藤山哲人と愛すべき工具たち
猛暑に備えて超冷却。PCのファンを25cmの換気扇に換装する【後編】
~ファンコン&エアインテーク追加で20℃減温可能に
2018年6月2日 11:00
今度はマジメにエアフローまで考えて、超冷却換気扇マシンを作るぜ!
【前回までのあらすじ】 PC内部に低気圧が発生し、紙の資料を巻き込む台風となってしまった換気扇PC。さらには高速回転する大型ファンのため、まるで飛行場か!と思うほどの爆音だった!(前回の記事: 猛暑に備えて超冷却。PCのファンを25cmの換気扇に換装する【前編】)
爆音以上に回収できるのは冷却効率の高さ。空冷で-10℃以上の効率をたたき出せるので、「ネタ」で作ってみたとはいえ、筆者的にちょっと一安心(笑)。
風を見るためにヒモをつけてやったところ、ウチの猫の絶好のオモチャに変身! ものすごい風に立ち向かいながら遊ぶ。しかし反面で、PCの周りに置いてある資料が全部吸い込まれて、PCにくっつくという事態に。
この惨事を回避するべく、まずはファンコントロールを作ってみた。
100Vの換気扇なので100Vのファンコンを作ろう!
PCのファンは電源の直流12Vで動くので、適当なファンコントローラを買ってきて、そこにファンのコネクタを差し込めば、回転数を自在に変えられる。
しかし回転数を変えられる換気扇なんてのは、業務用を探してもネェ! あっても強弱の2段階を切り替えられる程度だ。換気扇、ショボイなぁ~。とはいえ扇風機ですら、微風、弱、強の3パターンぐらいしか切り替えられないのが現実だ。微妙に風を調整できるのは、ここ3年ほどで登場してきたDC扇風機だけ。
しかし! われわれホビイストの強い味方、秋葉原の秋月電子には「トライアック万能調光器キット(20Aタイプ)」なるものが販売されている。これを使うと、調光ができないタイプのLED電球や換気扇・扇風機、白熱電球や半田ごても明るさなどを調整できる(ハズ!)。
ただ調光できないLEDと扇風機などのモーターは、かなり無理くり感があるので、PC用のファンコンのようにスムーズな回転数の調整は難しいと思ったほうがいい。トライアックの仕組みは、組み立て説明書によればこんな感じ。
電圧や電流を変えるのではなく、交流の波形の一部をカットすることで、フルの状態から弱にしていくようになっている。なので半田ごての温度や、白熱電球の明るさを変えるのはスムーズだが、モーターの強さやLEDの調光用に使うと、モーターがうなったり、LEDがチラついたりする場合がある。
なおこのキットには、制御用の250kΩボリュームが添付されている。しかし換気扇の制御用に使うには、この抵抗は大きすぎるので5kΩのボリュームを別途購入しよう。かなり回転数の幅がせまくなるが、250kΩのボリュームを使うと、最後の20度ぐらいでしかファンがまわらず、回転数の調整が、パチンコの釘を調整するぐらい微妙になってしまうので注意。
キットの製作は、半田付けができればそれほど難しくない。ただキットの部品を差す穴すべてに部品が差さらない。2個の部品はキットに添付されていない別売品。これらを購入する必要はないが、別の部品をこれらの穴に差さないように注意しよう。
抵抗値が読めなくても、説明書にカラーコードが示されているので問題ない。ただ似たような部品も多々あるので、説明書をしっかり読んで作ること。なにしろコンセントに差しこむ回路なので、間違ったりするとパーン! と大きな音を立ててショートしかねない。
基本的な作り方を説明すると、背の低い部品(抵抗)から半田付けするのがセオリー。最後に黒い半導体を取り付け、別売のヒートシンクもつけるといい。
完成したら100Vの入出力の部分に、テスターを当ててショート(ショートしていると音がなるモード。抵抗モードについているはず)していないことを確認しよう。
100Vを扱うので必ずケースに入れる!
