turntableってサイトがあって、音楽をアップロードできる機能があって、それって著作権的にどうなの?と漠然とした心配をしている人がいるかもしれないので、思ったことを書いておくことにする。そもそも「著作権的にどうなの?」という漠然とした疑問はよろしくない。「著作権を保有してない人がファイルをアップロードしたときに、アップロードした人は罰せられるの?」「そのときturntable(会社名はStickybits)にも過失があるの?」「turntableは潰されちゃうの?」というくらいは具体的にした方が良い。turntableの件に入る前に1年前のニュースを見てみよう。
グーグル対ViacomのYouTube著作権侵害訴訟でグーグルが大きな勝利
http://japan.cnet.com/news/business/20415677/
ViacomというのはMTVとかパラマウントとかドリームワークスとか持ってるアメリカのメディアグループ。そのViacomが2007年3月14日にgoogle(Youtube)を訴えた。そのときの主張はこんな感じ。
- Viacomの番組など16万もの違法ビデオクリップがYoutube上で出回っていて、15億回も視聴されている
- Youtubeのビジネスモデルはトラフィックを増やして、広告で儲ける方式だ
- Youtubeは侵害者に対して見て見ぬ振りをして、トラフィックを増やしてぼろ儲けしている。
- Youtubeにおける著作権侵害行為の監視という面倒な作業を著作権者にやらせている。
- そんなわけで訴えた。被害額は10億ドルだ。
これに対するgoogle(Youtube)の主張はこんな感じ。
裁判所の判断としては
「サービスプロバイダーが、侵害に関してはっきりとした事実を認識している場合、このプロバイダーはその侵害した素材を即座に取り除かなくてはならない」とStanton判事は述べ、「サービスプロバイダーが気づいていない場合、侵害を明らかにするための負担は(著作権の)所有者にある。侵害行為が『偏在している』という漠然とした認識が、侵害行為の発見のためにサービスプロバイダーによるサービスの監視や捜索を義務づけることにはならない」と語った。
グーグル対ViacomのYouTube著作権侵害訴訟でグーグルが大きな勝利 - (page 2) - CNET Japan
ということで、指摘されたファイルを削除しているYoutubeに非はないとのこと。連邦最高裁に覆されるかもしれないけれども、今のところまだ覆されていない。
DMCA safe harbourディフェンス
DMCAというのはデジタルミレニアム著作権法というアメリカの著作権法。
米国のDRM保護法制は、もっと広い範囲にわたっています。まず、著作権法の中で、コピーコントロールだけではなく、アクセスコントロールも保護しています。利用者が、いかなる目的であっても、これらのDRMを破ると、原則としてそれだけで(その後、特に違法な複製やアップロードなどをしなくても)直ちに違法、という法律になっているのです。
デジタル時代の著作権 - technophobia
というやばい法律もここに含まれる。今回のテーマはそれではなくsafe harbourディフェンス。アメリカだとsafe harborか。シンガポールはイギリス系なので授業もharbourで習った。日本で言うところのプロバイダ責任制限法である。インターネットサービスプロバイダなどの中間業者が著作権を侵害しているかどうかを規定するもので、大雑把に言って5項目ある。
- Transmitting, Routing and Provision of Connections (s512(a))
- System Caching (s512(b))
- Storage/hosting (s512(c))
- Information location (s512(d))
- Notice and Counter- notice Requirements (s512(c)(f)(g))
1つ目はまねきTVあたりが近いかも。2つ目はキャッシュの保存ということで検索エンジンあたり。3つ目はファイルを保存とかホスティングするサービス絡み。4つ目も検索エンジン。違法アップロードされたファイルを発見してしまうgoogle先生は訴えられるのかという話。最後のは指示があったら削除するよという話。ViacomとYoutubeの件で争点となっているのは3番目のStorage/hosting。もし中間業者(Youtube)が
- いわゆる違法アップロードされたファイルを保持していたとしても
- その侵害行為から利益を上げていなくて
- 侵害を知った後、削除やアクセス不能にするなどの対処をする
ならば、その中間業者には非がないということ。広告で利益を上げているという意見もあるけれども、Viacomのケースでは却下されている。Youtubeは、著作権者からの削除依頼には積極的に対応しているのでOKだという話。詳しくは、モリソンフォスターさんとこの原文と訳文を見ればいいと思う。
これをふまえてturntableの話
- 「著作権を保有してない人がファイルをアップロードしたときに、アップロードした人は罰せられるの?」
それはそうじゃないのかな。制限された所で一人で聞いているだけだと公衆に送信しているかって話になりそうだけど、まー基本的にアウトでしょう。
- 「そのときturntable(会社名はStickybits)にも過失があるの?」
turntableが訴えられたら、きっとYoutubeの論法を使うんだろう。この会社の著作権ポリシーを見ればわかると思うけど、DMCAに従って通報があったら直ちに対処しますとか、繰り返し違法アップロードを続けるユーザーはbanしますとか、いろいろ書いてある。
- 「turntableは潰されちゃうの?」
まだ何とも。Medianetってとことライセンス契約してるし、侵害行為から利益を上げているわけじゃないとか、違法アップロードにちゃんと対処しているって主張できるならいいと思うけど、まだ始まったばかりで何とも。
追記
Quoraの質問にMedianetと関わったことがある人が回答してた。
http://www.quora.com/What-licensing-terms-does-turntable-fm-get-from-MediaNet
The main element of this is that it is non-interactive to end users. This means end users:
- May not see ahead in a playlist past the currently playing song
- May only play or pause the list
- 3 songs per artist per hour, maximum
- 4 songs from a single album in three consecutive hours, maximum
- Users may skip ahead only 6 times per hour
プレイリストはDJにしかわからないからインタラクティブではないと言いたいようだ。オンデマンドストリーミングに該当すると、アップルがレーベルに1.5億ドル払ったように、高額の支払いが必要となる。そこらへんも不透明なので、やっぱりまだなんとも。