黙然日記(廃墟)

はてなダイアリー・黙然日記のミラーです。更新はありません。

産経「主張」のネット報道観。

ネット中傷 責任とモラルを忘れるな - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/369997/

ネット書き込みでの名誉毀損めぐり最高裁が初判断 有罪判決確定 - イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/crime/369396/

 上は18日付「主張」、下はその前提となる最高裁判断を伝える16日付の記事です。「カルト宗教団体がラーメンチェーン店の経営に関わっている」と主張するサイト(2002年ごろから活動している、ブログ等ではなくいわゆるテキストサイト)の記事に対して、そのチェーン店側が訴えていた裁判で、一審は「ネット書き込みは影響力が少ないから無罪」、二審は「ネットの影響も大きくなってきたから有罪」、そして今回最高裁が、二審判決を支持して上告棄却の判断を下した事件です(経緯は産経報道のまとめによる)。この「悪徳商法?マニアックス事件」についてはずっと関心を持っていたのですが*1、今回のニュースは見落としていました。裁判の争点や最高裁判断を伝える報道をみると、事実関係の争いではなく「ネットで名誉毀損が成立するか?」が争点になってしまっているようですが、その点の検証はされなかったのでしょうか。この事件では裁判と併行してGoogle八分の存在が明らかにされ(同時期に山谷えり子参院議員関連でも発覚)、ネット上の言論についてさまざまな問題提起がされたのですが、IT関連ニュースサイトなどでも詳細な記事がほとんど見あたりません。ニュースとして検索して見つかったのは一箇所だけでした。*2。(発言の時点で)事実であると信じるに足る理由があり、社会的利益に関わることであれば、誹謗中傷には当たらないというのが名誉毀損にカンする基本的な判断かと思っていたのですが、そのあたりがマスメディアでまったく触れられていないのは不可解極まりない話です。
 さて、産経「主張」ももちろんこうした指摘はありません。ていうか争点を思いっきりすり替えた記述になっているのですが、これは見て来たとおりマスメディア全般がそうなので、産経の問題として取り上げるべきではありません。また、一般論としてネット上に無根拠な誹謗中傷があふれていることへの危惧は正当です。しかし今回の裁判の結果により、産経ですら数百人の記者や海外支局を含む情報収集網とその運営費を投入している「マスメディアの報道」と、同レベルの調査力を求めるのでは、個人がネットで(自力で調べた範囲で)情報を発信すること自体が不可能になり、第五権力としてのネットジャーナリズムは死に至ります。「Net Perfect」を標榜し、ニュース&ブログサイトを日本でいち早く(本格的なものとしては未だに唯一)運営し、紙新聞でも毎週木曜日にWeb面を掲載している産経新聞として、ネットジャーナリズムへの危機感はあるのでしょうか。あるわきゃないのはわかっていますが。

*1:参考リンク:悪徳商法?マニアックス http://www6.big.or.jp/~beyond/akutoku/index.html 、関連エントリ d:id:pr3:20061210:1165735048 など。

*2:やや日刊カルト新聞: 「平和神軍観察会」運営者に最高裁が有罪判決 http://dailycult.blogspot.com/2010/03/blog-post_18.html 。Google八分を有名にした事件についてGoogle検索するのもあれだと思いますが。