「バイバイ、ヴァンプ!」が炎上してからわずか5ヶ月。今度は「新感覚!スペクタクルステージ『THE★JINRO』-イケメン人狼アイドルは誰だ!!-」という、なんだか読むだけで脳が溶けそうなタイトルの舞台の演者や関係者からコロナウイルス感染者が集団で出たそうです。
前置きとしてお断りしておきますが、筆者はイケメンのコンテンツが好きなだけのオタクで、公衆衛生や疫学には詳しくありません。よって、こちら側の観点から「イケメン人狼アイドル」について書いていこうと思います。
さて、前回の記事と全く同じ感想になってしまいますが、「新感覚!スペクタクルステージ『THE★JINRO』-イケメン人狼アイドルは誰だ!!-」の詳細を見た感想はただひとつ。それは「出たな、虚無舞台」でした。プリキュアの台詞か?
若手俳優界隈ではクソつまらない舞台、また内容として明らかにつまらないことが予想される舞台には「虚無舞台」という罵詈雑言がぶつけられます。
過去にはこのような、「虚無リンピック」という企画もあり、金を払って虚無を見せられたオタクたちの呪怨がぎっしりつまっておりますので大変オススメです。
個人的な考えですが、虚無舞台には2タイプのものが存在します。
①脚本演出キャストともに、結構しっかりしていて開始前は虚無の香りがしなかったのに、フタをあけてみたら虚無そのものが広がっているタイプ
②明らかに中小劇場を借りており、脚本演出キャストともに、曖昧な感じで集められたのが丸出しで、もう始まる前から情報を読んだ時点で虚無の香りが濃くただよっているタイプ
公式サイトを見ると、私の判定では明らかに②なわけですね。
まず、有村昆がプロデュースしてるらしいのですが、有村昆が「イケメン人狼アイドル」をプロデュースする必要ってある?
一般知名度があるのは山本裕典さん、ギリでこんどうようぢさんくらいまでで、そこでなんとか集客を保っているのでしょうか。あとの若手俳優、地下アイドルの方々については名前を見たことがある程度なのですが、多分彼らにもそれぞれ1人から10人くらい(適当)ファンがいるのでこの興行は成立しているんだと思います。
私がこの「イケメン人狼アイドル」を、どうみても虚無コンテンツだと思う理由がもうひとつあります。
それは最近、若手俳優界隈の虚無コンテンツのトレンドが「人狼」になりつつあるからです。
虚無すぎるのになぜか歴代4本が制作され、数々のオタクを虚無の渦へと突き落としたあの「シュウカツ」シリーズも最新作のテーマは人狼だそうです。人狼させとけば大丈夫みたいな風潮でも広まっているんでしょうか。
で、虚無舞台の制作ってだいたいクソなので、こういうことが起こるのもかなり納得がいきます。なぜクソなのかはわかりませんが客に対してクソな扱いをする(小劇場でやってる虚無舞台の制作と揉めた話なんか死ぬほどあるし知り合い10人呼んできたらその座談会だけで1日終わる)ので当然内部もクソなのでしょう。
主催者は都内で韓流俳優のイベントを数多く手掛けるイベンター。関係者は「今回は舞台公演といっても実際はイケメンを集めて女性ファンを喜ばせるという内容。ホストまがいのイベントだ」と話した。一部の出演者は出待ちしたファンに握手やサインなどをしていたが、こうした感染予防の意識の低さも感染拡大につながった可能性もある。
そしてここを読んで、お、珍しいことにメディアが正しく虚無コンテンツの姿を捉えている、と思いました。
無責任に「ホストまがいのイベント」なんて発言した関係者とは?
