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選ぶべきはiPhone?それともPixel?2024年最新フラグシップで比べてみた

左が「iPhone 16 Pro Max」、右が「Pixel 9 Pro XL」。ボディサイズと重量はほぼ同等だ

 日本国内市場で圧倒的なシェアを誇るiPhoneに対し、ここ数年、ほぼ同じタイミングで新製品を投入するなど、果敢に挑み続けているのがGoogle「Pixel」シリーズだ。今年こそややシェアを落としたようだが、IDCの調査によると2023年は前年比成長率で527%という異例の伸びを記録しており、市場での知名度もうなぎのぼりだ。

 今回は、2024年暮れ時点での両陣営の最新フラグシップモデル「iPhone 16 Pro Max」(以下iPhone)と「Pixel 9 Pro XL」(以下Pixel)について、主要な機能や特徴について比較する。製品選びの一助となれば幸いだ。なお比較はハードを中心に行なっており、Apple IntelligenceやGeminiをはじめとしたソフトウェアベースの機能は基本的に扱っていないので、予めご了承いただきたい。

【ボディおよび画面】どちらもほぼ同等

 まずはサイズや画面周りについて。画面サイズはiPhoneが6.9型、Pixelが6.8型とほぼ同等。ボディサイズはiPhoneのほうが若干背が高いものの、横幅はほぼ同じだ。背面のカメラ周りのデザインこそ大きく異なるが、保護ケースに入れた状態で正面から見ると、ほとんど見分けがつかない。重量もiPhoneが227g、Pixelが221gと、持って判別できるほどの差はなく、持ちやすさも大きくは変わらない。

 表示性能はどうだろうか。解像度はiPhoneが460ppi、Pixelが486ppiと、こちらもほぼ横並びで、リフレッシュレートも同じく最大120Hz。最大輝度はiPhoneが2,000cd/平方m、Pixelが3,000cd/平方mとPixelが若干明るいが、これはあくまでもピーク輝度で、隣に並べるとPixelのほうが明るいとはいえ、単体で暗くて困るといった問題はない。

左がiPhone、右がPixel。背面カメラ部の突起は両者を見分けるポイントだ
iPhone(左)はカメラの突起が端に寄っているため、デスク上に置くとやや傾く

【カメラ】両者の差は縮まる

 カメラは両製品とも、超広角/広角/望遠の3つのレンズを搭載する。最大ズームはiPhoneが光学5倍/デジタル25倍、Pixelが光学5倍/デジタル30倍と若干差があるが、実際に撮影した写真では倍率にほとんど差はなく、これも製品選びの決め手になることはなさそうだ。夜景への対応についても、色味などの差はあるものの、機能自体はどちらも搭載している。

 ただしデジタルズームについては、iPhoneでは斜め方向の線が直線ではなく階段状になったり、ベタ塗りにざらつきが出たりする一方、Pixelではざらつきはないものの塗り絵のようなベタ塗りになりがちと、画作りの違いが見られる。見た目がきれいに見えるのはPixelだが、自然さはiPhoneが有利といったところだろうか。

 ちなみに超広角カメラについては、iPhoneは従来が1,200万画素だったのが4,800万画素へと進化し、Pixelと肩を並べるようになった。一方でインカメラはiPhoneが1,200万画素、Pixelが4,800万画素と依然として差があり、スペックだけ見るとiPhoneが後から追いかけている格好だ。

写真の比較(左がiPhone、右がPixel)
光学ズームの最大値(5倍)。コントラストは異なるが大きな違いはない
デジタルズームの最大値。倍率にそれほど差はない印象。iPhoneは背後の空がざらついていたり、窓フレームのディテールにガタつきが目立つ。Pixelは全体的に滑らかで光学ズームと見分けがつかない
デジタルズームの最大値から一部を切り出したもの。左下のタイルを見ると、ザラつきをそのまま描写しているiPhoneに対し、Pixelはディテールが飛んでのっぺりしている。どちらが好みかは人によるだろう
夜景を明るく見せるのはかつてPixelの十八番だったが、いまではiPhoneのほうが明るくなり、逆にPixelは人工的な画作りを極力控えるようになった印象だ

【バッテリ】iPhoneは異次元のバッテリ持ち

 バッテリの持ちはどうだろうか。輝度100%固定、音量オフで「Abema TV」アプリをストリーミング再生し、バッテリがどれだけ持つかをチェックした。従来モデルで同じテストを行なったときは両製品ともに新規セットアップの直後だったが、今回は最小限のアプリを入れた状態で測定しており、完全に同条件での比較ではない点をお断りしておく。

 前回はiPhoneの「23時間12分」に対して、Pixelは「15時間44分」とiPhoneの圧勝だったが、今回はiPhoneが「30時間10分」と従来よりも大幅に伸長。スペック上も、ビデオ再生で最大29時間だったのが33時間、オーディオ再生で最大95時間だったのが105時間と、1割以上の伸びとなっているが、実際の駆動時間はさらに伸びている印象だ。

