雨後の

主に備忘録の予定.

ScholAgora@図書館総合展

ずいぶん時間が経ってしまったけれど,図書館総合展で開催されたScholAgora(スカラゴラ)のフォーラム(11/6)に関するメモ。

www.libraryfair.jp

こちらの現地お手伝いをさせていただいた。

ScholAgora*1は,UniBio Press*2が発展的に変わったもの。2024年10月に名称変更となった。UniBio Pressでの活動を含めつつさらに「コミュニティ」としての性格を強める印象がある*3。UKSG*4のイメージ,とも。

 

図書館総合展のフォーラムは,80席の部屋に立ち見が出るほどの満員であった。オンサイトオンリーだったので余計かもしれない。

資料はスカラゴラのサイトにアップされているので*5,詳細はそちらへ。以下,印象的だったポイント。あくまで私のメモであり,勘違いや,本来のご講演の意図と異なっている可能性があります。またその際の責任は当方にあります。

 

永井さん(ScholAgora代表)

  • 外で受付をしており聞けず。会員制であること,実際にスカラゴラが何を担っていくか。学術情報流通に関する様々な内容について,様々な立場の人と協働。

引原先生(研究者/基調講演)

  • 論文という形は,論文の形で最初に執筆した人が業績を総取りとなり,早い者勝ち。先に気づいていても何も業績にならない。
  • 自分のコミュニティの中だけで出していると思っても,コミュニティ外の世界中のどこかから必ずアクセスされる。
  • 研究室や分野の中での蛸壺現象の打開。
  • データの形でも共有し,関わる人すべてにリスペクトを。

飯島さん(学会雑誌出版)

  • ジャーナルはコミュニケーションに重要。誰でも利用できるのが望ましい。が,コストは必ずかかる。
  • 出版規模,国内/海外のどちらで知名度を上げたいか,などによって適切なプラットフォームを選択。Mammal Study はBio One 提案(そこに日本の学術誌をとりまとめて参画したUniBio Press)を選んだ
  • 研究者が何をもって評価されるべきか。論文だけでいいのか
  • IF偏重:雑誌の価値,格付け…お手軽。研究者も一部それをもとめているのでは。

山形さん(大学図書館)

  • モモちゃん,ヒグマ,鮭
  • 相手にお願いして行動を変えさせることは困難
  • 大きな景観(ランドスケープ)のなかでの,学術情報流通というエコシステム
  • 主役の動態をそのなかでとらえる

天野さん(URA)

  • 即時OAポリシーで,急に「OA」がURA達の話題に上がりだした
  • 「研究者」にもいろいろな立場の人がいる。若手,シニア,PI。論文読者,著者…一人(一部)の話だけを聞いて何かに取り組んでも,全体の最適解にはならない。
  • URAだけで何かすることでもない。
  • URAとして:戦略的出版のコンサルティングが考えられる。ニーズとコストに見合った出版プラットフォーム,多様なOA化支援

新井さん(出版社)

  • ハイブリッドOA誌のインパクト(フルOA誌と比較して)
  • ハイブリッドOA誌の,論文著者にとってのメリット。APCが払えなくても,購読としてとりあえず出版できる。
  • Wiley社の転換契約とその拡がり
  • 即時OAでOA誌は,出版者はどうなるか?

山下さん(コンテンツソリューション)

  • サンメディアは11月14日で60周年
  • 日本の学術情報貿易はデジタル赤字になっていないか?
  • 営利・非営利を含め,立場が反対のひとも集まって話をする意味
  • 勝ち負けでなく,継続がゴール
  • 国際的な場に出ていくことの意味
  • 海外からの押し付けではなく,日本としての新しいパラダイムのフレームワークを提示する必要性

三枝さん(印刷会社)

  • レタープレスはJSTAGEのファーストユーザー(1989年)。
  • 学術出版フローと食のトレーサビリティとの類似性:だれがいつどこで何をどう作ってどう加工したか。
  • PIDの組み合わせを駆使して整え,「公開に耐えうる紙面」をつくる→印刷会社の役割

 

発表時間が,引原先生20分,そのほかの皆さん6分とのことで,6分にはとても収まりきらない内容盛りだくさんで(収まらなかった)あっという間の90分であった。

ご講演の方々そして参加者が,学術情報の流通にかかわる幅広いジャンルであることが大変おもしろい。

そしてそれぞれに,主に個人の本音ベースでお話されており,どういったところに課題があるか,皆と話したいか,どういうことを大事だと思っているか,をたくさん共有くださったのが,本当によかった。どういった場所から,自分自身はどういう思いで,そこに立っているのか。何をしたいのか。おとなのしゃべり場。聴く側もそれを楽しんでいたと思う。そこから,自分も,どうかかわりたいのか?が問われる。

そういうシチュエーションを自然と引き出す,代表の永井さんのお力でもあると感じた。

フォーラム後の開催記もご一読を。

scholagora.smoosy.atlas.jp

*1:

scholagora.smoosy.atlas.jp

*2:国内生物学系学協会のジャーナルをパッケージ化し,BioOneをプラットフォームに展開する事業を行っている。学術雑誌の持続可能な流通モデルやオープンアクセスについて、セミナー開催を含め幅広く活動。

*3:

定款における目的:

この法人は、広く市民に対し、すべての科学分野に関する研究成果について、より広範な利用を促すために、セミナーや電子媒体等を通じて情報交流を図り、もって日本の学術文化の発展に寄与することを目的とする。

*4:

www.uksg.org

*5:

scholagora.smoosy.atlas.jp