オンリーワンPD

ネット上でいくつか贔屓にさせていただいているブログがある。
その中のひとつ、「砂漠のリアルムシキング」について書いてみたい。
Web上では有名な方のようだが、このブログの筆者もまたPD(ポスドク)である。

僕と分野は違えど、置かれている社会的地位はさして変わらない。
僕も彼もPD。不安定な任期職である。
(もっとも、研究業績を拝見する限り、彼の業績&経歴は僕なんかよりもずっと優れているが。)

だが、僕と(そして日本中に数多存在する僕のようなPD達と)彼との間には決定的な差が存在する。

「代わりがいる」か「代わりがいない」か、だ。

僕程度の汎用型PDは日本中にごまんといる。彼と同等、もしくは彼を凌ぐ業績を持つPDだって少なからぬ数がいるだろう。

しかし、アフリカの砂漠で害虫研究に身を捧げようと言うPDは一体何人いるだろうか?
平穏な日本での暮らし、その業績があれば十分手に入るであろう安定したポジション、そういったものを打ち捨て、言語も文化も生活水準も異なり、命の危険すらあるような異国で研究を志すPDが他にいるだろうか?

誰が進んでそんなところに行くものか。
あたりまえだ。アメリカだのヨーロッパだのに行くのとは訳が違うんだ。
例え、高い志があっても、現実的な問題の前に二の足を踏むことを誰が責めれようか?

害虫として名高いにも関わらず、このバッタ防除の研究が長いこと進んでいないと言うのも頷ける。


「誰もが望んでいるはずなのに、誰も手を付けない」

そこに単身切り込める彼は間違いなく「代わりがいないPD」である。




だが、そんな彼は今年から無給PDになるようだ。
http://d.hatena.ne.jp/otokomaeno/20130322/1363940379

きっと彼は最初からそうなる覚悟をもってアフリカに渡ったのだろう。




自分を含め多くのPDは、国から出る研究費(つまり大元を辿ると税金)で雇われているわけだが、本当は彼のようなPDこそ国に支援されるべきだ。

残念ながら僕に、「俺の給料を使ってくれ!」と言えるだけの男気は存在しない。
しかし、少しでも支援になれば、と思い、先日、氏の著書を買わせていただいた。

少々門外漢には辛いところもあったが、氏の強い想いは伝わってくる。

氏の置かれた状況が少しでも良くなることを願ってやまない。