黙然日記(廃墟)

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産経「正論」、急所をねらう。

【正論】民主党政権発足に寄せて ジャーナリスト・櫻井よしこ (1/3ページ) - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090921/stt0909210324000-n1.htm

Gazing at the Celestial Blue そりゃ、とっくに専用タグを用意しているとはいえ
http://azuryblue.blog72.fc2.com/blog-entry-741.html

 言及トラックバックをいただいた碧猫さんがすでに細かくツッコんでいらっしゃいますが、それと別に全文ツッコミを入れることができそうなぐらい、歴史修正主義に彩られたパラレルワールドなニッポソの“正論”です。「中国共産党は長年日本を第一の敵としてきた」というのはなんだろう、たしかに国共合作期もそれなりの年月ではあるから「長年」と表現することも不可能ではないだろうけど、とか、マイク・ホンダ議員の背後に中国の策略が云々は産経の紙面(と一部雑誌と一部ネットコミュニティ)でしか通用してないんだけど、とか、

中国が表で展開する微笑外交と裏で進める反日情報戦略の結果、日本は、自由、民主主義、国際法、人権と人道などの価値観を共有する欧米諸国から厳しい批判を受けるに至った。

http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090921/stt0909210324000-n2.htm

 特に2ページめのこの部分には、笑っていいやら泣き笑いしていいやら本気で落ち込んでいいやら、複雑極まりない感情を味わいました。「日本」の実態は継続していますが、その国体や価値観は一度大きく転換しており、「日本の一体性」を認めることと、「大日本帝国と日本国の違い」を認めることは矛盾しません。過去の価値観のうち誤った部分を否定することから現在の「日本」が存在しているのです。自由や民主主義はまだしも、ある時期に国際法違反を犯し人権と人道を踏みにじった過去こそが、ホンダ議員提出によるものをはじめとする各国議会の非難決議や、中国政府からの不要な(しかし無根拠ではない)非難を招いているのです*1。
 櫻井氏が「自由、民主主義」だけでなくわざわざ「国際法、人権と人道」を列挙したのは、現在の中国政府がそれを実践していないことへの批判のつもりなのかもしれませんが、それがよりによって、いちばん痛い急所に戻ってくるブーメランだということを、この文章を書きながら一瞬でも思わなかったのでしょうか。櫻井氏がジャーナリストとして、少しでも自らの言論に責任を持ち、間違ったことを書いていないかと案ずる姿勢があるのなら、ここで踏みとどまれるはずだと思います*2。その姿勢がない言論人は、少なくともジャーナリストではなくしそうかなり宗教かなり、あるいはアジテーターと名乗るべきではないでしょうか。

*1:厳密に言えば、これらは過去の大日本帝国の所行そのものに対する非難ではなく、それを消極的に肯定する政府の姿勢、さらに積極的に肯定する櫻井氏らの言動に向けられているのです。

*2:と書きながら、まさに自らを痛省しております。コメント欄でいろいろご指摘いただいていることに返答しなければならないのを放置している点も含めて。