 一方のPixelは、こちらも前回の「15時間44分」から「19時間09分」へとパワーアップ。30時間の大台に乗っているiPhoneと比べるとさすがに分は悪いが、従来モデルと比べるとこちらも伸びが見られる。両者ともに十分なバッテリ駆動時間があるが、ことiPhoneは異次元のバッテリの持ちのよさ、という評価が適切だろう。

輝度100%固定、音量オフで「Abema TV」アプリをストリーミング再生し、シャットダウンするまでの時間を測定。結果はiPhone(左)が「30時間10分」、Pixel(右)が「19時間09分」となった

【充電】最大30Wの充電器を調達するのが望ましい

 両製品ともUSB Type-Cポートを搭載し、USB PDによる急速充電に対応するが、実際の充電速度はどうだろうか。今回は最大出力が異なる4つの汎用USB PD充電器(20W/30W/45W/65W)を用意してテストを行なった。その結果、両者ともに30W以上の充電器を利用した場合に、ピークとなる25W前後での充電が行なえた。

 一般的には、スマホ用の充電器として最大20Wや30Wのモデルを勧められることが多いが、最大20Wだと最高速度での充電には今一歩足りない。新たにUSB PD充電器やモバイルバッテリを買い求める場合、最低でも最大30Wが望ましい。また将来性を考えるならば、45W対応モデルをチョイスしたほうが安心だろう。こちらであればPCへの充電にも対応するなど活用の幅も広がる。

最大出力が異なる4つのUSB PD充電器(20W/30W/45W/65W)を用意してテストを実施した
iPhoneを充電した場合
最大30W以上の充電器を使った場合、供給される電力は25~29Wとなる(なぜか30Wがもっとも高いが、これはイレギュラーだろう)。20Wではボトルネックとなることが分かる
Pixelを充電した場合
こちらは最大30Wの充電器はなぜかパフォーマンスが上がらず、45W/60Wだと28W前後で一定している。こちらもまた20Wだと充電器の側がボトルネックとなる

【スピーカー】両者ともほぼイーブン

 スピーカーは両製品ともに上部、下部に1基ずつのステレオ構成。本体を横向きにすることで左右から音が出る仕組みだ。また両者ともに空間オーディオにも対応している。

 音質については、実際に聴き比べる限りでは差はないように感じるが、強いて挙げればより音の広がりがあるのはiPhone、よりクリアなのはPixelといったところだろうか。昨今は音楽や動画の視聴に内蔵スピーカーではなくイヤフォンが使われる場合が多いことも踏まえると、これらが製品選びの決め手になることはなさそうだ。

下部スピーカーは、iPhone(左)はUSB Type-Cポートの左側、Pixel(右)はUSB Type-Cポートの右側に配置されている
上部スピーカーは、iPhoneはダイナミックアイランド直上のややへこんだ部分にある
Pixelもやはり上部の若干へこんだ部分がスピーカー。幅はiPhoneよりも広め

【映像出力】Pixelもついに有線による外部出力に対応

 外部モニターへの映像出力は、従来は有線/無線のどちらにも対応するiPhoneに対して、Pixelは無線のみと差があった。しかし今回のモデルでは、Pixelもついに有線での出力に対応した。ケーブルをつなぐだけで外部モニターに映像を表示できるのはやはり手軽でよい。

 ただしPixelは、モニターによっては全画面で表示できなかったり、正しいアスペクト比に切り替えられない場合がある。ほとんどの製品で動作検証が行なわれているiPhoneと異なり、Pixelは最適化が完全でないためだと考えられる。どの程度の割合で発生するのかは不明だが、挿せばほぼ確実に表示できるiPhoneほどの信頼性は、現時点ではないようだ。

iPhoneで映像出力した場合
iPhoneはモニター出力に対応したUSB Type-Cケーブルでつなぐだけで外部出力が可能
Pixelで映像出力した場合
Pixelについても同様だが、今回試用したモバイルモニターではアスペクト比が正しくなく、また調整しても全画面に拡大されなかった

【生体認証】指紋認証への対応が分かれる

 生体認証は従来モデルと同様、iPhoneは顔認証(Face ID)のみ、Pixelは顔認証と指紋認証の両方に対応する。Face IDはマスク着用時にも利用できるとされているが、実際には失敗することも多く、指紋認証も利用できればいいのにと感じることもしばしば。とはいえ、iPadなどで採用している指紋認証センサー一体型の電源ボタン(トップボタン)が今に至るも採用されていない時点で、今後も望み薄だろう。

 一方のPixelの生体認証は、画面内指紋認証センサーの不安定さがかつてはみられたが、最近はすっかり影を潜め、快適に使えるようになった。実際にロックを解除した時も、顔と指紋のどちらで解除されたのか分からないほどシームレスで、実用性は高い。冬場は手袋やマフラーによってこれら生体認証がうまく動作しないことは多いので、両方に対応していたほうが有利であることは間違いない。

iPhoneの生体認証
(左)iPhoneはFace IDのみ
(中央)セットアップ画面。マスク着用時の容姿も登録できる
(右)アプリ独自のロックもFace IDで解除できる。これはDMMブックスの画面
Pixelの生体認証
(左)Pixelは顔認証と指紋認証の両方が使える
(中央)一覧画面。ほかにスマートウォッチによる認証にも対応
(右)さきほどと同じDMMブックスのロック解除には指紋認証を利用できる

