コロナ禍が落ち着いた頃、「9ユーロチケット」という切符が発売されました。これはたった9ユーロ(当時の感覚では1000円程度)でドイツ国内の普通列車・バス等に1ヶ月乗り放題、というものすごく思い切った企画でした。その後、買い切りではなくサブスク制になる等、多少の変更と共に販売されるようになったのが、今のDeutschland-Ticket。販売価格が月額49ユーロ(約8000円)なので、9ユーロよりはだいぶ高くなりましたが、それでも破格の値段なのは間違いありません(来年58ユーロに値上げ予定)。学校が家の近くにない子供には、自治体から以前は通学経路のみ使える定期券が支給されていたのですが、今ではDeutschland-Ticketが支給されているそうです。つまり自己負担なしで全国の鉄道に乗り放題になった訳で、これは正直羨ましい。うちの子供達は学校もそこまで遠くはないので支給対象にはならず、私も含めて日常生活はほぼ自転車圏内で完結しているため、これまでこの切符を買った事はありませんでした。ところがこの10月はどうやら元が取れそうだったので、次男、娘、私の分を初めて購入してみました(ちなみに長男は2週間ギリシャに修学旅行!羨ましい!)。
「これさえあれば国内どこでも行けちゃう」というのは、夢があるというか、楽しい。雨が降ったら「自転車ではなくバスで行こうかな」とできるのも良かったし、長男の見送りの後に思い付きで最初に来た電車に乗って近くの町を散策したのも楽しかった。厳密には国内だけではなく、国境を越えて次の町まで使えるらしく、次男は友達とオランダ側の町まで足を延ばしたりもしていました(ただし日帰りなので終日ほぼずっと移動でかなり疲れたらしい)。
そんな訳でDeutschland-Ticket自体には何の不満もなかったのですが、大きな問題として、
鉄道の運行状況がものすごくヘボい。
いやぁ、最近のDBは以前にも増してひどいと聞いてはいましたが、こりゃホントにひどいわ、と実感しましたよ。
(1)遅延
しょっちゅうある。むしろ遅延がデフォルトで、時刻表通りに到着したら驚くレベル。したがって、乗り換え時間5分などという接続は、だいたい失敗するので避けた方が良い。
(2)運休
かなり頻繁にある。前もってわかればまだいい方で、ホームで電車を待っていたら、10分遅延→20分遅延→30分遅延→やっぱり運休、とかも普通にある。運休理由は工事、運転士の病気等(30分前にわからなかったんかい?)。次の列車も当然のようにそもそも運休で、1時間後にやっと乗れた電車は激混み、なんて事も。
(3)バス代替輸送
結構ある。前もってわかっているならまだマシ。乗車中に突然「線路トラブルによりここから運休、あとはバスで振替輸送」と言われ、名も知らぬ無人駅で降りてバスに乗り換え何もない原っぱの真ん中を走るのは、いささか心細い。そしてバスの方が遅いから、接続列車は当然逃す。
(4)発車番線が変わる
結構ある。日本では行き先別に発車番線が決まっているが、ドイツは違う。一応時刻表には発車番線が書いてあるのだが、遅延が多いせいかコロコロ変わる(もはや衝突事故がないのが不思議なレベル)。発車1分前に構内放送で「今日は3番線から発車します」などと言われ、乗客全員で猛ダッシュする羽目に陥る事も多々ある。
(5)目的地までたどり着かない
たまにある。「この電車は次の駅で切り離し、A駅とB駅に向かう予定でしたが、今日は全車両A駅に行きます。B駅に行く人は降りて下さい。」降りた後?自己責任でしょうね。
(6)経路変更
たまにある。「C駅で停電のため、D駅方面に迂回します。」私は終点まで乗ったので遅延しただけ(遅れても着かないよりマシ)でしたが、C駅で下車するつもりで乗っていた人はお気の毒。
私が乗り放題切符を活用したと言っても、乗車日数は10日間以下ですが、その間に上のトラブルを全部経験しましたよ。時刻表通りに着いたのなんて、1回か2回程度。最近はアプリで運行状況をリアルタイムで確認できるハズなんですが、実際にはなかなか反映されず、運休になった列車がアプリ上は通常運転している…なんて事もままある。となると頼りはドイツ語の構内放送や車内放送のみ(音質が悪くてドイツ人ですら聞き取れない事も)。駅にいるとトラブル情報が休みなく延々と放送される事もあります。特に周囲の人が一斉に動いた場合は要注意で、周囲の人を捕まえて、ブロークンイングリッシュでもいいから聞きましょう。「今日中に旅程をこなせればまぁいいか」と思えるような時間と気持ちの余裕を持てる状況ならまだいいんですが、ビジネスやフライトで時間厳守の超重要予定がある場合に電車を使うのはかなり高リスク、という事がよーくわかりました。
今年の夏、私達は西日本を旅行して、新幹線・在来線・夜行列車で東京→大阪→姫路→倉敷→広島→岡山→東京と移動したんですが、その間列車トラブルは一度だけ、それも不審物の発見によるもので鉄道会社の落ち度ではありませんでした。比べちゃいかんが、やっぱりつい比べちゃう。ワタシが住んでいるのはホントに先進国だったっけ?とたまに思うドイツ暮らし。