— ま🐰 (@pyon____mc) 2020年7月12日
私たちは声も出していないし触れ合っても近くに行くこともなく、ただ指定された席から俳優さんのお芝居と人狼を見ていましたが、こういう表現から沢山の方が誤解しますよね。印象操作怖いです。https://t.co/oQ4kcPDIDF
まあちょっと「ホストまがい」の部分は間違っていますね、一応俳優と客は舞台上と客席という離れた場所にいますから。けど「イケメンを集めて女性ファンを喜ばせるという内容」の催しが「ホストまがい」だと言われてしまえば、それはそうなのかもしれません。そうなると虚無でないにしろ大体の若手俳優舞台はホストまがいの催しになりますが、別にそれで結構です……。
あと、大抵こういう若手俳優の虚無舞台は終演後にチェキ会をやって小銭を稼いだりするものなので、一部関係者の中には今回もそうだったと勘違いした人がいたのかもしれません。今回「イケメン人狼アイドル」では終演後の触れ合い商法は無かったようです。出待ちは知らん。
そして、ここ。
演劇関係者は「元々舞台役者ではない人たちのイベントでクラスターが出た。コロナ禍でここまで我慢してやってきたことが水の泡になるかもしれない」とこぼした。再出発を切る大手の商業演劇界にも多大なダメージを残すことになった。
これはかなり根っこの深い問題ですよね。
一応「ステージ」って銘打ってて、演技経験者も混ざってるのに、演劇関係者から「イケメン人狼アイドル」は事実上舞台ではない、あれはイベントだという扱いを受けるわけです。虚無舞台は舞台に非ず。まあ、この記事のためにちょっと都合よく意訳すると、こんな虚無舞台風情が、ここまで我慢してきた大手の商業演劇を邪魔すんなよ、と、そういう怒りなんですかね?
演劇業界で一致団結してがんばっていこう、みたいな、スローガンをここ数ヶ月で何度も聞きました。あれは、もう、本当にね、嘘なわけですよ。だって、帝国劇場から、こんな脳が溶けそうなタイトルの舞台「イケメン人狼アイドル」までが足並みをそろえることは、正直できない。「イケメン人狼アイドル」みたいな舞台は、そもそも演劇の形を借りたイケメン興行なのだから。
「イケメン人狼アイドル」から疫病が出ても、叩かれるのは「演劇界」。たまったものじゃないと思います。大変だなぁ、と思います。
けど、演劇業界は売上のために、売上のためにと若手俳優多数出演の舞台を乱発し、2.5次元とかいうカルチャーまで生み出し、イケメンで商売していたこともまた事実。
イケメンで金を集めた呪いが、「イケメン人狼アイドル」の疫病になって返ってくる。
まあいいんじゃないですかね。
ちなみに、私のフォロワー数人が「イケメン人狼アイドル」を観劇しており、色々と話を聞きました。(フォロワーはいずれも現在無症状、外出を控えております)
・配られたアンケートに座席番号、氏名、住所を書く欄があったが気づかなかった。普段アンケートを書かないのでそのまま帰ったところ、あとからそのアンケートに個人情報の記入が必要なことを知った。
・わらわら関係者がいたのでびっくりした。リスク分散とかそういうのはあんまりなさそう。
・10日、突然ゲネプロ動画がネットから消えたが、真意は不明。
・モリエールのドア前に貼ってあった「ここには物を置かないでください」いうテープの上にも座席をガンガン置いてたのでコロナ関係なくアレだと思った。
・そもそも今回のモリエール公演は、初めて小劇場に来た人ならこれが満席の配置なのかと思えるくらいには席数があり、普段どれだけ詰め込まれているのかと考えた。
・舞台中のキャストの発言から山本裕典は公演前に共演者と外食するわ、その時にオタクに話しかけられてるわでアウト。内々に留めておくならまだしもオープンな場でそれを話すな。
・モリエールの異常に舞台と1列目が近い座席配置で演者がめちゃくちゃ叫ぶので「これでキャストがコロナだったらマスクしてても目を経由した飛沫感染で終わりじゃん」と言ってたらマジで終わりだった。
今回の「イケメン人狼アイドル」炎上は、テキトーな手口で普段から金を稼いでいた虚無舞台の制作が、疫病の集団感染を出して社会に激怒られという、非常にいい話っぽいストーリーになっています。
これで虚無舞台だけがこの世から駆逐され、面白い舞台だけが残ればいいのですが、世の中そんなにうまくいかないのでみんな怒ってるんでしょうね。
手洗い、うがい、消毒をがんばろう!