【そのほかのハードウェア】お互い独自の機構を搭載

 お互いにないオリジナルの機構として、iPhoneは独自ボタン、Pixelは温度計が挙げられる。iPhoneはミュート以外の機能も割り当てられるアクションボタンに加えて、写真撮影時に活用できるカメラコントロールボタンが新たに追加された。Pixelが電源ボタンと音量ボタンというお決まりの構成なのとは対象的だ。

 中でも後者のカメラコントロールは、物理ボタンとタッチセンサーが組み合わさった独特のギミックで、最新のiOS 18.2でも挙動に改良が施されるなど、フィードバックを受けて進化しつつある。ただし物理的な故障や誤操作の可能性が上がるのはやや懸念点といったところだ。個人的にはボタンのない面が減ったことで、クリップタイプの三脚に挟みにくくなったのがマイナスだ。

iPhoneの独自ボタン
従来ミュートスイッチがあった場所には、ミュート以外の機能も割り当てられるアクションボタンが配置される。かつてのスライドスイッチと違って直下の音量ボタンと同じ押し込むタイプのボタンゆえ、慣れるまでは押し間違えやすい
カメラコントロールは、iPhone本体を横向きにして右手に握った時に人差し指が来る位置にある。カメラのシャッターボタンと同じ配置だ

 一方のPixelは、従来モデルにもあった温度計が健在だ。被写体にかざすだけで手軽に温度が測れるのは利点だが、日本では承認が下りていないため体温測定に利用できず、測定できるのは物体の表面温度のみと、依然として中途半端だ。

 Pixelではこうした実験機能が次のモデルでは跡形もなく消え去っていることが多いが、2世代続いただけでも画期的だ。3世代目となる次回には期待したい。

Pixelの温度計
(左)Pixelは温度計を搭載する
(中央)素材を選択することで温度が測定できる。体温測定に対応しないのは大きなマイナス
(右)本製品では測定画面の背景に対象の画像が表示されるようになった

【電話関連】迷惑電話対策になる新機能が追加

 ハードウェアではなくソフト側の機能になるのだが、迷惑電話対策に関連した機能は、両製品ともに大きく進化を遂げていることから、本稿の締めに当たって取り上げたい。

 iPhoneに新たに追加された「ライブ留守番電話」は、留守電の内容をテキスト化して表示してくれることから、相手の声を聞くことなく迷惑電話か否かを判定できる機能だ。音声の認識率もそこそこ高く、実用性は非常に高い。ただし処理をiPhone上で行なう都合上、電波の届かない地域では利用できないのは、一般的な留守電サービスと比べた場合のウィークポイントだ。

iPhoneのライブ留守番電話
(左)ライブ留守番電話。留守番電話でテキスト起こし機能が使える
(中央)吹き込まれたメッセージはテキスト化されロック画面にも表示される
(右)アプリを開くと音声を再生しつつ同時にテキスト表示も行なえる

 一方のPixelは、電話を掛けてきた相手に対し、本人に代わってGoogleのバーチャルアシスタントが用件や緊急度を尋ね、その過程をテキストにまとめてくれる「通話スクリーニング」が利用できる。直接会話をせずに必要事項を的確に聞き出せるのは利点で、迷惑電話対策としても役立つ。

 ただし日本語版では電話中に個々の質問を手動で選ぶ必要があるため、留守電のような手軽さはない。また自動音声での会話には独特の間があり、スムーズさはいまひとつ。今後に期待したいところだ。

Pixelの通話スクリーニング
(左)Pixelの「通話スクリーニング」。「応答」「拒否」以外にもうひとつ選択肢が加わったイメージ。画面では「AIで応答」と表示される
(中央)Googleアシスタントが代理で応答してくれるが、質問の選択は人間が行なうため、留守電のように放置はできない
(右)聞き取った音声はテキストに変換され履歴に表示される

 以上、ハードウェアを中心にざっと比較してみたが、両者ともに従来モデルまであった差が少なくなっているケースが多く、甲乙つけがたい印象だ。どちらもトップメーカーのフラグシップモデルであり、お互いの優れた部分に歩み寄っていくのは必然と言っていいだろう。

 これ以外で見逃せないのはやはり生成AI関連の機能だろう。すでにGeminiを搭載済みのPixelに加え、iPhoneのApple Intelligenceが日本語に対応すれば、両者を比較する上でポイントとなることは間違いない。昨今のスマホはハードウェアが成熟してきていることから、メーカーが差別化ポイントとして注力するのは自然な流れで、中長期的に注目していきたいところだ。