回路ができたらケースに入れる。直流12V程度なら基板の裏にダンボールを貼って絶縁し、回路むき出しで使ってもいいが、今回はコンセントの100Vを扱う回路。なので最低でも、100円ショップで売ってるタッパーウェアを使おう。ここでの工作で使ったのは、アルミケースだが、5インチベイに入るケースをアクリルなどで自作してもいいだろう。これならすごく一体感が出て仕上がりもきれいだ。
使ったケースは、TAKACHI(タカチ)のMB-3。スゲー、メジャーなケースなので、電子工作関連の品を売ってる店ならどこでも手に入る。
基板に比べると物凄く大きな感じがするけど、ちょっと大きいかな?というぐらいがイイ。初心者でやっちゃいがちなのは、小さいケースを買ってしまい、スイッチやボリュームなど飛び出した部分が基板に当っちゃうという点。
まずは取りつける部品の数々をケースの上に乗っけたり、入れたりしてだいたいのレイアウトを決める。今回はスイッチ、ボリューム、パイロットランプ(ネオン管100V AC)が上部に、背面にコンセントの入出力を取りつける。
背面の四角い穴は、ハンドニブラという工具で開けると効率がいい。まずは定規やノギスという測定器を使って、取り付け穴の位置決め。
その後、ケビキという針を使って、アルミケースの内側から軽く傷をつけながら線を引く。もちろん極細マジックを使ってもいいのだが、マジックだと最低でも0.1mmの幅が出てしまうので、線の中心が基準なのか、外か内側かを決めておこう。ケビキなら針なので、ほとんど幅がでないので、面倒な基準を考える必要はない。ケビキが終わったら、サイドパネルに穴を開けたときと同様に、ハンドニブラの刃を入れるための穴を開ける。
もしハンドニブラがない場合は、ケビキの線に沿ってドリルで何本も穴を開けるか、ジグソーで穴を開ける。どちらも一長一短あり、小さい四角い穴を開けるのはたいへんなのでガンバレ!
ハンドニブラの場合は、刃をドリルの穴に差し込んだら、レバーを握りアルミ板を少しずつ食いちぎっていく。刃が直線になっているので、自然に四角い穴が開くというわけ。ただし最初からケビキした穴の大きさを開けると、切り口がガタついたり、きれいに仕上がらないので、少し小さめ(0.2~0.5mmほど)に開ける。
穴を開け終わったら、ヤスリでキレイに仕上げるといいだろう。またヤスリを少しかけつつ、部品を当てがってみて大きさの調整や、出っ張りの修正などをするといい。
上面のボリュームとスイッチ、パイロットランプは丸穴なので、ドリルとリーマで穴を開け、部品を取りつける。なお必須工程ではないが、ドリルで穴を開けると裏面にバリが立ってしまう。そんなときは、バリ取りナイフと呼ばれるもので、バリを切り取るときれいな仕上がりになる。
基板はアルミケースから浮かせて取りつける。5~10mmのスペーサーという部品を使う。これで基板をアルミケースから浮かせれば、ショートしない。
最後に部品と基板を配線して、ケースを組み立て。コンセントの入力と出力それぞれ、ショートしていないかチェックして完成だ。
PCのファンコンほど幅広く回転数を制御できないがイイ感じ
さてファンコンを実装してみたところ、「なんとなく」回転数は変化できているが、PCのファンコンほど回転数のレンジも広くなくイマイチ!(あっちゃー!失敗認めちまった!)
