「実践Vim」感想:Vim挫折経験のある人にこそ薦めたい

大変素晴らしい本だった。

まず章構成からして著者の工夫が感じ取れる。
通常であれば最初にカーソル移動の詳細なパターンを数ページに渡って解説するであろうところを、
この本ではいきなり繰り返しのドットコマンドから始めている。
そのおかげで、滑り出しから苦痛を感じることなく、興味を持って読み進めることができた。

また、全編に渡って(作業の繰り返しを常に意識するなど)著者の哲学、考え方が語られているため、
表面的な機能解説に留まらず、本書に載っていないような状況に遭遇した際も、
Vimのどのような機能を選択するべきか、という方針を立てやすくなっているように感じる。
むしろExcel辺りでもこういった本が出て欲しいぐらい(関数と表計算機能、マクロの使い分けとか…)。

安易にプラグイン紹介に走らず、原則デフォルト機能の範囲で解説して行くという方針も、
Vimの「ほぼデフォルト設定のままある程度の性能を引き出せる」という所にこそ興味を持っていた私の目的に適ったものだった。
細かい所では、キーワードと共にヘルプへの参照が随所に記載されているため、自然とヘルプの引き方を身に付けられたのも良かった。
訳も見事で、違和感のある部分が無いのみならず、原書やサンプルの不備についてまで、きめ細かに補足されている。

元々私は何度かVimへの乗り換えで挫折しており、vimtutorの後、
オライリーのvi本を読んだり、Web上でVimの入門記事を読んだりしたこともあったものの、
結局「文字単位のカーソル移動」、「検索コマンド」、「iかaで入力」、「ESCで抜ける」ぐらいの知識しか身に付いていなかった。
本書を読みながら試して行くうちに、普段使いに困らない程度には習熟することができ、
今後知識を増やして行く方法も身に付けることができたため、特にそういった挫折経験のある人にこそ、本書を勧めたい。