てるラーメンはここまでだ!」
「どんどん行くぞ! 第四の恋慕! イエローマスタード!!」
「これは……、辛いのはさっきまでとか油断させておいて! からしだとぉ!!」
そのラーメンをまったりと完食する達也。
「安心しろ。辛さで攻め立てるラーメンはここまでだ!」
「さあ、こんどはどうだ! 第五の超特急! 緑色のトルネード」
「わ、わさびとは……」
そのラーメンを自画自賛で完食する達也。
「安心しろ。辛さで攻め立てるラーメンはここまでだ!」
「なかなか、できるようだな、小僧。しかしその余裕。どこまで持つかな?
第六の欠陥!!!! 藍色の憂鬱!!」
「こ、このラーメン、全然藍色じゃない! しかも辛い!」
「そうだ、とりあえず、辛く、それだけをコンセプトに。藍色なんてことに対するこだわりより辛さを優先した、いわば、コロンブスの卵ともいえる至高のラーメンだ!」
「くそう! だが、俺は負けない。どんなラーメンでも食い尽くすのが俺の流儀だ!」
そのラーメンを口笛まじりに完食する達也。
「ほほう、楽しませてくれる小僧だ。だが、お遊びはここまでだ!
第七の適当!! 青い稲妻!!」
「こ、このラーメン、たしかに青いが……これは、塗料!! 鶏がらで丁寧に取ったスープに青色の塗料を入れているのか! どうりで青いわけだぜ! しかも何故だか辛い!」
「気付いたか。そうだ、口に入れても大丈夫な塗料をくださいとわざわざ東急ハンズに行ってまでして買った青色の塗料だ。それをスープに混ぜた。日本では、いや世界でもここでしか食べられない奇跡のコラボだ!!」
そのラーメンをめっぽう完食する達也。
「青を攻略したのはお前が始めてだ。だが、次なる紫の洗礼を受けるがよい!
第七の暴走! パープルもしくはヴァイオレットワンダーランド!!」
「こ、このラーメン、赤唐辛子と青い塗料だ。なるほど、あわせると紫!!」
「よく気付いたな。ここまでたどり着くとは大した奴だ。だが、最後の難関を突破できた奴は居ない」
そのラーメンをぐったりとしながらも完食する達也。
「いくぜ!! 第七の困惑!! 白髪ネギの微塵切りによる白の演出」
おやじは、両手に包丁を持ち、白ネギを刻み始めた。
おやじの包丁捌きのあまりのスピードに、おやじの体は宙に浮き上がる。
ゲームセンター嵐の連打と同じ原理だ。もはや重力がどうなっているのだかなんだかわからい状態の中、白髪ネギが大量に生産されていく。
「どうだ! このネギの量! このネギが麺を、スープを全てを包括する!」
そういって、おやじが差し出したラーメン鉢の中にはもはやネギしか入っていない。
ネギと、おやじが誤って自分の手を少し切ってしまったときの皮膚の破片しか入っていない。
ネギとおやじの皮膚と、おやじが勢い余って自分の手の爪まで切ってしまった時の爪の破片しか入っていない。
「だが、俺は食う! 食うが如しだっ!」
ラーメンを完食する達也。
「完敗だ。俺のラーメン7杯が起こす奇跡の虹の物語を攻略したのはお前が始めてだ。礼を言わねばならんな。これから俺は初心に帰って、基本に忠実に、旨いラーメンを作ることを目指すことになるだろう。そして、その結果として、キワモノメニューしか無くて、客が全然来なくてつぶれそうだったこの店も、にぎわいを取り戻すだろう……」
達也に握手をもとめるおやじ。達也はその手を強く握り返し、
「おやじ、楽しかったぜ! 麺は万里を超え、スープはここにあり だっ!」
「そ、それは、伝説のラーメン評論ファイター、麺宮寺達也が、旨いラーメンを食ったときに放つというお約束の台詞!! あ、あんた……まさか…………!?」
「ごちそうさん、お代はここに置いとくよ」
そういい残すと麺宮寺達也は、ラーメン屋を後にした。
次回予告
麺宮寺達也に襲い掛かる魔の手。新たな魔人、つけ麺入道によって、達也の口に無理やり、つけ麺が運ばれる。しかも2回に一回はスープをつけずに素の麺という念の入れようだ。果たして、達也の運命は……。
「スープとの決別! つけ麺の奇跡」
乞うご期待!!!!
grankoyama様、回答お疲れさまでした。
「たしかに、この蜜柑の風味。なんの役にも立ってない」
と
「安心しろ。辛さで攻め立てるラーメンはここまでだ!」
の天丼ギャグは、ぷっと吹いてしまいました。
今回の文章で、実際にわらったのは・・・というか、
文章を読んで声を出してわらったのは、すくなくともこの数カ月、なかったと思います。
読ませますね!!
最近、他の人力検索の方の何人かと、リアルでお会いする機会があったのですが、
ぜひ会ってみたい人物として、3名以上の方から異口同音に、
grankoyama様の名前が挙げられております。
さもありなんと思いました。完全なOne&Onlyです。
>文章を読んで声を出してわらった
がんばってふざけたかいがあったというものです。
自分では面白いつもりで書いてても実際どうなのかわかんないので、不安なんですよ。
ご報告いただきありがとうございます。嬉しかったです。
a-kuma3様、回答ありがとうございます&お疲れさまでした。
2012/06/03 01:39:16もちろん、a-kuma3様の回答どおり、正解は「デザートは別腹」です。
パソコン画像やU奈の画像、「珉亭」までばっちり拾っていただき、うれしかったです。
(下北沢の名店で、甲本ヒロトがバイトしていたことでも有名)
それだけでも十分でしたが、さらに「Mr. Ghost Writer」の設定まで付けくわえ、
重層構造にするとは、凝ってますね!!
また、コメント欄の「3視点での分類表」からもわかるとおり、
ラーメンをはっきり「おいしそうに」描いた、という点でもユニークでした。
U奈に「駆け出しの美人フードファイター」という役割を与えたことも、
A沙に、はっきり解説者としての役割を与えたことも、たいへん好印象です。
何より、物語のあらすじを与えられたときに、それを単に描こうとするのではなく、
各人の背景や役割分担をきっちり決定し、いわば「キャラを立たせ」、
「自分の世界観をはっきり」伝えようとしているのが素晴らしいです。
現在、マンガ誌週刊スピリッツに「花もて語れ」というマンガが連載されています。
http://www.amazon.co.jp/%E8%8A%B1%E3%82%82%E3%81%A6%E8%AA%9E%E3%82%8C-BIG-SPIRITS-COMICS-SPECIAL/dp/4091833985
その中に、うろ覚えですみませんが、
「ちょっとでも朗読を知っている人なら、朗読できない言葉」というのが出てきます。
シチュエーションをきっちり確定しないと、
どんな声で、どんな大きさで、どんな感情を込めて話さなければいけないかがわからないから、
「朗読を知っている人ほど朗読できない」のです。
今回は、「あらすじを、どう自分なりの世界観で味付けできたか」の勝負でした。
そして、それに見事に応えてくれた方だと思いました。
ベストアンサーは、単に文章力というだけでなく、
a-kuma3様の文章を書くという姿勢全般に敬意を示してお送りさせていただきます。
過分なお褒めの言葉をありがとうございます。
2012/06/03 02:35:07私事ですが、かきつばたでは、ちょっと悩み中でして、文章を評価していただいたのが、ものすごく励みになります。
「謎解き」に正解していれば、どんな文章でも外れじゃない、というのが、気持ちを楽にしてくれたのかもしれません。