なにせ換気扇はACモーターなので、DCモーター扇風機みたいに超ゆっくりから、爆速まで回転できない。したがってファンを低速側にしてみたが、やっぱりPC内部に低気圧が発生。まわりのものをすべて吸い込んでしまう、ブラックホール化は避けられなかった。
だか! ノーアイディアのオレ様で終わることはない!宇宙戦艦ヤマトの真田工場長は、「お前は預言者かっ!」というぐらい「こんなこともあろうかと!」といろんな武器を作っていた。無論オレだって真田工場長にあこがれているオッサン。そんなこともあろうかと!と、先手は打ってある。
それは、ドでかいエアインテークを作って、マシンのすき間のアチコチから吸気させるのではなく、インテークから一気にエアを吸い込んでやろうという魂胆だ。
フロントパネルからの吸い込みでCPUとGPUを冷却するエアフロー
ここまでの工作は、空気の通り道いわゆる「エアフロー」を考えて、まじめに作る工作じゃなかった。なんとなく換気扇がつけたかっただけ(※編注:いやいや、編集部の立場ってもののあるんで、ここで白状しないでくださいよ!)。
なのでここから本気出す! 吸い込んだ涼しい空気をCPUとGPU、それからマザーボードのチップセットあたりに当てて、奪った廃熱を側面の換気扇から吐き出すのだ!
そのためまずは、フロントパネルにデカイ穴を開ける。そのためにつかうのは、自由錐(キリ)というもの。
一般的なフロントパネルは、プラスチックでできているが、Antecのこの筐体は、なんと鉄板が貼ってあるハイブリッド。Antecさんには、悪いが見た目悪くてもいいから、フロントパネルぐらいプラスチック製にしやがれ! なのだ。
なのでここで使った自由錐は、鉄工用のものを使う。鉄工用は刃が1本5,000円ぐらいして高いが、プラスチック専用だと2,500円ぐらいで買えるはず。使い方は簡単で、自由錐をドリルにセットして、刃を開けたい穴の大きさまで広げるだけ。あとは少しずつ刃を入れて行き、大穴を開ける。
鉄板やプラスチックの半分ぐらいまで刃が入ったかな? と感じたら、裏面からやるとより早くきれいに穴が開く。ここでのNGは、あせって力を無理やり加えて削ると、きれいな穴が開かないという点。気長に少しずづ削っていれば、まあ30分~15分ぐらいで穴があくはずだ。
これで機能的には、エアフローも考慮した冷却システムになっているが、デザイン的にちょっとダサい。なので今回、昭和の時代のトイレの換気についていた、ベンチレータを使ってみた。
なので直角に曲がる塩ビの配水管を使い、ここにトイレのベンチレータを差しこむ。すき間は発泡ゴムやドアのクッションで埋めるといいだろう。
そして換気扇をフル回転で動かすと、猛烈にペンチレーターがまわりはじめ、空冷しているのがとくわかるようになった。
このマシンに命名しよう! プリティなペンチレーターが象にソックリ!なので、「えれファンと」という名を授ける!
ベンチマークの結果がスゲェ! -20℃以上のクールダウン
エアインテークの集中化、そしてエアフローを考慮した結果は、ベンチマークの結果にそのまま反映された。ベンチマーク時実行直後の温度は、ノーマルのファンに比べると最高で-20℃以上冷却でき、GPUでも10℃違いの冷却が可能。しかもエアインテークを設ける前と後でも、軒並み10~5℃前後の冷却ができるようになっている。
もちろんクールダウン後の冷却性能もすばらしく、対ノーマルでおよそ20℃(最高は26℃)、対エアインテークなしで10℃の改善が見られる。
ファンコントローラとエアインテークの増設で、ファンの爆音をやや抑えることも可能になりつつ、実行中はほぼ10℃、高負荷の後も一瞬にして最大-26℃の冷却が可能になる。
もうこれはバカ売れして、筆者が億万長者への道を約束されししもののようだが、なにせマシン1台1台の「職人藤山の一品モノ」。どうしても僕のマシンを改造してほしいという方は、PC Watch編集部までご一報ください! “時価”にて承ろう。
最後に「えれファンと」をちょっとオシャレにデコってみた。